どう見ても中国が没落するのは目に見えている。
その中心は経済状況である。
マルクス経済学のセオリーでも成長のピークを過ぎた経済は3年で1%づつ落ちていくという。
ということはあと20年もすれば成長率0%になるということでもある。
共産党を支えているのは経済の成長神話である。
経済成長が達成されるから共産党は正しい、という論理である。
そのためにGDPはそれに伴う率を達成せねばならず、そのためには経済は成長路線を邁進するしかない。
構造改革などして成長の足を鈍らせたら共産党の正統神話は即崩壊する。
あらゆる側面で過剰生産をせねばならないし、それに伴う環境汚染には目をつぶらねばならない。
お札を刷りまくらねばならず、赤字高速鉄道は伸延させねばならず、ゴーストタウンを造り続けねばならず、大気汚染と水質汚染を継続せねばならず、売れない鉄を生産しつづけなければならない。
もちろんこんなことをしても何もならないことは共産党員ですら知っている。
でもそれしか道がない。
共産党が潰れるとき、その責任をとりたくない、最後の皇帝に名を連れねたくない、というのが本音に近い。
誰も手を挙げたくない、そんな中で習近平が手をあげた。
よし、彼に託そうとなる。
習近平が権力を自分一人に集中させようとするとき、周辺はホットしている。
彼が最終的責任を背負ってくれるならそれに任せるのが一番だ、彼にゲタを預けてしまえ、である。
そして、事があったときにどう逃げるかをまず優先的に考えるべきだ、ということになる。
あるいは火の粉が降りかかったとき、その被害をいかに小さくして、それを習近平に着せてしまうかである。
どうやろうとも中国共産党は長くは持たないことがわかっている以上、誰をスケープゴートにするかだけである。
名乗りでて、しゃしゃり出てくれた習近平に拍手喝采というわけである。
もし彼がうまくやれれば『中興の祖』になる。
『
Wedge 2016年11月2日 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)
ぶっちゃけ中国の景気は良いのか悪いのか?
中国の景気の動向(パート1)
今月も例によって4泊4日の弾丸出張で中国大陸を回った。
杭州の希土類会議、上海の鋳造工場の見学、宝鶏のチタン工場の見学商談、西安のレアメタル工場との長期契約面談が目的の駆け足出張であったが今回の「山師の手帳」では直近の中国の経済動向について書いてみたい。
中国経済は過去20数年にわたる社会資本の蓄積の結果、確かに交通インフラ、産業インフラ、住宅建設、などは表面的には整ったが、僕にしてみると失礼な表現だが、まだまだ促成栽培の「張子の虎」に見えて仕方がない。
環境問題は後回しで技術革新や研究開発も基礎研究ができている訳ではない。
食の安全、金融システム、社会保障制度などの無形の社会資本の改善点はいくらでも残っている。
中国には多くの経済指標が発表されるが、その統計の取り方や地域別の差異を考慮すると7割から8割程度の信用度であると云えば失礼だろうか。
■李克強指数って何のこと?
李克強首相自らが中国のGDP指数は信頼できないといっているが、中国の経済指標の中で「鉄道貨物輸送量」「銀行融資残高」「電力消費」をそれぞれ25%、35%、40%の比率でその推移を見て経済の動向を判断しているというのだ。
つまり、恣意性なく経済動向を読みとるためには「鉄道貨物輸送量」「銀行融資残高」「電力消費」の推移はごまかしようがないということなのかもしれない。
この指標によると、2013年初めから中国の経済成長の減速は明らかである。
中国国家統計局(CEIC)の資料によると、中国の実質成長率は前年比で2013年度は7.6%~7.9%、2014年度は7.1%~7.5%、2015年度は7%が6.7%まで下落、2016年度は6.7%を維持するのが精いっぱいである。
つまり中国の経済成長の伸び率は4年連続で減速しているのは間違いない。
■最近の交通事情で景況を計る
「鉄道貨物輸送量」の代わりといっては何だが、今回は中国の交通について「定点観測」をしてみた。
ともかく、中国ではどこに行っても一日中、飛行機も新幹線も一般列車も深夜バスも席が取れないほど混雑しているのはなぜだろうか?
素朴な疑問である。
今回の出張では、上海から杭州まで190キロを深夜バスで、杭州から上海経由西安まで1740キロを新幹線で、西安から宝鶏市までは2時間のマイクロバス移動である。
都合、3800キロの中国横断の旅である。
3800キロといえば北海道から鹿児島まで行って更に東京まで戻ってきた距離である。
おまけに上海から西安行きの飛行機が飛ばなかったので新幹線に替えたが、待ち時間を合わせて移動時間は14時間もかかり、いささか疲れた。
上海空港でも西安空港でも杭州の鉄道駅でも乗客でごった返しており、今回も中国のエネルギーに圧倒された。
これだけ多くの人々が中国大陸を縦横無尽に移動するのだから凄い経済効果には違いない。
見たところ旅客たちは、商用、家族旅行、故郷に戻る旅客といったところだろう。
大きな荷物を運んでいる昔ながらの乗客も少なくはない。
上海でも西安でも遠くはウルムチや雲南省まで行く列車が休みなく発着している。
斬新かつ近代的な駅において、荷物を担いだ帰省客で混雑していることには違和感がある。
さて、今回は新幹線の普通席切符が直前で取れず、特等席に乗ったが、まさに中国の格差社会を目の当たりに見た気がした。
新幹線の特等席は5席しかなく、1等席も約30席、その他の2等席が700〜800席くらいはあっただろうか。
そして大多数の人々は新幹線ではなく一般列車で20時間をかけて上海から西安まで行くのだ。
この比率は共産党員と大都市の富裕層と一般庶民と農民の比率ではないかと、初めて乗った特等席に揺られながら考えた。
中国社会は、今やあらゆるところでクラス分けがなされているのだ。
■中国中どこに行っても公共投資・インフラ投資のオンパレード
中国中どこに行っても高速道路は立派で、あらゆる公共建築はピカピカの素晴らしいものばかりである。
例えば今回、僕が上海から西安まで乗った高速鉄道網を例に挙げると、2007年からスタートした和諧号(今回乗った)の名前で親しまれている最優等列車である。
鉄道総延長は12万1000キロに達し、規模では米国に次ぎ世界2位といわれている。
●和諧号(筆者撮影)
国有企業の固定資産投資は
名目GDPの約16%、
インフラ投資の約8%、
不動産開発投資は名目GDPの約8%
を占めている。
つまり国有企業の固定資産投資とインフラ投資(除く電力)と不動産開発投資は名目GDPの約32%を占めたことになるから、
中国のGDPの伸びにおける比率の3分の1は公共投資
という訳だ。
だが、公共投資の拡大は構造調整に逆行する動きであるため、政府が雇用安定を重視するならば見直す必要がある。
来年以降のGDP維持と構造調整のジレンマになるから微妙な問題だ。
公共投資を進めすぎると過剰資本や債務解消のソフトランディングが遅れるという副作用が怖い。
今回は西安の友人たちと「安定成長の維持」、「構造調整」、「改革の推進」という三本の柱からなるバランスの堅持について議論が及んだ。
西安から見た西北5省(新疆维吾尔自治区、甘肃省、青海省、宁夏回族自治区、内蒙古自治区)では大型投資が始まりつつあるという話を聞いた。
雲南、四川は既に始まっているが、西北5省の本格的な開発はこれからである。
さらに先の話をすると
「一路一帯」政策を進めて行けば、中国の未来への布石は永遠に続く
というものだ。
■鉱工業生産は2012年以来ガタガタだ!
●レアアース会議で講演する筆者
業種別の工業生産では自動車は20%以上の伸びで、電力エネルギーでも前年度比7%以上の伸びである。
ところが、鉱工業はまだマイナス成長が続いている。
2016年第1四半期も第二四半期も推定では2%位のマイナスである。
リーマンショック後の景気浮揚策の後始末が、未だに市況の足を引っ張っているのだ。
過剰生産能力、過剰在庫、過剰債務が元に戻るにはさらに数年は必要だろう。
鉄鋼、非鉄、レアメタルと何れも同じ構造で世界市場への影響も無視できない。
毎年10月になるとレアアースの国際会議が行われるが、今年は浙江省の杭州で行われた。レアアースは2010年の尖閣諸島問題から始まった中国政府の輸出禁止による大暴騰を経て2011年の大暴落を経験した。
以来、一貫して市場環境は改善せず2016年も低迷からは脱してはいない。
鉱工業生産についてもほぼ全ての鉱産物が資源不況から脱することなく低迷を続けている。
杭州の国際会議では日本市場と中国市場の協力関係について講演をしたが、市場の回復の要素が見つからないため、2017年度も引き続き厳しい市場予測をせざるを得なかった。
希土類に限らず生産者物価は12年以降今年まで50カ月連続して前年比マイナスで推移している。
政府が市場の統合を指導しても抜け駆けをする業者がいなくならない限り低迷は続くといわざるを得ない。
一方、全般的な中国の製造業の統計では、製造業PMI(購買担当者景気指標)も拡張・収縮の境界となる50%を超えてきており、製造業では今後の予想指数が60%近い水準を回復するなど改善の兆しも見えてきている。
■貿易の動向や対中投融資はどうなっているのか?
中国からの輸出は人件費のコストアップによる中国製品の輸出競争力が低下しているために不振が続いている。
一方、輸入も国内需要の落ち込みから購買力が低下しているために低水準に推移するだろう。
ただ直近の数字で判断する限り2015年度と比較すると貿易額は減少しているが、ドルベースの輸出額では、今年の7-9 月期は同前年期比で6.3%減と、1-6 月期の同8.2%減からマイナス幅が少しだけ縮小した。
特に明るい兆しが見えたのは、今年の前半には欧米からの情報通信や金融業などの分野の投資が拡大したことだ。
総額では前年同期比で約80%の増加を示した。
一方、中国企業の金余り傾向から対外直接投資は同期比53.3%と大幅に拡大している。
■今年の中国経済の動向を総括すると
2016 年1-9 月期の中国経済を総括すると、
消費は自動車販売の好調に支えられて堅調
だったものの、
製造業の投資に勢いはなく、
インフラ投資は息切れ気味
となり、投資の減速傾向に歯止めが掛からなかった。
中国の景気の動向について各分野から見てきたが、そろそろ結論に入りたい。
景気動向は減速基調が続くが、政府のインフラ投資や国有企業の投資拡大が景気の下支えになると予想している。
個人消費では今年の自動車販売の大幅な伸びは、昨年からの購入刺激策が原因だから一過性と考えるべきだ。
仮に景気の下支えのために刺激策が継続したとしても長続きはしないと考えている。
一方、企業債務の過剰感が強いなか、不良債権が急増しているので金融システムの不安定化に繋がるリスクが心配だ。
住宅市場の過熱感はまだ収まりそうにもないが、住宅バブルを抑えるために政府は何らかの手を打ってくると予見している。
小売市場は引き続き好調に推移するが、ネット販売などの新しい市場構造がより競争力のある市場を形成していくと思われる。
民間企業の投資行動は大きな変化はないと予想するが、需要と売り上げの伸びが期待できないことと、債務と設備の過剰感が強まるなかで追加投資の旨味はあり得ない。
他方、国有企業は固定資産の投資やインフラ投資を推進することで景気と雇用の下支えの役割を担うはずだ。
国有企業改革が進まないなかで、民間企業が新たな投資分野を開拓するのは容易ではないため、民間企業の投資動向は引き続き要注意だろう。
2017 年に向けての中国経済は、不透明だが、
公共投資は別にして
「住宅販売・建設の個人消費動向」
「民間企業の投資動向」
「自動車販売の小型車減税の延長案」
の3項目が来年度の景気動向の明暗を分けるのではなかろうか。
景気の先行きは今のところ、下げ止まりとなっているが、2017年に急激に回復することは無理だと考えている。
つまり中国の経済動向は現在、底打ちはしたようだが
今後も「底練り状態」が続くと
予見せざるを得ないのだ。
』
『
Wedge 2016年11月4日 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8104
中国エリートたちの夢「国家資本主義」
中国の景気の動向(パート2)
パート1では、中国の成長目覚ましい交通インフラの話題と、レアメタルなどの鉱工業生産の不振について書いた。
パート2では、個人消費の中でも大口消費である住宅投資と自動車市場とネット販売について深掘りし、「六中全会」を通じて習近平国家主席の掌握した権力と中国のエリートたちの夢についても書いてみたい。
■中国で車が今年に入ってバカ売れしているのは本当か?
今年になって自動車がバカ売れしたのは、昨年10月に開始された小型車減税(排気量1.6L以下)のおかげで、販売に勢いがついたからだ。
上海や西安は当然のことだが、二級都市や三級都市でも交通渋滞がひどい。
中国公安部交通管理局の統計データによると
2016年6月末の自動車保有台数は1億8400万台になった(動力車保有台数は2億8500万台)。
14年の新車販売台数がアメリカに約700万台の差をつけて世界一になるという市場に発展した。
それでも保有台数は人口比でいえばまだまだ伸びしろがあり、今年の10月以降も駆け込み需要で自動車販売は好調を継続している。
減税の期限は今年の12月末であるから、購買客が殺到しているらしい。
とはいうものの、自動車が買える経済力があるのは都市部の人々で地方の農民たちにとっては自家用車は高嶺の花だ。
例えば、上海などの都市生活者の世帯収入は日本円で180万円~250万円程度だから、個人で自動車を買うには借金をする必要がある。
それでも2016年1-9月期の自動車販売(台数)は前年同期比13.2%と増加した。
今年の7月以降には、なんと2割超の高い増加率を示している。
中国自動車工業協会は、減税の延長がなければ17年は逆に販売量が激減するという危機感を表明している。
中国政府は自動車消費の影響が内需景気の中折れにならないように、小型車減税の延長を検討するのではないだろうか。
■中国の金持ちは住宅を何軒持っているのか?
これまで中国政府はGDPの成長を維持させるために貸出金利を6%から4.5%まで引き下げてきた。
住宅購入規制を緩和させ、購入頭金の比率も引き下げた。
その結果、住宅バブルが始まった。
特に都市部の富裕層が投機買いに走ったのだ。
先月号の山師の手帳『中国人は不幸か幸せか?』にも不動産バブルのからくりを書いたので参考にしてほしい。
ただし、来年以降の金融政策は景気重視から住宅バブルの退治に重点が移る見込みだ。
インフラ整備の加速や、住宅バブルの黙認で住宅販売が急増したが、GDPの成長目標が達成できたことを踏まえて、2017年には住宅バブルの抑え込みに舵を切らざるを得ないだろう。
だからといって住宅の価格が暴落すると思っている中国人はまずいない筈だ。
都市部の富裕層は、住宅が多少の値崩れをしてもいずれは上がるだろうとタカを括っているのである。
一方、全国ベースで不動産投資を見てみると、今年の前半に比べて(1-3 月期は同10.7%増、4-6月期は同7.3%増)7-9 月期には同6.6%増と減速傾向が続いているようだ。
ただし、都市部の不動産価格はまだ堅調で富裕層が二軒や三軒のマンションを持っているのは常識になっている。
その意味では北京や上海が特別なのかもしれない。
地方都市でも政府による開発地域では投資用の住宅建築がまだ増加しているのは日本人から見ると理解できない。
■大都市のデパートは人影少なく全然売れない理由
上海のデパートやスーパーを回ってみると客足は伸びていないように見える。
日本人の多く住んでいる上海の古北地区では日本のデパートはまだ閉店にはなっていないが、日本人駐在員は不況のために昨年比で3割くらいは帰国しているとの噂もある。
上海の友人によると、一般市民はデパートではウィンドウショッピングをするだけで、値段をチェックして家に帰ってネットで買うのが購買パターンになっているとのことだ。
上海や北京のような大都市と二級都市(西安市や宝鶏市)とは購買行動には違いがあるようだが、全国の平均ベースでは中国の小売売上高の動向は、7-9 月期は前年同期比10.6%増と好調に推移しているらしいから、地域差によるまだら模様はまちまちである。
デパートは売れなくてネットは繁盛しているのには別の理由もある。
日本に来る爆買いツアーは、自分のものだけをお土産で買って行く訳ではない。
何割かの観光客は日本製の安い製品の運び屋をやっていると聞いている。
ネット販売業者が運び屋にお金を渡して「関税なし」「増値税なし」「贅沢税(消費税)なし」で公然と合法的な密輸を斡旋しているというのだ。
LCC(Low Cost Carrier)を使えば「1万2000円で上海・東京が往復」である時代だ。
関税、増値税、贅沢品税をカットすれば60%も安く買えるから爆買いして転売するだけで月に100万円を稼ぐ中国人がざらにいる。
例えば、紙おむつはワンパックを日本では1300円~1500円で売っているが、これを中国で販売すると倍で売れるという。
we chatを利用してミルクやオムツをEMSで中国に送っても20キロ以内なら郵送費は約1万円だし、やり方はいくらでもあるのだ。
スーパーでは紙おむつや粉ミルクの販売制限があるから爆買いツアーは家族ぐるみで日本のスーパーに買いに来るらしい。
子供2人とお母さんとお父さんが都内のスーパーで開店と同時に販売制限2個づつを4人で買うのだ。
バーゲンの日が狙い目だとは誰でも知っている。
手配師はスーパーの値引きカードまで運び屋から取り上げるらしいから恐れ入る。
価格が安くて品質が良くて日本製で安心できるなら誰だってネットで買うというものだ。
■ところ変われば話題も変わる
上海や杭州の取引先との宴会の席ではしきりに経済問題の話題が中心であった。
今回の後半の訪問先は陝西省の西安市と宝鶏市であったが、
内陸部に行けばいくほど話題の中心は経済問題から離れて政治問題が中心になっていった。
今回の訪問先は中国一のチタン工場とモリブデン工場であるが、運営上は国営企業にぶら下がっている子会社である。
実際の運営は民間企業と同様の自由裁量を有するが、人事権と利益配分権は共産党の直轄組織である親会社が支配する構造になっている。
従って実体は中国流の「親方五星紅旗」である。
早い話が損をしても国家が損失補てんしてくれるから気楽なものである。
上海や杭州の民間企業は全てが自己責任であるから自然と話題は経済問題になるのだ。
西安での宴会での話題の中心は経済ではなく「六中全会」の政治問題が中心となった。
中国は広大なのだ。
地域ごとに価値観が変わるからこの点を理解しておかないと中国ビジネスは上手く行かないのである。
■第18期中央委員会第6回全体会議「六中全会」て何だ?
六中全会のニュースが宴会の最中に流れていた。
六中全会とは中国共産党の中央委員会が、党大会の開催以降、6回目に開く全体会議のことである。
西安の友人によると、今回の六中全会では
①:共産党の管理強化のために党内の監督条件を決定。
②:党内の民主的な運営を進め集団管理体制を確認。
③:第19期六中全会に向って新たな目標を決定
した。
今回の六中全会では目立った決定事はなかったが、気になったのは引き続き「腐敗の撲滅方針」である。
経済問題についてはほとんど触れられずに党内の集団管理体制を強調しながらも習近平国家主席の権力基盤を強化することを強調していた。
経済にとっては13億人が食えるのかといった昔の概念ではなく、
中国には大需要を活かしていくことが強みだと認識をし始めている。
■新しい概念は「社会主義自由経済」ではなく
「国家資本主義経済」なのだ
中国は今や「国家資本主義経済」である。
20年前ならしきりに「社会主義自由経済」といっていたが今は企業の経営理念も大きく変化してきている。
多くの企業は名前だけは国営企業であるが、実際の経済活動は一般の民間企業とそれほど違うわけではない。
国営企業にぶら下がっているこれらの準国営企業の比率が全国的に増加している。
経済活動は確かにこの子会社に任さかされてはいるが、人事権と利益の配分権は共産党組織の親会社が支配しているのである。
従って民営企業のような子会社が増えているから自由に見える経済活動が許容されるが、最終的には国営企業の政治力学が働くのである。
地方に行けば行くほど経済の話題より政治の話題が中心になるのはこうした企業の構造に原因があると考える次第である。
また、国家資本主義が推進している一帯一路構想とは、中国西部から中央アジアを経由して欧州につながる「シルクロード経済ベルトと、中国沿岸部からASEANからアラビア半島を経てアフリカ大陸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」の二つの地域で、インフラ整備、貿易促進、資金
の往来を促進する大構想である。企業のエリート達の大好きな話題である。
■中国のエリートたちの発想とは?
これらの国営企業の下部組織を経営している企業エリートたちは大変魅力的な人材が多い。
経営者としてのスキルも必要だが、いずれ親会社に引き上げられた時のために政治的なスキルも磨いているからである。
彼らの意見は大所高所に立った意見が多い。
例えば、このような意見である。
①:米国の評論家の中国に対する悪口は聞き飽きた。
②:もしも彼らが言うように本当に共産党政権が悪ければ、もうとっくに中国経済は崩壊しているはずだ。
③:米国の単純な意見は単に理解が足らないだけではないか。
④:中国のやることなすことにケチをつけるのではなく双方が良いところも認めるべきである、
といった調子である。
勝手な意見を言わせて貰えば素朴な昔ながらの政治家のような意見である。
僕が初めて中国を訪れた1979年の中国は今の北朝鮮並みだったが対外開放政策や地方分権化を進めた結果、海外からの投融資も増加し、世界の工場といわれるまでになった。
1989年(天安門事件)以降の鄧小平の経済運営も大きな方向性として間違ってはいなかった。
あの頃は明るい未来の中国に思いを馳せて良く似た意見交換をしたことを思い出す。
エリートたちの未来の話は、
①:中国の1人あたりGDPで7倍を達成すればアメリカを追い越せる。
②:北京と上海はもとより西安のような二級都市はすでに米国よりも良くなっている。
と本気で話すから驚いてしまう。
明らかに米国をターゲットにした経済的運営を視野に入れているのだが何故か違和感がある。
何か僕が1985年に米国に出張した時に「Japan as No.1」などと本気で話していた思い出とかぶる気もしてきた。
でも彼らは「中国には夢がある」「我々の工場も従業員とともに夢を共有しているから発展が継続している」「未来の姿も明るいものがあるはずだ」と極めて健全な発想をする次期指導者層が多くいるから心強い限りである。
だが、なぜか素直中国を応援できない自分がそこにいたのが何となく気がかりではある。
北京や上海などの一級都市は別にして地方に行けば中国は政治の国であり経済の国ではない。
今回の出張では現場の経済動向を勉強させて貰った。
今後の中国の現政権の運営における経済と政治の舵さばきを注目してゆきたい。
』
Wedge 2016年11月4日 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8104
中国エリートたちの夢「国家資本主義」
中国の景気の動向(パート2)
パート1では、中国の成長目覚ましい交通インフラの話題と、レアメタルなどの鉱工業生産の不振について書いた。
パート2では、個人消費の中でも大口消費である住宅投資と自動車市場とネット販売について深掘りし、「六中全会」を通じて習近平国家主席の掌握した権力と中国のエリートたちの夢についても書いてみたい。
■中国で車が今年に入ってバカ売れしているのは本当か?
今年になって自動車がバカ売れしたのは、昨年10月に開始された小型車減税(排気量1.6L以下)のおかげで、販売に勢いがついたからだ。
上海や西安は当然のことだが、二級都市や三級都市でも交通渋滞がひどい。
中国公安部交通管理局の統計データによると
2016年6月末の自動車保有台数は1億8400万台になった(動力車保有台数は2億8500万台)。
14年の新車販売台数がアメリカに約700万台の差をつけて世界一になるという市場に発展した。
それでも保有台数は人口比でいえばまだまだ伸びしろがあり、今年の10月以降も駆け込み需要で自動車販売は好調を継続している。
減税の期限は今年の12月末であるから、購買客が殺到しているらしい。
とはいうものの、自動車が買える経済力があるのは都市部の人々で地方の農民たちにとっては自家用車は高嶺の花だ。
例えば、上海などの都市生活者の世帯収入は日本円で180万円~250万円程度だから、個人で自動車を買うには借金をする必要がある。
それでも2016年1-9月期の自動車販売(台数)は前年同期比13.2%と増加した。
今年の7月以降には、なんと2割超の高い増加率を示している。
中国自動車工業協会は、減税の延長がなければ17年は逆に販売量が激減するという危機感を表明している。
中国政府は自動車消費の影響が内需景気の中折れにならないように、小型車減税の延長を検討するのではないだろうか。
■中国の金持ちは住宅を何軒持っているのか?
これまで中国政府はGDPの成長を維持させるために貸出金利を6%から4.5%まで引き下げてきた。
住宅購入規制を緩和させ、購入頭金の比率も引き下げた。
その結果、住宅バブルが始まった。
特に都市部の富裕層が投機買いに走ったのだ。
先月号の山師の手帳『中国人は不幸か幸せか?』にも不動産バブルのからくりを書いたので参考にしてほしい。
ただし、来年以降の金融政策は景気重視から住宅バブルの退治に重点が移る見込みだ。
インフラ整備の加速や、住宅バブルの黙認で住宅販売が急増したが、GDPの成長目標が達成できたことを踏まえて、2017年には住宅バブルの抑え込みに舵を切らざるを得ないだろう。
だからといって住宅の価格が暴落すると思っている中国人はまずいない筈だ。
都市部の富裕層は、住宅が多少の値崩れをしてもいずれは上がるだろうとタカを括っているのである。
一方、全国ベースで不動産投資を見てみると、今年の前半に比べて(1-3 月期は同10.7%増、4-6月期は同7.3%増)7-9 月期には同6.6%増と減速傾向が続いているようだ。
ただし、都市部の不動産価格はまだ堅調で富裕層が二軒や三軒のマンションを持っているのは常識になっている。
その意味では北京や上海が特別なのかもしれない。
地方都市でも政府による開発地域では投資用の住宅建築がまだ増加しているのは日本人から見ると理解できない。
■大都市のデパートは人影少なく全然売れない理由
上海のデパートやスーパーを回ってみると客足は伸びていないように見える。
日本人の多く住んでいる上海の古北地区では日本のデパートはまだ閉店にはなっていないが、日本人駐在員は不況のために昨年比で3割くらいは帰国しているとの噂もある。
上海の友人によると、一般市民はデパートではウィンドウショッピングをするだけで、値段をチェックして家に帰ってネットで買うのが購買パターンになっているとのことだ。
上海や北京のような大都市と二級都市(西安市や宝鶏市)とは購買行動には違いがあるようだが、全国の平均ベースでは中国の小売売上高の動向は、7-9 月期は前年同期比10.6%増と好調に推移しているらしいから、地域差によるまだら模様はまちまちである。
デパートは売れなくてネットは繁盛しているのには別の理由もある。
日本に来る爆買いツアーは、自分のものだけをお土産で買って行く訳ではない。
何割かの観光客は日本製の安い製品の運び屋をやっていると聞いている。
ネット販売業者が運び屋にお金を渡して「関税なし」「増値税なし」「贅沢税(消費税)なし」で公然と合法的な密輸を斡旋しているというのだ。
LCC(Low Cost Carrier)を使えば「1万2000円で上海・東京が往復」である時代だ。
関税、増値税、贅沢品税をカットすれば60%も安く買えるから爆買いして転売するだけで月に100万円を稼ぐ中国人がざらにいる。
例えば、紙おむつはワンパックを日本では1300円~1500円で売っているが、これを中国で販売すると倍で売れるという。
we chatを利用してミルクやオムツをEMSで中国に送っても20キロ以内なら郵送費は約1万円だし、やり方はいくらでもあるのだ。
スーパーでは紙おむつや粉ミルクの販売制限があるから爆買いツアーは家族ぐるみで日本のスーパーに買いに来るらしい。
子供2人とお母さんとお父さんが都内のスーパーで開店と同時に販売制限2個づつを4人で買うのだ。
バーゲンの日が狙い目だとは誰でも知っている。
手配師はスーパーの値引きカードまで運び屋から取り上げるらしいから恐れ入る。
価格が安くて品質が良くて日本製で安心できるなら誰だってネットで買うというものだ。
■ところ変われば話題も変わる
上海や杭州の取引先との宴会の席ではしきりに経済問題の話題が中心であった。
今回の後半の訪問先は陝西省の西安市と宝鶏市であったが、
内陸部に行けばいくほど話題の中心は経済問題から離れて政治問題が中心になっていった。
今回の訪問先は中国一のチタン工場とモリブデン工場であるが、運営上は国営企業にぶら下がっている子会社である。
実際の運営は民間企業と同様の自由裁量を有するが、人事権と利益配分権は共産党の直轄組織である親会社が支配する構造になっている。
従って実体は中国流の「親方五星紅旗」である。
早い話が損をしても国家が損失補てんしてくれるから気楽なものである。
上海や杭州の民間企業は全てが自己責任であるから自然と話題は経済問題になるのだ。
西安での宴会での話題の中心は経済ではなく「六中全会」の政治問題が中心となった。
中国は広大なのだ。
地域ごとに価値観が変わるからこの点を理解しておかないと中国ビジネスは上手く行かないのである。
■第18期中央委員会第6回全体会議「六中全会」て何だ?
六中全会のニュースが宴会の最中に流れていた。
六中全会とは中国共産党の中央委員会が、党大会の開催以降、6回目に開く全体会議のことである。
西安の友人によると、今回の六中全会では
①:共産党の管理強化のために党内の監督条件を決定。
②:党内の民主的な運営を進め集団管理体制を確認。
③:第19期六中全会に向って新たな目標を決定
した。
今回の六中全会では目立った決定事はなかったが、気になったのは引き続き「腐敗の撲滅方針」である。
経済問題についてはほとんど触れられずに党内の集団管理体制を強調しながらも習近平国家主席の権力基盤を強化することを強調していた。
経済にとっては13億人が食えるのかといった昔の概念ではなく、
中国には大需要を活かしていくことが強みだと認識をし始めている。
■新しい概念は「社会主義自由経済」ではなく
「国家資本主義経済」なのだ
中国は今や「国家資本主義経済」である。
20年前ならしきりに「社会主義自由経済」といっていたが今は企業の経営理念も大きく変化してきている。
多くの企業は名前だけは国営企業であるが、実際の経済活動は一般の民間企業とそれほど違うわけではない。
国営企業にぶら下がっているこれらの準国営企業の比率が全国的に増加している。
経済活動は確かにこの子会社に任さかされてはいるが、人事権と利益の配分権は共産党組織の親会社が支配しているのである。
従って民営企業のような子会社が増えているから自由に見える経済活動が許容されるが、最終的には国営企業の政治力学が働くのである。
地方に行けば行くほど経済の話題より政治の話題が中心になるのはこうした企業の構造に原因があると考える次第である。
また、国家資本主義が推進している一帯一路構想とは、中国西部から中央アジアを経由して欧州につながる「シルクロード経済ベルトと、中国沿岸部からASEANからアラビア半島を経てアフリカ大陸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」の二つの地域で、インフラ整備、貿易促進、資金
の往来を促進する大構想である。企業のエリート達の大好きな話題である。
■中国のエリートたちの発想とは?
これらの国営企業の下部組織を経営している企業エリートたちは大変魅力的な人材が多い。
経営者としてのスキルも必要だが、いずれ親会社に引き上げられた時のために政治的なスキルも磨いているからである。
彼らの意見は大所高所に立った意見が多い。
例えば、このような意見である。
①:米国の評論家の中国に対する悪口は聞き飽きた。
②:もしも彼らが言うように本当に共産党政権が悪ければ、もうとっくに中国経済は崩壊しているはずだ。
③:米国の単純な意見は単に理解が足らないだけではないか。
④:中国のやることなすことにケチをつけるのではなく双方が良いところも認めるべきである、
といった調子である。
勝手な意見を言わせて貰えば素朴な昔ながらの政治家のような意見である。
僕が初めて中国を訪れた1979年の中国は今の北朝鮮並みだったが対外開放政策や地方分権化を進めた結果、海外からの投融資も増加し、世界の工場といわれるまでになった。
1989年(天安門事件)以降の鄧小平の経済運営も大きな方向性として間違ってはいなかった。
あの頃は明るい未来の中国に思いを馳せて良く似た意見交換をしたことを思い出す。
エリートたちの未来の話は、
①:中国の1人あたりGDPで7倍を達成すればアメリカを追い越せる。
②:北京と上海はもとより西安のような二級都市はすでに米国よりも良くなっている。
と本気で話すから驚いてしまう。
明らかに米国をターゲットにした経済的運営を視野に入れているのだが何故か違和感がある。
何か僕が1985年に米国に出張した時に「Japan as No.1」などと本気で話していた思い出とかぶる気もしてきた。
でも彼らは「中国には夢がある」「我々の工場も従業員とともに夢を共有しているから発展が継続している」「未来の姿も明るいものがあるはずだ」と極めて健全な発想をする次期指導者層が多くいるから心強い限りである。
だが、なぜか素直中国を応援できない自分がそこにいたのが何となく気がかりではある。
北京や上海などの一級都市は別にして地方に行けば中国は政治の国であり経済の国ではない。
今回の出張では現場の経済動向を勉強させて貰った。
今後の中国の現政権の運営における経済と政治の舵さばきを注目してゆきたい。
』
『
時事通信 11/8(火) 12:36配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161108-00000060-jij-cn
中国輸出、7.3%減=輸入も低迷―10月
【北京時事】中国税関総署が8日発表した10月の貿易統計によると、
輸出は前年同月比7.3%減の1781億ドル(約19兆円)と、7カ月連続の前年割れとなった。
輸入も1.4%減の1291億ドルと、小幅ながら2カ月続けて前年水準を下回った。
中国は景気減速が続く中で内需が弱い状態にあり、輸出低迷が長引けば、多くの製造業が経営難に直面するとみられる。
政府は公共事業の拡大などで景気下支えを図っているが、国有企業を除けば恩恵は少ない状況だ。
』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161108-00000060-jij-cn
中国輸出、7.3%減=輸入も低迷―10月
【北京時事】中国税関総署が8日発表した10月の貿易統計によると、
輸出は前年同月比7.3%減の1781億ドル(約19兆円)と、7カ月連続の前年割れとなった。
輸入も1.4%減の1291億ドルと、小幅ながら2カ月続けて前年水準を下回った。
中国は景気減速が続く中で内需が弱い状態にあり、輸出低迷が長引けば、多くの製造業が経営難に直面するとみられる。
政府は公共事業の拡大などで景気下支えを図っているが、国有企業を除けば恩恵は少ない状況だ。
』
『
ロイター 2016年 11月 9日 11:01 JST Rachel Morarjee
http://jp.reuters.com/article/column-china-fin-min-idJPKBN13407C?sp=true
コラム:中国の財政相交替、成長重視路線へ転換か
[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
中国の習近平・国家主席は7日、突如として楼継偉財政相を交替させ、後任に肖捷・国務院副秘書長を充てる人事を決めた。
強力な改革推進派を更迭するという予想外の決定は、
中国が何はさておき経済成長を優先
しようとしていることの表れかもしれない。
65歳の楼氏が退任の年齢に達していたのは事実だが、2018年の任期満了まではポストにとどまるというのが衆目の一致するところだった。
後任の肖氏は経験豊かな官僚だが、楼氏に比べるとずっと目立たない人物で、習氏に忠義を尽くすことになるだろう。
財政省はあまたの組織と競い合って経済運営を行うところだ。
その権限は、例えば英国の財務省ほど強くないが、楼氏は権限を越えるほどの辣腕をふるってきた。
不動産税など困難な改革を断行し、ほころびを見せる財政制度の見直しや税収のテコ入れを担った。
しかし、地方の経済成長を圧迫するような改革は常に激しい抵抗に遭う。
楼氏は地方政府の借入額を2014年水準以下に抑えようと試みたが、省政府幹部らの猛攻で15年3月に撤回を迫られた。
省政府幹部らは、借り入れを削減すれば投資が阻まれ、成長率を6.5%程度で安定させるという習国家主席の目標が脅かされると主張した。
ローディアム・リサーチによると、16年5月までの1年間に債券発行により地方政府の新規借り入れ6兆8000億元(1兆ドル)が賄われた。
財政省の債務抑制策を完全にすり抜けた形だ。
しかし楼氏は少なくとも、新規借り入れの大半を、不透明な特別目的会社から日の当たる債券市場に移すことには成功した。
お先真っ暗というわけではない。
楼氏の退任が発表される前の数日間、財政省は不透明な「裏口」の仕組みを介した地方政府の債券発行を抑え、既存の借り入れ抑制策を実行する新たな青写真を示した。
しかし財政省が強力なリーダーを欠けば、既得権益を握り、最近の信用ブームを引っ張ってきた省政府は抵抗しやすくなるだろう。
国際決済銀行(BIS)によると、2010年に国内総生産(GDP)の184%相当だった中国の非金融債務は現在、250%を超えている。
他国の例を見ると、この種の信用ブームは痛みを伴って破裂した。
中国が債務問題の解決を先延ばしすればするほど、最終的な痛みは強くなるだろう。
●背景となるニュース
*7日の新華社電によると、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は楼継偉財政相の後任として、肖捷・国務院副秘書長(59)を起用する人事を決めた。楼氏の任期はまだ2年残っており、退任は予想外だった。
*複数の高官はロイターに対し、楼氏は退職年齢の65歳に達したため辞任すると述べた。
*楼氏は過去に政府系ファンド、中国投資(CIC)のトップなどを務めた。米ウォールストリート・ジャーナル紙が共産党高官らの発言として伝えたところでは、楼氏は国家年金基金のトップという、財政相よりも軽いポストに就く可能性が高い。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
』
ロイター 2016年 11月 9日 11:01 JST Rachel Morarjee
http://jp.reuters.com/article/column-china-fin-min-idJPKBN13407C?sp=true
コラム:中国の財政相交替、成長重視路線へ転換か
[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
中国の習近平・国家主席は7日、突如として楼継偉財政相を交替させ、後任に肖捷・国務院副秘書長を充てる人事を決めた。
強力な改革推進派を更迭するという予想外の決定は、
中国が何はさておき経済成長を優先
しようとしていることの表れかもしれない。
65歳の楼氏が退任の年齢に達していたのは事実だが、2018年の任期満了まではポストにとどまるというのが衆目の一致するところだった。
後任の肖氏は経験豊かな官僚だが、楼氏に比べるとずっと目立たない人物で、習氏に忠義を尽くすことになるだろう。
財政省はあまたの組織と競い合って経済運営を行うところだ。
その権限は、例えば英国の財務省ほど強くないが、楼氏は権限を越えるほどの辣腕をふるってきた。
不動産税など困難な改革を断行し、ほころびを見せる財政制度の見直しや税収のテコ入れを担った。
しかし、地方の経済成長を圧迫するような改革は常に激しい抵抗に遭う。
楼氏は地方政府の借入額を2014年水準以下に抑えようと試みたが、省政府幹部らの猛攻で15年3月に撤回を迫られた。
省政府幹部らは、借り入れを削減すれば投資が阻まれ、成長率を6.5%程度で安定させるという習国家主席の目標が脅かされると主張した。
ローディアム・リサーチによると、16年5月までの1年間に債券発行により地方政府の新規借り入れ6兆8000億元(1兆ドル)が賄われた。
財政省の債務抑制策を完全にすり抜けた形だ。
しかし楼氏は少なくとも、新規借り入れの大半を、不透明な特別目的会社から日の当たる債券市場に移すことには成功した。
お先真っ暗というわけではない。
楼氏の退任が発表される前の数日間、財政省は不透明な「裏口」の仕組みを介した地方政府の債券発行を抑え、既存の借り入れ抑制策を実行する新たな青写真を示した。
しかし財政省が強力なリーダーを欠けば、既得権益を握り、最近の信用ブームを引っ張ってきた省政府は抵抗しやすくなるだろう。
国際決済銀行(BIS)によると、2010年に国内総生産(GDP)の184%相当だった中国の非金融債務は現在、250%を超えている。
他国の例を見ると、この種の信用ブームは痛みを伴って破裂した。
中国が債務問題の解決を先延ばしすればするほど、最終的な痛みは強くなるだろう。
●背景となるニュース
*7日の新華社電によると、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は楼継偉財政相の後任として、肖捷・国務院副秘書長(59)を起用する人事を決めた。楼氏の任期はまだ2年残っており、退任は予想外だった。
*複数の高官はロイターに対し、楼氏は退職年齢の65歳に達したため辞任すると述べた。
*楼氏は過去に政府系ファンド、中国投資(CIC)のトップなどを務めた。米ウォールストリート・ジャーナル紙が共産党高官らの発言として伝えたところでは、楼氏は国家年金基金のトップという、財政相よりも軽いポストに就く可能性が高い。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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