2016年11月11日金曜日

トランプ大統領とは(5):アメリカに産業を呼び戻す、ホワイト底辺層に職を与える、これが隠れスローガン

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●11日、トランプ氏が次期米国大統領に決まり、米国の成り行きに注目が集まっている。これに関連して、米国では「米国の政策は中国人の考え考慮する必要がある」との報道も見られている。写真はトランプ氏に関する報道。

トランプの中国政策はいまのところ不明である。
しばらくは強く出ないだろう。
それを狙って中国がさらなる強硬策に入るか、それともトランプの心象を害したくないという思惑から様子見になるかである。
それも3カ月が限度であろう。
トランプが弱気なら3カ月もすれば一気にくる可能性がある。
トランプが弱気ということは、日本にチャンスがあるということになる。
「俺の下で黙っていろ」、ということはなくなる
「好きにやっていいよ」ということになってくれれば、日本は大きく舵をとれる。 
 これまでのトランプの言動からすると、
★:経済的には中国製品のアメリカからの締め出しは強くなる
★:政治的には南シナ海問題に対しては弱くなる
ということであろう。
 東シナ海は日中の問題だから、両者で解決しなさい、
 アメリカはかかわらない、ということになるだろう。
 日本がどういう行動をとろうとアメリカは強くは関与しない、ということになる。
 トランプは政治的によりも経済を重視する政策を主眼をおくだろう。
 このとき中国にどんな影響を与えるのか、おなじように日本にどんな影響を与えるかである。
 いまのところ見えているのは
「トランプは経済問題については中国に強く出る」
ということである。
 アメリカに産業を呼び戻す、
というのがトランプのテーマになる。
 そして、ホワイト底辺層に職を与える、が隠れたスローガンになる。
 その分、中国にきつくあたることになる。
 その代わり、政治的にはゆるくなる。  


毎日新聞 11/11(金) 21:31配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161111-00000097-mai-cn

<中国>米との貿易摩擦警戒 
トランプ氏のTPP対応注視


●アジアの広域経済連携の枠組み

 【北京・赤間清広】中国政府が、米国との貿易摩擦が激化する事態を警戒している。
 次期米大統領のトランプ氏が、中国からの輸入品に高率関税を課すと主張しているためだ。
 一方で、日米が主導する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が頓挫すれば、中国がアジアの経済ルール作りで存在感を発揮できるとの思惑もあり、米国の通商・経済政策の行方を注視している。

 中国国営新華社通信は9日、トランプ氏の通商政策に対し、「濃厚な保護主義は世界的な貿易戦争を引き起こす可能性がある」と警告した。
 トランプ氏は選挙中、中国の人民元安政策や輸出補助金で不当に安くなった中国製品が米国に流入し、国内製造業を衰退させたと主張。
 中国を「為替操作国」と認定し、中国製品に45%の関税を課す公約を掲げていた。

 最大の輸出先である米国が高率関税を課せば、中国経済への打撃は大きい。
 大和証券キャピタル・マーケッツは、
 米国が45%の関税を課した場合、
 中国の対米輸出は現在の1割強に激減、
 15%でも7割程度に減少する
と試算する。
 中国も対抗措置に出るのは必至で、両国の貿易摩擦は一気に深刻化する。
 影響は、中国の生産拠点から米国に輸出している日本企業にも波及する。

 一方、トランプ氏の公約通り米国がTPPから離脱すれば、アジア・太平洋地域の経済ルール作りを主導したい中国には好都合だ。

 オバマ政権は、日米主導のTPPで同地域の経済ルールを作り、それを国際標準に発展させる戦略を描いていた。
 中国からみれば、いずれはTPPに中国ものみ込まれ、日米に都合の良いルールを押しつけられかねないとの警戒感があった。

 TPPの発効が困難な情勢となり、中国は今後、自国が旗振り役の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの協議を加速するとみられる。
 RCEPには日本や東南アジア諸国が加わる一方、米国は入らず、中国の意向を反映させやすい。
 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も使い、アジア・太平洋地域での影響力を増す流れが強まりそうだ。
 日本にとっては、TPPに比べて知的財産権保護の認識が甘く、自由化の水準も低いRCEPが先行すれば、通商戦略も再考が不可避となる。

 中国の李保東・外務次官は10日、「アジアは一体、開放的であるべきだ」と述べ、アジアの経済ルール作りに中国が密接に関与する考えを示しつつ、米国も排除しない意向をにじませた。
 米中の正面対決を避けながら、米国のアジア関与が薄まるメリットを享受する道を探る見通しだ。


Record china配信日時:2016年11月12日(土) 1時20分
http://www.recordchina.co.jp/a154868.html

日米同盟より世界に重きを、
米国の政策は中国人の考えを考慮すべき―米国メディア

 2016年11月11日、トランプ氏が次期米国大統領に決まり、米国の成り行きに注目が集まっている。
 これに関連して、米国では「米国の政策は中国人の考え考慮する必要がある」との報道も見られている。
 環球時報が伝えた。

 米・CNSNewsは記事で専門家の見解を紹介。
 それによると、ベルリンの壁が崩壊した当時、中国の考えは誰も気にしていなかったが、今では大きく違っている。
 中国の経済力と軍事費は米国に次ぐ存在で、貿易大国として成長した。
 東アジアにおける影響力は米国をしのぎ、支援を通しアフリカでの影響力を高めている。

 中国の若者は米国に対し肯定的な姿勢だが、米国の存在を脅威と見る人も少なくない。
 米国は中国人留学生の受け入れをさらに強化し、南シナ海問題においては直接的な対抗姿勢は避ける必要がある。
 さらに、日米関係に否定的な中国人も多いため、米国は特定の同盟国に重点を置くのではなく、国際的な原則に重きを置くべきだろう。

 良好な米中関係は世界にとってもプラスである。
 中国の政策は間接的ではあるが、民意を反映している。
 米国は対中政策を策定する際、政府首脳だけでなく中国の庶民の声も考慮する必要がある。



Record china配信日時:2016年11月11日(金) 22時50分
http://www.recordchina.co.jp/a154870.html

中国製品に高額関税をかけると豪語していたトランプ氏、
中国外交部「米国の政治家は米中経済関係にプラスとなる政策を取る」

 2016年11月10日、中国外交部が同日に開いた定例記者会見では、米国の次期大統領に決まったトランプ氏に関する質問が多く聞かれた。

 中国外交部公式サイトによると、同日、
 「トランプ氏は(共和党候補指名争いの際に)中国製品に最大45%の輸入関税をかけると発言していた。
 次期米大統領であるトランプ氏のかつての発言についてどう思うか?」
との質問が飛んだ。

 これに対し中国外交部の陸慷(ルー・カン)報道官は、
 「米中の経済・貿易協力は両国関係の推進器でありバラスト(バランスと取るための重し)のような存在である。
 米中の貿易額は1970年代の毎年25億ドル(約2600億円)から2015年は5500億ドル(約57兆円)余りにまで拡大した。
 両国民にとってメリットがなければここまで急速に発展することはできなかっただろう。
 つまり、米中の経済・貿易協力はウィン・ウィンの関係である。
 冷静に米中の経済・貿易関係を捉え、共に安定的な発展を持続させることは双方の利益となる。
 米国のいかなる政治家も、自国民の利益を考えた場合、中国との経済・貿易関係にプラスとなる政策を取ると信じている」
と述べた。



毎日新聞 11/11(金) 21:31配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161111-00000097-mai-cn

<中国>米との貿易摩擦警戒 
トランプ氏のTPP対応注視

●アジアの広域経済連携の枠組み
 【北京・赤間清広】中国政府が、米国との貿易摩擦が激化する事態を警戒している。次期米大統領のトランプ氏が、中国からの輸入品に高率関税を課すと主張しているためだ。一方で、日米が主導する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が頓挫すれば、中国がアジアの経済ルール作りで存在感を発揮できるとの思惑もあり、米国の通商・経済政策の行方を注視している。

 中国国営新華社通信は9日、トランプ氏の通商政策に対し、「濃厚な保護主義は世界的な貿易戦争を引き起こす可能性がある」と警告した。トランプ氏は選挙中、中国の人民元安政策や輸出補助金で不当に安くなった中国製品が米国に流入し、国内製造業を衰退させたと主張。中国を「為替操作国」と認定し、中国製品に45%の関税を課す公約を掲げていた。

 最大の輸出先である米国が高率関税を課せば、中国経済への打撃は大きい。大和証券キャピタル・マーケッツは、米国が45%の関税を課した場合、中国の対米輸出は現在の1割強に激減、15%でも7割程度に減少すると試算する。中国も対抗措置に出るのは必至で、両国の貿易摩擦は一気に深刻化する。影響は、中国の生産拠点から米国に輸出している日本企業にも波及する。

 一方、トランプ氏の公約通り米国がTPPから離脱すれば、アジア・太平洋地域の経済ルール作りを主導したい中国には好都合だ。

 オバマ政権は、日米主導のTPPで同地域の経済ルールを作り、それを国際標準に発展させる戦略を描いていた。中国からみれば、いずれはTPPに中国ものみ込まれ、日米に都合の良いルールを押しつけられかねないとの警戒感があった。

 TPPの発効が困難な情勢となり、中国は今後、自国が旗振り役の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの協議を加速するとみられる。RCEPには日本や東南アジア諸国が加わる一方、米国は入らず、中国の意向を反映させやすい。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も使い、アジア・太平洋地域での影響力を増す流れが強まりそうだ。日本にとっては、TPPに比べて知的財産権保護の認識が甘く、自由化の水準も低いRCEPが先行すれば、通商戦略も再考が不可避となる。

 中国の李保東・外務次官は10日、「アジアは一体、開放的であるべきだ」と述べ、アジアの経済ルール作りに中国が密接に関与する考えを示しつつ、米国も排除しない意向をにじませた。米中の正面対決を避けながら、米国のアジア関与が薄まるメリットを享受する道を探る見通しだ。


ビデオニュース・ドットコム 11/13(日) 0:03配信 西山隆行氏(成蹊大学法学部教授)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161113-00010000-videonewsv-int

トランプ政権への期待とリスク

 大方の予想を裏切ってドナルド・トランプが2016年のアメリカ大統領選挙を制した。
 公職経験も軍歴も皆無の、まったくのワシントンのアウトサイダーであり政治の素人でもある大穴の候補が、これ以上ないというほどワシントンでの華々しい経歴を誇る大本命のヒラリー・クリントンを破っての、まさかの勝利だった。
 これまで暴言を繰り返してきた異色の候補の勝利には、ことごとく予想が外れたアメリカの専門家たちもさることながら、世界中が驚きをもって受け止めている。
 何かとてつもない大変化がアメリカを襲おうとしているとの指摘は後を絶たない。

 確かに、トランプ政権がアメリカをどう変えるかについては今のところまったくの未知数であり、リスク要因も多い。
 しかし、選挙の結果を見る限り、アメリカに大きな地殻変動が起きたというよりも、クリントンの明確な戦略ミスがトランプの当選を許したという側面が大きいと言わざるを得ない。
 今回の選挙ではオバマが勝利した前回の選挙と比べた時、実際に動いたのはほんの一部の、しかし鍵となる州の、ごく僅かな票に過ぎなかったからだ。

 クリントンが一般投票の総数ではトランプを上回る票を得ながら、選挙人の獲得数で大きく差をつけられた最大の原因は、これまで伝統的に民主党が押さえてきた人口の多い、よって選挙人の割り当ても比較的多い「ラストベルト」の諸州をことごとく落としたことに尽きる。
 現職で民主党のオバマが共和党のロムニーに勝利した2012年の大統領選の結果と比べても、それは明らかだ。
 今回、クリントンは伝統的な民主党の票田であり2008、2012年とオバマが押さえたウイスコンシン(選挙人10人)ミシガン(16人)、ペンシルバニア(20人)の3州をいずれも僅差で落としている。
 勝負に「たられば」は禁物と言われるが、この3州を普通に押さえていれば、仮にフロリダ(29人)とオハイオ(18人)を落としても、ヒラリーは楽に勝っていた。

 とは言え、クリントン陣営がなぜラストベルトの有権者の動向を見誤ったかについては、マイケル・ムーアが指摘するような「没落したアメリカ中間層の怒り」の激しさを過少評価していたことは明らかだ。
 かつて鉄鋼業や自動車産業が栄え、それが廃れた後、鉄が錆付いたことを意味するラスト(錆)ベルト(地帯)と名付けられた中西部の五大湖周辺地域では、かつて世界が羨む豊かさを享受する中間層を形成してきた労働者たちが、工場の海外移転と外国からの安い製品の流入とで、塗炭の苦しみを味わっているとムーアは指摘する。
 その怒りは、これまで彼らの苦境を放置してきたワシントンの既存の政治体制に向けられ、クリントンはその象徴のような存在になっていた。
 本来は伝統的な民主党支持者である彼らの不安や不満を汲み上げられなかったクリントン陣営の戦略ミスが、結局は命取りになった。

 一方、トランプはそんなクリントンの戦略ミスを尻目に、見事な選挙戦を戦い抜いた。
 すべてが戦略的な意図に基づくものではなかったかもしれないが、数々の暴言や下半身にまつわるスキャンダルなどメディアが泣いて喜びそうなネタをコンスタントに提供することで、メディアのエアタイム(放送時間=露出)を確保し、有権者の注目を自分だけに集中させつつ、党の予備選で左派のバーニー・サンダースの攻勢に晒されたクリントンが左に引っ張られることで、大きく空いた中間層に訴える政策をしっかりと用意するなど、一見粗野に見える言動や行動とは対照的とも言える緻密な選挙戦を展開した。

 前例の無い新しいタイプの大統領となるトランプが、既成の常識にとらわれない破壊力で、閉塞状態に陥ったワシントンの政治を根っこから変えてくれるかもしれないという期待がある一方で、すべてが未知数のトランプ政権にはリスクも大きい。
 過去に公職に就いた経験が皆無のトランプだ。
 誰が閣僚になるかによってトランプ政権の方向性は大きく左右されそうだが、
 全くのワシントンアウトサイダーであり政治のアウトサイダーでもあるトランプ政権
では、今のところ誰が閣僚になるかさえ全く予想がつかない状態だ。

 また、仮にそれが注目を集めるための戦略だったとしても、選挙戦でトランプが煽ってきた差別や偏見は一旦火が点けばそう簡単には収まらない。
 今後、これがアメリカ社会にどのような影を落としていくことになるかについては、注意が必要だろう。

 しかし、数あるトランプリスクの中でも、
 トランプ政権下のアメリカでもっとも大きな影響を受ける可能性があるのは移民政策になる
だろうと、アメリカの移民政策に詳しい西山隆行成蹊大学教授は指摘する。
 選挙戦でトランプは、移民によってアメリカの職が奪われているとして、メキシコ国境に万里の長城を建てると公言した。
 また、イスラム教信者の入国を禁止するとも公言している。
 そもそもトランプを支持したプアホワイトと呼ばれる白人の低所得層は、アメリカにおける白人の割合がヒスパニックやアジア系に押され少数派に転落することに危機感を抱いている人々だ。

 彼らの不安や不満に訴えることで当選を果たしたトランプ政権は移民政策に何らかの変更を加えないわけにはいかない。
 これは先進国が軒並み少子化と人口減少に見舞われる中で、移民を受け入れることで経済的な力を維持してきたアメリカという国の性格、ひいては国のあり方を根本から変える可能性があると西山氏は言う。

 トランプはなぜ勝てたのか。
 トランプ政権はどのような政権になるのか。
 トランプの下でアメリカは移民国家の旗を下ろすのか。
 西山氏とともに、大統領選挙の結果とトランプの公約を検証しつつ、今後のアメリカの方向性をジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

西山 隆行にしやま たかゆき
成蹊大学法学部教授
1975年兵庫県生まれ。96年東京大学法学部卒。米・ラトガース大学大学院を経て、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。甲南大学法学部教授を経て、2014年より現職。専門は比較政治・アメリカ政治。 著書に『移民大国アメリカ』、『アメリカ政治―制度・文化・歴史』など。

(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161113-00010000-videonewsv-int


THE PAGE 11/12(土) 17:40配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00000002-wordleaf-int

南シナを意識?
「衝突せず対抗せず」中国がトランプ氏に送った祝電

 ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利は世界各国にも衝撃を与えています。
 トランプ氏はこれまで、隣国のメキシコをはじめ、過激派組織「イスラム国」(IS)からアジアでは日本まで、さまざまな国や組織について過激な発言を繰り返してきました。
 そして中国に関しても、同国からの輸入品に高率関税を課すなどと発言しています。
 一方で、孤立主義を匂わせる発言から、中国にとっては悪くない結果なのではとの見方もあります。
 中国は「トランプ大統領」をどのように見ているのか。中国政治に詳しい元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

■トランプ勝利の報道は控えめな中国

 米大統領選では大方の予想を裏切ってトランプ候補が勝利を収めました。
 同候補は破天荒で、暴言をも口にしてきた人物であり、母体の共和党内部からも強く批判されていました。
 政治には全く関与したことがなく新政権の政策がどうなるか。
 これまでのトランプ氏の発言をそのまま政策にすると世界中で混乱が起きます。
 実際には新政権はどういう政策を打ち出すか、分からないことが多すぎます。
 これは日本に限らず、おそらく世界中のすべての国が多かれ少なかれ感じていることでしょう。

 中国の習近平国家主席は、選挙後いち早くトランプ氏に送った祝電の中で、中国が大国であることをアピールしつつ、
 「中米両国が衝突・対抗せず、協力してともに利益を得る原則を堅持し、建設的なやり方で相違を処理したい」
と述べました。
 一国の元首となる人への祝電で「協力していきましょう」というのはよく言うことですが、「衝突・対抗しないで」というのは珍しい文言です。
 わざわざこの言葉を使ったのは、南シナ海や東シナ海の問題で両国が対立していることを意識したからです。

 中国の新聞報道では、今回の大統領選の結果に中国としても大いに驚き、また米国で起こっている変化を理解しようと努めていることがうかがわれますが、総じて、中国の報道ぶりは日本などと比較して控えめです。
 それはトランプ政権に対して中国としてどのような姿勢で臨むか、まだ検討中のためだと思われます。
 中国の新聞は中国共産党と政府によって強く統制されており、まだ統一方針が出ていないのでしょう。

■日米関係の影響をもっとも受ける中国

 政治・安全保障では、中国は、日本と米国の関係がどうなるかということに注目しているでしょう。
 トランプ氏は選挙中、日米安保条約の不平等性を批判し、いわゆる「ただ乗り」論を口にしました。
 払うべきものを払っていないという議論です。
 また、米軍の引き上げにも言及しました。
 さらに、日本が核武装するのも結構ということさえ言いました。
 もし新しい大統領として日本にこのような方針で臨むならば、東アジアどころか、世界的な大問題となるでしょう。
 そしてそのような日本の一大変化の影響をもっとも強く受けるのは中国です。

 日本のこのような変化は常識的には、口にすることさえはばかられることですが、トランプ氏はあえて言及しました。
 しかし、この点についての発言は二転、三転しています。
 政治・安全保障問題について無知なためでしょう。
 大統領となった後も、そのような考えを維持するとは考えられません。
 日本としては日米同盟の重要性を様々な形で説明し、トランプ氏に理解を求める必要があります。
 これが米国の新政権との関係で先決問題です。

 中国としても、トランプ氏が発言してきたとおりに日米関係が動くとは思っていないでしょう。
 新政権がどのような方針で臨むか、慎重に見極めているはずです。

■「トランプ大統領」歓迎の見方もあるが

 南シナ海の問題については、中国の行動に強く批判的だったクリントン氏ではないトランプ氏が大統領になるのを歓迎するだろうと言われています。
 しかし、トランプ氏が南シナ海問題について中国に融和的になるかは大いに疑問であり、クリントン氏以上に厳しくなる可能性もあります。

 経済面では、中国が為替操作や不公正な貿易をしているというトランプ氏の批判に中国は反発しました。
 しかし、このような問題は以前からあることで新味はありません。
 特に問題なのは、トランプ氏が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を批判し、批准しないと明言していることです。
 TPPは実質的には日米自由貿易協定だといわれることもありますが、TPPを放棄することになれば、日本にとって大問題になります。
 中国はかねてから中国を除いた形で交渉が進められたことを不快視していたので、TPPが発効されなくなることをむしろ歓迎するとみられています。
 総じて、米中関係がどうなるかは米国の新政権がどのような方針を打ち出すかにかかっていますので、今後のことはまだ不透明ですが、米中両国間の経済的な相互依存関係は非常に深くなっています。
 中国との関係が悪化すれば米国経済にも影響が出てくるでしょう。
 トランプ新政権としては経済的相互依存関係を十分考慮した政策を打ち出す必要があります。

 トランプ氏は中国のことはよく分かっていると言ったことがあります(2016年3月21日付『ワシントンポスト』)。
 しかし、それは個別の取引のことです。それは経済問題のごく一部に過ぎません。

 米中の経済関係は日本にとっても密接な関係があります。
 要するに、日米中の間には相互依存の関係があります。
 トランプ氏の発言からは、米国の利益を重視するあまり、保護主義的な傾向が強くなることがうかがわれますが、保護主義は日中両国のみならず米国自身にとっても不利益なはずです。
 日本も中国もその点では新政権が狭い保護主義的な姿勢を強めることがないよう働きかけることが必要です。

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■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹



ダイヤモンドオンライン 2016年11月18日 黒瀬徹一
http://diamond.jp/articles/-/108458?page=4



トランプ当選報道でメディアがついた3つのウソ

 17日、安部総理はトランプ次期アメリカ大統領とニューヨークで会談。
 日米同盟や環太平洋経済連携協定(TPP)など、安保・経済両面から大きな方向転換が求められようとしている一方で、アメリカ国内でも大きな「反トランプ」デモが起きるなど、混乱が続く。
 それにしても、今回の大統領選挙を通じて、メディアや有識者の予想がまったくアテにならないということを痛感した。
 我々現代人はメディアとどう付き合っていけばいいのか。
(ジャーナリスト 黒瀬徹一)

■天気予報は外れて当たり前
選挙予想も同様

 「トランプ氏によって、アメリカがより一層偉大な国になることを確信している」
 先週、安部総理はトランプ次期大統領に電話でこう伝えた。
 それから一週間後の11月17日(木)、安部総理はトランプ次期大統領とニューヨークで会談。
 異例の急ピッチでの調整だ。
 戦後日本の安全保障の中核だった日米同盟、連日国会で議論されていた環太平洋経済連携協定(TPP)に大きな転換が求められる可能性が高まる中、アメリカでもマイケル・ムーア監督までデモに参加するなど、混乱が続いているように見える。

 だが、「見える」と言っても、我々はこうした事実を実際に見ているのではなく、常にメディアを通じて情報を得ている。
 大統領選挙の前後、多くの有識者がメディアを通じて今回の選挙結果を予想・分析しているが、「なんとなくもっともらしい暴論」が多いと感じている。
 ビジネスの世界には「空→雨→傘」という言葉がある。
 空を見て(事実認識)、雨が降るか予想し(問題の予測)、傘を持っていくかを決める(解決策)という流れを意味している。
 ところが、私たち現代人は自らの目で空を確認せず、テレビで天気予報に言われるがまま傘を持って出がちだ。
 天気予報はよく外れる。選挙の結果予想が外れても不思議ではない。

 多くの有識者やメディアが予想を外したことを謝罪するケースも見られたが、果たして謝罪すべきは読み間違えたことなのだろうか。
 むしろ、その頼りない「天気予報」に依存した我々が、メディアとの付き合い方を再考すべきではないか。

 筆者が見る限り、メディアは3つのウソをついている。

■「トランプ勝利は予想外」のウソ
読み誤りは「現場」を見ない人

★.まず、1つ目のウソ。
 トランプ大統領の誕生は、決して「意外な結果」ではない。
 おそらく「読み誤っていた」多くの有識者は、あまり政治の「現場」を見ない人なのだと思う。
 例えば、トランプ氏の過激な発言とヒラリーの落ち着いた演説をじっくりと見比べて「ヒラリーの勝ちだ」なんて分析したのかもしれないが、そもそも現実の選挙において、候補者の演説をじっくり聴いて投票に行く人なんて少数派だ。
 元々、民主党政権に対する不満は中間選挙の民主党大敗によって現れており、この党勢を個人の影響力で覆すのはかなり厳しい。
 日本よりもアメリカの方が政党政治は根付いており、人々は候補者より政党名を重視して選択する。

 大統領選の場合、候補者の注目度が高いと反論する人もいるだろう。
 確かに正しいが、党勢をひっくり返すほどヒラリー氏の評価は高かっただろうか。
 トランプ氏が思ったことを何でも発言するキャラなのに対し、ヒラリー氏は「私用メール問題」が象徴したように、「影でコソコソする」印象を与えた。
 いくらFBIが訴追を求めなかったところで、その印象までは払拭できない。
 「女性初」をアピールしても、夫が元大統領で、本人も民主党政権で要職を務めていた以上、あまり初々しさは感じられない。
 トランプ氏の品が無い発言には筆者も抵抗を感じるが、かといってヒラリー候補の印象も良くなかったことは誰しも認めざるを得ないだろう。
 しかも、アメリカのメディアは日本と違い、堂々と特定の候補者を応援する。
 トランプ氏の勝利を「ポピュリズム」と批判する有識者もいるが、多くのメディアがヒラリー氏の勝利予測をしていたことに鑑みれば、ヒラリー氏に投票した人は「メディアに流された」と言えよう。
 どちらも建設的な批判ではない。

 冷静に得票を見れば、民主党の劣勢の中、ヒラリー氏は十分善戦したと思う。
 上院でも下院でも過半数には及ばなかったものの、民主党の勢力は盛り返した。FBIの捜査再開が敗因との見方もあるが、素直に「空」という事実を見れば、その事件が無くても勝利するのはかなり難しかったろう。

■「アメリカの分断」のウソ
安易なラベリングは危険

★.2つ目だが、
 今回の結果を「アメリカの分断」と煽る向きがある。
 これもウソだ。

 アメリカには50の州があるが、実は40程度の州においては、結果は最初から決まっている。
 共和党が強い州では昔から共和党が勝ち続けている。
 その州に住む有権者の多くは「自分が投票しても結果は変わらない」と諦めてしまい、結果としてその伝統は続くことになる。
 すなわち、激戦が繰り広げられたのは、フロリダ州など残りの10州程度においてのみ。
 したがって、「アメリカの分断」などという大袈裟な話は起きていない。
 デモにしても、日本でも国会議事堂の前で安倍政権に反対する人達が騒いでいるが、自民党政権は盤石だ。
 もっともらしいデータを見せて、白人・非大卒層がトランプ支持だの若者がヒラリー支持だのと言う人もいるが、そう断言するには票差が近すぎる。
 例えば、CNN調査によれば、18~29歳では50%強がヒラリー氏を支持したのに対し、65歳以上では40%台に下がっているが、「有意な差」とは言いがたく、安易なラベリングは危険だ。
 何事もメディアは売上部数やPVを稼ぐために大袈裟に伝えようとするし、学者も中身の薄い話を小難しい言葉で表現して煙にまいたりする。
 そういった、にわか雨を嵐と報道するような天気予報をいちいち真に受ける人が多数派を形成している。

■「隠れトランプ支持者」のウソ
別に逃げも隠れもしていない

★.そして、3つ目のウソ。
 多くのメディアが予想を外した理由を「隠れ支持者の存在」だと説明するのは、謙虚でない態度だ。
 なぜなら、トランプ支持者は別に逃げも隠れもしていない。
 筆者もトランプ氏の優勢を感じていたし、トランプ氏を支持するアメリカ人はいたし、SNSやメディアでもその姿は堂々と報道されていた。
 自分が見てなかったから「隠れ」と決めつけるのは一方的すぎる。

 事実認識を怠ったまま「天気予報」だけを見て騒ぎ立て、無難な「もっともらしい意見」に飛びつき、デモなどの意味の無い解決策に走る。デモをやるならトランプ氏が共和党の候補になる前にやればよかった。
 「傘」という無難な解決策以外にも、レインコートを着たり、予定のリスケ、洗濯物の取り込み、多少の雨なら気にしない、など、対応策はいくらでも出てくるはずだが、「傘が必要」と天気予報に言われれば、そこで思考停止に陥り、その他の意見を黙殺する。少子化対策にせよ安保法制にせよ、メディアで流れる「もっともらしい言説」に飛びついて妄想で多数派を形成してはいないだろうか。

 とはいえ、メディアは重要な情報源だし、天気予報を全否定するのは現実的でない。
 実際の天気予報も事実に基づきプロが判断した科学的予測である以上、「自分の目より天気予報を信じる」のも一つの立場としては正しい。
 だが、気象庁は空を見て科学的な手法で天気を予測しているのに対し、多くの政治系有識者は大した分析をしておらず、極めていい加減なものだと認識すべきだ。
 一人一人が「空」を見た結果、多数が「雨が降る」と言えば民主主義は機能するが、いい加減な天気予報に煽られる人が多数派を占めた瞬間に多数決は極めていい加減なものに陥ってしまう。
 しかし、天気予報の正確性はあまり重要ではないと思う。
 避けるべきは、天気予報に振り回されるがあまり、天気や傘の話ばかりして、そもそも外出できなくなってしまうという本末転倒な事態だ。

 トランプ大統領は誕生した。
 この事実を謙虚に受け止め、自分の決断を信じて「外へ出る」べきだと思う。
 今こそ、アメリカの傘をたたみ、安全保障や自由貿易について自分の頭で考える時かもしれない。
 安部総理とトランプ氏との会談は新しい時代の幕開けを告げた。
 先行き不透明な時代に、様々な情報が飛び交うだろうが、「天気予報」が信じられなくなった時には、素直な気持ちで、空を見上げて欲しい。




【身勝手な大国・中国】



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