2016年12月10日土曜日

「国会政治から国民政治へ」と日本を動かす中国(2):真珠湾慰霊訪問で「戦後にケジメ」

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 北方領土返還交渉でポイントを稼ごうとしたが、プーチンの頑な姿勢であきらめざるを得なくなった安倍ちゃん。
 そこで打った次の手が「真珠湾慰霊訪問」。
 オバマは広島訪問で先の世界大戦のワダカマリをアメリカとしてはチャラにした。
 その答礼が安倍首相の真珠湾訪問である。
 これで、日米は戦後70年を乗り越え、
「戦後」が消える
ことになる。
 日米がそこまですることになったのはなんといっても中国の台頭がある。
 「このままではいかん」
というわけである。
 冷戦時代は米ソの軍事力戦争であった。
 結果は資金力の劣ったソ連がギブアップして崩壊し、ロシアになった。
 今行われているのは米中の経済戦争である。
 中国の軍事力は見かけだけで米国にとっては脅威でもなんでもない。
 しかし、経済力はアメリカにつぐ第二位の国家に踊りでた。
 そこでアメリカは中国牽制のための国際ルール遵守を中国に求めはじめた。
 さらに日本は「最恵国待遇」撤廃という手も使いはじめた。
 ソ連とは軍事競争であったが、中国とは経済戦争であると認識したトランプは、国内雇用を政策の中心におき、アメリカ企業の国内への回帰を促している。
 中国を経済発展させたのはアメリカと日本の企業群である。
 これまで中国の成長は両者の利益に一致していたが、成長しすぎた中国はエサを与えるその手を噛むようになった。
 そこで日米が手を組み、経済的に中国のありかたをみていこうというのが最近の動きである。
 だがTPPは中国封じにとっては有効であるが、アメリカにとっては利がないようだ。
 となると、アメリカは国内に産業を回帰させることに、日本はアメリカなきTPPで中国に対抗しようということのようである。

 いずれにせよ、オバマの広島訪問、安倍さんの真珠湾訪問で、戦後の歴史はチャラになる。
 新しい時代が動きはじめてくるということであろう。
 日米がこれまでとは相当に変わった形でタッグを組むことになるようである。
 おなじように、中国はロシアを引きずりこむことで対抗することになるだろう。
 日本としては、アメリカなしで中国に対峙することが理想であり、いまはその方向に動いている。
 戦後のアメリカ関係のチャラはそのステップでもある。
 これで確実に日本は普通の国(中国はそれを正常な国、と呼ぶが)になる道がひらけてきたということになる。


東洋経済オンライン 2016年12月10日 泉 宏 :政治ジャーナリスト
http://toyokeizai.net/articles/-/148995

真珠湾慰霊訪問にみる安倍外交のしたたかさ
「戦後にケジメ」で政権のレガシー狙う

 安倍晋三首相が年末に真珠湾(パールハーバー)を慰霊訪問する。
 首相自らが12月5日夜、記者団に明らかにした。
 首相は12月26、27の両日(現地時間)米ハワイを訪問し、オバマ米大統領とともに真珠湾を訪れ、日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊する予定で、米政府も歓迎している。

 今年5月の同大統領の被爆地・広島訪問と「ワンセット」(自民幹部)とも位置付けられ、首相は周辺に「ちょうどよい機会。『
 戦後』にきちんとケジメをつける」と語った。
 ハワイ訪問の直前に首相はプーチン・ロシア大統領との首脳会談で「戦後未解決」の北方領土問題の決着に挑む。
 まさに、外交での「戦後政治の総決算」でもある。
 成果が上がれば「安倍政権最大のレガシー」となることは間違いなく、タイミングも含め史上最長政権を狙う首相の外交戦略のしたたかさも浮き彫りになる。

 首相は5日夕、国会内で開かれた自民党役員会で発言を求め「戦後政治の総決算に挑むつもりだ」と語った。
 「なんで今頃」(幹部)と役員会の面々はいぶかし気に顔を見合わせたが首相はそれ以上深入りせず、約2時間後のぶら下がりインタビューで真珠湾慰霊訪問を明かした。
 年明けに8年間の任期を終えるオバマ大統領との日米首脳会談の締めくくりでもあり、首相は
「(安倍・オバマの)4年間を総括し、未来に向けてさらなる同盟強化の意義を世界に発信する機会にしたい」
と胸を張った。

■5日発表で"中曽根超え"をアピール

 5日は首相の通算在職日数が、中曽根康弘元首相の1806日を抜いて戦後歴代第4位になった記念すべき日でもあった。
 「中曽根内閣のスローガンだった『戦後政治の総決算』を自らが受け継いで完成させるというメッセージ」(自民長老)ともみえるが、総裁任期延長を受けての2018年9月の総裁3選で史上最長政権も可能な首相にとって、「まずは"中曽根超え"をアピールした」(自民幹部)とみる向きも多い。

 歴史を振り返ると、太平洋戦争は日本軍の真珠湾攻撃から始まった。
 75年前の1941年12月7日朝(現地時間)、旧日本海軍の機動部隊がハワイ・オアフ島のパールハーバー(真珠湾)の米太平洋艦隊に奇襲攻撃を行って戦艦アリゾナなどを撃沈・撃破し米側に約2400人の犠牲が出た。
 日本の宣戦布告が約1時間遅れたことから、米国内では「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」との声があふれ、後年、戦地には「アリゾナ記念館」が建設されて「日米開戦のシンボル」ともなってきた。

 日本の首相では、終戦後間もない1951年9月に当時の吉田茂首相が真珠湾に立ち寄ったとの記録が残っており、首相の同地訪問は2人目となる。
 この点について外務省関係者は「当時の詳細な記録が残っていないが、正確に言えば『真珠湾のアリゾナ記念館を訪問して慰霊するのは初めて』のはずだ」と指摘する。
 オバマ大統領は"真珠湾メモリアルデー"の12月7日に声明を出し、アリゾナ記念館を首相と一緒に訪問することについて「待ち望んでいる」と歓迎の意を示すとともに
 「この歴史的訪問は(日米両国が)世界の平和と安全のために手を携えていく証になる」
などと意義を強調した。

■トランプ氏が当選したことも、決断を後押し

 首相にとって真珠湾慰霊訪問は4年前の第2次安倍政権発足以来の「宿題」(周辺)として実現への模索が続いてきた。
 首相は5日夜のインタビューで昨年の米国議会での演説時から「真珠湾訪問の意義や和解の重要性について発信したいとずっと考えてきた」と語った。
 さらに、オバマ大統領との最後の日米首脳会談についても「11月20日のリマでの会談で、
『12月に会談を行おう。その際に2人で真珠湾を訪問しよう』と確認し、合意した」
と明かした。

 首相の真珠湾訪問については今年5月のオバマ大統領の広島訪問の際も外交関係者の間で取りざたされた。
 しかし、一般人も含めた無差別攻撃であるという原爆投下との"違い"から、首相も表面的には「広島訪問の返礼ではない」(側近)との姿勢を堅持してきた。
 首相と思想・信条が共通する国内保守派に「謝罪外交」と批判されることへの懸念もあったからだ。

 しかし、11月の米国大統領選で日米安保条約の見直しなどにも言及してきたドナルド・トランプ氏が当選し、来年1月20日に大統領に就任することも首相の背中を押し、「最後のチャンス」(外務省幹部)として慰霊訪問を決断した。
 首相は慰霊訪問の後、現地から「世界に向けてのメッセージ」を発信する予定だ。
 これは「広島訪問時のオバマ大統領のメッセージと対をなすもの」(官邸関係者)でもあり、昨年の首相の米国議会演説と同様に手練れのスピーチライターらによる草稿づくりが進んでいるとされる。

 ハワイに旅立つ12月26日は4年前に第2次安倍政権が誕生した日でもある。
 再登板後の4年間、内政では「アベノミクス」、外交では「地球儀俯瞰外交」を政権運営の柱としてきた首相だが、「なかなか結果の出ないアベノミクスより、安倍外交の成果が高い内閣支持率に結びついてきた」(側近)ことは間違いない。
 だからこそ、国会日程などよりも外交日程を優先して世界を駆け巡ってきたのだ。首相が年末に設定した日ロ首脳会談と真珠湾慰霊訪問は「安倍外交の仕上げともいえる歴史的な首脳外交」(同)となるわけだ。

■「ノーベル平和賞」も夢見るが…

 自ら「戦後政治の総決算」と位置づけたこの2つの首脳外交で大きな成果を上げれば、「"安倍1強"と呼ばれる現在の政権構造はさらに強化される」(自民幹部)ことになり、永田町では「外交の成果を掲げての年明け解散」説も再浮上している。
 加えて、日ロ首脳会談で北方領土返還と日ロ平和条約締結交渉への道筋をつけ、真珠湾慰霊訪問で日米同盟をさらに強化できれば、首相のいう「戦後にケジメをつけた」ことにもなり、故佐藤栄作元首相に続くノーベル平和賞受賞も「夢ではない」(側近)との見方が広がる。

 まさに、首相にとって「"我が世の春"の師走」(自民首脳)ともみえるが、肝心の日ロ首脳会談は双方の事前交渉でのせめぎ合いが激しく、首相自身も「そう簡単ではない」と交渉の厳しさに顔をしかめる。
 日米同盟の前途も「トランプ大統領」という特異な政権の出方次第では対立拡大の可能性も少なくない。
 一見華やかな年末首脳外交だが、首相にとっては「政権の命運をかけた正念場」であることも否定できない。






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