2016年11月14日月曜日

トランプ大統領とは(9):中国には「負け」という選択肢がない、勇み足だけは避けねばならない

_
 トランプが何者かがまだ見えてこない。
 政治音痴を理由に中国が気づかずに傲慢にふるまうとシッペ返しがあるかもしれない。
 まず100日は十分見ていかないといけないだろう。
 組みやすしと思ってふるまうと大けがをするかもしれない。
 共和党系はチャンプ思想の持ち主が多い。
 力こそ資源だということで、トランプはマネーこそ資源だということになるかもしれない。
 レーガンが俳優出身で国際政治など分かるまいと思って強気の態度に出たソ連は最終的に経済分野で追い詰められソ連崩壊という屈辱を味あわされている。
 トランプをどう見るかは非常に大きな中国側の問題であるが慎重には慎重がいる。
 下手に勇み足をしないように気をつけないと、泥沼に引きづりこまれる可能性もある。
 ヒラリーが相手なら勝った負けたがあっても問題はない。
 手ごわい相手だからである。
 しかしトランプだと中国は勝ち続けるという選択肢しかない。
 中国はプロで、トランプは素人ということを周囲は知っている。
 中国には負けるという選択肢がなくなっている。
 負けたら中国トップの名声は地に落ちる。
 そして同時に、トランプは負けることを極度に嫌がる共和党イズムの人間である。
 負けることを容認しないがために、トランプは今の地位に上り詰めた。
 中国はいま、いやなヤツを相手にしているのである。
 相手を侮って、勇み足だけは避けねばならない


[北京 14日 ロイター]2016年11月14日(月)20時23分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6319.php

 中国の習近平とトランプが電話会談
「協力が唯一の選…

 中国国営テレビ(CCTV)によると、習近平国家主席とトランプ次期米大統領が14日に電話会談を行った。
 習主席は、米中の協力が唯一の選択肢との認識をトランプ氏に伝えた。
 両首脳は早期に直接会談し、課題について意見交換をすることで一致したという。
 トランプ氏は大統領選挙キャンペーン中、貿易問題などをめぐり中国に厳しい姿勢を示していた。

 CCTVによると、習主席は
 「両国は協力関係を強化し、両国の経済発展や世界経済の成長を推進し、あらゆる取引や協力を拡大し、双方の国民がより具体的な利益を享受できることを確実にし、両国関係の発展がより良く進むよう努めなければならない」
と述べた。



ロイター 2016年 11月 15日 08:11 JST
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-putin-idJPKBN1392NA

トランプ氏とプーチン大統領が電話会談、「協力関係」で一致

[モスクワ 14日 ロイター] - ロシア政府は、プーチン大統領とトランプ次期米大統領が14日に電話で会談し、「国際テロリズムや過激派との戦いなどにおいて建設的な協力関係」の構築を目指すことで合意したと明らかにした。

 ロシア政府の声明によると、トランプ氏の大統領選勝利後初めてとなる電話会談で、両氏は特に通商・経済分野の発展を通じて両国関係の強固な基盤を築くことの重要性を確認した。

 声明はまた、両国は実務主義的かつ相互に利益をもたらす協力関係に戻るべきで、それが世界の安定と安全にもつながるとした。

 トランプ陣営も声明で、プーチン大統領から祝意を伝える電話があったと発表。
 トランプ氏はプーチン氏に対し、ロシアとの強力かつ持続的な関係を望むと伝えたという。



Record china配信日時:2016年11月14日(月) 10時30分
http://www.recordchina.co.jp/a154741.html

トランプ勝利が追い風に、
“内向き”米国を尻目に中国は勢力拡大へ―中国メディア

 2016年11月13日、参考消息網は記事
 「米国が“内向き”になれば中国の台頭には追い風」
を掲載した。

 米大統領選では事前の予想を覆し、共和党のトランプ氏が勝利した。
 新大統領の誕生は米国国内の政治状況を大きく変えるばかりか、国際情勢にも大きな波紋をもたらすことは間違いない。
 トランプ氏の具体的な政策が定かでないだけに現時点でその影響を見極めることは困難だが、選挙戦で主張してきた環太平洋連携協定(TPP)の取り止めや海外からの撤退という“内向き”の外交戦略を採れば、その間隙を縫って中国が漁夫の利を得る可能性が高い。

 実際、中国商務部の張向晨(チャン・シャンチェン)国際貿易交渉副代表は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)など中国主導の多国間自由貿易協定(FTA)を積極的に推進する意向を示した。
 TPPの頓挫が濃厚となった今、中国主導の貿易ルール構築を目指す構えと見られる。



新潮社フォーサイト2016年11月14日 16:38 野嶋剛
http://blogos.com/article/197905/

トランプに「好感」を抱く中国人の心象風景を読む - 

  トランプ大統領の誕生について、世界は悲喜こもごもだが、総じていえば、中国人はかなり喜んでいるように見える。
 その理由は2つありそうだ。
★.1つは、トランプがオバマやヒラリーのように、リバランス(戦力の再配置)政策やTPP(環太平洋経済連携協定)などによる中国封じ込め政策によって中国を苛めなさそうであること。
★.そしてもう1つは、トランプという人間を本質的に中国人は好きなのではないか、好感を抱けるキャラなのではないか、という気がすること。

 中国では、この米大統領選期間中、ネットユーザーは選挙の行方に強い関心を払い、開票速報を追いかけた。
 中国版ツイッター『微博』では常に米大統領選関連の話題のつぶやきがトップにランクされた。
 そして、中国人の多くは感情的にトランプを応援していたようだ。
 中国人は自分たちで民主主義を楽しむことができない分、
 かなり外国の選挙を詳細に観察して娯楽としているクセがある。
 日本の選挙や台湾の選挙も大好きである。
 しかしそれにしても今回の米大統領選に対する好奇心の大きさは、過去にあまりないものだったように見えた。
 「我々は、米大統領選のこの日、とうとう全国民が選挙に参加できた」
 そんなネットユーザーの皮肉たっぷりのつぶやきが『微博』に流れ、大量のリツイートをされたりもした。

■ある種の愛嬌があるニックネーム

 ところで、中国語では、トランプのことは「特朗普」と書く
 発音は「te-lang-pu」である。
 一方、台湾や香港では同じ中国語でも「川普」である。
 こちらの発音は「chuan-pu」である。
 日本語的には、トランプは「特朗普」に近いが、英語の発音からすれば「川普」のほうがより正確である。

 外国人の人名は、中国と台湾・香港との間で違うこと意外と少なくない。
 例えば、香港で使っている広東語の発音に基づいて命名されてしまうと、余計にややこしくなる。
 さらに、中国と台湾は同じ標準語(普通語、北京語)の発音で命名するのだが、それぞれがすりあわせてやっているわけではないので、時々、中国、台湾、香港などで3種類の名前が出てくることになる。
 英国首相だったサッチャーなどは中国では「撒切尔」だったが、香港で「戴卓爾」になり、「台湾では「柴契爾」と三者三様になってしまって本当にややこしい。

 今回、中国のネットユーザーたちの間では、トランプのことを「特朗普」でも「川普」でもなく、「床破」(chuan-po)と呼ぶことが流行った
 これは「床破」の発音が「川普」に近いことで当て字をしたものだが、「床が破れる」という表現がどことなくユーモラスで、女性関係の豊富さを連想させるところがある出来のいいあだ名で、かなり広く用いられている。
 語感としては決して批判的なニュアンスはなく、ある種の愛嬌を感じさせるニックネームである。

■力への崇拝

 中国人にとっては、トランプが圧倒的な成功者であることは、大きな加点である。多くの不動産を所有し、航空会社を運営し、プライベートジェットで世界を飛び回っている。
 サッカーチームまで保有し、目もくらむような豪邸に住んでいる。
 中国人のすべてではないけれど、総じていえば、こういう派手な成功者に対しては、日本人ほどネガティブな受けとめ方はせず、素直にすごい、羨ましいと考えるところが中国人にはある。
 中国の書店で並んでいる本を見れば、成功者のストーリーが大好きなのは一目で分かる。
 だから成功者としてのトランプを中国人は好きである。

 また、歴史的に前政権を完全に否定する「易性革命」を繰り返してきた中国人は、本能的に、権力に立ち向かう人物を応援するところがある。
 毛沢東のスローガン「造反有理」(謀反にこそ理がある)に大衆が熱狂したことも記憶に新しい。
 いわゆる東海岸の権威や常識に真っ向から挑戦するようなトランプの言動に、中国人は「不虚偽(嘘くさくない)」と拍手喝采を送っているのである。

 同時に、トランプ自身の価値観としての実力主義的、あるいはパワー優先の発想に中国人は共感するところが大きい。

 例えば、トランプはロシアのプーチン大統領に対して賛辞を惜しまないが、いま中国で最も人気がある海外の政治家はやはりプーチンだ。
 ちなみに安倍晋三首相も、政府系のメディアからはかなり批判されがちだが、庶民レベルでは実は結構好かれている節がある。
 それは、安倍首相が日本政治のなかでいま圧倒的に強いからである。

 力への崇拝。
 そんな感性が、中国人を引きつけるのだ。
 プーチン、習近平、そしてトランプ。
 力の信奉者である3人の顔ぶれによるフレンドリーな米中ロ3者首脳会談が実現したらどうなるだろうか。
 想像するだけで恐ろしいが、ワクワクもする。

 1989年の天安門事件についても、1990年に『プレイボーイ』誌の取材を受けた時、トランプはこんな風に語っている。
「学生が過激になったとき、力によって押さえつけた。
 これはパワーの強大さを示すものだ。
 我が国家は現在のところ軟弱であり、世界の国々からつばをはきかけられるようになってしまっている」
 この発言の真意を今回の大統領選挙キャンペーンのなかで突かれたトランプは、「(学生の鎮圧に)賛同したのではなく、シンプルに状況を描写したに過ぎない」と述べているが、そこは本音が出たという部分ではないだろうか。
 中国に対して、トランプは、ヒラリーやオバマのように人権や民主化をタテに取って攻め込んでくることは考えにくい。
 トランプ自身が人権というテーマに対しては冷淡な姿勢を取ってくる可能性が高いからだ。
 この点は、中国政府にとっては、かなり安心して付き合いやすい部分になるだろう。

■思いもつかない「返し手」

 そもそも、トランプが中国について「雇用を奪われている」「為替レートを不正に操作している」などと経済問題を中心に厳しい批判をしてきているので、中国を嫌いかと思われがちだが、実際はそうは見えない。
「中国のリーダーはタフで、狡い(狡さを肯定するトランプとしては褒め言葉として使われている)」

「中国人のやることは効率がよく、無駄な話はしない。
 世界最大の銀行である中国の銀行がヘッドクォーターをトランプタワーで借りているのだが、『今日の天気はいいですね』のような無駄話はしないで、『ミスター・トランプ、賃貸契約を延長したい』とすっぱりと切り出してくる。
 主題だけ話して、しかも、ちゃんと期限通り金も払う」

「(メキシコとのボーダーに壁を作る話について)中国は2000年前に1万3000マイルの長城を築いた。
 いま我々はメキシコとの間に1000マイルの壁を作ればいいだけだ。
 しかし、米国人はこれを無理なことだと考えてしまう。
 2000年前の中国人にも及ばないじゃないか」

 ロジックはなかなか大雑把ではあるが、要するに、仕事ができる人間や実力がある相手を、トランプは好むということだ。
 中国がもしもこのトランプの性格を正確に把握したならば、中国にとってはフィリピンのドゥテルテ大統領に大判振る舞いの支援を表明したように、相手の望むものを与えて歓心を買って関係を構築する作戦に出るだろう。
 経験不足の政治家ならばまんまと中国の手の平で転がされそうだが、ビジネスマンとしては百戦錬磨のトランプなので、そんな中国の作戦には思いもつかない「返し手」を用意しているかもしれない。

 トランプという新しいキャラクターを得たことで、ここ何年か、競合的かつ対立的な局面が目立った米中関係は、まったく新しい、しかも予想もつかない局面に入っていく。
 面白くなりそうだ。



サーチナニュース 2016-11-17 10:15 
http://news.searchina.net/id/1623228?page=1

「トランプ大統領」で慌てるアジアの国はどこか? 
すぐ動いた日本、
動きようがない韓国=中国メディア

 8日の米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ氏。
 選挙期間中の過激な発言は、日本を含む関係諸国に少なからぬ憂慮を抱かせた。
 トランプ氏の当選が現実のものとなった今、憂慮も現実のものになるのか、逆に、自国にとってどんなメリットがあるのかといった議論が盛んに繰り広げられている。
 中国メディア・第一財経は16日、
 「トランプ勝利後、アジアのどの国が慌てているか考えてみよう」
と題した記事を掲載した。

 日本と韓国については、米国と長期にわたる盟友であり、選挙期間中にトランプ氏が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への反対を示したこと、安全保障上において駐留米軍経費の負担を求めたことについて衝撃を受けていると紹介。
 日本は17日に安倍首相とトランプ氏との会談をセッティングするなど素早い動きを見せたが、
 韓国は朴槿恵(パク・クネ)大統領が政治的危機に追いやられている国内事情ゆえ、「速やかな行動に出られない」状況であるとした。
 このほかにも、日韓両国は核兵器保有や対北朝鮮政策についてトランプ氏の意向を知りたがっていると解説した。

 中国については、トランプ氏が選挙期間中に中国を「通貨操縦国」と非難し、中国製品に対して45%の関税をかける、中国人観光客のビザ発給を削減するといった「脅し」をかけてきたと紹介。
 その一方で、14日には習近平国家主席がトランプ氏と電話会談を行い、祝辞とともに両国の協力強化を望むメッセージを発したところ、トランプ氏もこれに賛同したことを伝えた。
 そして、中国が抱える憂慮として、「トランプ大統領」誕生によって、米国がグローバル化や自由貿易といった「中国経済にとって少なからぬメリットを持つ流れ」に力を注がなくなる可能性がある点を挙げた専門家の意見を紹介している。

 東南アジアでは、まずフィリピンについて言及。
 オバマ大統領との関係を悪化させたドゥテルテ大統領はトランプ氏当選直後に「もうケンカはしない」と発言したことを挙げ、両国関係は改善に向かうとの見方が出ているとした。
 また、カンボジアのフン・セン首相もトランプ氏の支持者であるとする一方、
 マレーシアやインドネシアなどムスリムが多数居住する国では、「トランプ氏は極めて歓迎されないだろう」と論じた。
 そして、トランプ氏の対中政策への姿勢が明らかになっていない状況の中、もし、現在米国政府が進めるアジア太平洋戦略が放棄されれば、地域のパワーバランスが崩れるのではないかということを東南アジア各国政府は懸念しているとした。

 このほか、対外貿易に大きく依存しTPPを積極的に推進してきたシンガポールは、TPPが破談になり米国が太平洋から身を引くことを心配していると説明。
 インドについては選挙期間中に関係強化を進める発言をしたものの「インド系米国人の票集め」だった可能性があり、実際どうなるかは不透明であると伝えている。

 とにかく未知数なことだらけの「トランプ政権」。
 選挙期間中の発言が果たして「本気」のものなのかは分からない。
 日本を含めたアジア諸国は、トランプ氏との関係づくりの中で、その真意を探っていかなければならない。



ダイヤモンドオンライン 2016年11月18日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/108384

中国がトランプ当選で自国の政治に自信を深める根拠


●今回の米大統領選の過程と結果に、中国の国民は「アメリカ民主政治への失望」を見たといえる

 2016年のアメリカ大統領選は、アメリカの民主政治の在り方に波紋を広げた。
 選挙演説では聴衆の度肝を抜くような過激発言のみならず、ポピュリズムや反グローバル主義への傾斜が色濃く表れた。
 また、候補者二人が互いにスキャンダルを暴きあう醜い場面も少なくなかった。

 今回の大統領選の過程と結果に、中国の国民は「アメリカ民主政治への失望」を見たともいえる。
 案の定、中国のインターネットではすでに一部の中国国民が疑問を呈していた。
 「この結果は、アメリカの民主政治に何らかの欠陥があることを露呈したのではないだろうか」——

 中国国民は、中国の政治が少数のエリートたちが牛耳る専制国家であることを知っている。
 それが自由選挙による議会制度を持つアメリカなどの西側先進国とは大きく異なることも知っている。
 しかし、昨今では、民衆の声が届かない中国政治に大きな反発を見せるようになっていた。

 中国国民の「民主国家アメリカ」への憧れは強い。
 アメリカへの移民が多いのもそのためだが、それだけに今回の大統領選と当選結果は「アメリカへの期待」を大きく揺るがせる結果にもなった。

 「アメリカ民主政治の欠陥」を問う“スレ主”に対し、内外の“アメリカ通”の中国人たちが反応する。
 「アメリカにはもともと民主制度なんか存在しない。
 あるのは金権政治、世襲政治だ」

 批判的な声は、恐らく中国国内から発せられた声だろう。
 中国の主要メディアはことあるごとに西側先進国の民主政治を批判しているため、国民もそれに大きく影響されているのだ。
 実際、中国国内の大学で政治学を学ぶ学生は「民主政治は到達すべき目標ではない」ことを教えられ、一般大衆に至っては「多党制の民主政治は却って混乱を招くばかり」といった認識が強い。

■中国政治が西側諸国に比べ
優れているとする根拠

 さまざまな問題が噴出した大統領選は、むしろ中国などの専制国家に恰好の攻撃材料を提供したことは間違いない。
 おそらく中国は、自国の政治の優位性をますます強く認識するだろう。
 では、中国はどこにその政治の優位性を見出しているのだろうか。
 西側諸国に比べ、どんな点が優れていると自負しているのだろうか。
 中国の有名な歴史家で思想家でもある銭穆氏は、1990年に没するまで80以上の著作を残しているが、その著書「中国歴代政治得失」(三聯書店)で、中国における歴代の政治の特徴を次のように述べている。

 「秦代から清朝までの約2000年間、中国の政治が専制政治だったとはいい切れない。
 当時から中国は集権国家であり、漢の時代から官吏の選出は世襲ではなく、宋の時代からは封建貴族がなくなり、明の時代は貧困家庭の出身が宰相になった。
 西側に言論の自由があるように、中国では明代から人々が自由に発言することができた。」
 同氏は、中国社会こそ早くから平等社会を実現していたと主張し、また、政治を動かすのは賢人であり、賢人として選ばれる科挙というシステムは極めて平等に門戸を開いていると断じる。

 その一方で、西側諸国の政治の在り方を次のように批判する。
 「西側の政治思想は主権という概念の上にあり、その主権は民衆にある。
 では、中国政治の主権はどこにあるかといえば、そのような思想自体が中国にはほとんどないといえる。
 それは、中国の政治とは「職責」であるためだ。
 また、西側こそ人治の傾向が強く、多党政治こそその現れである。
 法制は多数の意見で決定し、また変更されることもある。」

 銭氏は「中国の政治を西側の政治と比較する意味はない」と主張する。
 中国の政治は早い段階から専制政治ではなく、西側と比べることのできない高度な政治体制が構築されている、というわけだ。

■米国の民主政治は甦るか
中国に民主政治は必要か

 一方、「アメリカ民主政治の欠陥」について投げかけられた疑問に対して、ネット上では次のようなコメントも現れた。

 「アメリカ民主政治の本質は確かに金権政治だろうが、今回の選挙で国民はその金権政治への反撃と逆襲を選んだ。
 アメリカ政治の“圏外からの出馬”が受け入れられた理由も、金権政治からの離脱を目指す国民の意志の表れだろう。
 今回の選挙は民主政治の欠陥でも弊害でもない。
 まぎれもなく民主政治のデバッグ(修正)である」

 書き込んだのは在米の中国人だろうか、次のような意見もあった。

 「選挙結果は当選者の出した政策が支持されたという明確なシグナル。
 しかも、トランプ氏は『全てのアメリカ人のための大統領になる』と誓った。
 彼は最大多数のみならず、それ以外のマイノリティにも目を向けている証だ。
 これこそが民主選挙の本質、少数の権利は大多数の犠牲になってはならないということだ」

 民主政治の在り方に波紋を広げた今回の大統領選挙だったが、それでも在米の中国人の中には、ここへの期待は捨てていないことがわかる。
 当選結果が発表された11月9日、「ボイスオブアメリカ」(中国語版)は、二人の中国人学者の指摘を取り上げた。

 中国の社会経済学者で湖南財経学院に在籍していた何清漣氏は
 「アメリカは一人が一票を持つが、中国にはそれがなく、民衆が候補者選びに参加できない」としつつ、
 「その一人一票の民主政治を、中国が拒絶する理由はない」
とした。
 しかし、「国家の民主形態を決定するのは民衆の資質だ」とし、民主政治を認めながらも、中国では時期尚早であることを言外に示唆した。

 一方、米イサカカレッジ文理学院の王維正院長は
 「中国では民主への転換をすべきかもしれないし、目下、そこへの検討も進めているといえるだろう。
 あとは主導部の決定にかかっている」
とコメントしている。

 アメリカの大統領選は、中国人をして「民主政治の茶番」と失笑されるシーンもあった。
 たとえ選ばれたのが“異端児のトランプ氏”であっても、国民や世論、さらには議会がさまざまなアンバランスを修正していく可能性もある。
 アメリカの民主政治の今後の展開は、果たして中国にどのような啓示をもたらすだろうか。



0 件のコメント:

コメントを投稿