2016年10月22日土曜日

絶対権力まであと一歩のプーチン:ロシア 唯一の空母をシリアに派遣 旧式タイプのロシア空母

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 ロシアの空母とはスキージャンプ方式である。
 大丈夫なの。
 空母群ってどのくらいのテクノロジーなのであろうか。


ロイター  2016年 10月 22日 08:02 JST  Peter Apps
http://jp.reuters.com/article/apps-russia-idJPKCN12L0EN?sp=true

コラム:プーチン大統領、唯一の空母をシリアに派遣する理由


● 10月19日、秋の強風とスコールに見舞われる北海を、ロシアが保有する唯一の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は、南の戦場に向かった。写真は17日、ノルウェー沖で撮影された同空母。ノルウェー空軍提供(2016年 ロイター/Norwegian Royal Airforce/NTB Scanpix/Handout via Reuters )

[19日 ロイター] -
 秋の強風とスコールに見舞われる北海を、ロシアが保有する唯一の航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」は、南の戦場へと向かった。
 ロシアのタス通信によれば、15日、同空母に加え随伴艦7隻が、ロシア北方艦隊の北極海での拠点であるセベロモルスク基地を出航した。
 同空母らが地中海に向かうのは8回目だ。
 こうした遠征は、ロシアの海軍力とその影響範囲を改めて誇示しようとするプーチン大統領の戦略の重要な一部となっている。

 だが今回の展開は、これまでとは非常に異なる。
 ソ連崩壊の時期に就役した「アドミラル・クズネツォフ」を軸とする作戦遂行能力を高めるためにロシア政府は過去10年間、かなりのリソースを費やしてきた。
 しかし、米国、フランス、英国、イタリアとは異なり、ロシアは同空母を実戦で用いたことはない。
 ただ、その状況も変化しつつある。
 恐らく最短で2週間以内に、艦上戦闘機Su33とミグ29がアレッポ中心部や他のシリア各地に展開され、前例が破られることになろう。

 あるレベルにおいては、ロシア政府としては、特に空母を使う必要に迫られていない。
 シリア上空で活動する機体を増やしたいのであれば、単に地上配備の戦闘機をシリアのアサド政権派が支配する飛行場に派遣すれば済む話だ。
 同じことを実現するにも、空母と随伴艦を派遣するのでは、多くの点で、はるかに面倒だしコストもかさむ。リスクもないわけではない。
 これまでもロシアの軍艦は憂慮すべきレベルで故障する傾向を見せており、自前のオーシャンタグ(外洋で用いられる曳航用タグボート)を随伴させることも多い。

 ロシア政府は明らかに、特別部隊を数千マイルも遠征させ、数週間ないし数カ月間の軍事活動を行うことにより、米国と同等の能力を誇示したいと考えている。
 ロシアの軍事力の復活を強調するための軍事力行使なのだ。
 米国その他の国にとっては、シリア情勢の解決に向けた政治的な計算がますます複雑になってくるだろう。
 そしてもちろん、北欧の多くの国に対して、ロシア政府は無視できないということを思い起こさせる好機になる。

 空母「アドミラル・クズネツォフ」が過去に北海を航行したときは、意図的に戦闘機などをノルウェーの海底油田プラットホーム近くを飛ばした。
 この威嚇行為により、付近の空域を飛ぶ民間ヘリコプターは着陸を余儀なくされた。
 今回、同空母がスコットランド沖の公海上で空爆の演習を行う可能性があると報じられている。

 英海軍の艦艇は、自国沿岸・イギリス海峡を通過するロシア艦隊の追尾を行うだろう。
 こうした動きは、両国メディアで盛んに報道される可能性が高い。

 ロシア海軍の上級司令官たちは、今回の派遣によって、ロシア各軍の縄張り争いにおける力を高めることを期待するだろう。
 これまでのところ、最近の軍事作戦(過去2年間のウクライナ、2008年のジョージア、チェチェン、今日のシリア)における栄誉の大半は、陸軍・空軍に与えられている。
 今こそ、海軍の力を見せ、それと同時に、本当に耐久力のある空母打撃群を育むために必要なスキルと能力を構築するときである。

 ロシアは2013年以来、シリア沖に海軍艦艇を常駐させており、米国とその同盟国はすでに、装備を一新したロシア海軍の能力と欠陥を厳密に把握しようとしている。
 中国も関心を示すに違いない。
 中国初の空母「遼寧」は、元々はソ連製「ワリヤーグ」、つまり「アドミラル・クズネツォフ」の姉妹艦だからである。

 ロシアと中国の両政府は、米国の空母を排除するための兵器にかなりのリソースを投じてきた。
 実際に、そうしたテクノロジーは、少なくとも独自の空母を運用できるようにするのと同程度に重要だった。
 とはいえ、米当局者は、最新世代の対艦弾道や巡航ミサイルの性能はまだほとんど実証されていないと述べている。

 米国とその同盟国は、敵国空母を排除する独自手段を持っている。
 また数十年にわたり、そうした戦術を訓練してきた経験値も高い。
 米海軍は世界中に広く薄く展開されているかもしれないが、それでも、潜水艦、水上艦、地上配備の航空機のいずれであっても、敵空母の排除に必要な十分な戦闘能力を集めることができた。

 これからはそれも容易ではないかもしれない。
 「アドミラル・クズネツォフ」戦闘群の主目的はシリアにおける地上の標的を叩くことかもしれないが、海上の敵に対する自衛力もそれなりに高い。
 また同艦には多くの対潜ヘリコプターも搭載されていると報じられており、NATO諸国の潜水艦がこっそり接近することは大幅に困難になるだろう。
 ロシア側メディアの報道によれば、「アドミラル・クズネツォフ」戦闘群には、ミサイル巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」の他に対潜艦2艦も帯同している。
 これらの艦を沈めることは可能だろう。
 だが、NATO側の複数の軍艦も道連れになることはほぼ確実だ。

 ロシア海軍の将兵は空母を軸とする打撃作戦には不慣れかもしれない。
 だが彼らは、1982年に英海軍がフォークランド紛争に参加して以来、対艦ミサイル相手の戦闘を唯一経験した海軍である。
 2008年のジョージアとの戦争において、ロシア艦艇の一部とジョージア海軍の艦艇が短時間ながら流血を伴う戦闘を行ったと考えられている。
 戦闘の詳細はほぼ不明のままだが、少なくとも、戦闘に参加した艦艇は比較的小型のものが多かったわりに、双方の犠牲者が多かったという点は明らかである。

 こうした経験はすべて、重要度の高い地上での戦闘、つまりアレッポを中心とするシリアでの今後の戦闘全般に反映されていく。
 すでに米国は、ロシア及びシリアの部隊による攻勢を止めるだけでも軍事行動(少なくとも、航空機数機の撃墜や航空基地を標的とした攻撃が)が必要かもしれないと認識している。
 しかしそれは、ロシア海軍の誇りを賭けたシリア沖での激闘を意味するのかもしれない。
 だからこそ、現オバマ政権であれ次期政権であれ、そうした戦闘はほぼ確実に回避されるだろう。

 ロシア海軍の空母が地中海で攻撃作戦を行うということは、ロシア政府による力の誇示に留まらず、世界の地政学状況をいっそう複雑にする。
 それこそまさに、プーチン大統領が望んでいることなのだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)



ニューズウィーク 2016年10月24日(月)16時10分 アンダース・オスルント(米大西洋評議会上級研究員)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/kgb-1_1.php

絶対権力まであと一歩、
プーチン最後の敵は「KGB」

<ロシアのプーチン大統領の大粛清が続いている。
だが、すべての権力がプーチンのものだと思うのはまだ早い。
旧KGBの将軍たちが、プーチンの行く手に立ちはだかっている>

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は名実ともにロシアの最高権力者だ。
 9月18日に実施されたロシア下院選挙では、彼の与党「統一ロシア」がロシア下院史上最多の議席を獲得し、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を単独で確保した。
 ウクライナ紛争やシリア内戦でも、欧米諸国より一枚上手という印象だ。

【参考記事】プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴

 とはいえ、プーチン政権の安定性を過大評価してはならない。
 今のところロシア社会で目立った抗議運動は起きていないが、2015年の小売売上高は前年比で10%減、2016年も5%以上減る見込みで、国民の生活水準は下降の一途。
 それ以上に政権の不安定化につながる真の火種は、治安組織をめぐる内部闘争だ。
 プーチンは自身の権力基盤を固めるべく、昨年から治安組織や政権内の有力者を相次いで交代させ、大幅な世代交代を図ってきた。
 ただし、プーチンと同じKGB(旧ソ連国家保安委員会)出身の60歳代の上層部は現在も治安組織で幅を利かせており、プーチンの行く先に立ちはだかっている。

■スターリンの大粛清を彷彿

 2000年の大統領就任以来、プーチンはKGBや地元サンクトペテルブルク出身の長年の盟友に対しては極めて義理堅く接してきた。
 しかしそれはもう過去の話だ。
 今やKGB出身の有力な側近は、次々に辞任や解任に追い込まれている。
 ウクライナに移住したロシア人ジャーナリストのエフゲニー・キセリョフは、プーチンの動きを旧ソ連時代の1937年にヨシフ・スターリンが主導した「大粛清」になぞらえた。
 つまり、KGBやサンクトペテルブルクの無名時代からプーチンを知っており、彼の上から物を言える側近は、表舞台から退けられているのだ。

【参考記事】ロシアの新たな武力機関「国家親衛軍」はプーチンの親衛隊?
【参考記事】【拷問】プーチンが牛耳るウクライナ東部で捕虜の身に起こったこと

 一連の人事の皮切りは2015年8月、国営の「ロシア鉄道」総裁だったウラジーミル・ヤクーニンを解任した時だ。
 今年2月には、2014年のソチ冬期五輪で巨額の融資を行なったことで知られるロシア開発対外経済銀行のウラジーミル・ドミトリーエフCEOをクビにした。
 今夏は、プーチンと最も親しい側近の一人だったビクトル・イワノフがロシア連邦麻薬取締局の長官を解任され、同局は組織改編で廃止された。
 連邦警護局長官のエフゲニー・ムロフも排除された。
 8月には、プーチンの最側近と目されてきたセルゲイ・イワノフを大統領府長官の職から解任し、運輸・環境問題の大統領特別代表に事実上降格した。

【参考記事】プーチンをヨーロッパ人と思ったら大間違い

 代わってトップに就任したのは概して40代半ばの実務能力に秀でた官僚で、多くが治安組織から引き抜かれた。
 強硬なナショナリストもなかにはいるが、ほとんどは慎重かつ有能な実務官僚で、新たな大統領府長官となったアントン・ワイノはその典型だ。
 プーチンは今や、アドバイザーより管理能力に長けたエグゼクティブを好んでいるようだ。

 職を追われた多くの政府高官が汚職に絡んでいるとされるが、一連の交代劇は反腐敗キャンペーンではない。
 汚職で最もトクをしたはずのプーチンの旧友らはいまだに無傷のままだからだ。
 プーチン流人事で憂き目を見たのは、治安組織の上官や成果に乏しい国有会社の管理職など、権力階層の中でも下層部に当たる。

■KGBを復活させる

 ロシアの治安組織は4月以降、1991年に当時のボリス・エリツィン大統領がソ連崩壊に伴いKGBを分割して以来、ロシア史上最大の組織改編を進めている。
 ロシアの日刊紙「コメルサント」によると、プーチンには旧KGBを復活させ、分割された各々の治安組織を「MGB(国家保安省)」として新たに発足させる思惑だという。
 第二次大戦後のスターリン政権下でも同じ名称の組織があった。
 KGBの後継機関であるFSB(連邦保安庁)を母体に、
 一部で任務が重複するFSO(連邦警護庁)と
 SVR(対外諜報庁)を統合し、
 MGBが設立される見込みだ。

 別のロシア紙は、治安組織の再編がさらに進めば憲法改正を伴うと指摘した。
 現在ロシアではすっかり悪者扱いのミハイル・ゴルバチョフ前大統領が1990年3月当時に設置した大統領職を廃止し、ロシア帝国時代の称号に置き換えるのが今のトレンドだ。
 「ロシア皇帝」と名乗るとさすがに目立ちすぎるだろうから、
 一つの案は、大統領府と連邦安全保障会議を国家評議会に統合し、プーチンをそのトップに据えることだ。
 そうなれば、国家評議会はポリトビューロ(ソ連の共産党政治局)を刷新した組織になる。
 国家評議会議長になったプーチンには任期が適用されなくなり、権力の座に留まり続けることができる。

 仮にプーチンに異論を唱えることができる国家機関があるとすれば、それは現代ロシアで最もポリトビューロとの共通点を多く持つロシアの治安組織だ。
 今年になって、プーチンは安全保障会議から3名のメンバーを外した。
 全員がKGBでの勤務経験者だ。
 プーチンが後任に選んだのは、プーチンの信頼が厚い政治アドバイザーであり次期ロシア下院議長にも指名したバチェスラフ・ボロージンと、前述のワイノだ。

 排除されつつある古い顔触れの中でもプーチンの明らかなお気に入りは、彼の警護責任者を長年務めたビクトル・ゾロトフ上級大将だ。
 4月には、新たに創設した大統領直属の治安部隊「国家親衛隊」の親衛隊長に任命、閣僚級ポストを与えた。
 さらに4月5日に開催された連邦安全保障会議で、ゾロトフを終身メンバーに加えた。
 ところがその6日後、何の説明もなく決定は取り消された。

■透けて見える内部闘争

 連邦安全保障会議の公式ホームページは決定取り消しの事実を認めており、終身メンバーが集まってほぼ毎週開催される会議の写真にゾロトフの姿は映っていない。
 それにも関わらず、プーチン率いるロシア政府の公式ホームページは4月以降、ゾロトフは終身メンバーであるという立場を示しており、双方の主張は矛盾したままだ。
 対照的に、大統領府長官から降格されたはずのセルゲイ・イワノフは同メンバーに留まっている。
 国家最高機関に関わるメンバーの地位や所属について、政府所属の2つの公式ホームページで相反する見解を長期にわたり示し続けるというのは、ロシアでは極めて異常な事態だ。

 プーチンは圧倒的な優位にあるとはいえ、国内で無敵というわけでもなさそうだ。

The article first appeared on the Atlantic Council site.



CNNニュース 2016.11.15 Tue posted at 09:53 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35092169.html

ロシア戦闘機、空母への着艦に失敗し墜落 シリア沖

(CNN) 地中海のシリア沖で、ロシアの空母への着艦を試みていた同国のミグ29戦闘機が海上に墜落したことが15日までに分かった。
 ロシア国営タス通信が報じた。

 タス通信がロシア国防省の話として伝えたところによると、ミグ29の操縦士は空母から数キロの地点で緊急脱出し、無事に救助されたという。
 ロシア国営メディアのスプートニク通信は国防省の声明を引用する形で、技術的な問題が事故の原因になったと伝えた。
 墜落が起きた日時は不明となっている。

 ソビエト時代の空母を含むロシアの艦隊は先月に北海を出発。
 英国沿岸に沿って航行し、12日にシリア沖に到着していた。
 ロシアはシリアにおける内戦で同国政府の軍事作戦を支援している。
 ロシア海軍は出航時に声明を出し、同艦隊の航行について「世界の海洋で重要な位置を占める海域で海軍の存在感を確保するのが目的だ」と言及。
 海上交通などロシアの海洋経済活動の安全を確保し、海賊や国際テロリズムといった新種の現代型脅威に対応するのが主眼になるとの見通しを示していた。
 ただ、軍事情報誌ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーの編集者は先月、CNNに対し、ロシア艦隊のこうした動きは「力の誇示であり能力の誇示だ」と指摘。
 「攻撃任務という点では、ロシアはシリア国内に既に存在する陸上拠点の航空機でも同じくらい容易に任務を遂行できた可能性がある」と述べていた。




【身勝手な大国・中国】



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