2016年11月5日土曜日

なぜヒラリーは嫌われるのか(3):アメリカの夢を語れないヒラリー、「隠れトランプ票」とは

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BBCニュース 2016/11/05
http://business.newsln.jp/news/201611042004300000.html

BBC世論調査、
トランプ候補は45%・クリントン候補も45%で両者タイで並ぶ



 BBCが5日付け公表した米大統領選世論調査により共和党のドナルド・トランプ候補と民主党のヒラリー・クリントン候補の支持率は両者ともに45%となり、タイで並ぶ結果となったことが判った。
 大統領選世論調査に関しては既に、1日付けで公表されたWashington Post/ABC Newsによる世論調査の結果、トランプ候補の支持率は46%、対してクリントン候補の支持率は45%となり、トランプ候補が1ポイントリードするなど、一部の調査では、トランプ候補のリードが報告されていた。

 BBCの世論調査は、IBD/TIPP、LA Times/USC、ABC News/Wash Post、Reuters/Ipsos、Economist/YouGov、CBS News/NYT、Gravis、NBC News/SM、Fox News、Pew Research、CNBC、USA Today/Suffolk、Associated Press-GfK、CNN/ORC、Quinnipiac、Bloomberg、Monmouthなどお大手各社の世論調査を再集計したもので、いわば、大手の全社の世論調査の平均値を算出したものとなる。

 そのため、個別の世論調査よりもBBCの世論調査結果の方が信頼性は高いものとも考えられている。

 BBCの世論調査結果の時系列で見ると、FBIがクリントン候補に対する捜査再開を発表した30日を契機として、クリントン候補の支持率が下落。
 対して、トランプ候補の支持率は上昇に転じる格好となっており、FBIの捜査再開の決定が如何に有権者に大きな影響を与えたかが判るものとなっている。

 アナリストの間ではまだ、クリントン優位と考える向きが強いが、このままでトランプ候補に追い風が吹いた場合、8日に予定されている大統領選挙の投票は、大接戦となる可能性ともなってきている。

Source: BBC presidential polls
Samuel White is contributing writer of the Business Newsline. Send your comment to the author



現代ビジネス 2016/11//05 歳川 隆雄ジャーナリスト
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50132

大接戦のアメリカ大統領選
~勝敗を決める2種類の票
統計では3%の誤差しかない
 
■勝敗を左右する「隠れトランプ票」

 わずか1週間前、誰が米大統領選の現在の混迷を予測していただろうか――。
 米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官は10月18日、民主党のヒラリー・クリントン大統領候補の「メール問題」に関して追加の捜査が必要と判断、再捜査の方針を文書で米議会に通達した。
 共和党のドナルド・トランプ大統領候補は、クリントン氏の国務長官時代の
 「メール問題」を「ウォーターゲート事件以上の政治スキャンダルだ。
 彼女に大統領の資格はない」
として批判の集中砲火を浴びせ、連日のメディア報道もあり奏功しているのだ。

 事実、米政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」の11月3日付の世論調査によると、クリントン氏支持率はわずか1.3ポイント差のリードまでトランプ氏に猛追されている。
 統計上、誤差の範囲の3%内に入っている。
 8日の大統領選本選は、クリントン、トランプ両氏のどちらが勝ってもおかしくないところまで来ている。

 このような大接戦となった現在、勝敗の帰趨を決めるのは、
①:隠れトランプ票
②:民主党員、特に黒人の投票率
――の2つである。

 2012年大統領選で民主党・オバマ、共和党・ロムニー両候補が同時期に1~2%差の競り合いと報じられたが、各メディアが「隠れ反ロムニー票(=共和党員内のモルモン教徒のロムニー候補への宗教的反発)」を考慮に入れないという失態を犯したことを想起すべきだ。
 結果はもちろん、オバマ民主党候補の圧勝・再選であった。
 今回は、その逆で内心トランプ支持ながら公の場では意思表示できない白人の低中所得層が相当数いるのだ。
 しかも今まで投票所に足を向けたことがない人たちだ。

■終わりの始まりか?

 3回のテレビ討論を経て大統領選終盤戦となり、「ヒラリー圧勝」予測による安心感と「メール問題」などでしらけムードが出てきたためか、これまでの2500万人の不在者投票で新たな傾向が浮かび上がった。
 共和党員の投票率が民主党員のそれを若干上回っているのだ。
 しかも「トランプ効果」によってクリントン陣営が期待するヒスパニック系の事前投票数が前回大統領選の倍近くとなったが、投票数では黒人票に及んでいない。
 その黒人票が前回比30%減なのだ。

 隠れトランプ票及び出足の鈍い民主党の投票率を勘案すると、現在のトランプ氏支持率に2~3%上乗せした数字が相場観ではないか。
 となると、現段階で得票数ではトランプ氏優勢となる。
 しかし、米大統領選の大きな特徴は選挙人制度である。
 世論調査ではクリントン氏劣勢であっても選挙人獲得数では優位に立っている。
 クリントン氏は、焦点の大接戦州ペンシルベニア州(20票)、バージニア州(13票)、コロラド州(9票)に加えてニューハンプシャー州(4票)を獲得できれば、大統領選出に必要な270人に達する。

 だが、FBI再捜査発表前まではクリントン氏は既に272人獲得しているとされたことを考えると、選挙人制度といえども安心できない。
 トランプ氏はここに来てクリントン氏優勢州の個別撃破戦略に打って出たのだ。
 事実、これまでトランプ氏勝利をたとえ仮定でも口にしなかったクリントン氏は3日の演説で初めて「トランプが勝ったら……」と発言、胸中の動揺は隠せないほど追い詰められている。

 最後に、大統領選以上に日本にとって重要なのが、実は同時に実施される上院選である。
 現在、上下院ともに野党・共和党が多数派だが、つい1週間前までは民主党が50対50に持ち込める公算があった。
 そしてクリントン氏勝利の場合、副大統領が投票権を行使するので事実上の民主党の勝利となる。

 ところが、現時点では民主党49対共和党51の見方が有力である。
 「クリントン大統領」誕生であっても新大統領はFBI捜査を背負ったうえの上下院少数与党となり、スタート時から政策執行に困難を伴う。

 また、「トランプ大統領」は共和党がホワイトハウス(大統領府)とキャピトル・ヒル(議会)の両方を制することになり、新大統領は無謀な政策でも執行できる強い権限を持つことになる。
 「トランプ“暴走”大統領」は、今やジョークでは済まされなくなった。



現代ビジネス 2016/11/05 渡辺 将人 北海道大学准教授
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50133

ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる
エレクション・デイ直前レポート
 
■「大統領選挙」に隠れているが…

 ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの支持率は「再捜査」問題で縮まっている。
 これが「もうひとつの選挙戦」に悪影響を与えれば致命傷だ。
 「もうひとつの選挙戦」とは連邦議会選挙、とりわけ上院選挙だ。
 大統領選挙に勝利しても、議会選挙で民主党が勝てなければ、就任初日からヒラリー政権は「レームダック」政権になってしまう可能性がある。

 上院選では、あの「負けたはずの男」、共和党の期待の星マルコ・ルビオも静かに復活中だ。
 「大統領選に敗退したら公職を去る」との約束を撤回。
 フロリダで再選に王手をかけている。

 「もうひとつの」選挙の意味と動向を解説する。


〔PHOTO〕gettyimages
* * *

 偶数年の11月第1月曜日の翌日の火曜日は「エレクション・デイ(Election Day)」と呼ばれる。
 年に1回オリンピック年に大統領選挙が行われ、そうでない間の年を中間選挙という。
 しかし、「大統領選投票日」ではなく、あくまで「エレクション・デイ」なのは、同日多数の選挙が行われるからだ。
 たとえば、連邦議会選挙である。
 下院は2年ごとに改選なので全議席、上院も3分の1の議席が改選される。
 大統領選挙と同じ投票所で、同じ投票用紙(画面)で行われる。
 日本でいえば、衆院選と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査に似た「セット」感だが、有権者の関心事の比重からすると似て非なるものだ。

 「国王」と「首相」を兼ねたような人物を選びながら、片方の院の全議席、もう片方の3分の1を改選する方式で「衆参同一選」をやっているようなものだといえば、このアメリカの「選挙の日」のインパクトをおわかりいただけるだろう。

■大統領選挙の投票率を左右する

 選挙直前でCNNなどの全国メディアだけを見ると大統領選挙一色だ。
 だが、この時期、アメリカ観光や出張のついでに大統領選挙の雰囲気でも味わえれば、という方は要注意である。
 オハイオ、フロリダといった「激戦州」とそれ以外の州では事情が異なるからだ。

 民主党、共和党のどちらかが圧倒的に強い州に行くと、大統領選挙のCMはあまり流れていない。
 大半の非激戦州は、州知事選、上院選、州議会選、市議選などのローカル選挙のヤードサイン(庭に立てる紙の立て札)であふえかえっている。
 ニュースも地元の選挙戦ばかり。
 電話や戸別訪問も地元選挙の呼びかけだ。

 投票所に行く「気力」、すなわち投票率は、各州・各選挙区の地方選挙の盛り上がりに左右される。
 地方選挙に行き、(その州ではどうせ予定調和だったりする)大統領選挙にも「ついでに」投票するという感覚の有権者は少なくない。
 大統領候補2人の競争を見る「全国支持率」の何ポイント・リードというのは、指標としては参考程度の意味合いしかない。

 州ごとにまず総取りで勝敗を決めてからの選挙人の「足し算」においては、各州の議会選の接戦度などが投票率にリアルな影響を持つ。
 「大統領選挙だけのため」に選挙に行く人は、党派的な人にはあまりいないからだ。

■もし上院で多数派をとれなかったら?

 今回、3つの理由で連邦議会選挙、特に多数派逆転の可能性がある上院選が注目だ。

★.1つは、ヒラリー政権が実現したとしても、
  その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だからだ。
 アメリカの大統領の立法権限は極めて限られている。
 大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通らない。
 振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だけ。
 その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからだ。

 2010年の中間選挙で民主党は大敗し、下院で少数党に転落。
 ティーパーティの台頭もあって、「片肺飛行」のオバマ政権は立法面で立ち往生した。
 さらに民主党は2014年中間選挙で、上院も喪失。
 オバマ政権2期目の目玉法案「銃規制」「移民改革」は実現できなかった。
 このことが何を意味するか。
 民主党は最低、片方の院で多数派に返り咲かないと、ヒラリー政権は初日から立法面で完全に立ち往生する。
 いきなり「レームダック」になる。

 ヒラリーはただでさえ第二次大戦後初の民主党3期目を目指している。
 再選のハードルは高い。
 無党派層の有権者心理的に、特定政党の長期化を望まない振り子の作用もあるからだ。
 相当な快進撃で大成果を1期目に残す必要がある。
 だが、議会を共和党に握られたままでは難しい。
 最高裁判事の指名にも上院の承認が要る。

■トランプの巻き添えは勘弁してほしい

★.2つめは、大統領選挙の投票率への影響だ。
 トランプの女性問題の勃発以降、共和党主流派のトランプ離れが雪崩を打ったかに見える。
 なるほど、ジョン・マケイン上院議員、ポール・ライアン下院議長など、トランプに厳しい発言で事実上の決別をしている。
 しかし、彼らがトランプに距離をとるのは、自分が再選年だったり、議席数に責任をもつ議会指導部であったりという事情が絡んでいる。
 トランプ政権は共和党議会指導部としても制御不能かつ予測不可能だ。
 それよりは、共和党議会多数派の維持のほうが、共和党の主流派の望む保守政治継続の確実な道でもある。

 今回の連邦上院選挙は民主党に追い風だ。
 2010年のティーパーティ旋風で「棚ぼた」当選した議員の再選年が、今年2016年に集中しているからだ。
 改選議席は民主の10に対し、共和は24。
 トランプ勝利でも、民主党は上院で5議席勝利すれば多数派の地位を奪還できる。
 ヒラリー勝利の場合は、副大統領が議長として1議席に含まれるので、さらに少ない4議席でよい。

 11月1日時点の「リアル・クリア・ポリティクス」世論調査平均の予想では、共和党は落選確実が1議席、当落線上が7議席もあるのに対して、民主党は落選確実が0で、当落線上も1議席だけだ。
 トランプに対する好悪が共和党内で割れていることは、議会選挙の結果予測を複雑にさせている。
 通常、中間選挙は地元議員を支持する党派的な有権者しか参加しないので投票率が低いのに対して、大統領選挙は議会選挙の票を活性化する。
 しかし、今回はトランプを好まない共和党有権者が「棄権」を選択し、それが議会選挙に悪影響を与える可能性も皆無ではない。

 予備選挙では共和党参加者が民主党を上回っていた。
 その点だけを切り取れば、共和党の本選投票率は高くなるかに思える。
 しかし、熱心なトランプ支持者の多くは、初めて予備選に参加した無党派層だ。
 彼らは反移民、保護貿易主義などでトランプ個人を好いている。
 大統領選挙の投票率を底上げしてくれるが、共和党には関心がなく、議会選挙を左右する献金や動員など草の根活動にも興味を示さない問題がある。

 主流派の票の行方も見えない。
 女性問題でトランプに嫌悪感を感じている郊外女性や穏健派を失えば、議会選挙の共和党候補が巻き添えをくらう。
 地盤の弱い共和党議員から順に、トランプ支持を取り下げているのはそのためだ。

■ルビオ復活

★.3つめは、2020年大統領選挙の前哨戦としての意味だ。
 上院選は大統領選の陰に隠れがちだが、将来の大統領候補の台頭の現場でもある。
 2000年のニューヨーク州の連邦上院選ではヒラリー・クリントンが勝利した。
 2004年全国党大会では、イリノイ州から連邦上院選に出馬中だったバラク・オバマが「1つのアメリカ」演説を披露した。
 今年の注目選挙の1つはフロリダ州。
 大統領選挙で敗退したマルコ・ルビオの再選選挙だ。


●「神の思し召し」で上院議員引退宣言を撤回、再選を目指すルビオ候補〔PHOTO〕gettyimages

 筆者は2015年夏から2016年大統領選挙の各陣営の現地調査を本格化させ、
 気がつけば民主、共和ほぼすべての候補者集会で演説に参加してきたため、
 各陣営に登録したメールアドレスに陣営広報メールが送信されてくる。
 その推移と量を並べると興味深いが、ダントツで多いのはルビオ陣営だ。
 10月末からは1日、5〜6通以上のペースだ。

 大統領選挙の激戦州なのに、メールにはトランプの「T」の字もない。
 「ルビオを救ってくれ」
 「上院多数派維持はフロリダにかかっている」
の説得攻勢だ。
 ルビオは上院議席を放棄して大統領選挙に出る宣言をしていた。
 その「背水の陣」の決意を評価してほしいという選挙戦を展開し、敗北したら「民間人」になるはずだった。
 しかし、「上院議員引退」宣言を突如撤回。
 再選を目指すことになった。

 地元の後援会筋は大歓迎だ。
 もともと、ルビオが大統領に興味を示してせっかくの上院議席を放棄する態度に、支持者らは裏切られたと落胆していたからだ。
 再選回数が議会での権力への道であり、地元への利益誘導もそれで決まる。
 ルビオの若さに「永久再選」の利益をあてこんでいた支持層は、ルビオ復活を応援している。
 だが、ルビオは2020年の大統領選挙出馬を疑われている。
 対抗馬の民主党候補パトリック・マーフィー陣営は「どうせまたルビオは上院の職を放り出すのだろう」と攻撃してきた。
 それを受け、ルビオは「神の思し召しで、6年の任期を全うする」と約束した。
 だが、大統領選挙への出馬については明言を避けている。

 「どうせ2020年直前になればルビオは、神の思し召しで、上院議席半ばで大統領に挑戦する、とでも言うに違いない」
とフロリダ州民主党関係者は手厳しい。
 たしかに「神の思し召し」は便利なエクスキューズだ。

 共和党のトランプ指名も、ルビオ再出馬のエクスキューズになった。
 ルビオは「私が考えを変えて再選を目指しているのは、(ヒラリーとトランプ)どっちが大統領になっても議会上院で大統領と戦う必要があるからだ」と述べている。

■ジェブとルビオの休戦

 「トランプ要因」はジェブとルビオの休戦原因にもなった。
 ルビオはフロリダ州を地盤にしながら、元フロリダ州知事のジェブの支援者との暗黙の約束を破って2016年予備選に出馬し、ジェブの面子を潰した経緯がある。
 腹を立てたジェブも「上院でルビオは何の成果も残していない」とかつての「弟子」を攻撃。
 ジェブは撤退後もルビオを支持せず静かに妨害した。
 フロリダでジェブの組織がまったく動かず、ルビオはトランプに敗北する。
 だが、頭を冷やしたジェブは、「ルビオの反乱」ではなく、「トランプ旋風」こそ伝統的共和党にとって真の危機と再認識する。
 「トランプに投票しない」と今年5月に明言。
 ブッシュ家は今年の共和党全国大会をボイコットした。
 共和党主流派が将来的に「トランプ旋風」を封じ込めるには、主流派若手の星ルビオがやはり必要と、ルビオの上院再選支持に転じた。

 11月1日時点での世論調査平均では、ルビオと民主党対抗馬は49.2対44.8で、ルビオが4.4ポイントほどリードしている。
 ルビオは2017年1月に議員バッジを外す予定だったのに、奇跡の復活を遂げつつある
 共和党大統領候補への「党内反発」が、共和党上院選での「支援連合」を活性化させるという不思議な展開も、いかにも異例尽くしの選挙年を象徴している。

 11月8日(現地)の投票日は、大統領選挙の勝敗以外に、連邦議会選挙で民主党が上院で多数派を握れるか、下院の議席がどの程度縮まるかも注目点である。





http://www.dailymotion.com/video/x50y2py_nhk%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB-11%E6%9C%885%E6%97%A520161105_fun
NHKスペシャル 11月5日20161
揺らぐアメリカはどこへ:混迷の大統領選挙



BBC News 11/7(月) 17:14配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161107-37892995-bbc-int

【米大統領選2016】本当のヒラリー・クリントンとは  レンズの中の人生

  11月8日の米大統領選で、仮にヒラリー・クリントン氏が当選すれば、初の女性米大統領となる。
 ファーストレディ、上院議員、そして国務長官として、米国政治の中枢で人生のかなりの部分を過ごしてきた人だ。
 しかしこれほどの一挙手一投足を検分されてきた人にしては、自分は「本当」のヒラリー・クリントンを知っていると思う人は少ない。
 多くのアメリカ人は、ただひたすら彼女は信用できないと言う。
 シカゴからホワイトハウスへ、そしていま再びホワイトハウスに戻ろうとしている人の、その足跡をたどる。(文中敬称略)

○:1947年10月26日 シカゴ生まれ

 シカゴ北部のエッジウォーター病院はもう閉鎖されている。
 地元の人たちにしてみれば、放置されたままで目障りな建物だ。
 しかし1947年10月の当時、病院は活気にあふれていた。
 28歳のドロシー・ロダムは1942年に夫ヒューと結婚し、5年後のこの日に最初の子供、ヒラリーを出産した。
 両親に捨てられ辛い子供時代を過ごしたドロシーは、自分は同じ間違いをしないと心に決めていた。
 母親についてクリントンは2007年に、
 「母親は結局、大学に行く機会がなかったけれども、母のおかげで、自分がこうと決めたことは何でもできるんだと確信するようになった」
と話している。
 ヒラリーの父ヒューは、第2次世界大戦中には海軍の保健体育指導員だった。
 断固たる保守派で、怒りやすく、子供たちには努力して成功するよう発破をかけ続けた。
 そして娘ヒラリーには、男にできることは何でもできると教えた。

○:1962年4月15日 マーティン・ルーサー・キングに会う

 当時の米国で最も激しい毀誉褒貶(きよほうへん)にさらされていたひとりが、1962年4月にシカゴのオーケストラ・ホールで演説した。
 公民権や米国の未来について語ったキング牧師は、演説の後、住民の大多数が白人で保守的なシカゴ郊外に暮らす、早熟な15歳少女と握手した。ヒラリー・クリントンはこの出会いが、自分にとてつもない影響を与えたと話している。
 2014年にクリントンは、
 「正義のための戦いに参加しなさい、世界が自分の周りで変わっていくのに居眠りしていてはいけないと、この牧師が訴えかけてくる。
 それを私は身を乗り出して聞いていました」
と振り返った。
 そもそもこの集会に行くようクリントンを促したメソジスト教会のドン・ジョーンズ牧師も、クリントンに深い影響を与えた。
 一貫してメソジスト派のクリントンは、ジョーンズ牧師が2009年に死去するまで、親交を温め続け、追悼式では「行動する信仰という言葉の意味を教えてくれた」と牧師をしのんだ。

○:1964年 ゴールドウォーター・ガール

 今では民主党の大統領候補だが、高校時代のクリントンは「若い共和党員」のひとりで、1960年の大統領選予備選では、バリー・ゴールドウォーター候補の選挙活動に参加していた。
 「ミスター保守」とあだなされたアリゾナ州選出の上院議員は1960年に、「保守の良心」という有名な文書を発表。
 これは後のレーガン大統領の政策目標の原型となり、現在の共和党の政治思想にも大きな影響を与えたとされる。
 高校生でまだ選挙権のなかったヒラリーは後に自伝で、ゴールドウォーターの政治信条が掲げる「無骨な個人主義」に惹かれたと書いている。
 「私は生まれついての民主党支持者だったわけではない」
と書いたクリントンは、1996年に公共ラジオとのインタビューで
 「私は保守主義の中で育てられたので、私の政治信条は保守主義に根差している」
と話した。

○:1969年 ウェルズリー大学で反対側に

 ヒラリーの政治信条は大学で変わった。
 「頭は保守で、心はリベラルというのは可能でしょうか?」 
 ヒラリーは当時、ドン・ジョーンズ牧師に尋ねたという。
 女子大ウェルズリー大の卒業式で、卒業生代表として同級生や教師たちを前に答辞を述べたヒラリーは、主賓のエドワード・ブルック上院議員(共和党)が学生による政治的抗議運動を批判したことに、即興で情熱的に反論し、全国的に注目された。
 イェール・ロースクールに入学すると、アーカンソー州出身の若いリベラル、ウィリアム・ジェファソン・クリントンと出会う。
 その頃のヒラリーはすでに、若いころの保守主義を離れ、民主党支持者となっていた。
 ヒラリーが友達の母親にビルを紹介した際には、
 「あの子は何があっても手放しちゃだめよ。
 男の子と一緒にいてあなたが笑うの、初めて見たわ」
と諭されたそうだ。

○:1972年 マクガバン候補を応援

 イェール大学でヒラリーとビルはたちまち、一心同体のような関係になった。
 コネチカット州ニューヘイブンにある大学の近くに、一緒に暮らす最初の家を借りたのと同時に、政治の世界の長い旅路を一緒に歩き出した。
 この年の大統領選の民主党候補は、サウスダコタ州選出のジョージ・マクガバン上院議員だった。
 この時点ですでに7年も続き、大量の死傷者を出していたベトナム戦争について、議員は米軍の行動を公然と激しく批判していた。
 ビルとヒラリーは学業の傍ら、マクガバンを応援すると決めた。
 選挙活動に参加するため2人はテキサス州の陣営本部に向かったものの、現職のニクソン大統領相手に勝てる見込みはほとんどなかった。

○:1974年 ウォーターゲート――大統領を捜査

 アーカンソーにいたヒラリーとビルのところにこの年の1月、古くからの知人が電話をかけてきた。
 2人のキャリアの出発点になるかもしれない、大きなチャンスだった。
 民主党全国委員会の事務所に盗聴器をしかけようと侵入した男たちの逮捕を皮切りに、汚職の足跡をたどっていくと、最終的には大統領にまでたどりついた。
 マクガバンに圧勝したその2年後、リチャード・ニクソンは恥辱にまみれていた。
 弾劾裁判に向けて疑惑を捜査する下院司法委員会は、特別検察官にジョン・ドアー弁護士を任命。
 公民権運動を支援し、ジョンソン政権の1964年公民権法の策定に参加したドアーは、旧知のビルとヒラリーに、ウォーターゲート事件の捜査に参加しないかと電話してきたのだ。
 アーカンソー州知事選を目指していたビルは辞退したが、ヒラリーは応じた。
 弱冠26歳で、米国史上たった2度目の大統領弾劾裁判のため証拠を集める弁護士チームの一員となったのだ。
 2003年の自伝「リビング・ヒストリー」でクリントンは、
 「私は26歳で、周りの人たちの顔ぶれと、自分たちに託された歴史的な責任の重さに圧倒されていた」
と書いている。

○:1975年10月11日 アーカンソーで結婚

 ニクソン大統領が辞任した後、ヒラリーは自分は次にどうするべきか悩んでいた。
 ワシントンに残れば前途は有望だったが、ビルを愛していたし、ビルはアーカンソーにいた。
 そこでヒラリーは、ビルが教鞭をとっていたアーカンソー大学で自分も法律を教えることにした(ビルは1974年の知事選に6000票差で敗れていた)。
 この時点でヒラリーはすでに何度か、ビルのプロポーズを断っていたのだが、この時にあらためて聞かれてついに「イエス」と答えた。
 2人は1975年10月、自宅の応接間で式を挙げた。
 司式したメソジスト派のビック・ニクソン牧師は、ビルの知事選の選挙活動に参加してくれた人だった。
 ヒラリーは前の晩に母親と選んで買ったドレスを着ていた。
 娘チェルシーは1980年に生まれた。
 2014年の自伝「Hard Choices (難しい選択)」でクリントンは、
 「自分の心に従ってアーカンソーに行た。
 娘チェルシーの誕生で、その心は愛であふれかえった」
と書いている。

○:1978年 「アーカンソー州のファーストレディ」

 夫ビルが、州司法長官から州知事となり、政治的野心を実現していく傍らで、ヒラリーはローズ法律事務所に職を得て、ただちにパートナーに昇格した。
 地元出身ではなく、旧姓ロダムを使い続け、法廷弁護士としてのキャリアを持つヒラリーは、典型的な政治家の妻ではなく、それゆえに注目を集めた。
 州知事の年収は上限3万5000ドルと定められていたため、稼ぎが多いのはヒラリーの方だった。
 この間、クリントン夫妻は商品取引に投資して成功し、古くからの知人ジム・マクドゥーガルから不動産を購入した。
 ビルは州知事として1980年に再選を阻まれたが、1982年にまた選ばれた。
 ヒラリーはこの間、「ヒラリー・ロダム・クリントン」と名乗るようになる。
 自伝「リビング・ヒストリー」でヒラリーは、
 「自分の旧姓を残すことより、ビルがまた知事になる方が大事だと決心した」
と書いている。

○:1992年 「ひとつ買えばもれなく2つ」

 アーカンソー州のクリントン政権で、ヒラリーは活発に活動した。
 任期終了を前に、ビルは大統領に出馬した。
 夫婦というだけでなく、政治的なパートナーでもある2人の関係は、マスコミの注目を浴びた。
 ニューハンプシャー州の支援者集会でビルが「ひとつ買えばもれなく2つついてきますよ」と冗談を飛ばすと、マスコミはこの発言に飛びついた。
 中には、ヒラリーが「共同大統領」になろうとしている証拠だと主張する者もいた。
 注目の度合いが増すにつれて、2人の関係はぎくしゃくした。 
 ビルと州政府職員ジェニファー・フラワーズが12年にわたり不倫関係にあったという報道を受けて、夫妻は1992年1月、CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」に出演。
 ビルは、12年間の不倫は否定しつつも、夫婦関係を傷つける問題行動はあったと認め、その横でヒラリーは、
 「私は(カントリー歌手)タミー・ワイネットが歌うみたいに、ただ自分の男を支え続ける可愛い女としてここにいるのではなくて、私はこの人を愛して尊敬しているから、そしてこの人と私たちが一緒に乗り越えてきたことを尊重するから、ここにこうして座っているんです」
と主張した。
 11月3日にジョージ・H・W・ブッシュ大統領(ジョージ・W・ブッシュ大統領の父)を破り、ビルは大統領に当選。
 そして、ヒラリーはファーストレディになった。

○:1995年 女性と医療

 回顧録でヒラリーは「ファーストレディになる訓練マニュアルなどない」と書いた。
 「自分自身の声を失うことなく」国に尽くすのだと、心に決めていた。
 ビルはヒラリーが政権に参加することを希望し、医療改革をまかせた。
 米国では何百万もの人が、病気になると重い経済負担を背負わされていた。
 しかしこの改革努力は、国を分断した。
 「社会保障政策のエベレストを上るようなもの」と呼んだ記者もいた。
 そしてそれをヒラリーが主導したことが批判を呼び、改革案は成立せずに失敗した。
 ヒラリーはいまだに政権内で自分の目的を確かなものにできずにいたが、1995年に北京で開かれた国連の第4回世界女性会議に出席し、こう述べた。
 「人権とは女性の権利で、女性の権利とは人権なんです」
 この演説を機に、女性の権利推進はヒラリーの重要な政策課題となり、女性の権利は国際社会の主要テーマとして確立された。

○:1996年 ホワイトウォーター

 クリントン政権の1期目を通じて、アーカンソーのジム・マクドゥーガルとの不動産取引を問題視する指摘が相次いだ。
 1978年当時、州司法長官だったクリントン夫妻が、マクドゥーガル夫妻と共同でリゾート開発用の広大な敷地を購入し、「ホワイトウォーター開発社」を創設したことに端を発する。
 後にマクドゥーガルがヒラリーに資金提供したり、ローズ法律事務所に業務委託したことなどが、次々に問題視された。
 ロバート・フィスク特別検察官による捜査では、不法行為の証拠は発覚しなかった。
 しかし後任のケネス・スター特別検察官は捜査を続けた。
 1996年1月にヒラリーは、大陪審に証言するよう喚問を受けた。
 ファーストレディーが大陪審の前で証言するのは、これが初めてだった。
 4時間におよぶ尋問の末、法廷の外に待ち構える報道陣の前に姿を現したヒラリーは、ドラゴン柄のコートを着ていた。
 あまりにこのコートが話題になったため、ホワイトハウスは、コートの柄に特に意味はないとコメントせざるを得ない始末だった。

○:1998年 モニカ・ルインスキー

 ケネス・スター特別検察官の捜査は、ヒラリーによる不法行為の証拠は見つけられなかった。
 しかしその過程で、確かな不倫の事実を見つけだし、ヒラリーと世界に衝撃を与えた。
 1996年の大統領選でビルは得票率49%で再選された。
 しかし、モニカ・ルインスキーというホワイトハウスの若いインターンとの不倫関係が明るみに出たことで、大統領としての統治力も、ヒラリーとの夫婦関係も、大きく揺らぐことになった。
 ビルは当初、不倫の事実を否定。ヒラリーもそれを信じ、右派の陰謀のせいだと非難した。
 しかし8月の土曜日の朝、部屋を歩き回るビルが、ヒラリーを起こして、すべてを白状したのだ。
「どういうこと?  何を言ってるの?  なんで私に嘘をついたの?」
とヒラリーは叫んだという。
 自伝「リビング・ヒストリー」でヒラリーはこう書いている。
 「ビルの支持率は、世間の間では高いままだった。しかし私の中では完全に底を打ってしまった」。

○:1999年 「あえて挑戦する」

 弾劾裁判に直面する夫をよそに、ヒラリーは未来を見据えていた。
 上院が決断する間、ヒラリーは自分は次にどうしたいのか考えていた。
 ニューヨーク州選出のダニエル・モイニハン上院議員(民主党)が引退を表明したのを受けて、民主・共和両党から多くの有望な後継者の名前が挙がった。
 ヒラリーの名前もすぐに浮上したが、本人は揺れていた。
 脚光を浴び続けてきただけに、ストレスはたまっていた。
 激しい選挙戦に身を投じるのは、生易しいことではなかった。
 しかし、女性スポーツ選手に関するドキュメンタリー「Dare to Compete(あえて挑戦する)」のプロモーション・イベントに参加したヒラリーに、17歳の背の高い女子高生がささやいた。
 「あえて挑戦するんですよ、ミセス・クリントン。あえて挑戦するんです」
 このバスケットボール選手の言葉をきっかけに、自分は出馬を決めたのだと、ヒラリーは何度も語ってきた。
 そしてファーストレディ経験者として初めて、公職に当選したのだ。
 自伝「リビング・ヒストリー」でヒラリーはこうも書いている。
 「これまでで何より決断するのが大変だったのは、ビルとの結婚を続けるかどうかと、ニューヨークから上院に出馬するかどうかだった」。

○:2001年9月11日 9/11

 ヒラリーが上院議員となってまだ1年もたたない9月11日に、米同時多発テロが起きた。
 新人議員としてヒラリーは、全米の市民と衝撃や悲しみを分かち合った。
 攻撃そのもので3000人近くが死亡し、6000人以上が負傷した。
 ヒラリーの尽力もあり、ニューヨークは連邦予算から210億ドルの援助資金を取り付けることができた。
 現場に急行した多くの警官、消防士、救命士たちが現場で死亡したり、連日の作業で吸い込んだ粉塵などの影響で深刻な疾病に侵されることになった。
 そうした人たちが十分な補償を得られるよう、ヒラリーは闘い続けた。
 ヒラリー・クリントンは政府の仕組みや政策課題を熟知している、結果を出せると、多くの民主党関係者が彼女を高く評価するようになる。

○:2008年 ガラスの天井にひび

 2006年に楽勝で上院議員として再選されたクリントンは、あらためてホワイトハウスを視野に入れた。
 2008年大統領選を目指して、早い段階で民主党の最有力候補となったクリントンは、カリスマ性にあふれる若い新人上院議員、バラク・オバマに対して激しく、時に相手を辛辣に罵倒しながら戦った。
 1990年代に相次いだスキャンダルが全国レベルでの評判に影を落とし、4月の世論調査では61%がヒラリー・クリントンは信頼できない、もしくは正直ではないと答えた。
 接戦ではあったが、希望と変化を呼びかけるオバマのメッセージが最終的には勝利した。
 米国初の女性大統領を目指したクリントンは、負けを認めるしかなかった。
 クリントンは6月7日の演説で敗北を認め、
 「あの一番上にある、一番固いガラスの天井を砕くことは、今回はかないませんでした。
 でも皆さんのおかげで、1800万ものひびを入れることができました」
と支持者に感謝した。

○:2009年 国務長官

 指名獲得に敗れたヒラリーは、ただちにオバマ陣営の応援に精力的に参加した。
 オバマがついに共和党候補のジョン・マケインに勝つと、ヒラリーの電話が鳴った。
 オバマからだった……。
 国務長官になってほしいというオバマに、ヒラリーはこの人がいい、あの人もいいと有望な候補の名前を次々と挙げて行ったが、最後には受け入れた。
 「もし立場が逆だったら自分も、なんとしても彼を政権に入れたいと思ったはずなので」
 国務長官は政府内でも特に重要なポストの一つで、女性の就任はたった3人目だった。
 クリントンは国務長官として、実に112カ国を訪れ、150万キロ以上を移動してのけた。
 ファーストレディとしての経験を生かして、各国首脳と内外で力強い関係を築くことができた。
 民主党重鎮のハリー・リード上院院内総務は政治ニュースサイト「ポリティコ」に、「オバマ政権2期目に実現した外交上の勝利は、そのほとんどすべてにクリントン国務長官の指紋がついている」
と話した。

○:2012年 「米国人4人が死亡」

 民主党の同僚たちは国務長官としてのクリントンをさかんに称えるが、国務長官時代には対立もあった。
 2012年9月11日、リビア・ベンガジの米国領事館が襲撃され、米国のリビア大使クリス・スティーブンズを含む米国人4人が殺害された。
 共和党と保守系メディアは激怒し、オバマ政権の責任、中でも特にヒラリー・クリントン率いる国務省の責任を糾弾。
 国務省が領事館の安全に関する警告に、適切に対応しなかったと非難した。
 非難が高まるなか、2013年2月にクリントンは辞任。
 しかし真相究明の調査は続き、2013年5月の下院監視・政府改革委員会の公聴会で、クリントンは
 「抗議行動のせいなのか、それともアメリカ人を殺してやろうと考えた男たちのせいなのか。
 その違いは現時点で大事なことですか?」
と反論した。
 さらに2015年にも下院特別委員会の公聴会で証言し、ベンガジ襲撃について自分は「責任を果たした」と答弁した。

○:2015年 メール問題

 ベンガジについてヒラリーの行動を調査しても、問題を示す証拠は出てこなかった。
 しかし調査継続のために、あらためて委員会が招集された。
 その調査の中で、クリントンが国務長官時代に公務メールを私用サーバーで扱っていたことが発覚した。
 私用サーバーの使用は規則違反だと批判され、クリントンは何万通ものメールを証拠として提供することになった。
 右派の論客たちは、クリントンの訴追を求めた。
 連邦捜査局(FBI)は7月と11月の2度にわたり、メールの内容は訴追に相当しないと判断を示した。
 コーミーFBI長官は7月5日、クリントン氏とスタッフは「極めて不注意」だったものの、起訴に相当する内容はなく、「まともな検察官」ならば立件しないと述べ、FBIとして司法省に訴追は適当ではないと勧告すると発表。
 10月末に新たに関連するかもしれないメールについて捜査すると発表したが、11月6日にあらためて、「クリントン長官について7月に発表した結論に変わりはない」と表明した。
 しかし政敵たちは依然として、クリントンの逮捕を求めている。

○:2016年 バーニーを破る

 2015年4月にクリントンは、再びホワイトハウスを目指すと出馬を発表した。
 最も有名な候補として、今回も早い段階から有力視された。
 しかし多くの民主党支持者、とりわけ若い有権者は、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員を支持した。
 予想外なことに、サンダース議員は最後までクリントンを追い詰めたが、最終的には指名獲得に必要なだけの代議員を獲得できなかった。
 7月にフィラデルフィアで開かれた民主党全国党大会でクリントンは、女性として初の主要政党の大統領候補になった。
 これに先立ち夫のビルは、
 「僕にとって最高のチェンジ・メーカー(変化をもたらす人)だ」
と演説。
 「物事が大変になっても、彼女は絶対に諦めない。
 ヒラリーは絶対にあなたたちを見捨てたりしない」
と約束した。

○:2016年11月8日 大統領選

 ヒラリー・クリントンほどの経験値をもつ大統領候補は、ほかにほとんどいない。
 しかしそれでも有権者の多くは、ヒラリーが何のために戦ってきたのか、分からずにいる。
 ドナルド・トランプでないことは確かだ。
 そして多くの有権者にとっては、それだけで十分、彼女に入れる理由になる。
 その一方で、何があっても絶対にヒラリーには入れないという人もいる。
 政策論争がほとんど脚光を浴びず、両候補のキャラクターや発言ばかりが注目されてきた選挙戦の末、米国民はどちらを選ぶのか。間もなく答えが出る。

(英語記事 Who is the real Hillary Clinton? )



ロイター  2016年 11月 9日 10:26 JST Bill Trott
http://jp.reuters.com/article/usa-election-trump-profile-idJPKBN1330WE?sp=true

焦点:破天荒な言動で物議醸す、
実業家トランプ氏の横顔

[ワシントン 6日 ロイター] -
 自らを世界でも有数のビジネスマンに仕立て上げた大言壮語、誇大表現、メディア操縦術に拍車をかけることで、ドナルド・トランプ氏は17カ月に及ぶ大統領選を通じて、米国における民主主義の伝統をひっくり返した。

 エスカレーターが延びる壮麗なトランプ・タワーの入口から、共和党の大統領候補指名争いに打って出たのは2015年6月16日だ。
 トランプ氏は、カリスマ的で戦闘的、エリート主義と大衆主義、猥雑さと信心深さという二つの面をそれぞれ同時に使い分け、米有権者にみられる両極化と反ワシントン感情という鉱脈を探っていった。

 民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(69)を相手に戦う8日の大統領選挙において、70歳のトランプ氏は初めて公職の座を狙う。
 同氏はこれを「選挙」ではなく「運動」と称している。
 集会には熱狂的な群衆が集まり、「誰もが思っていることを言うだけ」のトランプ候補に喝采する。
 懐疑的な人々は、同氏のことを女性蔑視、無知、粗野で大統領不適格、人種差別主義者で偽善者、デマゴーグで性犯罪者とのレッテルを貼っているが、トランプ氏自身はこうした非難をすべて否定している。

 トランプ氏は10カ月余りで16人のライバルを退け、主要政党としては1950年代のアイゼンハワー大統領以来となる、政治経験をまったく持たない大統領候補となった。
 予備選では過去最高の得票数を記録したが、その過程で党内に亀裂を生み出した。

 そして、クリントン氏との対決に臨んでいる。
 そこでは、陣営スタッフの混乱、女性へのわいせつ行為の告発、そして「クリントン候補とメディアが結託して不正選挙を行っている」という、誰も賛同しない主張を行うなど、物議を醸してばかりの選挙戦となった。

 今回の選挙戦で負けた場合、その結果を受け入れないかもしれないとトランプ氏が示唆したことは、平和的な政権移行という米国の伝統を否定するものとして、多くの人に衝撃を与えた。
 トランプ氏は、大統領になったら、国務長官在職時のクリントン氏による私的メール問題について捜査を行うと述べ、彼女を刑務所に送り込むと誓っている。

 トランプ氏の選挙運動は10月、スキャンダルの様相を呈した。
 2005年、トランプ氏が、撮影されているとは気づかずに、テレビの娯楽番組記者に対して、自分は相手の同意なく女性にキスするのが好きで、金持ちで有名人だから、相手の性器に触れても相手は一切抗議しないと発言するビデオが公開されたのだ。

 トランプ氏はこの発言を「単にロッカールームでの会話の様なもの」と一蹴したものの、その後に10人以上の女性が、トランプ氏から身体に触れられた、あるいは性的な言葉で口説かれたと告発。
 これらについても否認している。

■<米国を覆う憂鬱>

 大統領選を通じて(特に7月の共和党大会における演説において)、トランプ氏は、中国やメキシコ、ロシア、そして過激派組織「イスラム国」に対して膝を屈する「暗い米国」を描き出した。
 邪悪な企業関係者と腐敗した政治家に圧迫され、「アメリカン・ドリームは死んでしまった」と述べ、自分だけが米国を復活させられると主張した。

 トランプ氏は、自らの個性と交渉スキル、ビジネス上の識見を駆使して、米国を再び偉大な国にすると言う。
 彼が示しているのは、中国から経済的な譲歩を勝ち取る、米国の南部国境に壁を築いて不法移民を締め出し、その費用をメキシコに負担させるといった漠然とした計画だ。

 トランプ氏は「オバマケア」の撤廃を約束し、「歴代の大統領のなかで最も多くの雇用を生み出す」と述べ、戦火で荒廃した中東諸国の人々が米国に流入することを拒否することを提案している。
 これは、かつてのムスリム入国禁止案の修正版だ。

 トランプ氏は自らを究極のサクセスストーリーの主人公として打ち出している。
 美女とデートを重ね、そのうち3人と結婚し、自分が司会を務めるリアリティ番組を持ち、自分の名前を大きな金文字で刻んだ高層ビルを建設した。
 自分の人生のすべてが最も偉大で、巨大で、最高級で、最大の成功であると彼は言う。

 もっとも、トランプ氏を批判する人々によれば、彼は倒産も経験しているし、ニュージャージー州アトランティックシティのカジノも破綻している。
 納税を回避していたという証拠を示され、見当違いのプライドを示していたとも言われている。

 大統領選挙をバカにしていた過去もあり、当初、トランプ氏の大統領選出馬は、単にエゴを満足させ、自分のブランドに箔をつけるためのプロジェクトだと見る向きもあった。
 短期間で撤退すると予想されていたが、選挙戦が進むなかで、大規模な集会と、大半が無視された草の根の取り組みに依拠する型破りな選挙運動にもかかわらず、彼は最有力候補となり、各州の予備選で勝利を重ねた。

 採用されたアドバイザーたちは次第に、トランプ氏を制御する方法が限られていることを悟るようになった。
 トランプ氏の側近は、彼の子のなかで最も年上の3人であるドナルド・ジュニア、エリック、イバンカ、そしてイバンカの夫であるジャレッド・クシュナー氏で固められていた。

■<ツイッターでの攻撃>

 かつては民主党員として登録していたこともあるトランプ氏の台頭は、共和党に激震をもたらした。
 党内主流派は、トランプ氏が党の綱領に忠実かどうか疑義を呈し、結束して彼に対抗した。
 大統領経験者であるジョージ・H・W・ブッシュ氏、ジョージ・W・ブッシュ氏や議会指導者などの党幹部は、トランプ氏を避けるか、中途半端な支援しか与えなかった。

 トランプ氏はツイッターを武器として駆使し、「いんちきヒラリー」をはじめ、共和党のライバルに対しても「ちびのマルコ(・ルビオ氏)」、「(ジェブ・)弱虫(ブッシュ)」、「嘘つきテッド(・クルーズ)」など、自分を攻撃する者への中傷や嘲りをまき散らした。

 この他にも、イラクでの戦闘で死亡した米陸軍大尉の遺族も標的になった。
 ムスリムだった兵士の父親が、民主党全国大会でトランプ氏を批判するスピーチをしたためだ。
 トランプ氏は、気持ちを切り替えるべきとのアドバイスに逆らい、数日にわたって父親への攻撃を続けた。
 ニューヨークタイムズ紙の集計によると、出馬表明から10月末までにトランプ氏がツイッターで中傷した人や物は282に及ぶという。

 トランプ氏の選挙運動は矛盾にあふれている。
 同氏は米国に雇用を取り戻すと公約しているが、彼が身につける衣類や選挙運動用の帽子は外国で生産されている。
 金の力で政治が腐敗していると批判する当人が、影響力を金で買っていると自慢している。

 トランプ氏の建設プロジェクトでは未登録労働者も活用されていたが、候補者としての彼は、不法移民を強制送還すると公約している。
 自分ほど女性を尊敬している人間はいないと言うが、女性に対するわいせつ行為が告発される前でさえ、ライバル候補のカーリー・フィオリーナ氏の容姿をからかい、フォックスニュースのメギン・ケリー氏の生理周期への当てつけなど、女性蔑視の姿勢で有名だった。

■<「お前はクビだ」>

 トランプ氏の選挙運動に見られる特徴的な姿勢は、テレビのリアリティ番組「アプレンティス」で司会を務めた経験に由来しているようだ。
 この番組で彼は、競争に敗れた参加者に「お前はクビだ」と吠えたて、視聴者の喝采を浴びた。

 彼の演説は原稿もないことが多く、自分の資金力から知能指数に至るまで、ありとあらゆることを自慢するのが特徴だ。
 根拠の怪しい断定、事実誤認、虚偽の主張が散りばめられている。

 トランプ氏は、クリントン氏が連邦最高裁判所の判事にリベラル派を指名することを阻止するために、銃所持権の支持者には何かできることがあると述べ、クリントン陣営から危険な発言だと批判された。

 100億ドルの資産があるとトランプ氏は自慢するが、
 9月にフォーブス誌が発表した推計では37億ドルとされており、米国の富豪としては156位
とされている。

 トランプ氏は、もっと普通の候補者であれば命取りになるようなコメントを定期的に発している。
 たとえば「私の支持者は非常に忠実だから、ニューヨーク5番街で私が誰かを撃っても1票たりとも減らないだろう」などの発言がそうだ。

 5月には、トランプ氏を被告とする訴訟を担当した裁判官が、米国生まれではあるが両親がメキシコ移民だったことを理由にその公平性に疑問を投げかけ、人種差別だとの批判を招いた。

 討論会のなかで自分の性器の大きさを自慢した候補者など、彼以外には存在しない。
 ロシアのプーチン大統領からは「聡明で才能のある指導者」と呼ばれてご機嫌だった。

 トランプ氏は、2008年に共和党大統領候補だったジョン・マケイン氏がベトナム戦争中に捕虜になったことを嘲笑し、トランプ派の集会で抗議する人の顔を殴りたいと発言した。

■<やっかいな子ども>

 トランプ氏は1946年6月14日、ニューヨーク市クイーンズ区の裕福な家庭に生まれた。
 ニューヨーク最大の不動産デベロッパー・地主の1人となる父フレッド・トランプ氏とその妻のあいだに生まれた5人の子の第4子である。
 この父親から自己宣伝と闘争本能の大切さを教え込まれた。

 本人が認めているように、トランプ氏は行儀の良い子どもではなく、8年生のとき、両親は必要な規律を叩き込まれることを期待して、彼をニューヨーク陸軍幼年学校に送った。
 ベトナム戦争中は学生や医療関係者を対象とする徴兵猶予があったため、トランプ氏は一度も軍務に就いたことはないが、この学校で「従軍した大半の連中よりも多くの軍事教練を」受けたと話している。

 ペンシルバニア大学を卒業したトランプ氏は父親の経営する会社で働き始める。
 事業の中心は、クイーンズ、ブルックリン、スターテン・アイランドといったニューヨーク市外縁の区であり、1万5000棟のアパートを保有していたと見られる。
 1973年、トランプ親子は賃貸業務における人種差別の告発を受けたが、後に政府との和解に漕ぎつけた。

 トランプ氏は父親から100万ドルの融資を受け、ついに自らマンハッタンでの事業に乗り出した。
 市内の最高級クラブのいくつかで常連客となり、好色漢として名を馳せることになる。

■<旗艦ビル「トランプ・タワー」>

 じきに彼は、ニューヨークのグランド・セントラル駅近くの古いホテルを改修するなど、一連の不動産開発取引で名を馳せるようになる。
 1983年には彼の象徴となる58階建ての「トランプ・タワー」をオープンした。
 彼自身の主たる住居であり、トランプ・オーガナイゼーションの本社も入居している。

 その後、複数のゴルフコースやフロリダ州のプライベートリゾート「マー・アー・ラゴ」、ニューヨークの高名なプラザホテル、複数のカジノなど世界各国でのプロジェクトを手がけることになる。

 彼のプロジェクトがすべて成功したわけではない。
 失敗例には、不動産ビジネスに力を入れるトランプ大学、住宅ローンのトランプ・モーゲージ、トランプ航空、トランプ・ウオッカなどがあるが、彼の帝国から輝きを奪い去ったのは、アトランティックシティにある4カ所のカジノでの失敗だった。

 「TrumpNation: The Art of Being the Donald(原題)」の著者ティモシー・オブライエン氏は、1990年代にトランプ氏の資金は底を突き、兄妹に2回借金を申し込まなければならなかったと書いている。
 元従業員によれば、家族の支援がなければトランプ・オーガナイゼーションは倒産していただろうと語っているが、トランプ氏本人は1997年の著書 「Trump: The Art of Comeback(原題)」のなかでこれに反駁している。

 トランプ氏自身が個人破産を申請したことは一度もないが、賭博産業の衰退に伴い、トランプ氏の企業帝国の一部は、1991年、1992年、2004年、2009年に倒産を申請している。
 2009年の倒産時には、無担保の債権者たちは債権の1%も回収できなかった。 
 倒産申請の4日前にトランプ氏は会長職を辞していた。

(翻訳:エァクレーレン)



Wedge 2016年11月7日 土方細秩子 (ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8143

米大統領選、AIはトランプ有利を予測

 AIとは人間の頭脳を真似、様々な情報から答えを導き出すシステムだ。
 しかし情報のインプットによっては時にとんでもない答えが出ることもある。
 例えば今年3月、マイクロソフト社は開発中だった「Tay」という喋るAIシステムを削除する、と発表した。
 ツイッター上に登場し、「まるでティーンエイジャーの女の子のような話し方をする」AIとして話題となったが、登場後わずか24時間でTayは
 「ブッシュが2001年の同時多発テロの犯人。
 ヒトラーが生きていれば現代の指導らよりも偉大な仕事をしただろう。
 ドナルド・トランプこそ私たちに残された最後の希望」
などとツイートするようになった。

 これはTayが参加したチャットグループなどから、彼らの言葉を学び、情報の多いものを優先的に「正しい」と判断したために起こった。
 こうした発言のほか、英語ではタブーとされる4文字ワードやセックスがらみの発言も多く、
 「実際の人間が発する言葉から正しく情報を読み取ることの困難さ」
 「良識を備えない機械の限界」
と批評された。

■インド発のAI「MoglA」

 そんな中でインドで開発されたAIシステム、MoglAが、驚きの予測をしたことが話題になっている。
 MoglAグーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどのインターネットサイトをスキャン、分析し、そこから未来予測をする、というAIだ。
 過去にはインドでの選挙や米大統領選挙の結果を正しく予測したという。
 MoglAは2004年にサンジャブ・レイ氏が設立したGenic.aiという企業により開発されたもの。
 当初から選挙結果の予測を売りにしており、
 今年の米大統領選挙予備選では
 ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプという2人の勝者を正しく予測した。

 ところがこのMoglAによると、今年の米大統領選挙の最終的な勝者は「ドナルド・トランプ」だという。

 MoglAは膨大なインターネット情報の中から「一般大衆がどれだけネット上で候補者のサイトにアクセスしたりその言動を引用したりしたか」を割り出し、その数値が高い方を評価する。
 しかしあくまで「数」が問題で、その内容については判断しない。

 実際、ヒラリーとトランプのツイッターのフォロワーの数を比べるとヒラリー約1000万人に対し、トランプは1280万人。
 過去のツイート数もヒラリー9500弱に対しトランプ3万3800強、と圧倒的にトランプが多い。
 発言が多ければそれにアクセスする人の数も多くなる。
 また、トランプ氏には何かと問題発言が多く、それがネットでニュースになることも当然ながら多い。
 トランプ批判のニュースサイトであっても、そこにアクセスする人が多ければMoglAは「ネット上でトランプに関心を持つ人が多い」と判断する。

 実際の世論調査では、最近のプライベートサーバーを使ったメール問題が蒸し返されている事態にも関わらず、10月30日現在でヒラリー45%、トランプ40%と5ポイントの差がついている。
 米国内の多くの有権者はメール問題について「選挙戦の結果を左右するような大問題には発展しない」と考えている。
 もちろんトランプ氏は
 「大統領に選ばれた後で刑事告訴される可能性がある人物が選挙戦に出てもいいのか。
 選挙そのものをキャンセルし、国民は私を選ぶべきだ」
と盛んに訴えてはいるが。

 MoglAの予測は今回も正しいのか。
 結果は今週出るが、レイ氏は
 「もしトランプが負ければ、
 インターネットによるデータ収集分析というAIの判断基準そのものが否定されることになる」
と語る。
 ネット上でトランプに関心を示した人がそもそも米国選挙権がない、必ず選挙に行くとは限らない、など様々な要素はある。
 しかしこれまで正しく予測を続けたAIにとっても、トランプ氏というのは「大きな壁」のようだ。

 型破りな発言もそうだし、ネットを駆使した過激な選挙戦など、今回の米大統領選挙は過去に例のないものとなっている。
 しかしある意味でトランプ氏は人々の本音を吐き出させる機会となっているのかもしれない。

■トランプを擁護するシリコンバレーのベンチャー投資家

 シリコンバレーのベンチャー投資家、ピーター・シール氏(イーロン・マスク氏と共にペイパルを創設したことでも有名だ)は、トランプ氏の選挙戦への巨額の資金援助をしていることで批判にさらされているが、10月31日にこれに反論する形で
 「ドナルド・トランプが象徴しているものはクレイジーではないし、それはいつか消えてしまうものでもない」
と発言した。
 「アメリカはノーマルな国ではない。
 ノーマルな国は500億ドルもの貿易赤字を抱えていないし、政府はきちんと機能している。
 トランプが控えめな人間とはとても言えないが、彼は政府が国民に対して無策であることへの怒りを表現している」
と説明する。

 危険な変化か,退屈な継続か
と言われる今年の大統領選挙、AIによる予言も加わってますますクライマックスへ向けて盛り上がっている。





【身勝手な大国・中国】



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