2016年10月18日火曜日

激化する中国の権力闘争(2):陸軍は習近平に2つの揺さぶりをかけた、3つ目は何をするのか?

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 先日、予備役の軍人が軍中枢部の建物の前でデモを行った。
 こんなことは当然あってはならないことであるが、それができたということは後ろに解放軍の大物がいるということでもある。
 さらにいえば、習近平とそれらの連中がぶつかり合っていることが明らかになったということでもある。
 そうでないなら、こんな共産党にとって恥さらしな行動が独裁国家で起こるはずがない。
 しかし予兆はすでにあった。
 少し前に、解放軍がインドとの国境を越えて侵入したことがある。
 しかし、数時間滞在しただけでサーッツと引き上げてしまった。
 「解放軍がインドにピクニックに来た」
と表した論者もいた。
 しかしメデイアの基本論調はほとんどすべて同じで中国とインドの衝突をにおわせる行為と論じた。
 でもこれは間違っておりアサッテ方向の解釈に過ぎない。
 中印のぶつかり合いが考えられるなら、もう少しアクセントの強い動きがあるはずである。
 ならこれは何だったのか。
 これは習近平の政策を快く思っていない解放軍陸軍が習近平政権をちょっと揺すってみようという行動とみるのが妥当であろう。
 習近平果たしてどんな反応を示すのか、そこを見てみようとしたものである。
 この行動の裏にはインドと中国の対立など微塵もない。

 そして2度目も現政権への揺さぶりが今回の予備役兵団のデモである。
 いま習近平は解放軍の内部での権力を構築するために、海軍を増強することで勢力を作っている。
 その結果として、甘やかされた海軍が相当増長慢になって勝手な動きをしていることが見える。
 習近平は海軍を傘下に入れて、その力で陸軍を抑え込もうとしているということである。
 陸軍はすでに軍閥として出来上がっており、長い歴史をもっている権力集団であって、それに新たな勢力を張ることはいかに軍主席としても短時間で容易にはできない。
 そこで、海軍を拡張することで足場を作り、その分陸軍勢力を削っていくというのが習近平の手法である。
 当然のことながらそれは陸軍側は気に入らない。
 陰に陽に不満がつのってくる。
 そこでまずは、インドにピクニックを実行してアドバルーンを上げ、政権の動きを探った。
 そして次は予備役を使ってストを実行した、というわけである。
 軍人ストというのはインパクトが大きい。
 れれに対して習近平がどう出てくるか、が焦点になる。
 陸軍派は習近平に2つのゆさぶりをかけた、ということである。
 そして3つ目に陸軍は何をするのか。
 今後のみどころはそこに絞られてくる。



ほん きになるweb 2016年10月21日
http://best-times.jp/articles/-/3500

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 文化覇権は一番難航しているが、それでも習近平政権の庇護を一番強く受けている万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。
 通貨の強さは軍事に裏付けられ、文化の強さは通貨に裏付けられる。
 この三つの覇権は三つ巴のように相乗効果を持って中国の野望の推進力となっている。

 日本人の中には、中国よりも米国に反感を持つ人たちも少なくないが、私はこの「赤い帝国」のほうにより脅威を感じる。
 なぜなら中国のいま行っている思想統制や言論弾圧、人権弾圧は世界でも屈指の激しさであり、法治の下の平等などは存在しない。
 中国の価値観とルールに従わねばならない日を想像するとぞっとしないか。
 私ならば、この「赤い帝国」の野望を阻みたい。

 だが、ここにきて赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在することが明らかになっている。
 党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満……。
 もっともこうしたリスクは中国にとってのリスクというだけでなく、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。
 その野望は阻みたいが、かといって彼らが滅ぶ日が来れば、間違いなく日本にも負の衝撃が襲いかかる。

 では日本はいったいどうすればいい? 
 何ができる? 
 そもそも、中国のいまの内政や外交、軍事における思想や行動や戦略を日本人は理解しているか? 
 まずは、そこからだろう。
 本書を読んでいただければ、習近平政権が今、どのような戦略を持って、何を目指しているか、実際に何をやっているか、どんなリスクを抱えているかが、おおざっぱながらつかめると思う。
 それを知れば、おのずと日本側が内包するアキレス腱、リスクも見えてくるだろう。
 読者の忙しい時間を少し割いていただいても無駄にならなかったと思える内容を詰め込んだと自負している。
最後まで読んでいただきたい。
(「まえがき」より)

《目次》

序章 習近平政権がはらむチャイナリスク
 習近平とはどういう人物か
 際立つ対外強硬姿勢
 「私は中国のゴルバチョフにはならない」
 中国をソ連にしてはならない……
 胡錦濤は共産党の限界を予測していた
 胡錦濤の民主化、法治国家化はあえなく頓挫
 胡錦濤は無能な政治家だったのか
 経済優先から軍事優先へ
 「五輪九年ジンクス」という体制崩壊の予兆
 中国経済のクラッシュは在中国日本人の危機

第一章 習近平は暗殺されるのか
 習近平・王岐山暗殺未遂事件
 習近平を襲ったクーデター未遂騒ぎ
 エルドアン流クーデター制圧術を見習え
 習近平のクーデター予防策とは
 白昼堂々と軍隊に襲われた胡錦濤
 ルールなき権力闘争 
 中国の権力闘争と派閥の構造とは
 北京大卒のエリートで美男子・薄熙来のクーデター計画
 大物政治家・周永康を無期懲役に
 恩人の軍長老・徐才厚を排除する
 十数人の愛人がいた軍長老・郭伯雄を逮捕
 共闘関係の団派にも宣戦布告した習近平
 三・一八フェラーリ事件の凄惨な事故現場
 令完成の持ち出した機密情報
 習近平に友達はいないのか
 習近平閥の人物とは誰なのか
 中国のドナルド・トランプといわれた任志強
 習政権を批判した任志強はつるし上げに……
 王岐山が任志強を擁護し、習近平を批判
 習近平と王岐山の亀裂は決定的に
 なぜ習近平は太子党からも敬遠されるのか
 太子党開明派の筆頭・胡徳平との友情も決裂
 炎黄春秋事件とは
 太子党内でも孤立する習近平
 プチ文革時代が始まる

第二章 戦争は勃発するのか
 南シナ海有事に備えよ
 一触即発! 東シナ海上空でドッグファイト?
 「いよいよ倭寇がやって来るぞ!」
 いま日本人が知るべき「対中国防衛の最前線」
 東シナ海上で軍事挑発をする中国軍艦
 自衛隊の反応や力量を探るための軍事挑発
 いま南シナ海で起きている現実とは
 中国の南シナ海軍事拠点化の真相
 七〇年代から始まっていた南シナ海軍事進出
 「中国は違法行為」と非難したハーグの国際仲裁裁判所
 米国主導の国際秩序に対して宣戦布告
 南シナ海有事の現実味とは
 中国は本当に戦争する気があるのか
 強大な軍事力と経済力を持つ国が新しいルールメーカー
 習近平の軍制改革とは何か
 兵力三〇万人削減という大リストラ
 軍区の解体とリストラで陸軍の不満は爆発寸前
 なぜ習近平はそんなに戦争をしたがるのか
 軍のしきたりに無知だった習近平
 習近平はフルシチョフに似ている
 知っておくべき習近平の外交感覚
 きわめて強引な対日姿勢
 尖閣諸島周辺でのロックオン事件
 すぐそこにある戦争リスク

第三章 経済は崩壊するのか
 二〇一七年、中国版サブプライム住宅ローン危機
 中南海〝南北戦争〟が勃発
 強引なGDP目標値に激怒した李克強
 株価乱高下の責任も李克強なのか
 「市場ルールは政府によってレイプされた」
 「習近平 VS 江沢民・曾慶紅」の権力闘争
 人民日報社説の〝李克強たたき〟
 習近平政権の経済ブレーンは誰なのか
 シーノミクスとは「トップダウンの国家資本主義」
 国有ゾンビ企業が中国経済迷走の元凶
 中国経済回復の見込みは一切なし
 リコノミクスの失策とされたゴーストタウン問題
 「中国未来のマンハッタン」天津はいま……
 天津大爆発事件の真相とは
 なぜこんな杜撰な都市開発が放置されてきたのか
 恐るべき中国債務リスクの増大
 銀行の異常すぎる不良債権の額とは
 企業債務の拡大とシャドーバンキングリスク
 AIIBと一帯一路構想の行き詰まり
 人民元の暴落はもうすぐそこだ 193
 世界恐慌の引き金になる日

第四章 中国のメディアは死んだのか
 メディア・知識人への弾圧が始まった
 文化大革命の手法で大衆を動員・独裁を強化
 文革礼賛コンサートの怪
 習近平引退を勧告した無界新聞事件
 『南方週末』の壊滅
 『炎黄春秋』も弾圧
 七・〇九人権弁護士狩り事件
 香港を絶望に突き落とした銅鑼湾書店事件
 林栄基が告発する銅鑼湾書店事件の真相
 官僚・知識人の死が急増
 NGOの支援を受けたストライキが多発
 ネットで知識を得て連帯する新世代農民工の台頭
 今も続く烏坎村の乱は何を意味するか
 言論・人権の弾圧リスクは長期の混乱を招く

第五章 中国 五つの未来シナリオ
 習近平の長期独裁体制を阻むもの
 習近平の引退と新世代の台頭
 可能なら避けたいネガティブシナリオ
 絶対に避けたい「赤い帝国」の世界支配
 日本は尖閣諸島の実効支配を絶対に手放すな
 中国の漁民を使った尖閣奪還奇襲計画
 日本が尖閣を半世紀以上実効支配すれば……
 尖閣諸島の地政学的な重要性とは
 〝日本人スパイ〟逮捕事件が続発する理由
 日本人への警戒感をあおる習政権下の報道
 習近平の権力闘争に巻き込まれる日本人
 「日本は中国にとって北京ダックと同じで三度おいしい」
 思想や信念のない中国人とガチョウの群れ
 G2時代あるいは米中太平洋分割管理への野望
 チャイナリスクを回避し、中国人とうまく付き合う方法
 忘れてはならない中国の国防動員法

あとがき
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福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。共著も多数。



yahgooニュース BEST TIMES 10月23日(日)0時0分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161023-00003504-besttimes-bus_all

経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発
日本人が知っておくべきチャイナリスク2017 衝撃の真実!!

 20日訪中したドゥテルテ大統領を、終始圧倒していたと言われている習近平主席。
 中国はフィリピンに多額の経済支援をする一報、南シナ海問題に関しては棚上げを決めさせたという。
 党内序列ナンバー1の習近平主席はもちろん、ナンバー2の李克強首相、そしてナンバー3の張徳江全人代常務委員長も、ドゥテルテ大統領と次々と面談するといった異例の厚遇。
 ドゥテルテ大統領はまるで弱みを握られたように習近平中国のペースに完全に乗せられてしまった形だ。

 一方、中国の国内情勢は激しさを増している。
 共産党内の権力闘争、経済崩壊の危機、また言論統制をはじめとした社会不安と暴動の可能性……。
 米国との南シナ海問題をはじめ、東シナ海問題も余談を許さない緊張状態が続いていは変わらない。
 来る2017年は、中国の今後の行方を決する「チャイナリスク」が暴発するのではないか、と警告を発しているのが中国専門ジャーナリストの福島香織氏だ。

 福島氏の最新のツイートでも以下の通り指摘している。
 「このドゥテルテ訪中は、アジア太平洋秩序を大きく転換させるターニングポイントとなると、米国の外交誌にもかいってあったが、そのとおりだと思う。
 日本よりも中国を先に訪問した時点で、中国の外交勝利であったともいえる。
 王毅さんは、次の人事で国務委員になれるかもね。」

「帝国」という言葉の定義は、皇帝の統治する国という意味のほか、小さな国や民族を含む広大な領域を事実上支配し、世界に影響力を与える強大な国家という含意がある。
 その広大な影響力、支配力を維持する鍵は、軍事力(とくに海洋覇権)、経済力(貨幣覇権)、そして最近は文化・メディア・情報発信力(文化覇権)ともいわれている。
 この三つの分野で世界を制することは、すなわち世界の秩序を制するもの、世界のルールメーカーとなることができる。

 第二次大戦後から今に至るまで曲折はあるものの、世界のルールメーカーは戦勝国連合の国連常任理事国であり、事実上の米国といっていい。
 だから、米国に皇帝はいないが、現代の帝国といわれてきた。
 近年、この国際秩序と米国のルールメーカーとしての地位が揺らぎはじめた。震源地の一つはイスラム圏だが、もう一つが中国である。

 彼らは、この米帝国に挑戦し、自らの唱える秩序、ルールが支配する地域を広げようとしている。
 日本の安全保障や経済や未来に関わるのは、間違いなく、タイトルに示した「赤い帝国」中国である。
 中国はまぎれもなく、今の段階で、軍事、経済、文化において少なからぬ民族や国を事実上支配し、世界に影響力を与える帝国となった。その膨脹スピードは習近平政権になって加速している。

 この文(『赤い帝国・中国が滅びある日』まえがき)を執筆中の二〇一六年一〇月一日、中国の人民元がIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)に五番目の通貨として加盟した。
 これは『通貨戦争』(宋鴻兵著 中信出版)や『貨幣覇権戦争』(王権著、新華出版)といった書籍が中国で大ベストセラーになる二〇〇七年ごろから、中国が切実に望んでいた人民元の国際通貨への第一歩、米ドル基軸体制に挑戦し貨幣覇権を打ち立てるという野望の第一歩と位置付けられる事件だろう。

 国際基軸通貨となって、その通貨量の強弱を使ってグローバル資本市場の盛衰を主導し、他国の内部の富の分配から政権の交代までに影響力を持つ。
 そうなれば世界の技術と人材を集めることができ、世界一の軍事力とソフトパワーを併せ持つ世界の秩序の中心となることができる。
 まさしく今の米国がそれだ。
 この米ドル基軸体制に立ち向かうものは、世界最大の(潜在的)市場を誇る中国の人民元であるべきなのだ。
 いつか、あの赤い紙幣が世界の貨幣覇権を奪うのだ。……というのが中国の偽らざる本音だろう。

「赤い帝国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め太平洋進出を意識できるまでに強軍化をはかり、GDP規模世界第二位の経済大国として人民元を国際通貨入りさせることに成功した。
 文化覇権は一番難航しているが、それでも習近平政権の庇護を一番強く受けている万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。
 通貨の強さは軍事に裏付けられ、文化の強さは通貨に裏付けられる。
 この三つの覇権は三つ巴のように相乗効果を持って中国の野望の推進力となっている。
 日本人の中には、中国よりも米国に反感を持つ人たちも少なくないが、私はこの「赤い帝国」のほうにより脅威を感じる。
 なぜなら中国のいま行っている思想統制や言論弾圧、人権弾圧は世界でも屈指の激しさであり、法治の下の平等などは存在しない。
 中国の価値観とルールに従わねばならない日を想像するとぞっとしないか。私ならば、この「赤い帝国」の野望を阻みたい。



レコードチャイナ 配信日時:2016年10月26日(水) 14時30分 如月 隼人
http://www.recordchina.co.jp/a153381.html

<コラム>習近平政権、腐敗撲滅をあくまで徹底、
来年の党大会向け権力闘争激化の予感

 新華社などによると遼寧省で21日、新たに選出された省人民代表大会代表(省議会議員)の資格が有効と承認された。
 同議会ではこれまでに、454人の資格を取り消した。
 中華人民共和国始まって以来の異常事態だ。

 資格取り消しの理由は、「議員の座をカネで買っていた」。
 報じられた数字を元に計算すれば、遼寧省人民代表大会では前回選出の議員のうちの75%が「クビ」になった計算になる。

 中国は全国人民代表大会(全人代=国会)の議員を省人民代表大会が、省人民大会の議員を省の下にある市(地級市)の人民大会などが選出する制度だ。
 21日までに省内各地で選出された議員447人が、省人民大会の準備チームにより、資格を承認された。

 遼寧省人民代表大会は、新たな議員を選出することで、これまで「問題なし」とされていた議員143人を合わせて594人の議員が資格保持者となり、議会としての機能を回復した。
  
 報じられた数字を元に計算すれば、遼寧省人民代表大会では前回選出の議員のうちの75%が「クビ」になった計算になる。
 同事態は習近平政権が強力に進める綱紀粛正の一環として表面化した。
 習政権は「腐敗撲滅のためなら、建国以来の異常事態も辞せず」との姿勢を示したことになる。
 習政権が腐敗撲滅に力を入れている主な理由は2つある。
★.まず「大義名分」としては、「全国・各分野に蔓延する腐敗を解消させないと、民意が共産党から離反する」ことがある。
★.もう1つの目的は、政権基盤の安定化だ。
 前胡錦濤政権時代、長い間にわたって「次期政権担当者」とみなされていたのは、李克強氏だった。
 李氏は当時の胡錦濤主席・温家宝首相の「一番弟子」といった存在だからだ。

 しかし2007年10月の共産党大会で、習主席は中国共産党中央政治局常務委員に就任した。
 名簿上の順列は同時に就任した李克強氏よりも上だった。
 習氏はその後、国家副主席、中央軍事委員会副主席にも就任し「次期リーダ」の地位を確実にした。
 習近平氏という「ダークホース」の出現は、「李克強政権」の誕生には反対派閥の反発が大きすぎ、党長老らのさまざまな思惑が絡んだ妥協の産物だったとされる。
 それだけに、習主席は2012年秋に党総書記に就任後(国家主席就任は13年3月)、権力基盤を急速かつ強力に掌握する必要があった。
 そこで国民の支持を得られ、党内でも表立っての反対がしにくい「腐敗撲滅」を徹底的に進めることを決意したということになる。

 当初は、腐敗傾向が強いとされる江沢民元主席につながる人物の摘発が目立った。
 しかし、「団派」と呼ばれる胡錦濤前主席につながる人脈に対する摘発事例も出るようになった。
 習主席は、「これまでの親分の傘の下にいても、守ってもらえるとは限らない」ことを誇示して、「あらゆる面で、自分の意向に従って動く」ことを、いわば“恐怖政治”の手法で求めているわけになる。
 ただ、習主席の政権基盤が盤石になったわけではない。
 むしろ逆だ。

 習政権が、腐敗撲滅の要である党中央紀律検査委員会書記に任じたのは、王岐山氏(現・党中央政治局常務委員)だった。
 王氏は実績豊富な経済や金融の専門家で、「綱紀粛正の実働部隊トップ」に抜擢されたのは「サプライズ人事」とされた。
 当初は実績を出せるかどうか、疑問視する声もあったほどだ。
 しかし王氏の指導の下、紀律検査委員会は、蠅(小物)から虎(大物)まで、大量の違反者の摘発を続けている。
 同委員会の発表によれば、習主席が党総書記に就任して以来、摘発者の累計は101万人を超えた。
 そのため、王氏が「極めて大きな実力を得た」との見方が出てきた。
 党重要人物の裏側を知り尽くしたことで、「誰にでも睨みをきかせることのできる存在」になったというのだ。
 事実、2016年3月の全国人民代表大会(全人代)の場でも、王氏が習主席に対して「自分より上位にある人物に対するものとは思えない仕草があった」ということが、注目された。
 つまり、習主席は当初目指した「権力構造の完全一元化」には成功していないとみなすことができる。

 さらに、徹底的な腐敗撲滅に既存層の不満が高まっていることは間違いない。
 その場合「怨嗟(えんさ)の対象」は習主席ということになる。
 現在の状況をもたらしたのは、習主席であるし、仮に反対派が「王岐山降ろし」に成功したとして、習主席が「第2の王岐山」を抜擢すれば、状況は変わらないからだ。

 つまり、習政権は強い権力を手にした半面、水面下における反発も激化させたことになる。
 王氏の存在については、別の懸念材料もある。
 習主席が王岐山氏を腐敗撲滅に専念させたのは、新政権で経済改革の責任者となる李克強主席と王氏では考え方に違いが大きく、経済問題を巡る両者の対立を回避する思惑があったからだ。
 しかし今年(16年)5月以来、共産党上層部では李克強氏の経済政策(リコノミクス)に対する反発も表面化してきた。
 王氏が経済分野に返り咲きたいと意思した場合、党上層部で波乱が生じる可能性は否定できない。

 役職の割り振りを含め、共産党上層部の人事が決定するのは、党大会においてだ。次回の党大会は2017年秋だ。
★.権力基盤の強化を目指す習主席(党総書記)
★.実力と発言力を高めた王氏、さらに、
★.胡錦濤前主席を含め「団派」と呼ばれる派閥をバックとする李首相
という3者の関係には不透明な部分が多くあるが、「腐敗撲滅」と「経済政策の是非」を巡り、共産党上層部で今後1年の間に「複雑な綱引き」が激化することは間違いない。

(10月26日寄稿)




●2016/10/15 に公開
中国・北京の軍の中枢で退役軍人らが極めて異例の抗議デモを行いました。
習近平政権が進める軍の近代化や再編計画は成功しているのでしょうか?
一方、建造中の中国初“国産空母”は周辺国や日本の脅威となるのか!?




【身勝手な大国・中国】



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