2016年10月9日日曜日

北方領土問題で急接近するロシアと日本(2):「3島返還論」を一蹴 平和条約締結には国境が明確に確定しなければならない

_
● 北方領土に関する日ロの立場=2016年9月【時事通信社】

  平和条約を締結するためには「国境が明確に確定」しなければならない。
 それができない状況での平和条約などありえない。
 不確定要素を含んだ平和などというものは地雷の上での握手みたいなもので、バカバカしい限りになる。
 どちらがどれだけ譲歩して国境を確定すののか、が今回の階段の焦点になる。

★.ロシアが2島返還でごり押しするなら、日本がソッポを向くしかない。
★.同じように日本が4島返還にあくまでこだわるなら、ロシアがソッポを向く。

 「双方一島損」ではないがどちらも損をして納得することが、求められる。
 国境を確定するということは「以後、問題はない」ということである。
 そうしてはじめて進展する。
★.2島でまず合意して、残る2島は今後の交渉に委ねる、
といった交渉では解決の「カ」の字も出てこない。
 火種をもったままになり、とても平和条約にまでは至らない。
 これでは永遠にまとまらない、ということである。
 バカバカしい案としかいいようがない。
 
 政府としては2島先行返還説を煽っておいて、3島返還で落とす、というところだろう。
 「4島返還では70年経ってもこの問題は解決できない」と国内に暗示し、
 同じように2島返還でも「70年経っても解決できない」とロシアに述べている
 安倍さんとしてはこの問題を自分の任期中に解決したいという願望が強い。
 プーチンもおなじように、プーチン施政下でロシアの国境をあちこちで確定してきた実績がある。
 国境確定実績のプーチンにとっての最後の山が日本との国境ということになっている。
 どちらがどのくらい譲歩するかの駆け引きになる。
 

日本テレビ系(NNN) 10月11日(火)16時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20161011-00000041-nnn-int

北方領土「何らかの合意に達する」露報道官

 プーチン大統領の来日を12月に控える中、ロシア大統領報道官が10日、北方領土問題について、「遅かれ早かれ、何らかの合意に達するだろう」と解決に前向きな姿勢を示した。

 ロシアメディアによると、ペスコフ報道官は10日、領土問題について、
 「理論的には進展が可能であり、遅かれ早かれ、何らかの合意に達するだろう」
と発言した。
 さらに、日本が進める経済協力を「建設的なアプローチ」と評価し、「我々は正しい方向に歩いている」と、問題の解決に前向きな姿勢を示した。
 一方で、貿易・経済関係の発展を通じた相互関係の基礎が必要だとも指摘した。

 12月のプーチン大統領の来日を前にして、領土問題の解決のためには日本の経済協力が重要だと改めて訴えたものとみられる。



毎日新聞 10月11日(火)18時13分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161011-00000035-mai-pol

<岸田外相>北方領土交渉「幅広いオプションで」

 岸田文雄外相は11日の閣議後の記者会見で、
 ロシアとの北方領土交渉で歯舞群島と色丹島の2島の先行返還論を議論する可能性について
 「(日露間で)立場の隔たりがある中で、幅広いオプションを議論していく」
と述べた。
 一方で「わが国の基本的な方針はまったく変わっておらず、北方四島はわが国固有の領土だ」
とも述べ、引き続き四島返還を求める方針も示した。

 岸信夫副外相は8日の日本テレビのインタビューで「2島先行返還も選択肢か」と問われたのに対し「できるだけ広いオプションの中で解決策を見いだしていく」と発言しており、岸田外相は11日、「岸氏は一般論として当然のことを発言した」と指摘した。

 ただ、岸氏は11日、記者団に対して
 「交渉の最中なので予断を与えてはならないとも述べた」
と釈明した。



ダイヤモンドオンライン 2016年10月11日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授]  
http://diamond.jp/articles/-/104143

日露首脳会談が「負け組同士の歩み寄り」になる懸念


今年12月15日に、安倍晋三首相の地元である山口県長門市で日露首脳会談が行われることになった。
 首相は
 「私の地元である長門市において、ゆっくりと静かな雰囲気の中で平和条約を加速させていく、そういう会談にしていきたいと思っている」
と述べ、ロシアとの関係を「本気」で進展させる決意のようだ。
 当然、首脳会談は「北方領土問題」の解決に向けて動き出すかが焦点となる。

■「前のめり」な経済協力と「不透明」な領土問題

 「北方領土問題」については、さまざまな論者が、「1956年の『日ソ共同宣言』に基づく歯舞群島と色丹島の返還の実行は、それほどハードルが高くない」と予想している。
 両国の議会で批准されているので国際法的拘束力があるし、ロシア国内で「平和友好条約締結問題」(「北方領土問題」とは呼ばれていない)は、日露間の重要問題として広く認識されている。
 ロシア国内で、二島返還の反対論は起きないという見通しがある(北野幸伯『北方領土「2島先行返還」は日本にとって損か得か?』)。
 二島返還による「平和友好条約」調印は、日本がクリミアを含むロシアの現行国境を承認することを意味し、ロシアに大きなメリットがあるとの指摘もある(佐藤優『北方領土に本気で取り組み―安倍首相 ウラジオストク日露首脳会談』)。

 一方、択捉・国後の残り二島の返還については、困難が予想されている。
 日本は「継続協議」としたいが、
 ロシアは択捉、国後はロシア領で最終決着したい。
 ロシアは、「北方領土問題」ばかり持ち出す日本にうんざりしてきた(前連載第18回)。
 二島返還の日露平和友好条約調印で、本当に領土問題を終わりにしたいのだ。

 安倍政権は、今年5月の首脳会談で、ウラジーミル・プーチン大統領に対して「8項目の経済協力分野」を提案している。
 この提案は「絵に描いた餅」になるという懐疑的な見方があるが、筆者はかなり具体的な提案だと思う。
 この連載で紹介した、ロシア・サハリン州の長期経済成長戦略「発展戦略2025」と内容的に一致する部分が多い(第90回)。
 ロシア側のニーズを事前に掴んで打ち出したものと考えられるからだ。

 また、安倍首相が、ロシア経済分野協力担当相を新設し、世耕弘成経済産業相に兼務させて、9月のウラジオストックでの日露首脳会談に同行させたことも、経済協力への本気度の高さを示している。
 既に経済協力の具体案として、「日本シベリア鉄道を延伸し、サハリンから北海道までをつなぐ大陸横断鉄道の建設案」も浮上しているのだ。
 ただ、安倍首相が経済協力に「前のめり」なのが明らかなのに対し、領土問題については、楽観的な見通しはあっても、具体的な動きは不透明だ。
 今回は、日露首脳会談の行方を、両国が抱えている「事情」から考えてみたい。

■ロシアが外交面で抱える4つの弱み

 本連載のロシアについての主張を端的にまとめたい。
 まず最初に、冷戦終結後の勢力圏後退がある。
 地政学を基に、東西冷戦後の長期的観点から見れば、ランドパワー・ロシアはシーパワー・英米によって完全に封じ込められてきた。
 東欧、中央アジアは民主化し、ロシアは遥かベルリンまで続いていた旧ソ連時代の「衛星国」を喪失した。
 いまや東欧は民主主義政権の下で、「EUの工場」と呼ばれる経済発展を遂げている。
 ウクライナ分裂は、ロシアの勢力圏後退という大きな流れの中で、かろうじて繰り出したカウンターパンチ程度でしかなかったのだ(第84回)。

 次に本連載では、ロシア経済の脆弱な体質も指摘してきた。
 ロシアは旧ソ連時代の軍需産業のような高度な技術力を失っている。
 モノを作る技術力がなく、石油・天然ガスを単純に輸出するだけだと、価格の下落は経済力低下に直結してしまうのだ(前連載第18回・p2)。
 実際、現在の長期的な原油価格の下落は、ロシア経済に深刻なダメージを与えている。
 輸出による利益が減少、通貨ルーブルが暴落し、石油・天然ガス関係企業の開発投資がストップし、アルミ、銅、石炭、鉄鋼、石油化学、自動車などの産業で生産縮小や工場閉鎖が起きているのだ。

 三つ目に、欧州との天然ガス・パイプラインのビジネスが、ロシアにとって深刻なリスクになっている。
 通説では、天然ガス・パイプラインのビジネスでは、供給国であるロシアが、需要国であるEUに対して有利な立場になるとされてきた。
 しかし、実際には、供給国と需要国の間に有利不利はない。

 パイプラインでの取引では、物理的に取引相手を容易に変えられないからだ。
 パイプラインを止めると、供給国は収入を失ってしまう一方で、需要国は瞬間的にはエネルギー不足に悩むものの、長期的には天然ガスは石油・石炭・原子力・新エネルギーで代替可能である(第52回・p3)。
 つまり、国際政治の交渉手段として、天然ガスを使うことは事実上不可能で、それをやればロシアは自らの首を絞めることになる。
 ウクライナ危機以降、天然ガスパイプラインは、ロシアの強力な交渉材料ではなく、むしろ大きなリスクとなった。

 最後に、そこでロシアは極東地域の開発を重要視し、中国に接近した。
 そして、価格面で折り合いがつかず10年越しの懸案であった、
 総額4000億ドル(約40兆円)に上る歴史的な天然ガスの供給契約を中国と結んだ。
 しかし、中国とのシベリアにおける関係強化も、ロシアにとって悩ましい部分がある。
 中国が得意とする人海戦術的な進出で、シベリアを実効支配されることを恐れているからだ(前連載第18回)。
 これを回避するため、ロシアは、日本の極東開発への協力をなによりも望んでいる面がある。

■プーチン大統領が掲げる「大国ロシア」は虚構に過ぎない

 ロシアの弱みを書き連ねていくと、違和感を持つ方がいるだろう。
 プーチン政権下で「ロシア大国主義」が復活しているというのが通説なのは承知している。
 だが、「大国ロシア」は、実は虚構に過ぎないのである。

 ソ連崩壊後、ロシア人には様々なコンプレックスが残り、明確なアイデンティティがなくなっている。
 明確な国家的思想もなく、国家を団結させる唯一の路線もない。
 社会はソ連のアイデンティティから、新しいロシアのアイデンティティを探し求めながら揺れ動いてきた(木村汎ら、2010)。

 プーチン大統領は、2000年の就任演説以降「大国ロシア」という言葉を頻繁に使用してきた。
 2000年代前半には、エネルギー価格の高騰もあいまって急速な経済力の回復を実現させたことで、プーチン大統領の掲げる「大国ロシア」は、自信を取り戻したロシアの新しいアイデンティティとなった。

 だが、繰り返すが「大国ロシア」は虚構に過ぎない。
 現在のロシアには、どこかを征服したり、失った領土を再併合しようという国力はない。
 隣国に対する関心はあるがそれも「ソフトに」優位に立ちたいということであって、厳格にコントロールしようとするものではない。
 「大国」という概念は、過去の遺物でしかないのである(トレーニン、2012)。

 それでも、プーチン大統領が「大国ロシア」の虚構を演出しているのはなぜか。
 経済の好調により、国内批判を容易に抑え込めた第一次・第二次政権期(2000~2008年)と異なり、ウクライナ危機以降の経済停滞による国民の不満が広がり、大規模な反プーチン・デモを経験した第三次プーチン政権(2012年5月~)では、国内世論の動向に従来以上の注意が必要になっているからだ。
 プーチン大統領は「大国ロシア」を訴え続けることで、国内の保守層・大衆層の支持を確保し続ける必要があるのだ。

■大国の生存圏「ブロック化」の潮流で日本が極東の一島国に戻る懸念

 一方、日本にとって最も悩ましい問題は、中国の南シナ海や尖閣への海洋進出だ。
 地政学的に、ランドパワー(中国)が、海洋に進出してくるのは、シーパワー(日本)にとって最悪の事態である(前連載第64回)。
 しかし、中国の海洋進出以上に、深刻な問題がある。
 それは、世界の「グローバル化」から「ブロック化」への変化の潮流である。

 本連載で、「英国のEU離脱」を論じた際、「これまで世界は国家間の『相互依存』の深化に努めてきた。
 だが、これからは、それぞれの国が『生存圏』をどう確立するかを考える時代に変わっていくのかもしれない。
 英国のEU離脱問題は、米国の孤立主義とともに、ジョンソン氏やトランプ氏というポピュリストが騒いでいるだけと考えるべきではなく、大きな時代の転換点を象徴しているのだと考えるべきなのかもしれない」と指摘した(第134回)。

 「生存圏」とは、例えば英国の「英連邦」である。
 英連邦には、資源大国であるカナダ、オーストラリア、南アフリカ、世界で2番目に人口が多く、ハイテク国家としても知られるインドや、マレーシア、シンガポールなど東南アジアの多くの国も含まれる。
 今後「世界の工場」となることが期待されるアフリカ諸国の多くも英連邦だ。EU離脱後、英国は当然、英連邦との関係を固めることになる。
 英国は、単体では人口6000万人の小さな島でしかないかもしれないが、英連邦を1つの経済圏と考えて、関係を再構築すれば、凄まじく巨大な「生存圏」を確保することになる。
 英国は、EU離脱しても生き残る力を持っているのである。

 一方、米国は「シェール革命」によって世界有数の産油国になり、世界最大の石油の輸入国から輸出国に転じようとしている。
 そして、米国内で「ものづくり」を復活させ、米国内に360万人もの新しい雇用を生み出すという。

 米国がエネルギー自給を達成し、製造業を復活させると、国際社会にどのような影響があるだろうか。
 ドナルド・トランプ氏の過激な発言を思い出してほしい。
 「日本から、何百万台もの車が、ひっきりなしに輸入されてくる。
 アメリカは、日本に何か買わせたか?
 牛肉を輸出した、だが日本は買いたがらない。
 これは貿易不均衡だ」 。

 (もし中国などが日本を攻撃したらどうするかという質問に)「アメリカが一歩引いても、日本は自ら防衛できるだろう。
  日本は中国との戦争に勝ち続けた歴史がある。
 なぜ、アメリカは日本を守ってやっているのか?
 ご存じの通り、日米安保条約は心憎い。
 なぜなら、他国がアメリカを攻撃しても、日本はアメリカを助けなくてよい。
 なのに、他国が日本を攻撃したら、アメリカは日本を助けなければならない」。
 一見、荒唐無稽に聞こえるが、本質を突いている部分がある。

 日本の高度経済成長は、端的にいえば、米国が大量の日本製品を買ってくれたからであり、米国が「世界の警察」として日本を防衛してくれたからだ。
 そして現在、世界中の新興国が、米国に製品を買ってもらって成長しているし、米国に守ってもらっている。
 しかし、エネルギーを世界中で探す必要がなくなった米国が、「世界の警察」をやめ、世界中の国からモノを買うのをやめて、米国製品を世界に売り始めたらどうか。
 実は、米国はなにも困らない。しかし、日本など世界の多くの国は、頭を抱えてしまうことになる。

 米国の孤立主義は、トランプ氏だけの荒唐無稽な考えとはいえない。
 米大統領選でトランプ氏のライバルであるヒラリー・クリントン元米国務長官も「TPPに反対」である。
 そもそも、バラク・オバマ大統領も、
 2013年9月対シリア内戦への軍事不介入声明を発表した際、
 「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、 
 中東からの米軍撤退、
 将来韓国からの米軍撤退(公表)、
 2020年から2026年の間に沖縄から海兵隊を含む全米軍撤退(非公式)、
 NATO(北大西洋条約機構)の閉鎖又は欧州中央軍への統合、
 中南米、アフリカ地域からの米軍撤退等々
を打ち出しているのだ。

 英国のEU離脱交渉が、「残留派」だったテリーザ・メイ首相によって行われるように、「ブロック化」の潮流は、トランプやボリス・ジョンソン英外相というポピュリストの煽動と片付けられない、確かな世界的潮流と考えるべきだ。
 そして、巨大な「生存圏」を持つ国が、「ブロック化」に動けば、資源も食料も防衛力も自立できない日本のような国はなすすべがない。
 安倍政権が、ロシアとの関係強化に前のめりになるのは、中国の海洋進出だけでなく、米国も頼りにならず、日本が「ブロック化」の潮流に飲み込まれて極東の一小国に戻ることを恐れているのではないだろうか。

■日露首脳会談は「負け組同士の歩み寄り」か

 結局、日露首脳会談とは、日本・ロシアそれぞれが弱みを抱えている「負け組同士の歩み寄り」のように思える。
 どちらがやや有利かといえば、衰えたりとはいえ、巨大な領土と資源を持って「生存圏」を確保できるロシアだろう。
 二島返還に楽観的な論者が多いが、果たしてうまく話が進むだろうか。

 プーチン大統領の「大国ロシア」のメンツを尊重せざるを得なくなり、「二島返還と平和友好条約への協議開始で合意するだけ」で、経済協力を前のめりに進めることになり、それでも安倍首相が「70年間、動かなかったことを、『わ・た・し』が、動かしました!」と、甲高い声とヘラヘラ笑いで、成果を誇ることになる。
 安倍政権の「いつもの光景」が繰り広げられることになるのではないだろうか。

参考文献
木村汎ら(2010)『現代ロシアを見る眼―「プーチンの十年」の衝撃』NHKブックス
ドミトリー・トレーニン(2012)『ロシア新戦略-ユーラシアの大変動を読み解く』作品社



テレビ朝日系(ANN) 10月13日(木)20時17分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161013-00000058-ann-pol

吉田松陰になぞらえ…安倍総理 北方領土交渉に意欲

 安倍総理大臣は、ロシアのプーチン大統領との会談が予定されている地元の山口県の藩士・吉田松陰になぞらえて、北方領土交渉の進展に強い意欲をにじませました。

 安倍総理大臣:
 「松蔭先生が21回、猛を発するという強い決意を持って今までの発想にとらわれない行動を取っていく。
 松蔭先生は残念ながら21回までいかず、3回目でお亡くなりになったわけでございますが、私もしぶとく、この交渉は続けながら何とか結果を得ていきたいと決意を致しております」

 安倍総理は、尊敬する吉田松陰が「人生のなかで21回、勇猛になり、志を遂げる」と決意していたという故事になぞらえて、粘り強く領土交渉を進める考えを示しました。
 プーチン大統領との首脳会談は、12月15日に山口県で行われる予定です。
 ただ、ロシア側は山口で非公式会談を行ったうえで、12月16日に東京を訪れて公式な会談を行うことを希望しているため、政府間で調整が続いています。



朝日新聞デジタル 10月13日(木)11時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161013-00000035-asahi-pol

「自分たちの時に解決を」首相、
日ロ首脳会談の発言披露

 安倍晋三首相は13日の参院予算委員会で、9月上旬にあった日ロ首脳会談でロシアのプーチン大統領に対し、北方領土をめぐる日ロ平和条約締結交渉について「お互いに責任感を持ち、自分たちの時に解決をするという強い意思を持って交渉を進めていこう」と語ったことを明らかにした。
 自民党の長谷川岳氏の質問に答えた。

 首相は、プーチン氏に対して
 「あなたも、あなたが言っていることは100%自分が正しい、
 そういう確信のもと述べておられるのだろうと思うし、私もそうですよ。
 しかし、お互いがそういう議論を続けていけば、あと70年経ってもこの問題は解決できないのではないか」
と述べたという。

 一方、世耕弘成・ロシア経済分野協力担当相は、ロシア政府に示している8項目の経済協力案について
 「11月にはペルーで(日ロ)首脳会談が予定されている。そこまでには何らかの最初の成果を出したい」
と語った。



毎日新聞 10月14日(金)20時34分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161014-00000115-mai-pol

<自民・山崎拓氏>「北方領土問題、画期的な成果は出ない」

 自民党の山崎拓元副総裁は14日、福岡市での「毎日・世論フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、安倍晋三首相が12月15日に地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談することについて
 「北方領土問題の解決には年月を要する。画期的な成果は出ない」
との見方を示した。

◆:平和条約の締結後に歯舞、色丹2島を引き渡すとの日ソ共同宣言について
 2島の施政権が日本に移れば日米安保条約が適用されるため、ロシアは『除外しろ』と主張する。
 日米関係が大変な事態になる」
と指摘。

◆:日本は4島の帰属確認を主張してきたが、山崎氏は
 2島返還プラスアルファでは国論が沸騰し、内政は危険な綱渡りになる
 私が首相ならば来年1月の衆院解散・総選挙は考えられない」
とも語った。

 北朝鮮の核・ミサイル問題については
 「拉致問題に特化せず、6カ国協議に重きを置くべきだ」
と述べた。



 フォーサイト-新潮社ニュースマガジン 名越健郎
http://www.jiji.com/jc/v4?id=foresight_00190_201609150001

日露「12月山口会談」:「北方領土」と「クリミア」の関係

 9月2日のウラジオストクでの日露首脳会談で、プーチン・ロシア大統領の12月15日の来日が決まり、北方領土交渉は当面のクライマックスを迎える。
 ラブロフ外相は「訪日時に交渉の結論を提示したい」としており、
 ロシア側は解決案を示す見通しだ。
 安倍晋三首相は「新しいアプローチ」に沿って、対ロ経済支援の「8項目」構想を進める構えで、賭けに出たと言える。
 ロシアでは、日本がクリミア併合を承認する引き換えに
 「北方3島」を返還するとの提案も出ており、
12月の山口会談が注目される。

■安倍首相の「突出」

 ウラジオストクでは、対露経済協力に前のめりになる安倍首相の突出が目立った。
 東方経済フォーラムの講演で、極東開発、医療支援、中小企業育成など「8項目」協力を強調し、
 「(極東開発の)プーチン大統領の夢は私の夢だ」
 「日露の経済は競合関係になく、見事に補完する間柄だ。
 両国民が明るい未来を託せるようすべてやっていこう」
と述べた。

 首相に同行した財界首脳らも、
 ヤマル半島への液化天然ガス(LNG)基地建設への融資、
 東芝によるロシア郵便システムの近代化協力、
 マツダ自動車のエンジン工場建設
など大型案件の覚書に調印した。

 安倍首相が対露経済協力相を新設し、世耕弘成経済産業相に兼務させたことも異例だ。
 1980年代の「日中友好」時代、通産省や外務省が音頭を取って空前の援助や投資を狂ったように中国に注いだ時も「対中経済協力相」などなかった。

 これにはロシア側も驚いたようだ。
 独立新聞は「従来、日本はまず領土問題を解決し、その上で経済協力という原則だったが、今や、力点は経済協力に置かれた。
 その目的は、相互信頼の雰囲気を築き、それによって領土問題を解決させることにある」と書いた。
 コメルサント紙も
 「特定の国を対象にした閣僚が日本政府に置かれたことはなかった。
 日本にとって、米国や中国との貿易はロシアよりはるかに多いが、同様のポストはない。
 対露政策の真剣さの証明だ」
と評価した。

 ただし、昨年の日露貿易は前年比で30%減少、今年上半期もさらに同36%減少しており、原油安などロシアの経済危機を受けて投資環境は悪化している。
 「8項目協力」の成功は民間が動くかどうかにかかっており、現状では日本企業も本格進出をためらうだろう。

■ロシアは「自転車操業」

● 北方領土に関する日ロの立場=2016年9月【時事通信社】

 2日の首脳会談は3時間におよび、うち55分間は安倍、プーチン両首脳が2人だけで会談した。
 その内容は公表されていないが、安倍首相は記者団に
 「今までの発想にとらわれない新しいアプローチに基づく交渉を進める道筋が見えてきた」
 「平和条約交渉の手ごたえを強く感じた」
と述べた。

 これに対し、プーチン大統領はセミナーで、
 「安倍首相が提案した8項目協力は、われわれがとるべき唯一の正しい道だ」
 「ロシアと日本は貿易や経済協力を発展させ、地域安全保障を強化するパートナーだ」
とし、マツダのエンジン工場設置やエネルギー協力を高く評価した。

 しかし、北方領土問題については、
 「解決策を探るのはむろん簡単ではない。
 日ソ両国は56年に問題を完全に解決させる合意を結び、両国議会で批准されたが、のちに日本は履行せず、ソ連も凍結させた」
 「この問題の解決には高いレベルの信頼を必要とする。
 双方が負けたとみなさないような解決策が必要だ。
 それは容易ではない」
と述べた。

 また5日の中国・杭州での記者会見では、
 「ソ連は長く粘り強い交渉の結果、56年に日ソ共同宣言に署名した。
 そこには(歯舞群島と色丹島の)2島を引き渡すと書いてある」
と述べ、明記されていない国後島と択捉島は領土交渉の対象外との考えを表明。
 2島の返還方法や主権の取り扱いが検討課題だと述べた。

 これらの発言は従来の主張の繰り返しであり、帰属問題に踏み込むことはなかった。
 ウクライナやシリア問題、経済危機、18日の下院選などを抱え、
 「自転車操業」のプーチン政権はおそらく、領土問題の最終案をまだ決めておらず、これから詰めるとみられる。

■「クリミア・クリル交換論」

 ロシアのメディアでも領土交渉の行方が注目されているが、興味深いのが雑誌『プロフィール』のアレクセイ・ミハイロフ副編集長による「クリミア・クリル(千島)交換論」だ。
 コメンテーターとして活躍中の同副編集長はラジオ局・モスクワのこだまのブログで、
 「ロシアが国際的孤立から脱却するには、G7(主要7カ国)で最も攻めやすい日本に、クリミアがロシア領であることを認めてもらうことだ。
 日本が何らかの形でロシアのクリミア併合を承認するなら、4島のうち3島程度を与えても惜しくはない」
と書いた。

 副編集長はまた
 「ロシアは5つの領土係争地のうち、
 2004年に係争地を半分中国に譲り、
 10年にはバレンツ海の係争海域をノルウェーと折半した。
 14年にクリミアを完全に奪ったが、その代償としてクリルを割譲できる」
とし、ロシアにとって領土が死守すべき聖域ではないことを指摘している。

 この構想が個人的考えか、それとも政府の考えを反映しているのかは不明だが、ウクライナ領クリミアを一方的に併合したことで、ロシア人の間に後ろめたさ、または余裕が生まれていることを示唆している。
 この発想は、プーチン大統領自身も抱いている可能性がある。

 あるロシアの学者は2年前、筆者に対し、
 「ロシアにとって、クリミア半島の歴史的、文化的、経済的重要性は北方領土の百倍以上だ」
と述べていた。
★:クリミアは北方4島の面積の約5.4倍。気候は温暖で日照時間が長く、農業や観光に適し、200万人が居住。
 ロシア文学の重要な舞台になった。
 これに対し、
★:北方領土は気候は苛酷で日照時間が短く、漁業以外に産業潜在力はなく、住民も1万7000人程度だ。
 プーチン大統領はクリミア併合演説で、クリミアを「ロシア固有の領土」と称したが、
 北方領土は絶対に「ロシア固有の領土」ではない。
 クリミアを獲得したことで、相対的に北方領土への執着が弱まったと思われる。

 ただし、安倍首相はウクライナ危機以降、「力による現状変更は許されない」とし、ロシアのクリミア併合を繰り返し非難してきた。
 年末までG7議長国の日本がG7の結束を崩すことになるクリミア併合承認はできないだろう。
 これを認めれば、中国による尖閣諸島武力占拠に道を開きかねない。

 他方で、来春のフランス大統領選では、クリミア併合を事実上容認しているサルコジ前大統領がトップを走っている。
 仏次期政権がクリミア併合容認に回る可能性もあり、交渉にあたっては「クリミア・ファクター」を念頭に置くべきだろう。

「3島返還論」を一蹴


●北方領土返還要求全国大会であいさつする安倍晋三首相(前列演壇)=2016年2月7日、東京都千代田区【時事通信社】

 「3島返還論」や「面積折半論」は、かつて麻生太郎外相(当時)らが言及したことがあるが、プーチン大統領は日露首脳会談直前、米ブルームバーグ通信との会見でこれを一蹴した。

 大統領は中国にアムール川の川中島の半分を引き渡したことをきかれ、
 「それは係争地であって、中国と40年間交渉し、ようやく合意に至った。
 中露の高い水準の信頼関係の結果、合意が可能になった。
 日本と同様の水準の信頼に到達すれば、一定の妥協が可能だろう」
としながら、
 「だが、2つの問題には根本的な違いがある。
 日本との問題は第2次大戦の結果生じており、大戦の結果に関する国際的取り決めで規定されている。
 中国との問題は大戦とは一切関係がなかった」
と述べた。

 ロシアは中国やカザフスタン、ノルウェーなどとの技術的な領土紛争を折半の原則で政治決着したが、
 北方領土問題と同様に大戦の結果が絡むバルト諸国との領土問題では一切譲歩しなかった。

 この問題をクリアする方法は、日本が平和条約で「不法占拠論」を取り下げ、いったん4島が合法的にソ連・ロシア領になったことを認めることだ。
 その上でロシアは、56年日ソ共同宣言の文言に沿って、「善意のあかし」として日本に4島を引き渡すと明記すれば、日本側も喜んで受け入れるだろう。

 しかし、プーチン大統領自らが煽った戦勝意識や愛国主義がロシア側の譲歩を困難にしている。

■「2島先行返還」有力か


●標津町(手前)と国後島(北海道標津郡標津町)=2011年2月2日【時事通信社】

 ロシアの専門家の間で最も多いのが2島返還論だ。
 極東研究所のパブリャチェンコ研究員はモスコフスキー・コムソモーレツ紙で、
 「大統領は妥協の必要を強調したが、選択肢は極めて限られている。
 歯舞、色丹の2島なら、4島全面積の7%ながら、島の数では4島の半分ということで、ロシアにとっては敗北の印象にはならない」
と指摘した。

 パノフ元駐日大使も同紙で
 「ロシアは2001年のイルクーツク首脳会談で、2島引き渡しを規定した56年宣言を有効と認めた。
 大統領は15年経って再び56年宣言を交渉の基礎とし、妥協を目指す立場を表明している」
と述べ、日本の世論の変化にも言及しながら、56年宣言を基礎にした解決を訴えた。

 最大野党・共産党のジュガーノフ委員長は「1人の指導者が勝手にロシアの領土割譲を決めることはできない」と大統領をけん制したが、
 ロシアの落とし所は「2島最終決着」であり、2島引き渡しなら世論を説得できるとみなしているようだ。
 プーチン大統領がクリミア併合時に、クリミアの帰属を変えたフルシチョフ政権を糾弾したように、56年宣言に調印したフルシチョフ政権に責任を転嫁することができる。

 しかし、2島だけなら60年前に決着できたわけで、日本にとっては外交敗北となる。
 戦後一貫して「4島返還」を要求してきた自民党政権の安倍首相は受け入れないだろう。

 そこで出てくるのが、歯舞、色丹を先に返還し、国後、択捉については継続協議とする「2島先行返還」のシナリオだ。
 安倍首相は「2島先行返還」の提唱者である鈴木宗男元官房副長官と会談を重ねており、共同通信もこの構想が再浮上していると報じた。

 しかし、いったん2島を引き渡せば、ロシアは国後、択捉の帰属交渉にはほとんど応じず、日本は両島を放棄するリスクが高まる。
 経済協力に打って出た安倍首相の賭けがどう出るか、結果は12月に出る。




【身勝手な大国・中国】



_