2016年12月12日月曜日

トランプ外交の幕開け(3):「一つの中国」という呪縛にしばられず、という衝撃!

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 ハーグ裁判所の裁定が国際ルールなら、一つの中国というのも国際ルールである。
 中国は「紙くず」と前者を否定して、アメリカは「呪縛」と後者を否定した。
 南シナ海問題で中国は台湾を失った
ということになってしまう。
 もしそうなら習近平の大失敗になる。
 ただではすまなくなる。
 習近平がヤバイ。
 どこかでアメリカと折り合いをつける状況に至っていると思える。
 反発ばかりしていると、中国は隅っこの穴蔵に追い込まれてしまう。
 さーて、これからどうなるのか。
 トランプの中国揺さぶりはすごい。
 これまでのルールとちがった土俵で取り組まなければいけない中国は蜂の巣を突っついたみたいになる。
 オバマはまだ大統領だがあまりに流れにカスンでしまっている。

 台湾としては経済は中国に寄り添って利益を得、政治は独立して中国と距離を置く、という姿勢であろう。
 つまりいいとこどりをしたい、ということである。
 果たしでそれがどこまで続くかである。
 中国に飲み込まれるか、それとも距離を置けるか。
 距離をおくなら中国の経済傘下からの離脱を視野にいれないといけない。
 それに耐えられるかである。
 政治とはときにガマンが必要になる。
 『貧しさに耐え、自立を!』
というスローガンをかかげられるか。
 もしそれができないなら、やはり中国の傘下に入ったほうが賢明になる。


フジテレビ系(FNN) 12/12(月) 6:14配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20161212-00000273-fnn-int

米・トランプ次期大統領、
1つの中国」に縛られない考え



 アメリカのトランプ次期大統領は、台湾の蔡英文総統との電話に中国が抗議したことに関連し、台湾を中国の一部とみなす「1つの中国」政策にアメリカが縛られることに否定的な見方を示した。
 トランプ氏は
 「わたしは完全に『1つの中国』を理解している。
 しかし、中国と貿易などで合意しなければ、なぜ『1つの中国』に縛られないといけないのかわからない」
と話した。
 トランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話で会談したことに対しては、中国側が抗議したほか、アメリカ政府も「1つの中国」の原則に変更はないと釈明していた。
 FOXニュースの番組でトランプ氏は、蔡総統との会話について「とてもいい電話だった」と評価する一方、
 「なぜほかの国が、『わたしが電話に出るな』といえるのか」
と中国側の抗議に反発した。

 トランプ氏はさらに、中国の通貨政策や南シナ海の軍事化も批判しており、中国側の反発も予想される。
 また、大統領選でロシアの介入があったとCIA(アメリカ中央情報局)が結論づけたと報じられたことについては、「ばかげている」と、これを否定した。



時事通信 12/12(月) 1:05配信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016121200013&g=int

「一つの中国」に縛られず=
貿易や外交政策次第―次期米大統領


●トランプ次期米大統領(左)と蔡英文台湾総統。

 【ワシントン時事】
 トランプ次期米大統領は11日放送されたFOXテレビの番組で、
★.中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」原則を米国が維持していくかは、中国の貿易や外交政策次第だ
と述べた。

 トランプ氏と台湾の蔡英文総統との電話会談後、ペンス次期副大統領は米国の中台政策に変更はないと述べたが、これと異なる見解で、中国側の反発を招きそうだ。

 トランプ氏は
 「貿易関係などで合意が得られなければ、なぜ『一つの中国』に縛られないといけないのか」
と疑問を呈した。
 その上で、中国は為替操作などで米国に不利益を与えていると批判。
 南シナ海に大規模な軍事施設を建設すべきではなく、
 北朝鮮への対応も不十分だ
と指摘した。

 また、台湾総統との電話会談に関しては「1、2時間前に聞かされた」と述べ、事前に準備されていたとの見方を否定。
 「会話は短時間で、お祝いを受けた。
 電話を取らないのは失礼だ」
と強調し、
 「中国に対応を指示されたくはない」
とも述べた。 



ロイター  2016年 12月 13日 05:34 JST
http://jp.reuters.com/article/one-china-us-president-spokesman-idJPKBN1412K0

「一つの中国」政策維持、
台湾は緊密な同盟国=米報道官

[ワシントン 12日 ロイター] -
 アーネスト米大統領報道官は12日、米国は「一つの中国」政策を維持することにコミットしているとの立場を示した。

 トランプ次期米大統領は、米国の利益になるものがない場合
 「一つの中国」政策に米国が縛られなくてはならない理由は理解できないとし、同政策を必ずしも堅持する必要はないとの考えを表明。

 同報道官は記者会見でこの発言について意見を聞かれ、
 「米国は台湾、および米国と台湾との関係を交渉の切り札と見なしていない」
とし、台湾は米国の緊密な同盟国であるとの見方を示した。



毎日新聞 12/13(火) 8:30配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161213-00000011-mai-int

<トランプ氏>「一つの中国」取引材料 
中国は「懸念」

 【ワシントン会川晴之、清水憲司、北京・石原聖】
 トランプ次期米大統領は11日放送の米FOXニュースのインタビューで、台湾は中国の一部とみなす「一つの中国」政策に縛られない考えを示した。
 台湾問題を「取引カード」として使い、経済、南シナ海問題などで中国に対応を求めるトランプ流の交渉術とみられる
が、中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は12日の記者会見で「重大な懸念」を表明。
 「台湾問題は中国側の核心的利益に及ぶ」と妥協の余地がない点を強調した。

 「貿易などで(中国と)合意できないなら、なぜ『一つの中国』に縛られなければならないのか分からない」。
 1979年の中国との国交正常化以来、米国が堅持してきた「一つの中国」政策について、トランプ氏は中国の対応次第で変える可能性に言及した。

 トランプ氏はさらに「中国によって米国は極めて大きな被害を受けている」と指摘。
 例として「米国が課していない関税を中国が(米国製品に)重く課している」と述べ、人民元の安値誘導も批判した。
 南シナ海問題では「(人工島で)巨大な要塞(ようさい)を建設している」と強調。
 北朝鮮による核開発にも言及し「中国は問題を解決できるのに、まるで協力しない」と不満を述べた。
 こうした問題について中国と交渉する際、台湾問題をカードとして使うことを示唆したといえる。

 トランプ氏は今月2日、台湾の蔡英文総統と電話で協議。
 米国の大統領や次期大統領と台湾総統とのやりとりが明らかになったのは米中の国交正常化以来、初めてで、抗議した中国に対し、トランプ氏は「なぜ他国が(台湾総統からの)電話に私が応じるべきでないと言えるのか。私に指図しないでほしい」と批判した。

 一方で中国は、「一つの中国」原則の維持を米中関係の政治的基礎と位置づけており、譲歩する余地はない。
 耿爽副報道局長は12日の会見で
 「米国の新政権と指導者が、問題が高度に敏感であることを十分に認識し、『一つの中国』原則の堅持を続けるよう促す」
と語った。
 中国の国際情報紙・環球時報は社説で「トランプ氏は『一つの中国』原則は売り買いできないものだとはっきり悟るべきだ」と指摘した。



ニューズウイーク 2016年12月13日(火)18時00分 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6530.php

トランプは「台湾カード」を使うのか?

 今月2日に台湾の蔡英文総統と電話会談したトランプ次期大統領は11日、「一つの中国に縛られない」旨の発言をした。
 これに対し中国は激しく反発。国際的に通念化している「一つの中国」論に疑義の余地はあるのか?

■次期トランプ政権は「台湾カード」を使うのか?

 12月11日、トランプ次期大統領は、米フォックス・ニュースのインタビューで「台湾は中国(中華人民共和国)の一部分である」という「一つの中国」論に関して、以下のように発言したとBBCが伝えた。

「私は"一つの中国"という政策があることは知っている。
 しかし貿易など、その他多くの取引に関して合意に達しない限り、なぜわれわれは"一つの中国"政策に縛られなければならないのか?」
「"一つの中国"を順守するかどうかは、南シナ海問題や貿易政策などの対立する分野で、中国側が我々と取引をするかどうかにかかっている」

 などだ。

 アメリカのメディアによれば、トランプ次期大統領の周りには「アメリカは中国との通商交渉で強硬姿勢を貫け」とする経済学者のピーター・ナバロ氏や徹底したタカ派のジョン・ボルトン(元国連大使)などがいて、覇権を強める中国に対して「台湾カード」を使えとアドバイスしているらしい。
 したがって来年1月にトランプ氏が正式に大統領に就任したあとは、
 「台湾カード」=「一つの中国」を外交交渉のカードとして利用する考えのようだ。

■中国は一斉に猛反発

 中国では外交部のスポークスマンが12日の記者会見で「"一つの中国"原則は米中関係の政治的基礎だ」と深い懸念を示しただけでなく、中国政府系列の新聞やネット、あるいは中央テレビ局CCTVも12日の昼のニュースの中で特集を組むなど、猛烈な抗議を表明した。

 たとえば、外交部スポークスマンはつぎのように述べた。

 ●台湾問題は中国の主権と領土保全に関し、中国の核心的利益に関わる問題だ。
 ●"一つの中国"原則を堅持することは、中米関係発展の政治的基礎である。
 ●もしこの基礎が乱され破壊されるようなことがあれば、中米関係の健全な発展と両国の重要な領域における協力は、話し合うこともできなくなる。
 ●アメリカの次期指導者は台湾問題がいかに敏感な問題であるかを認識すべき。

 中国共産党系新聞の環球時報は、中国の厳粛なる領土主権の問題を「商売の取引に使うな」と批判。
 ネットユーザーのコメントには
 「商売人はやはり商売人」
 「言うことをコロコロ変えるから、次は何を言うかは分からない」
といったものが目立つ。
 尖閣問題の時のような反日に燃え上がる激情的なものとはニュアンスが異なる。

 CCTVは、トランプ次期大統領の言動は、1979年以来築き上げてきた米中関係を破壊するものであるとした上で、彼の周りには反中右翼が多いので、その影響を受けており、実際に大統領に就任したあとも同様の政策を採るか否かは不明だとしている。
 もし続行するなら、戦争といった深刻な事態にもなりかねないと、評論家が警告した。

■"一つの中国"原則はいかにして創られたのか?

 では、"一つの中国"原則は、いかにして創られたのか、少しだけ詳細に見てみよう。

 日中戦争が終わった後、蒋介石(国民党)がトップリーダーであった「中華民国」を倒そうと、毛沢東(中国共産党)が革命(反乱)を起こし、国共内戦が始まった。
 内戦に勝った毛沢東は、1949年10月1日に中華人民共和国誕生を宣言。
 蒋介石は同年、台湾に「遷都」し、台北を「中華民国」の臨時首都として、広大な大陸を含めた国土を「一つの中国」とみなす「大中国政策」を実施した。
 「中国を代表する国家は中華民国のみである」ことを絶対的な政治基盤としていた。

 一方、中国大陸の北京政府は、「中華民国を倒して中華人民共和国が誕生したのだから、元中華民国であった領土は、すべて中華人民共和国のもの」として「一つの中国」を主張。

 「中華民国」は第二次世界大戦で連合国側としてアメリカとともに日本と戦っているので、国連には「中国」を代表する国として加盟し、安保理常任理事国でもあった。

 ところが、泥沼化したベトナム戦争からの撤退を選挙公約にして当選した共和党のニクソン大統領(1969年~1974年)は、北ベトナムを応援し中ソ対立を抱えていた北京政府に接近し、大統領としての地位を固めようとしたのである。
 そのため北京政府が主張する「一つの中国」を選択し、中華人民共和国が唯一の「中国」を代表する国家として国連加盟するに至る。

 このとき、同盟国であった中華民国にも知らせず米中が接近したことを知った蒋介石はアメリカに裏切られたと激怒して、国連から脱退してしまう。
 日本にも知らせなかったのは、共和党の大統領としての地位を確保するため、民主党に知られ、出し抜かれたくなかったからだと追われている。
 蒋介石には、北朝鮮と韓国のように、相対立する「元ひとつの国」として、両方が国家として国連に残るという選択もあった。

 しかし日本の頭越しに米中接近が行われたことを知った日本は、あわててアメリカの後を追い、アメリカに同調して北京政府が主張する「一つの中国」を選択したので、日米に裏切られてしまったことを知った蒋介石は、屈辱に耐えることに忍びなく、国連を去ったのである。

 それ以降の日米は自国の選択がまちがっていなかったことを証明するためにも、ひたすら中国の発展に力を注ぎ、中国のこんにちの繁栄をもたらしている。

 中国の現在の覇権は、ある意味、日米が招いたものであり、言うならば自業自得だ。

 そのきっかけを創ったニクソン元大統領などは、民主党に米中接近の功績を持って行かれたくなく、ニクソン政権の長期継続を図るために、民主党全国委員会本部への不法侵入や盗聴事件(ウォーターゲート事件)により弾劾され、現役大統領として初めて辞任している。

 つまりニクソン氏は、権勢欲のために北京と接近したことになる。

 その結果、中国を経済大国にのし上げ、軍事大国にまでしてしまったのだ。
 中国は日米との間で勝ち取った「一つの中国」原則を、すべての国に要求したので、今ではこれが国際的な通念となっているのだ。

 そのまちがいに気づいたのがトランプ次期大統領であるとするなら、彼のこの度の発言は、「ようやく現実に気が付いたのか」という側面を持つと、筆者の目には映る。

■"一つの中国"に疑義の余地はあるか?

 中米の間には「3つの共同コミュニケ」が交わされている。
 1972年2月の「米中共同コミュニケ」(上海コミュニケ)
 1978年12月の「中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」および
 1982年8月17日の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)だ。

 その間の1979年1月1日、中米両国は正式に国交を正常化している。
 そしてこの瞬間、「中華民国」とは国交を断絶した。

 この日まで待ったのは、米国内の反対論もあったが、何よりも蒋介石が1975年4月に他界したからだろう。
 いくらなんでも、国交断絶を宣言するのは、国連において落ち度のなかった蒋介石に残酷すぎるという「人道」としての憐憫の情が働いたのではないだろうか。
 そして中国がいま主張する「3つの共同コミュニケ」には、明確に「一つの中国」を原則とすることが書いてある。

 その中の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)では、米国側は「台湾への武器売却を長期的政策として実施するつもりはないこと、台湾に対する武器売却は質的にも量的にも米中外交関係樹立以降の数年に供与されたもののレベルを越えないこと、及び台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりであること」を表明している。

 しかしアメリカは中華民国との国交断絶とともに同時に「台湾関係法」(1979年)を制定して、事実上の米台軍事同盟を国内法で決めている。
 それまで存在していた米華相互防衛条約に代わるものだ(この「華」は「中華民国」の意味)。
 武器売却を可能にしている国内規定でもある。
 ところで、トランプ次期大統領は、何度も「台湾への武器売却を強化する」と言っている。
 一方、中国では2005年に反国家分裂法を制定し、台湾が独立を唱えれば、いざという場合には「武力鎮圧を辞さない」という姿勢である。

 「一つの中国」論への疑義は、今となっては「台湾独立」という可能性しか示唆しておらず、それは不可能ではないが、しかし中国(北京)が黙っていない。
 必ず「反国家分裂法」が火を噴く。
 そのために中国は昨年、建国後初めて抗日戦争勝利記念日に軍事パレードを挙行し、「反国家分裂法」が実行された際の威力を、台湾にそしてアメリカに見せつけた。

 そんな中国に誰がした、と言いたいが、アメリカが過去における自国の選択を反省してみるのは悪いことではない。
 日本も経済繁栄のために、その結果、何を招いているかを考えてみる必要はあるだろう。

 不戦の誓いは絶対的な前提条件だが、敗戦国ゆえに「毛沢東が日本軍と共謀したことによって強大化した中共軍」「その結果、誕生した中華人民共和国」という、中国にとって不都合な事実に対して、「ものが言えない国家」を、いつまで続けるのかに関しては、一考する必要があるのではないだろうか。



新潮社フォーサイト2016年12月13日 15:03 野嶋剛
http://blogos.com/article/201829/

トランプの「正論」が揺るがす「米中台」関係 

 米国のトランプ「次期」大統領と台湾の蔡英文総統が電話会談を行ったニュースが流れたことで、台湾に漂った空気は、必ずしも中国を出し抜いて「してやったり!」とする拍手喝采ではなかった。
 むしろ安堵であった。
 それは、トランプの発言が、台湾人がずっと感じていた不満・疑問に、一応の納得のいく「正論」で応えていたからだった。

■「台湾問題は米中関係の最重要課題」

 トランプはツイッターで「米国が台湾に数十億ドル規模の軍装備品を売っていながら、私は祝いの電話を受けるべきではないというのは興味深い」と述べた。
 これは、台湾の人々にとって、かなり大きな意味があったと思う。
 台湾は米国から多額の武器を買っている。
 米国の報道によれば、
 「2010年以来、台湾は米国から140億米ドル(1.6兆円)の武器・装備を購入していることが、議会に報告されている」
という。
 この数字は台湾側が公表している数字ともほぼ一致している。

 これは日本の米国製武器調達の金額の数倍に達するだろう。
 年間予算7兆円弱の台湾で、国防予算は1兆円程度である。
 そんな台湾の予算規模からすれば、ふさわしいとは言えないぐらいの金額である。
 そのため、台湾の国防部は普段はかなり涙ぐましいほど倹約に励まなくてはならない。
 それでも米国製武器を購入するのは、中国という脅威に直面するなかで、
 どうしても軍備のクオリティを落とすことができないからだ。

 いま世界で台湾に武器を売っているのは米国だけだ。
 かつてはフランスがミラージュ戦闘機を売ったこともあったが、1990年代にフランス製海軍艦船の売却問題が一大汚職事件に発展してから手を引いてしまった。
 ほかの国は中国に配慮して台湾に武器を売らない。

 一方、米国には1979年に台湾と断交するとき定めた「台湾関係法」があり、台湾に「防御性の武器」を提供する法的根拠になっている。
 もちろん、米国が中国の抗議にひるまない超大国だから可能なことでもある。中国が米国に対して口を酸っぱくして「台湾問題は米中関係の最重要課題だ」と言い続けるのは、中国の「国家統一」の最終目標である台湾問題の解決を米国が阻んでいるとの主張からだ。

 しかし一方で、米国は台湾に対して、かなり高額で時代遅れの兵器を売っているとされる。
 私には正直、兵器の適正価格について論じる深い知識はないが、少なくとも私が過去に取材した台湾の国防関係者の多くはそんなことを口々に語っていた。

■売り手と買い手の「正論」

 台湾では、米国の軍事コンサルタントやロビイストらしき人間がうろついているホテルがいくつかある。
 私が台湾にいた8年ぐらい前は「西華飯店」がそうだと聞いた。台湾はいいお客さんなのである。
 しかし、米国はいつも「買ってくれてありがとう」と台湾には言わない。
 「中国からは批判も出ているのに、売ってやっているんだよ」と言わんばかりである。
 究極の売り手市場だからできる態度だ。
 例えば、戦闘機については、台湾は2世代前のF16A/Bを主力戦闘機としているが、台湾の度重なる更新要求に米国は頑として応じず、F16C/Dへのアップグレードで済ませることを台湾に飲ませ、さらに、新規購入並みの金額を要求したとされる。
 そして、台湾には農・畜産品の市場開放を無理強いするなど、その態度はかなり高圧的で横暴に見える。
 台湾の世論調査で対米感情が決して良いとは言えないのは、こうした米国の嫌な一面を日本人よりリアルに見ているからではないだろうか。

 それが、今回、トランプは台湾を「いいお客さん」と評価した。
 だから電話を取らないと失礼にあたると。
 これこそ売り手と買い手の関係における「正論」であり、台湾人が心の中で求めていた言葉だった。
 蔡英文が外交的によくやったとか、中国にひと泡吹かせたとか、そんな表面的な論議だけでは、台湾人の心情を十分に語り尽くしていないところがある。

 いずれにせよ、この電話会談は、トランプ当選後、最も国際的な反響を呼んだ事案ではないだろうか。
 世界中のメディアが速報で報じ、多くの一流紙が1面トップで詳報した。

 台湾のニュースが1面のトップになるのは、4年に1度の総統選と相場が決まっている。
 しかし、2015年11月の習近平・国家主席と馬英九総統の中台トップ会談も1面トップになり、今年1月の総統選での蔡英文当選も含めて、およそ1年で3度も1面トップになるのだから、台湾問題をやっている人間としては専門家冥利に尽きる1年になった。

■根拠のない論議

 だが、やはりここで考えなくてならない問題がいろいろ出てきた。
 それは「1つの中国」という世界に、我々は果たしてどこまで付き合わなくはならないのか、という本質的な問題である。

 この電話会談が米中関係に悪影響を及ぼすとして、ホワイトハウス、米民主党、米メディアから批判の大合唱が起きた。
 しかし、一体全体、トランプのしたことのどこが悪いのか、それを論理的に説得力ある形で説明している者はいない。
 あるのは「中国が怒って米中関係が悪化する」という話だけだ。

 今回、トランプは(もちろん蔡英文も)、何ら国際法に反することや、米国や台湾の関係法令に反すること、ましてや、米中関係や米台関係の外交上の原則を壊すようなことをしたわけではない。
 トランプが就任後に蔡英文と電話会談を行ったなら、もちろん大ごとだ。
 しかし、彼はまだ私人である。

 また、トランプが蔡英文のことを「台湾総統」と呼んだことも批判された。
 米国の政府高官は台湾総統を「台湾の指導者」と呼ぶことが多いからだ。
 しかし、電話で蔡英文は彼女の正式な職名である「中華民国総統」とトランプに名乗ったはずで、それに対して、トランプは「台湾総統」と彼女を呼んだ。
 これは、ある意味で「1つの中国」への理解を示したことにならないだろうか。

 もしもトランプが蔡英文を「中華民国総統」と呼んでいれば、もっと深刻な問題になっただろう。
 我々も普段から蔡英文のことを「台湾総統」と呼んでおり、新聞でも「中華民国総統」とは書かない。
 「中華民国」を使うことが「中国の国家分裂に加担する」という理由で、中国から抗議されるため、日本を含めた各国のメディアでは「台湾総統」になっているのだ。
 だからトランプが呼んだ「台湾総統」という呼称は、それ自体大きな問題ではない。

 要するに、米国の一部メディアや民主党は、「1つの中国」の受け入れを国際社会に求める中国に配慮してきた過去の「暗黙の了解」を壊したことが中国を刺激するから米中関係にマイナスだと批判しているだけで、それは単に「現状維持」が望ましいという国際法上の根拠のない論議に過ぎない。

■中国の狙い

 トランプの行為に、こうした「1つの中国」に対する人々の固定観念と自己規制を蹴り飛ばす効果があったのは間違いない。

 多くのメディアが、「中国の反発が予想される」と書いた。
 それはそうだろう。
 しかし、そんなことは一般の読者でも思いつくことだ。
 低気圧が来れば雨が降るのと同じである。
 そこで曇りになるのか大雨になるのかを見極めるのが報道の意味であるが、たいていは「中国は反発することが予想される」で終わってしまっている。
 そして実際に、中国はその通り抗議する。
 ある意味で「予想される」と書かせることが中国の狙いでもある。
 それは「1つの中国」が、中華民国との内戦に勝利するための「プロパガンダ」だからだ。

 そもそも「1つの中国」問題とは、中華人民共和国と中華民国がいまも事実上の内戦状態にあることと関係している。
 中国は「中国はこの世に1つしかない。そして、それは中華人民共和国である」と主張している。

 戦後、最初の国連の加盟国は中華民国で常任理事国でもあったが、1971年に中華人民共和国が国連に加盟してコインの表裏がひっくり返り、日本は翌72年に中華民国と断交し、米国も79年に断交した。
 その他の国々もだいたい70—80年代に中華民国と手を切って、中華人民共和国と国交を結んでいる。

 その際、中国が要求するのが「1つの中国」原則への同意・受け入れである。
 同意した国もあるが、日本は「理解し、尊重する」とし、米国は「認識する」とした。
 国によって温度差があり、すべての国が中国の主張をそのまま丸呑みしているわけではない。

■新しい「中台関係」の思考

 考えてみると、台湾も「1つの中国」を主張していた時代ならばまだしも、いま台湾はすでに大陸反攻を諦め、事実上、「1つの中国」を放棄した。
 現在は中国が台湾に「1つの中国」を要求し、台湾は拒んでいる状況にある。

 ならば、「1つの中国」という前提で中国を選ぶか台湾を選ぶかという状況はすでに崩れており、我々が中国か台湾かの二者択一の論法で考え続ける必要があるのか、改めて問い直されていい時代になっている。

 トランプがどこまで戦略的に中台関係を考えているのか定かではないが、12月11日にも、テレビインタビューで「1つの中国」について、「なぜ我々は縛られなければならないのか」と疑問を呈する発言を行った。
 トランプがそれなりに本気だとすれば、我々は備えなくてはならない。
 トランプの「正論」は、米中関係や中台関係をこれから相当揺るがすかもしれないが、新しい時代に必要な中台関係に関する新しい思考を我々が始めるきっかけになることは間違いない。


ロイター 2016年 12月 14日 11:01 JST 

米国防副次官補「台湾は防衛予算増額を」 
中国の脅威増す

[ワシントン 13日 ロイター] - 米国防総省のデンマーク副次官補は13日、中国の脅威を踏まえ、台湾の防衛費増額が必要だとの認識を示した。

 中台関係をめぐっては、トランプ次期米大統領が今月、「一つの中国」政策を必ずしも堅持する必要はないとの見解を示している。

 副次官補はワシントンで開かれたフォーラムで、
 オバマ政権として「一つの中国」政策を維持する方針に変わりはないが、トランプ次期大統領の就任後の意向はわからない
と発言。

 中国軍の近代化の主眼は必要な場合に武力で台湾を再統合することであり、
 「台湾には、抑止政策が失われた場合に攻撃を阻止し、効果的に防衛する力を整備し、投資する義務がある」とし、
 「防衛力は極めて重要だ。
 台湾の防衛予算は脅威のペースに追いついておらず、増額が必要だ」
との見解を示した。






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