2016年10月4日火曜日

なぜヒラリーは嫌われるのか(1):生身の自分を人々にみせないこと、自分の弱みを見せないこと

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yahooニュース 2016年10月4日 13時34分配信 中岡望  | 東洋英和女学院大学教授 ジャーナリスト
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaokanozomu/20161004-00062875/

なぜクリントン候補は嫌われるのか(Part 1)

■なぜクリントン候補は苦戦しているのか

今回の選挙の大きな疑問は、「なぜヒラリー・クリントン候補の人気が盛り上がらないのか」ということである。
“初の女性大統領”が誕生するかもしれないというのに、女性の間にも熱狂的な盛り上がりは感じられない。
一時、クリントン候補の地滑り的な勝利が予想されたが、選挙戦終盤になってドナルド・トランプ候補の追い上げにあい、もたついている。
2008年の大統領選挙では熱狂的なオバマ候補支持が見られたが、今回はまったく様相が違う。
アメリカの著名なコラムニストのエリザベス・ドリュー氏は
 「おそらく世界中の人々は、ヒラリー・クリントンは競争相手であるドナルド・トランプよりもアメリカの大統領になる準備ための準備をし、大統領にふさわしい人物であるにもかかわらず、なぜ苦戦しているのか不思議に思っているだろう」
と書いている。
オバマ・ブームを支えたオバマ連合(Obama coalition)は跡形もなく消えている。
オバマ連合とは、大統領選挙でオバマ候補を熱狂的に支持した女性、ラテン系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、ミレニアム世代と呼ばれる若者のことである。
今回の選挙で目立っているのは、逆に“ヒラリー嫌い”である。
また共和党支持者や保守主義者は長年抱いてきた“反ヒラリー”の嫌悪感をさらに強めている。
“ヒラリー嫌い”は今に始まったものではない。
夫ビル・クリントンが大統領になり、ファーストレディーとして活躍していたころから、“ヒラリー嫌い”の声は聞かれた。
その後、上院議員、国務長官を経て、大統領候補になったが、その間、ずっとヒラリーを熱狂的に支持する人と同じくらい「ヒラリーは嫌だ」と公然と語る人がいた。
なぜヒラリー・クリントンは嫌われるのか。
彼女の何が問題なのだろうか。

今回の大統領選挙は従来とはやや趣を異にする。
それはクリントン候補とトランプ候補のいずれもが“最も人気のない候補者”であるということだ。
ワシントン・ポスト紙とABC放送の共同調査(2016年8月31日)によれば、
 「クリントン候補が好ましくない」と答えた比率は56%と、「好ましい」という回答の41%を大きく上回っている。
他方、トランプ候補の「好ましくない」という比率は63%、「好ましい」という回答は35%であった。
 同調査を報じたワシントン・ポスト紙は「ヒラリー・クリントン嫌いのアメリカ人の数は過去最高」という見出しを付けている。
 クリントン候補の好感度は2013年の67%をピークに確実に低下傾向にある。

■筆者のクリントン候補の印象は極めて良好

筆者のヒラリー・クリントンに対する個人的な印象を述べるところから話を始めよう。
ヒラリー・クリントンは2009年2月末に国務長官に就任後の最初の公式訪問国として日本を選んだ。
クリントン国務長官の来日が決まった後、アメリカ大使館から筆者に電話があった。
「日本滞在中、クリントン国務長官の直接取材してくれないか」
という内容であった。
条件は、記事を最初に筆者のブログに書くことであった。
筆者はブログにも書くが、雑誌にも寄稿しても良いかと質問した。
「ブログに書いた後なら雑誌に寄稿しても構わない」
との返事であった。
クリントン国務長官とのインタビューを記事をブログにアップし、同時に『週刊東洋経済』(2009年2月28日号)に「単独インタビュー:ヒラリー・クリントン国務長官―保護主義の動き阻止へ、最優先は世界経済回復」と題する記事を寄稿した。
その時の彼女に対する印象を以下で書いてみる。

結論から言えば、直接会って得た印象は極めて良好であった。
正直、なぜ彼女が嫌われるのか理解に苦しんでいる。
クリントン国務長官は2月16日に来日し、18日に次の訪問国のフィリピンに向かった。
東京では2泊3日の滞在であった。ク
リントン国務長官が日本に到着したのは16日の夜。
アメリカ大使館から大使館のスタッフと一緒にバスに同乗して羽田空港に向かった。
記憶では、クリントン国務長官一行を乗せた飛行機が羽田空港に着いたのは夜の9時を過ぎていたのではないかと思う。
筆者はジャーナリストや大使館のスタッフと一緒に滑走路で専用機の到着を待った。
猛烈に寒い風が吹き、体が震えるのを止めることができなかた。
専用機が到着し、クリントン国務長官はタラップから降りてきた。
タラップから降りた国務長官は随行員と一緒に羽田空港の一隅にある迎賓館に向かった。
羽田空港に、こうした迎賓館があることはまったく知らなかった。
大きくはないが、平屋の建物で、内装は豪華であった。
迎賓館に着くと、最初に記者会見が行われた。

クリントン国務長官は挨拶の中で
「日本はアメリカのアジア政策の要石(cornerstone)である」
と語った。
日本の多くのメディアは、クリントン国務長官が最初の公式訪問国に日本を選んだこと、到着後の挨拶で日本を「要石」と呼んだことを受けて、オバマ政権は“日本重視政策”を取っていると報じた。
蛇足だが、こうしたメディアの報道の仕方にいつも疑問を抱いている。
クリントン国務長官の来日は、日本、フィリピン、韓国、中国歴訪の一環であり、アジアの入り口に位置する日本に最初に来たに過ぎない。
日本に最初に来たことに外交的配慮がなかったとは言わないが、過剰に評価すべきものでもない。
迎賓館での歓迎式典が終わると、国務長官一行は宿泊地のホテルオークラに向かった。
筆者はホワイトハウスから同行した記者団と一緒に行動を取るように指示され、バスで都心に戻った。

17日の早朝、クリントン国務長官は明治神宮を参拝した。
筆者も明治神宮に行くように指示され、早朝、肌を刺すような寒さに体を震わせながら、長官の到着を待った。
まだ早朝ということで、一般の人の姿はなく、メディアの取材陣が陣取っていた。
その後、時系列的には明確な記憶はないが、筆者が参加したのは東京大学での学生との討論会、アメリカ大使館内での大使館スタッフに向けた演説、外務省板倉公館での外務大臣との共同記者会見などである。
大使館でのスピーチでは、クリントン長官は大使館の職員の労をねぎらい、自身の外交政策の考え方について語った。
記憶に残っているのは、
「外交政策はハード・パワーだけではだめであり、またソフト・パワーでも十分ではない。
必要なのはスマート・パワーである」
と語った一節である。
東京大学での学生との討論会も極めて率直かつ丁寧に学生の質問に答えていたのが印象的であった。
この間、筆者はずっとホワイトハウス詰め記者とバスでクリントン長官の後を追った。
2日目のお昼過ぎ、大使館員から「クリントン国務長官との単独インタビューの時間が取れそうだ」との連絡が入った。
午後8時ころにホテルオークラのロビーで待機するように指示された。
インタビューの準備をし、待機していたが、なかなか連絡はこなかった。
11時を過ぎたころ、大使館員から「今夜は無理そうだ」との連絡が入った。
後日知った事だが、クリントン国務長官と小沢一郎衆議院議員(当時、アメリカでは最も政治力のある政治家と見られていた)との会談が急遽開かれたために、予定が狂ったとのことだった。
大使館員から
「明日の朝8時にホテル大倉に来て、待機するように」
との指示を受けた。
お昼過ぎに離日する予定で、その前にインタビューの時間を取るとのことであった。
早朝、ホテルオークラに向かい、大使館員の指示を待った。
「長官の時間が取れました」
との連絡が入ったのは、10時を回っていたと思う。
「離日の準備があるので、インタビューは30分程度で終わってください」と
言われ、クリントン長官の宿泊する階に向かった。

クリントン長官と筆者は同じ1947年生まれの同じ歳である。長官の身長は170センチで、これも筆者とほぼ同じである。
向かい合って立つと、ちょうど目の位置になる。真正面から見た顔はやや赤ら顔でチャーミングであった。
これは今から7年前のことであるが、同世代の女性よりもはるかに魅力的に見えた。
ただ、最近の写真などを見ると、自分と同様に歳を取ったと感じる。
最初に握手をし、簡単な挨拶を交わして、インタビューに入った。
穏やかな表情で、時々見せる笑顔は魅力的であった。
知的な雰囲気を感じた。
今までアメリカの政府高官と何度も会い、インタビューをしてきたが、その中で一番リラックスできる相手であった。
質問に対する答えも極めて簡潔で、頭のなかで十分に整理できている印象であった。
インタビューをテープで取り、発言を聞き取り、発言をそのまま記事にできるほど、簡潔でポイントを射た答え方であった。
インタビューが終わった後、大使館員から「一緒に写真を撮りましょうか」との申し出があり、喜んでお願いした。
大使館員から出発の時間が迫っているのでとせかされ、インタビューを終えたが、長官から意外な言葉が出てきた。「ワシントンに来たら寄ってください」。
もちろん社交辞令であることは分かっているが、ドライなアメリカ人からこうした言葉を聞くのは初めてであった。
筆者のヒラリー・クリントンの印象は、世間で言われているほど、“冷たい”とか“傲慢”であるとか、あるいは“インテリぶっている”というものではなかった。

ドリュー氏は
「多くの人はヒラリーを“知ったかぶり(know-it-all)”で、男子学生をへこます“超聡明な少女(super-smart girl)”だとみている。
彼女は女性差別に遭遇している」
と書いている。
またドリュー氏は
「ある民主党の州知事が最近『彼女はもっと微笑んだほうが良い』と語った」
というエピソードを紹介している。
彼女はずっとキャリアを求め続けてきた。
筆者は彼女の笑顔を今でも覚えている。
だが、直接、会う機会のない国民や有権者は違った印象を持っているようだ。
オバマ候補を争った2008年の民主党の大統領予備選挙の時、次のようなエピソードを聞いたことがある。
オバマ候補の演説会は熱気であふれていた。
若い聴衆は「Yes, we can!」と熱狂的に叫んで、オバマ候補を支持した。
だが、クリントン候補の演説会は静かで、演説は充実した内容であるが、退屈で、多くの聴衆は居眠りをしていたというものだ。
これにはやや誇張があるが、クリントン候補は聴衆を扇動し、盛り上げるという意味では優れた政治家とはいえないのは事実である。
2008年の民主党大統領予備選挙も僅差でオバマ候補に負けた。予備選挙が始まったころは、クリントン候補の圧勝が予想された。
今回も春先にはクリントン候補は共和党候補を圧倒すると予想され、相手がトランプ候補なら地滑り的勝利もありうると見られていた。
だが、選挙戦終盤で、クリントン候補は苦戦を強いられている。
2008年のオバマ候補の熱狂を呼ぶ演説、今回のトランプ候補の聴衆を楽しませるパフォーマンスが支持者を増やしている。
今回の大統領選挙でも、熱狂的な雰囲気がクリントン候補を包み込む光景は見られない。
その背後には選挙運動そのものよりも、
クリントン候補の個性や多くのアメリカ人が抱くクリントン像、あるいは“ヒラリー嫌い”の現象があるようだ。

■公開討論会の勝敗と、その後の“好感度”調査

民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補の第一回の公開討論会が終わった。
討論会終了後の多くの世論調査ではクリントン候補が勝利したという結果が出た。
まず表題の問題を分析する前に、2016年10月1日に発表されたギャラップ社の世論調査(『After Debate, Record Number Paying Attention to Campaign』)の結果を見てみよう。
調査では、討論ではクリントン候補が勝利したという結果が出ていた。
だが、クリントン勝利にもかかわらず、ギャラップ調査は「今までのところ討論が二人の候補者のイメージに与えた影響はわずかである」と結論つけている。
好感度調査(favorable rating)では、討論会直前の9月19日から25日に行われた調査では、クリントン候補に好感を抱くという回答は41%で、トランプ候補に好感を抱いているは32%であった。
討論後の27日から29日に行われた好感度調査では、クリントン候補が41%と変わらなかったのに対して、トランプ候補の好感度は35%と増えている。
公開討論では圧倒的にクリントン候補が勝利したとみる有権者が多かったにもかかわらず、好感度調査は逆の結果が出ている。

同調査は
「過去の例を見ると、討論会で圧倒的な勝利を収めた候補者がイメージや支持を高めなかったということは異例なことではない」
と指摘する。
討論会での勝者が選挙で負けた例としては、
1984年の大統領選挙での民主党のウォールター・モンデール候補(相手は2期目を目指すレーガン大統領)、
1992年の大統領選挙での無党派のロス・ペロー候補(対抗馬は2期目を目指すブッシュ大統領と民主党のビル・クリントン候補で、当選したのはクリントン候補)、
2004年の大統領選挙での民主党のジョン・ケリー候補(対抗馬は現職のブッシュ大統領)
などがある。
討論の印象として、クリントン候補は「良く準備している」「大統領らしく見えた」と好意的な評価があると同時に、「電子メール問題」で嘘をついているという指摘もみられた。
他方、トランプ候補は「粗野である」との印象を与えている。
まだ討論会は2度ある。10月9日の討論会はタウン・ホール形式で行われ、会場から直接候補者に質問ができる。
これは最初の討論会と違った印象を与える可能性がある。
ただ支持率に関していえば、多くの調査でクリントン候補がトランプ候補をリードしているという結果がでている。

■“ヒラリー嫌い”の源流を探る

クリントン政権時代にファーストレディーに仕えたスタッフはテレビ番組に出演して
「ヒラリー・クリントンの人気は1990年代半ばから低下している」
と語っている(『ウォール・ストリート・ジャーナル』2014年3月2日の「Clinton White House Shaped First Lady’s Image」)。
クリントン候補の元スタッフによると、クリントン政権は意識的にヒラリーを“ファーストレディー”であると同時に“有力な政治アドバイザー”であるというイメージを作り上げようとしたという。
事実、クリントン政権が発足すると同時にヒラリーは医療保険制度改革プロジェクトの責任者に就任する。
ホワイトハウスは
「ヒラリー・クリントンを国民にアピールし、法案成立のため議会に対して説得力のある存在にしよう」
とした。
ヒラリー主導の医療保険制度改革は共和党や保守派の抵抗に合い、頓挫する。
オバマ政権での医療保険制度改革に際にも見られたが、保守派は政府が医療保険制度に関与することを忌避する傾向が強い。
ヒラリーの医療保険制度改革は保守派に強烈なマイナスイメージを与えた。
また、夫の支援を得てあたかもクリントン政権の閣僚のごとく振る舞う姿も保守派は拒否反応を示した。
ちなみにヒラリーは医療保険制度改革が失敗した後、直接政策に関わることを避けるようになっていく。

ヒラリーは伝統的なファーストレディーとはまったく違った存在と役割を果たそうとした。
アメリカの政治的伝統では、ファーストレディーは政治の前面に出るべき存在ではない。
過去に最も大きな影響力を持ったファーストレディーはエレノア・ルーズベルトである(フランクリン・ルーズベルト大統領の妻)。
彼女はルーズベルト大統領の政策に間接的に大きな影響を与えた。
ルーズベルト夫婦は政策について一緒に議論をすることもあった。
だが、ヒラリーと決定的に違うのは具体的に政策に関わることはしなかったことだ。
病弱な夫に代わって全国を遊説して政権への支持を訴え、積極的に福祉活動に携わって、政権を側面援助した。
ちなみにエレノアはルーズベルト大統領に日系アメリカ人の強制キャンプ収容を中止するように求めているが、大統領はそのアドバイスを受け入れなかった。
ファーストレディーは一歩下がって陰で夫を助けるというのが“理想的なファーストレディー”像である。
歴代大統領のファーストレディーはいずれも良妻賢母役を見事に演じている。
たとえばオバマ大統領の妻ミシェルは家庭を守り、子供を育てることを優先し、政策に関わることは言うまでもなく、目立った社会活動も行っていない。
保守的派の人々にとって、目立ちがりやのヒラリーは鼻持ちならない存在であった。
また彼らが忌み嫌うヒッピー文化を代表する人物であった。
一部のヒラリー支持のフェミニストを除けば、多くのリベラル派や一般人もヒラリーに対して同様なイメージを抱いていた。
それが“ヒラリー嫌い”の発端である。

ヒラリーは女性差別解消を訴える代表的な人物になる。
その象徴的な出来事が、1995年に北京で開催された第4回世界女性会議へ出席して、「女性の権利は人権である」という有名な演説を行ったことだ。
それ以降、女性人権問題の指導者と目され、“ガラスの天井”を打ち破る女性として期待された。
ファーストレディーの役が終わると同時にニューヨーク州の上院議員選挙に立候補して、当選したことも保守派の人にとって鼻持ちならないことだった。
リベラル派の人々も、常に権力に寄り添うヒラリーを積極的に支持したわけではなかった。
ヒラリーは、多くのアメリカ人にとって、ドリュー氏のいう「知ったかぶりの超賢い女の子」であり、特別な存在であった。

2008年の民主党の大統領予備選挙でクリントン候補の圧勝が予想された。
あるジャーナリストが次のような趣旨のことを書いている。
「彼女は政治分野では最も有能だろう。
ほとんどすべての人が、彼女は2008年の大統領選挙で勝利し、ブッシュ大統領がもたらしたダメージを回復する最大のチャンスを持っていることに異論を挟まないだろう。
また彼女の傍には有能な選挙運動家のビル・クリントンがいる。
しかし、アメリカ人はヒラリー(とビル)がホワイトハウスに帰ってくるということを本当に心配している。
多くの人は、彼女は選挙で勝つためには何でもするし、完全に安全だと思われない限り、自分の立場を明らかにしない」。
要するにクリントン候補は権力志向が強く、“日和見的”な人物であるというわけだ。

ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストのデビッド・ブルークス氏は次のように指摘している(同紙2016年5月24日、「Why Is Clinton Disliked?」)。
「幼児教育の問題から上院議員まで、彼女は疲れることなく仕事を追求してきた。
そのことが彼女の不人気を説明しているわけではないが、問題はそのやり方だ」。
クリントン候補は“仕事人間”で、何の趣味もない面白みのない人物であると指摘する。
さらに続けて、
「彼女と一緒に働いた人は彼女を称賛し、彼女は暖かく思いやりのある人物だと言う。
しかし、外部から見れば、彼女の人間的な側面は見えてこない。
クリントン候補のプロモーションビデオには「Fighter(戦う人)」というタイトルが付けられ、ビデオで見られる姿は完璧だが、それは「あまり人間的ではなく、企業広告のアバターのように無表情に見える」と指摘している。
そして、ブルークス氏は次のように結論づける。
「いかに成功を遂げた人でも、単に仕事人間ではなく、
本当の人間になるには自分を曝け出せる聖域が必要である。
そうした自分の聖域を見せてくれない候補者は信頼できない」。
要するに、
クリントン候補の問題は、仕事人間ではなく、生身の自分を人々にみせないこと、自分の弱みを見せないことにあり、暖かい指導者ではなく、冷徹な指導者のイメージを与えていることだ。
ビル・クリントン大統領が愚かな行為を繰り返しても愛される指導者であった。
ロナルド・レーガン大統領は決して聡明な大統領とはいえなかったが、極めて人間的な大統領であった。
その人間性から最も愛された大統領の一人であり、優れた指導者として今でも尊敬されている。
ヒラリー・クリントンには、そうした人間性が見えてこないのである。

ただ、クリントン候補が国務長官時代の回顧録『困難な選択』(日本経済新聞刊)を書いているが、そこでは海外の指導者との軽妙なやり取りや詳細な観察、また最後の章では母親に対する思いを綴っている。
それを読む限り、クリントン候補がいかにユーモアに富み、人間性があるかが伺われる。
外交の舞台裏だけでなく、クリントン候補の人柄を知る上でも、同書は最高の資料になっている。

■クリントン候補を苦しめる“信頼性”の問題

アメリカの保守派の人々とリベラル派の人々の間には越えがたい壁が存在する。
それは理屈を超えた感情的なものである。
保守派の人々は、理由はどうあれオバマ大統領やクリントン候補の攻撃を続けている。
保守派のメディアもネガティブ・キャンペーンの旗振りをする。
たとえば、保守派の人々は、オバマ大統領はアメリカ生まれでないため、大統領になる資格はないと執拗に主張し続けている。
それは明らかに虚偽の主張である。
トランプ候補もそうした主張に同調していた。
最近になってやっと自分の誤りを認めている。
同様に「ヒラリーは信用できない」という執拗なネガティブ・キャンペーンがクリントン候補にも加えられている。
最初は笑って済ませることができたが、ボディーのように効き始めている。
8月17日にクイニピアック大学が興味深い世論調査を発表した。
同調査では回答者の61%がヒラリー・クリントン候補は「正直でなく、信頼できない」と答えている。
同調査は、ヒラリー・クリントンという名前を聞いて最初に思い浮かぶ3つの単語を示すように回答者に求めている。
その3つの単語とは
「嘘つき(liar)」
「不正直(dishonest)」
「信頼できない(untrustworthy)」
であった。
こうした調査結果は、同調査に留まるものではなく、他の調査でも多くの人がクリントン候補を
「不正直」
「信頼できない」
と見ている結果がでている。
指導者に問われる最大の資質は“信頼性”である。
多くの人がクリントン候補を不正直とみていることは、大統領選挙に少なからず影響を及ぼす懸念があるし、当選して大統領に就任してもクリントン候補を悩ませることになるだろう。

では、具体的に何が問題なのだろうか。
本当にクリントン候補は嘘つきで、不正直、信頼に値しない人物なのだろうか。
クリントン政権で労働長官を務め、クリントン候補と親しいロバート・ライシュ・カリフォルニア大学教授は、
「この25年間にわたって常に彼女に対する非難、嫌味、調査が行われてきた。だがヒラリー・クリントンが違法行為をしたという証拠はまったくない」(「What Explains the Underlying Distrust of Hillary Clinton?」Alternet、2016年7月)
と語っている。
この25年間に何があったのか。
ライシュ教授は、
ヒラリー・クリントン候補が弁護士として土地開発に関わり、不正に利益を得たといわれる「ホワイトウォーター事件」、
ホワイトハウスの旅行担当者をミスとしたとして解任し、ヒラリーの友人に業務を移管した「トラベルゲート事件」、
繰り返されたクリントン大統領の不倫問題に対する態度、
ヒラリーの同僚で友人だったヴィンス・フォスターの自殺
など様々な事件に関わり、隠蔽工作をしたと批判されたことなど枚挙にいとまはない。
ライシュ教授はさらに続けて、
「大人になって絶え間なく厳しい攻撃にさらされた人が、スキャンダルや陰謀理論を生み出しかねないような調査に発展するかもしれない小さな間違いや過失を明らかにするのを躊躇するのは理解できることだ」
と、クリントン候補が一般の人やメディアに対して身構える姿勢を取る状況を説明している。
また、そうした彼女の防御姿勢が逆に人々の不信感を強めるという悪循環になっているとも指摘している。

現在の大統領選挙で問われている「信頼問題」は、個人アドレスを使って公務を行ったことだ。
保守派の人々は、それによって機密文書が漏洩した可能性があると批判している。
国務省やFBIが調査を行ったが、国務省はクリントン候補を訴追しないと決定している。
保守派の人々は、それはオバマ政権がクリントン候補を特別扱いしているものだと批判を加えている。
トランプ候補との第一回の公開討論会で、トランプ候補は電子メール問題に触れ、クリントン候補にすべてのメールを開示するように迫った。クリントン候補は公務に個人メールを使ったことは過ちであったと認め、謝罪している。
しかし保守派の批判は収まる気配がない。
ベンガジ事件もクリントン候補に対する攻撃材料になっている。
これは2012年9月11日にリビアのベンガジにある米国総領事館がテロの攻撃を受け、総領事などが殺害された事件である。
当時国務長官であったクリントン候補が総領事館のテロ攻撃を事前に知っていたにもかかわらず十分な対応を取らなかったと批判されている。
議会で調査も行われている。

もうひとつ、クリントン・ファンデーション問題がある。
同ファンデーションは1997年に設立されている。
設立趣旨は
「世界の健康と福祉を改善し、
少女や女性の人生の機会を高め、
子供の肥満を減らし、
経済的な機会と成長を創出し、
コミュニティの気候変動への取組みを支援するために、
私たちは企業と政府、NGO、それに個人を招集する」
ことである。
同ファンデーションは海外から巨額の寄付を受けているといわれている(詳細は明らかにされていない)。
中には独裁的な政府や不正に関連する企業も含まれているといわれ、クリントン候補は国務長官時代に同ファンデーションのために便宜を図ったのではないかと疑われている。
ライシュ教授が指摘するように、いずれも不正行為が明らかになっているわけではない。
クリントンを批判する保守派の評論家ピーター・シュヴァイツアーは著書『クリントン・キャッシュ』でクリントン・ファンデーションを使った錬金術を詳細に描いているが、
最後に「これらのことに確実な証拠があるわけではない」
と自ら書いている。
クリントン攻撃はかなり意図的かつ繰り返し行われている。
その主張の真偽は別にして、メディアが絶え間なく報道することでクリントン候補に対する国民の不信感が強まっていることは間違いない。

ヒラリー・クリントン候補が嫌われる理由の「Part 2」では、以下のポイントをそれぞれ分析する予定である。
■なぜ女性がヒラリー・クリントン候補を支持しないのか
■なぜミレニアム世代はヒラリー・クリントン候補から離反するのか
■オバマ連合は回復するのか
』

『
Yahooニュース 2016年10月17日 22時49分配信 中岡望  | 東洋英和女学院大学教授 ジャーナリスト
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaokanozomu/20161017-00063370/

なぜヒラリー・クリントンは嫌われるのか、その真相を探る(Part 2)

■見えにくいヒラリー・クリントンの“本当の姿”

  おそらくヒラリー・クリントンは最も誤解され、最も多くの批判を受けている政治家の一人であろう。
 人の本当の姿は外部の人間には見えにくい。
 その分だけイメージが先行することになる。
 クリントンを理解するには、自伝を読んでみると良い。
 まず『リビング・ヒストリー:ヒラリー・ロダム・クリントン自伝』は自分の生涯を振り返った本で、彼女の育ってきたプロセスを知る上で役に立つ(翻訳はハヤカワ文庫に収録)。
 もう1冊は『困難な選択』(日本経済新聞刊)である。
 これは国務長官時代の回顧録で、ヒラリーが外交で実際に経験したことを書いたものである。
 さらに自らの政治信条も綴られている。
 そこではヒラリーがいかにユーモアに富み、外国の指導者を鋭い観察力で分析しているかが生き生きと語られている。
 筆者は、この本の書評を『週刊東洋経済』(2015年6月)に書いているので、以下に引用してみる。

《書評の引用》
『
「米大統領選挙は、民主、共和両党の候補者を決める予備選挙に向けての選挙活動が加速している。
共和党はまだ有力候補者が正式に名乗りを上げていないが、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が世論調査では圧倒的なリードを保っている。
よほどの波乱がない限り、クリントン氏が民主党の大統領候補になる可能性が強い。
そうした雰囲気の中で問われているのが、クリントン氏の大統領としての資質である。
本著は、彼女の能力を評価する最適な本である。
クリントン前国務長官は聡明な女性である。
09年、国務長官として最初の訪問国に選んだのは日本であった。
その際、評者は国務省の依頼で日本での同行取材をし、単独インタビューを行い本誌に掲載した。
彼女のインタビュー記事は発言を書き起こすだけで、何の編集をする必要もないほど簡潔かつ完璧なものであった。
かつ極めて謙虚な人柄が印象に残っている。本書の中にも随所で同じ印象を得た。

本書は二つの部分から構成されている。
国務長官として海外の指導者と会った時の状況や彼らに対する印象を綴った部分と、政策課題について語った部分である。
前者に関して言えば、その驚くべき詳細な記憶に感嘆する。
交渉相手の小さな表情の変化まで詳細に語り、辛辣な印象を述べている。
たとえば、ある交渉の場で、
 『彼(プーチン)はほとんど耳を傾けようともしなかった。
 私は怒りを抱えながら、話題を変えてみた。
 シベリアのトラを救うために何をしているのですかと聞くと、彼は驚いて顔を上げた。
 さあ、これで彼の注意を引くことができた』。

コペンハーゲンでの気候変動の会議で中国の温家宝首相はアメリカを排除してインドやブラジルなどと秘密会議を開催していた。
その場所を捜し出し、オバマ大統領とクリントン国務長官は警護の阻止を振り切って会議の場に強引に入って行った。
秘密会議の出席者は『我々を見た時、皆の口はあんぐりと開いていた』と、ユーモアたっぷりに表現している。 
政策担当者が回顧録を書くのはアメリカの政治的伝統である。
クリントン、ブッシュ両大統領、オルブライト国務長官、パネッタ国防長官、ポールソン財務長官と列挙に暇がない。
それぞれが貴重な歴史的記録となっている。
その中で本書はその内容の濃密さで他を圧倒している。
政策に関する部分で、クリントン氏は自らを『理想主義的な現実主義者』とし、『人権を保護するという一線から一ミリも引きさがりはしない』と書く。
もし彼女が大統領になったら、最初の女性統領であるだけでなく、最も知性のある大統領であることは間違いないだろう」
(『週刊東洋経済』書評より引用)
』

書評の中では触れていないが、本の最後の章でヒラリーは母親に対する熱い思いを語っている。極めて感動的な文章で、筆者は大学のゼミの学生に読んで聞かせた。理知的だけでなく、ヒラリーの人間としての情感が溢れた姿が、そこに描かれている。その文章を以下に引用する。

《ヒラリー・クリントンの『困難な選択』より引用》
『
「国務長官に就任した時、母はちょうど90歳になるところだった。
国立動物園を見下ろすコネチカット通りのマンションに一人で住むのが難しくなったので、母はこの数年間は私たちとともにワシントン市内で暮らしていた。
同世代の米国人の多くがそうであるように、私は年老いた親と一緒に暮らせる歳月をありがたいと思うとともに、母が日々を心地よく過ごし、しっかりと面倒を見てもらえるようにする責任を強く感じていた。
パークリッジでの子供時代、母は私に限りない無償の愛を注ぎ、手を差し伸べてくれた。
さあ、これからは私が彼女を支える番だ。
もちろん、母にはこのようには説明しなかった。
ドロシー・ハウエル・ロダムは猛烈に独立心の強い女性だ。
自分が誰かの負担になるという考えには、とても耐えられなかった。
母がそばにいてくれることは私にとっても大きな慰めとなった。
とりわけ、2008年の大統領選挙後の難しい時期にはそうだった。
上院や国務省で過ごした長い一日の終わりに帰宅し、食卓の朝食コーナーにある小さなテーブルで母の隣に滑り込むように座り、心の中にあるわだかまりをすべて吐き出したものだった」
(『困難な選択(下巻)』430~431ページ)
』

 もうひとつヒラリーを理解できる場所がある。
 彼女が学び、卒業したウェルズリー・カレッジである。
 そこでヒラリーは政治に目覚めていく。
 筆者は2007年9月にボストン郊外にある同カレッジを取材で訪れた。
 同大学はスミス・カレッジと並ぶ名門女子大である。
 両校ともにマサチューセッツ州にある。
 ウェルズリー・カレッジはボストンから車で30分ほどの郊外にある。
 行きはホテルからタクシーで向かい、帰りはシャトルバスでボストンに戻ってきた。
 シャトルバスは無料でウェズリー・カレッジとハーバード大学、マサチューセッツ工科大学を結んでいる。
 これらの大学は単位互換制度で、学生はどの大学でも授業を履修し、単位を取ることができる。
 ヒラリーは1969年に同校を卒業している。
 まるで公園のような広大なキャンパスのなかに大学はある。
 大学のちょうど中心に大きな池がある。
 威厳のある教会がキャンパスを見下ろすように聳え立ち、小さな庭を囲んで何棟かの学生寮が建っている。
 筆者は学長にインタビューした後、学生寮の中を見たいと頼んで、案内してもらった。
 女子学生の部屋を見るのは気が引けたが、部屋にいた学生は笑顔で筆者を部屋の中に招き入れてくれた。
 校舎では学生の研究展示が行われていた。
 アメリカの大学は基本的に全寮制で、教員はキャンパスの中か、近所に住んでいる。
 学生に話を聞くと、授業後も教員と一緒に勉強会や研究会をするとのことであった。
 何人かの学生にインタビューしたが、全員非常に素直で、良い印象であった。
 学長によると、同大学では卒業生の90%以上は専門的な勉強をするために大学院に進学するという。
 学長によると、教育の理念は「社会の指導者になり、社会に奉仕できる人材を養成すること」だという。
 同大学のリベラルな雰囲気がヒラリーの人格形成に大きな影響を与えたことは想像に難くない。
 事実、大学生の時に政治的な薫陶を受けている。
 ヒラリーも卒業後、イエール大学法科大学院に進学し、夫となるビル・クリントンに出会っている。

 個人に対するイメージは、政敵やメディアによって作られる。
 それはヒラリーに限らない。
 一度出来上がったイメージはなかなか変わらない。
 それどころか、イメージが独り歩きするようになる。
 保守派は実像とは関係なくヒラリーを嫌い、批判する。
 政治家は政策において評価されるべきである。
 ただ大統領選挙は公開討論会を見るまでもなく、候補者は詳細な政策分析よりも、“キャラクター”で評価される傾向が強い。
 今回の大統領選挙は従来の選挙以上にそうした傾向が強い。
 共和党の保守派にとってヒラリーは忌むべきリベラル派を代表する政治家なのであある。
 彼女が人間として優れた理性と優れた感性を持っていることは関係ない。

■すべてのクリントン候補の好感度調査で「嫌い」が「好き」を上回る

 日本から見ていると、“初の女性大統領”が誕生するかもしれないと、アメリカの女性たちが盛り上がっているのではないかと思われるが、様子は少し違うようだ。
 若い女性はヒラリーに距離を置き、冷淡な反応を示している。
 ベビーブーマーの高齢世代の女性はそれなりに盛り上がっている。
 同じ女性でも世代によって反応が異なっている。
 また女性に限らず、“ミレニアム世代”と言われる若い世代もヒラリーを冷めた目で見ている。
 ミレニアム世代は2008年の大統領選挙でオバマ候補を熱狂的に支持し、“初のアフリカ系大統領”誕生の原動力となった。
 だが今回の選挙では“初の女性大統領”を誕生させようという熱狂的な雰囲気はあまり感じられない。
 2008年の大統領選挙の何が違うのだろうか。

 手元にある調査ではクリントン候補の好感度が非好感度を上回っているものはない。
 性別、世代別の調査も興味深い。少し古いデータ(8月31日発表)だが、ABCと『ワシントン・ポスト』紙の共同調査の関する記事には
 「クリントン、過去最高の不人気を記録」
という見出しがついている。
 調査結果では、「嫌い」が56%と「好き」の41%を大きく上回っている。
 特徴的なのは、女性の回答で「嫌い」が多いことだ。
 「好き」と答えた女性45%に対して「嫌い」が52%と半分を超えている。
 白人女性で見ると、「好き」が34%に対して、「嫌い」が64%に達している。
 学歴が大卒の場合、「好き」が43%、「嫌い」が55%であった。
 高卒では「好き」が42%、「嫌い」が55%である。
 支持層が高いと思い割れる大学院卒の知識層でも「嫌い」が51%、「好き」が47%と予想外の結果がでている。

 ヒラリーに対して高い好感度を持っているのは黒人だけで、80%が「好き」と答え、「嫌い」は19%に過ぎない。
 ヒスパニック系では「好き」が55%、「嫌い」が40%であった。
 イデオロギー的にみると、リベラル派の人では「好き」が63%、「嫌い」が34%である。
 問題は穏健派ですら「嫌い」が56%と「好き」の41%を大きく上回っていることだ。

 もちろん「好感度」がそのまま投票行動に結び付くわけではない。
 2016年7月7日に発表されたピュー・リサーチの調査では、今、選挙が行われるとしたらクリントン候補とトランプ候補のどちらに投票するかという問いに対して、次のような結果がでている。
 全体では51%がクリントン候補、42%がトランプ候補であった。
 女性だけだと、クリントン候補59%、トランプ候補35%と過半数の女性はクリントン候補に投票すると答えている。
 この比率はトランプ候補の女性蔑視発言や性的なスキャンダルが出たことでトランプ候補を強力に支持していた保守派の女性や保守的なキリスト教徒であるエバンジェリカルの女性がトランプ候補に距離を置き始めており、おそらくクリントン候補に投票すると答える比率は高まっていると想像される。

■なぜ多くの女性はクリントン候補を嫌うのであろうか

 保守派の人々がクリントン候補を嫌うのは理解できるが、一般の女性が彼女に好意を抱いていないのはなぜなのだろか。
 しかし、嫌いだからと言って多くの女性が女性大統領の誕生を願っていないというわけではない。
 9月13日に発表された『ニューヨーク・タイムズ』紙とCBSニュースの共同調査では、多くのアメリカ人は女性大統領の誕生を歓迎していると答えている。
 同調査を解説した『ニューヨーク・タイムズ』紙(2016年9月16日)の記事には「世論調査で大半の有権者は女性にとって一里塚と歓迎しているが、それは必ずしもヒラリー・クリントンでなくてもいい」という見出しがついている。
 女性大統領の誕生は歓迎するが、クリントン候補である必要はない、ということだ。

 同調査によれば、アメリカの女性にとって最大の問題は「性差別」である。
 「性差別」とは、具体的に言えば、
 男性との賃金格差、
 “ガラスの天井”といわれる昇進格差、
 さらに職場での性的なハラスメント
である。
 48%の女性は、社会では女性よりも男性のほうがが有利な立場にあると考えている。
  ちなみに男性のほうが有利と考えている男性は35%にすぎない。
 男女のパーセプション・ギャップは大きい。
 また女性にとって最大の問題は性別による賃金格差で、女性の4人のうち3人は男性と同じ仕事をしているのに賃金は少ないと感じている。
 また25%の女性は職場で性的な多くのハラスメントがあると答えている。
 同じように感じている男性は18%に過ぎない。

 クリントン候補に関しては、56%の女性が彼女は優れたロール・モデルであると考えている。
 この比率は高いが、ただ前回の民主党大統領予備選挙に出馬した2007年の調査では、その比率は70%であった。
 それから比べれば、クリントン候補のイメージは低下している。
 それは、多くの女性がクリントン候補は結婚し、大統領夫人になり、子供を産み、上院議員、国務長官を経験するなど一般の女性が思い浮かべる人生のキャリアとは程遠いと感じているからだ。
 クリントン候補はすべてを持った女性なのである。
 ちなみに、アメリカの女性にも結婚願望があり、47%の女性は結婚が人生で非常に重要であると答えている。

 また多くの女性は性差別を解消することを願っている。
 女性大統領の誕生は男女平等の社会に一歩近づくことになる。
 しかし、その願いは必ずしもクリントン候補を大統領にしなければならないという燃え上がる情熱には結びついていない。
 逆にクリントン候補が「女性カード(Woman Card)」を利用していると批判する声も聞かれる。
 ただ正確を期していえば、クリントン候補は女性であることを理由に女性に支持を訴えたことはない。
 ジャーナリストのゾーイ・ヘルラーは「Hillary & Women」と題する記事(『New York Review of Books』2016年4月7日)で、
 「彼女はジェンダーに特別な意味を与えることを拒否している。
 彼女が求めているのは将軍たちの支持である。
 彼女は女性としての暖かさや感情、女性的な面を犠牲にして“力強い”最高司令官として自分を打ち出している。
 その結果、彼女は最初の女性大統領になるという感動的なアピールを活用できないでいる」
と、「女性カード」批判は的外れであると指摘をしている。
 だが、ジャーナリストのエリザベス・プレザは
 「今回の大統領選挙ではクリントン候補が“女性カード”を切っているという批判が浸透している」(「In Politics, Who Really Holds the Gender Card」『Alternet』2016年9月26日)
と書いている。
 プレザは、「保守派やトランプ陣営がクリントンは『女性カード』を使って自分に投票するように求めている」と、この批判は政治的な色合いで行われていると指摘している。
 たとえば、トランプ候補は「クリントンが持っている唯一の物は女性カードだ。もし彼女が男性だったら票はまったく獲得できないだろう」と語っている。
 要するに、トランプ候補はクリントン候補が健闘しているのは、彼女が女性であるからだと主張しているのである。
 いずれにせよ、アメリカの多くのメディアがクリントン候補の「女性カード」をテーマに取り上げ、有権者に有形無形の影響を与えている。
 ただ、問題は、クリントン候補が「女性カード」を切っているかどうかとは別に、彼女が若い女性層の支持を得るのに苦戦していることは事実である。

 60年代、70年代のフェミニスト運動を担ってきた古い世代の女性にとって、夢が実現する瞬間が迫っている。
 初の国務長官のマデレーン・オルブライトや1970年代のフェミニスト運動を代表し、雑誌『Ms』を創刊したグロリア・スタイネムなど古い世代のフェミニストたちは、若い世代に向かって「ヒラリー・クリントンのもとに結集せよ」よう訴えている。
 だが、若い女性たちは、母親や祖母たちとは違った感じ方をしている。
 民主党の大統領予備選挙の際、女性票の53%はバニー・サンダース候補に投じられた。
 クリントン候補の得票率は46%に留まった。
 30歳以下の女性の82%がサンダース候補を支持している。
 若い女性たちは、74歳の老政治家に未来を託そうとしたのである。
 結論から言えば、多くの若い女性は「女性であるというだけで支持できない」と考えている。
 言い換えれば、それは「女性カード」批判に通じるものがある。
 ハーバード大学のある女子学生は、
 「ヒラリーは女性だけど白人で、金持ちで、性的にストレート(同性愛者ではない)だ。
 もし平アリーが黒人か同性愛者か貧しかったら、彼女に投票しただろう」
と語っている(「Hillary’s Woman Problem」Politico, 2006年2月12日)。
 要するに、彼女たちにとってクリントン候補は“エスタブリッシュメント(特権階級)”を代表する白人候補者に過ぎない
 事実、彼女はウォール街の金融機関の経営者や富裕層から多額の政治献金を得ている。
 従来の政治家と変わるところはない、というわけである。

 作家でヒラリー・クリントンの評伝を書いているゲール・シーヒーは次のように書いている。
 「私は多くのミレニアム世代の女性と話をした。
 多くの女性は『クリントンは男を利用して権力を得た』と彼女をはねつける。
 彼らはヒラリーの歴史をしらない。
 彼女は大統領を育てたのであり、夫のビルは彼女を共同大統領にした。
 夫婦は常に権力のなかでパートナーであり、経済的、社会的正義のために一緒に戦ってきた。
 その共生関係によって25年にわたって民主党の政治を支配することができた。
 その期間はエレノアとフランクリン・ルーズベルト大統領夫妻が支配した期間よりも長い」。
 ヒーシーはさらに続けて、
 「若い女性がヒラリーの大統領としての可能性を十分に理解できないのは、ヒラリーが非常に幅広い考え方をする人物で、許容度が大きいからだ」、
 「ヒラリー・ロダム・クリントンは大統領選挙では長距離ランナーだ。
 若い女性はいつか彼女のビジョンの幅の広さを理解できるようになるだろう」
と分析する。

 ジャーナリストで、『ニューヨーク・ブック・リビュー』誌のコラムニストであるエリザベス・デュリューは
 「女性たちはヒラリーが女性だから彼女を支持すべきだと言われるのが好きではない」、
 「他の有権者と同じようにヒラリーの政策に対する立場や個性などに基づいて支持するかどうかを決めたがっている」
と指摘する。
 問題は男性か、女性かということではない。
 女性に限らず、若い世代がクリントン候補にあまり興味を示さないのは、
★.彼女の演説は嘘っぽく、
★.政策も空虚だ
と感じているからだ。

■ミレニアム世代もヒラリー・クリントン候補に背を向ける

 若い女性たちはクリントン候補ではなく、サンダース候補に希望を託した。
 大統領予備選挙で敗北したサンダース上院議員は、現在、クリントン候補支持を明らかにし、自分を支持したミレニアム世代にクリントン候補に投票するように呼び掛けている。
 だが、若者の間でクリントン人気が盛り上げる気配は感じられない。
 世論調査では、サンダース議員を支持した若者層はリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン候補に流れているという結果が出ている。
 大統領選挙はトランプ候補の自滅でクリントン候補の勝利が濃厚になっているが、選挙は水物で、最後まで結果は分からない。
 クリントン候補にとって、最大の課題は、女性票とミレニアム世代の票をいかに獲得するかだ。
 そうした有権者が第3党の候補者に投票したり、棄権すると、選挙結果に影響が出かねない。
 特に選挙に決定的な影響を与える激戦州ではわずかの票差で結果が左右される。

 加えて2016年4月時点で
 ミレニアム世代(18歳から35歳)の推定人口は6920万人で、
 ベビーブーマー世代(52歳から70歳)の6970万人とほぼ同数になっている。
 ミレニアム世代は有権者の30%以上を占めるまでになっている。
 「ジェネレーションX世代」(36歳から51歳)は有権者の25%を占めている。
 「ベビーブーマー世代」は2004年に7290万人とピークを付けたが、その後、減少し続けている(数字は国勢調査に基づくピュー・リサーチの推計)。
 やがてミレニアム世代が最大の有権者数になるのは間違いない。
 単に今回の大統領選挙だけでなく、将来にわたってアメリカの政治に大きな影響を与え続けると思われる。
 今回の大統領選挙でキャスティング・ボートを握るかもしれない。

 アメリカでは選挙年齢に達しても、自動的に投票できるわけではない。
 日本のように選挙の入場券が送られてくるわけではない。
 各人が選挙登録をして初めて投票できるようになる。
 選挙登録をした数が問題となる。
 民主党の調査機関Project New Americaの調査では、2012年の大統領選挙ではミレニアム世代で選挙登録をしたのは2000万人であったが、今回の大統領選挙では5300万人が選挙登録をしている。
 その数は、今後、さらに増えると予想される。
 それだけに彼らが誰に投票するかは選挙結果に大きな影響を与える。
 ただトランプ候補に投票する可能性は低い。
 なぜならミレニアム世代の多くはトランプ候補を人種差別主義者であり、女性を侮蔑する人物と考えているからだ。
 トランプ候補の最大の支持者は白人の高卒ブルーカラーであるが、ミレニアム世代の白人の高卒ブルーカラーの70%はトランプ候補に批判的である。
 彼らは第3の政党の候補者に投票するか、棄権する可能性が強い。
 それはクリントン候補の得票数が減ることを意味する。
 それだけにクリントン候補はミレニアム世代対策に苦慮を強いられている。

 ミレニアム世代はクリントン候補に懐疑的である。
 さらに問題なのは、彼らの支持率が低下していることだ。
 クイニピアック大学の調査では、18歳から34歳の若者層のクリントン支持率は8月25日の調査では48%であったものが、9月15日の調査では31%にまで落ち込んでいる。
 これとは対照的にリバタリアン党のジョンソン候補の支持率は16%から29%に増えている。
 トランプ候補の9月の調査の支持率は26%で、ジョンソン候補よりも低い。
 同様にフォックス・ニュースの調査では、ミレニアム世代のクリントン候補の支持率は37%であった。
 デトロイト・フリー・プレスの35歳以下の若者の支持率調査では、8月のクリントン候補の支持率は44%であったが、9月には31%にまで低下している。
 この1か月間でミレニアム世代はクリントン候補から離れてジョンソン候補に流れている。
 2012年の大統領選挙ではオバマ大統領は30歳以下の有権者の60%の支持を得ている。
 対抗馬のミット・ロムニー候補は37%であった。
 オバマ大統領は激戦州であるミシガン州やオハイオ州で30歳以下の有権者の63%の票を得て、勝利を確かなものにした。

 こうした状況にクリントン陣営だけでなく、民主党本部も危機感を抱いている。
 オバマ大統領とミシェル夫人はクリントン候補支持を鮮明にし、有権者にクリントン候補支持を訴えている。
 9月中旬、バージニア州のジョージ・メイソン大学を訪れたミシェル夫人は学生に向かって
 「選挙は誰が投票したかというだけでなく、誰が投票しなかったかも問題だ。
 特に若い人についていえる。
 2012年の大統領選挙では30歳以下の有権者が4つの激戦州でバラクに投票し、大勝利を得ることができた」
と演説を行っている。

 ミレニアム世代の支持を得られないというのは、クリントン候補の最大の弱点となっている。
 2008年の民主党の大統領予備選挙では全予備選挙の出口調査の結果、オバマ候補はミレニアム世代の58%を獲得、クリントン候補は38%であった。
 2016年の全予備選挙の累積結果では、プミレニアム世代の71%がサンダース候補を支持したのに対して、クリントン候補支持は28%に留まった。
 クリントン候補が強いと見られているニューヨーク州やペンシルバニア州でも、クリントン候補はミレニアム世代の支持という点では、サンダース候補の後塵を拝している。
 2016年の本選挙でクリントン候補がミレニアム世代の票を獲得できるかどうか、まったく不透明である。
 少し古いデータだが、6月に行われてブルームバーグの世論調査では、サンダース候補を支持するミレニアム世代の55%が本選挙ではクリントン候補に投票しないと答えている。
 その理由として、クリントン候補の政策は基本的にタカ派であること、金融界など企業との結びつきが強く、企業もクリントン候補を支持していることを上げている。
 あるサンダース候補の支持者は「クリントンが私の票を得る可能性はゼロだ」と語り、別の支持者は「絶対にクリントンには投票しない」とブルームバーグの調査スタッフに語っている。
 この調査後、サンダース候補は正式にクリントン候補を支持すると発表し、彼の支持者にクリントン候補に投票するように呼び掛けた。
 しかしクイニピアック大学の調査で明らかになったように、現在でもミレニアム世代はクリントン候補支持に態度を変えていない。

■ミレニアム世代がクリントン候補を支持しない本当の理由

 『The Atlantic』誌の記事(2016年9月19日、「Millennial Voters May Cost Hillary Clinton the Election」)は、
 「若い有権者に対するクリントンの問題は(クリントンの)政策ではなく、
 (クリントンの)人格評価に根差している」
と指摘している。
 すなわちミレニアム世代の大多数は、
 クリントン候補は信頼に値しないし、
 計算高く、
 無原則である
と考えているのである。
 既に指摘したが、「クリントン候補は信用できない」という問題が、ここでも顔をだしている。
 ジョージワシントン大学の調査では、ミレニアム世代の66%がクリントン候補は政治的に“ご都合主義”だと答えており、彼女が「信頼できる」と答えた比率は22%にすぎない。
 またクイニピアック大学の調査でも、77%がクリントン候補は正直でなく、信頼に値しないと答えている。
 皮肉なことに、そうしたクリントン像はサンダース候補が予備選挙中に若者に植え付けたものでもある。
 調査担当者は
 「若者たちは1年間にわたってサンダース候補からクリントン候補が不誠実だと聞かされてきた。いまさら手のひらを返すようにクリントン支持に変わるのは難しい」
と語っている。

 もちろん政策に対する厳しい評価もある。
 『The American Prospect』誌(2016年9月23日)に掲載された記事「Why Millennials Don’t Like Hillary」(筆者はデビッド・アトキンス)を引用しながら、筆者の解釈と解説を付け加えながら説明する。
 アトキンスは
 「ミレニアム世代はアメリカで最も進歩的な世代(the most progressive generation)である」
と指摘する。
 彼らは2008年のリーマンショックに始まる世界大不況(the Great Recession)の最大の被害者である。
 大学は出たけど職にありつけない。
 大学の授業料は高騰し、学生ローンに頼らざるを得ない。
 その結果、巨額の負債を抱え込む。家賃も高騰している。
 親の住む家の地下部屋に住み続けるしかない。
 アメリカでは若者は早く家を出て自立するのが普通だったが、AFL・CIO(米労働総同盟産業別組合会議)に調査によれば、現在ではミレニアム世代は30代半ばまで親と同居しないと生活できない状況に置かれている。
 昨年、ハーバード大学が行った調査は、ミレニアム世代の半分の若者にとって
 「アメリカン・ドリームは達成が困難なのではなく、もはや死んでいる(American dream isn’t difficult to achieve but actually dead for them)」
と指摘している。
 アトキンスは「ミレニアム世代は怒りと絶望の時代」に生きているという。
 この結果、「資本主義よりも社会主義を支持するようになっている」。
 アメリカ社会では伝統的に“禁句”であった「社会主義」が最近では決して悪い意味では使われなくなっている。

 ミレニアム世代は「プログレッシブ」と言われる。
 少し説明を付け加えれば、「プログレッシイズム(進歩主義)という言葉が出てきたのは19世紀後半のこと。
 産業革命と“泥棒貴族”と呼ばれる大企業集団(“trust”と呼ばれている)の出現、信じられないような貧富の格差拡大、劣悪な労働環境と労働条件のなか苦境に置かれた労働者や、市場経済の浸透で農産物価格の大きな変動と機械化に伴う負債の重圧に直面した農民を守ろうと“進歩主義運動”が登場する。
 1900年から1920年の20年間は「進歩主義の時代」と呼ばれ、労働者や消費者、農民を守り、環境を保全する一連の政策がとられた。この間の代表的な政治家はセオドーア・ルーズベルト大統領とウードロー・ウィルソン大統領である。
 「進歩主義」は、後のフランクリン・ルーズベルト大統領の「ニューディール(New Deal)政策」の原型となった。
 ちなみにセオドーア・ルーズベルト大統領の政策は「スクエアーディール(Square Deal)政策」と言われている。
 「スクエアー」は「平等」という意味である。
 共和党のセオドーア・ルーズベルトは、自分の後を継いだウィリアム・タフト大統領が進歩主義の理念を離れて企業寄りになるのを見て、再度、共和党の大統領候補の指名を得ようとするが、共和党全国大会で現職のタフト大統領に敗れ、自ら「進歩党」を結成して立候補している。
 選挙は共和党のタフト大統領、進歩党のルーズベルト前大統領、民主党はウードロー・ウィルソン候補で争われ、共和党の票が割れ、漁夫の利を得てウィルソン候補が当選している。

 「プログレッシイズム」という言葉は長い間使われなかった。
 その代わり「リベラリズム」という言葉が一般的に使われるようになった。
 だが最近では「リベラリズム」が手垢のついた悪いイメージの言葉になり、それに代わる言葉として「プログレッシイズム」という言葉が復活してきた。

 ミレニアム世代は貧富の格差拡大と金融資本が暴利をむさぼっていると「ウォール街占拠運動(Occupy the Wall Street)」を始める。
 アトキンスは、この運動を
 「伝統的な民権運動は人種差別に反対する運動であったが、ウォール街占拠運動は階級意識を持った金融エリートに対する反乱であった」
と書く。
 古い世代のリベラリズムを代表するのがクリントン候補である。
 ミレニアム世代がサンダース候補の元に結集したのは、同候補が社会を基本的に変革する“革命”を訴えたからである。
 だが、クリントン候補は“革命”という言葉を決して使わず、「オバマ政権の政策を継承し、それを“進化”させる」と主張した。
 ミレニアム世代にとって現状肯定を主張するクリントン候補は
 魅力のない存在であり、体制派の人物でしかない。
 ましてや大手金融機関で巨額の謝礼を得て、講演をしているクリントン候補の姿は、ミレニアム世代にとって受け入れがたい。
 オバマ大統領がミレニアム世代の支持を得たのは「変化」を訴えたからだ。
 クリントン候補には、そうした強烈なアピールは存在しない。

 さらにアトキンスは、ミレニアム世代が重視するものに
 「中東での戦争」
 「気候変動」
 「性的多様性(同性婚、LGBTの権利擁護など)」
であると指摘する。
 まず戦争に関していえば、ミレニアム世代はクリントン候補が上院議員のときイラク戦争に賛成したことを問題にする。
 さらに2008年の民主党大統領予備選挙でオバマ候補との討論の中でイラク戦争を支持したことの謝罪を拒否したことが、彼らの間に反クリントン意識を作り出した。
 ただ、後にクリントン候補は自らの過ちを認めている。
 同性愛の問題も、軍隊で同性愛者を兵士として受け入れるかどうかが問題になったとき、夫のビル・クリントン大統領は軍当局と兵士に対して「質問するな、言うな(don’t ask, don’t tell)」という政策を打ち出す。
 すなわち「軍当局に対して同性愛かどうか質問するな、同性愛者に対して自分が同性愛であると語るな」という曖昧な政策を取った。
 それがミレニアム世代の反クリントン候補につながっている。
 ちなみに、その政策を転換したのはオバマ大統領である。

 また、ビル・クリントン大統領はリベラル派や労働組合、環境保護団体などの反対を押し切って、共和党の支持を得てNAFTA(北米自由貿易協定)を批准している。
 またクリントン候補はオバマ政権のTPP(太平洋自由貿易協定)に賛成したことを取り上げ、ミレニアム世代はクリントン候補を厳しく批判している。
 こうした状況を受け、クリントン候補はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)反対を明らかにしている。
 民主党内で最左翼の立場を取り、ミレニアム世代にも人気のあるエリザベス・ウォーレン上院議員はテレビ番組に出演して、
 「クリントンの提案は歴史上最も進歩的な政策である。
 彼女はTPPに対して明確な立場を取っている。
 大統領になればTPPを阻止すると彼女は言っている。
 そのことに一点の曇りもない」
と、クリントン候補を擁護している。

 本稿は長くなったので、ヒラリー・クリントン候補がミレニアム世代の支持を獲得するにはどうしたらいいのか。
 さらに、仮に大統領に当選した場合、ミレニアム世代とどう折り合いをつけていくかが重要な問題になる。
 それは稿を改めて議論する。

 最後に一言付け加えれば、様々なスキャンダルにも拘わらずトランプ候補とクリントン候補の支持率の差が思ったほど開いていない。
 現段階で、クリントン候補勝利の確率は高いが、“地滑り的勝利”を予想するのはまだ早すぎるだろう。
』





【身勝手な大国・中国】



_

日本という驚くべき国(3):日本人がまた自然科学部門でのノーベル賞 日本との差は「あまりに大きい」

_


●テレビ朝日

『
サーチナニュース 2016-10-04 10:47
http://news.searchina.net/id/1620085?page=1

また日本人がノーベル賞! 
日本との差は「あまりに大きい」=中国メディア

 東京工業大栄誉教授の大隅良典氏が2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した。生物の細胞が持つ、細胞内のたんぱく質を分解する「オートファジー(自食作用)」を解明したことが評価されての受賞だ。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、大隅氏のノーベル医学生理学賞受賞によって日本人のノーベル賞受賞者は計25人目となったことを指摘し、「中国が日本との差を埋めることは容易ではない」と嘆いている。

 記事は、米国籍を持つ受賞者を含め、日本人のノーベル賞受賞者数が25人に達したことを指摘したうえで、「欧米諸国を除くと、日本のノーベル賞受賞者が最多」であると指摘。
 さらに村上春樹氏をはじめ、ノーベル賞受賞も時間の問題とみなされている候補が日本には複数いることを指摘した。

 続けて、日本はこれまでにノーベル文学賞、物理学賞、化学賞、医学生理学賞、平和賞のそれぞれから受賞者を輩出していることを指摘し、経済学賞を除いたすべての部門から受賞者を輩出することに成功していると指摘。

 さらに、「ノーベル賞の受賞者数だけが一国の科学技術力を示すものではない」としながらも、ノーベル賞はやはり世界で認められた世界的な賞であるため、中国でも重視される存在だと指摘。
 ノーベル賞受賞という点において、日本と中国の差は「あまりに大きい」と指摘し、毎年のように日本人がノーベル賞を受賞する現実に対して悔しさを滲ませた。
』

『
Record china配信日時:2016年10月4日(火) 16時20分
http://www.recordchina.co.jp/a151972.html

韓国科学界が考える「日本のノーベル賞受賞の原動力」とは?
=韓国ネット「今さら後悔しても遅い」
「韓国には無理!」

 2016年10月3日、韓国・聯合ニュースによると、韓国科学界が
 「日本の“基礎研究を重視する文化”が再びノーベル医学生理学賞を生んだ」
と評価した。

 リュ・フン韓国科学技術研究院(KIST)兼任研究員は、
 「ノーベル賞受賞は日本の長年の基礎研究への投資が生んだ結果」とし、
 「基礎研究は忍耐強く待つことが特に必要となるが、日本はこうした政策を展開している。
 これは韓国が学ぶべき点」
と主張。
 ・ドクファン西江大学化学科教授も
 「日本は19世紀末に欧州とともに基礎科学の研究を開始した」とし、
 「これまでに多くの投資をしたため、基礎科学のレベルが非常に高い」
と述べた。

 長年の投資の結果、日本は細菌学や粒子物理の分野で圧倒的な力と存在感を持つようになった。
 そのため、「最初」の研究者に授与されるノーベル賞を受賞する科学者が次々に出ている。
 ペク・ソンヒソウル大学生命科学部教授は
 「今年のノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典氏は『オートファジー』の分子メカニズムを解明した“最初”の科学者」とし、
 「『オートファジー』分野は日本が主導する学問であり、今回の受賞に異議があるわけがない」
と述べた。

スウェーデンのノルウェー・ノーベル委員会は3日、東京工業大学の大隅良典栄誉教授(71)を2016年ノーベル医学生理学賞に選定すると発表した。
 これにより、日本は昨年の北里大学の大村智特別栄誉教授(81)に続き、2年連続で医学生理学賞を受賞した。
 また、3年連続で科学分野のノーベル賞を受賞したことになる。

これに、韓国のネットユーザーは以下のようなコメントを寄せた。

「韓国に基礎研究は無理だ。
 実際、世界に誇る各種の製品を最初の段階から、全ての素材を国内で作る技術を持っていない。
 ほとんどの素材を輸入して使っている。
 韓国は基礎より応用に多くの投資をしてしまった。
 今さら後悔しても遅い」
「基礎科学が根っこなら、応用科学は枝。
 根っこがしっかりしていれば、木はいつでも枝を伸ばすことができるが、枝だけがしっかりしている木は常に接ぎ木をしなければ生き残れない。
 韓国が余裕を持てずに苦しんでいるのは、基礎科学が不十分だから」

「創造経済とプライム事業で労働者を養成する韓国には、基礎科学に投資する金などない」
「日本は何でも忍耐強く続けるよね。
 韓国社会では何でもすぐに結果を出さなければ評価されない…」

「数十年間“口だけ”の韓国。
 そろそろ行動に移す時では?」
「韓国人には良心が不足している。
 だから科学者へ支援なんてできない。
 韓国には“泥棒”が多過ぎる!」
「韓国の科学者らは忍耐強く、『国からの研究費をどうやって横領するか?』を研究している」
』

『
サーチナニュース 2016-10-05 09:13
http://news.searchina.net/id/1620157?page=1

日本は今世紀だけでもう17人も
・・・大隅氏のノーベル賞受賞に驚き=中国

 東京工業大栄誉教授の大隅良典氏が2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
 大隅氏の受賞によって、日本人のノーベル賞受賞者数が25人となったことについて、中国メディアの財新はこのほど、「日本は今世紀だけでもう17人のノーベル賞受賞者を輩出した」と驚きを示した。

 記事は、
★.日本政府が2001年に掲げた科学技術基本計画のなかで、「国際的科学賞の受賞者を欧州主要国並に輩出(50年間にノーベル賞受賞者30人程度)」という目標
を掲げたことを紹介しつつ、
 「この目標はすでに半分以上、達成されたことになる」
と指摘した。

 続けて、14年、15年、16年と日本から3年連続でノーベル賞受賞者が生まれたのは「偶然の産物では決してない」と指摘したうえで、特に今世紀に入ってから日本のノーベル賞受賞者は急増していると指摘。
 日本人のノーベル賞受賞者25人のうち、17人は今世紀に入ってからの受賞者であると論じた。

 さらに記事は、日本政府が2001年に掲げた科学技術基本計画では、
 「知の創造と活用により世界に貢献できる国」、
 「国際競争力があり持続的な発展ができる国」、
 「安心・安全で質の高い生活のできる国」
を目指すことを掲げたことを紹介。

 また、この目標を実現する一環として「国際的科学賞の受賞者を欧州主要国並に輩出(50年間にノーベル賞受賞者30人程度)」を掲げたことを紹介しつつ、すでに今世紀だけでもう17人のノーベル賞受賞者を輩出したことは、目標の実現に向けて日本が着実に歩みを進めているとの見方を示している。
』

『
サーチナニュース 2016-10-05 08:11
http://news.searchina.net/id/1620155?page=1

次々生まれるノーベル賞受賞者
・・・日本の医学研究は、どうしてこんなに進んでいるのか=中国メディア

 2016年のノーベル医学・生理学賞に、大隅良典東京工業大学栄誉教授の研究が選ばれた。
 同分野で日本人がノーベル賞を獲得したのは、昨年の大村智北里大学特別栄誉教授に続いて4人目だ。
 中国メディア・新京報は4日、「日本の医学研究はどうしてここまで発展しているのか」とする記事を掲載した。

 記事は、日本の医学研究の発展は
 「研究開発経費の投入額が大きいこと、
 西洋に学ぶ努力、
 研究内容の長期性・伝承性、
 比較的自由な研究環境と関係がある」
と説明。
 日本において研究開発経費の対GDP比3.67%と世界トップレベルであるとし、政府と企業の支援があってこそ研究が継続的に実施でき、各賞の受賞に繋がるのであるとした。

 また、1987年に日本人初となる医学・生理学賞を受賞した利根川進氏が米マサチューセッツ工科大学の教授を務めるなど、多くの日本人研究者が米国の大学で研究に携わっていると紹介。
 「世界で最も科学が発展した国で学び、研究するという経歴が、日本人研究者にその分野における最新の研究動向や方向性を知らしめるのである」
と説明した。
 さらに、日本の研究者が1つの方面について長年にわたって研究を続ける精神を持っており、それが大きな成果に繋がる
という点も指摘している。

 このほか、申請した研究課題の経費を獲得すれば、その研究に対するPRや経費のやりくりに腐心することなく、また外部からの干渉も受けることなく着実に研究を進める事ができるとし、「日本の科学研究は比較的自由であり、それが成果を出す要因になっている」と論じた。

★.ノーベル賞を獲得するような研究は、長期間にわたって地道に行われ、
 数えきれないほどの試行錯誤を経て大きな成果を産んだものだ。
 それは狙ってできるものではなく、ましてや短期間で獲得できるものではない。
 今日本で受賞者が相次いでいるのは、これまで日本人研究者が積み重ねてきた努力が、今大きく評価されているからである。

 中国の政府や研究者が先進各国の精神に学び、各種研究を更に奨励し支援する体制を整えられるかどうか。
 その「答え」が出るのは、20−30年後のことだろう。
 もし、すでに充分な体制の整備が済んでいるならば、数年後には中国人研究者による受賞ラッシュが起きるかも知れない。
』

『
サーチナニュース  2016-10-05 10:43
http://news.searchina.net/id/1620175?page=1

再び日本がノーベル賞、
「中国人は頭を冷やす必要がある」=中国報道

 東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞したことが中国でも大きな注目を集めている。
 中国メディアの今日頭条はこのほど、日本が数多くのノーベル賞受賞者を輩出できるのは、日本の科学技術力の高さを示す証左であると主張し、日本の科学技術力が中国を上回っている理由について考察している。

 記事は、日本のノーベル賞受賞者の数が大隅氏を含めて25人に達したことを紹介したうえで、自然科学分野において日本は「米国に次ぐ研究大国」であると指摘、京都大学や東京大学を始めとする
 日本の国立大学は「人類の発展に貢献できる科学者を数多く輩出している」
と伝えた。

 続けて、中国の国内総生産(GDP)は日本を上回ったが、中国はノーベル賞を受賞できるだけの研究や科学分野におけるイノベーションの点で日本に圧倒的に遅れを取っているのが現実であり、GDPで日本を超えたことでのぼせ上がっている中国人は頭を冷やす必要があると指摘した。

 さらに記事は、日本が多くのノーベル賞受賞者を輩出できる理由として、「日本の大学教授は評価のためだけに論文を書き、研究を行うわけではない」と指摘。
 中国のように功名心や野心が動機ではなく、あくまでも興味と好奇心が根底にあると指摘したほか、研究に打ち込むことのできる環境づくりも要因の1つだと指摘。

 また、研究者たちの努力ももちろん重要な要因であるとし、日本人研究者たちは歳を重ねても連日のように深夜遅くまで研究に没頭していると指摘し、「こうした研究熱心な姿が中国人留学生たちの尊敬を集める所以」であると主張。
 こうした複数の要因があるからこそ、日本の科学技術力は世界トップクラスなのであり、自然科学分野で日本から多くのノーベル賞受賞者が輩出されるのだと論じた。
』

『
サーチナニュース 2016-10-05 22:17
http://news.searchina.net/id/1620239?page=1

羨ましくて、悔しくて・・・
中国が日本のノーベル賞受賞に注目する理由=中国メディア

 東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞した。
 大隅氏の快挙は中国国内でも各メディアが大きく取り上げたが、なぜ中国は日本人がノーベル賞を受賞したことに関心を寄せるのだろうか。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、中国では日本人のノーベル賞受賞は中国でしばしばニュースのヘッドラインになるほど大きな注目を集めると紹介しつつ、中国が日本人のノーベル賞受賞に大きな反応を示す理由を考察する記事を掲載している。

 記事は、中国が日本人のノーベル賞受賞に注目する理由の1つとして、
★.歴史問題を背景とした複雑な感情と、
 中国がノーベル賞を渇望している事実を挙げ、
 「思いどおりにならない不満が、中国の科学研究制度への不満につながり、
 ノーベル賞を受賞できなかったことが恥であるかのような歪んだ感情が存在するため」
と考察した。

 さらに、中国がノーベル賞受賞者の輩出を渇望していることを挙げ、それでもやはり
 「思いどおりの結果が出せないなか、日本人がノーベル賞を受賞することが羨ましくて、悔しくて仕方がない」
と指摘。
 この羨望の感情も中国が日本人のノーベル賞受賞に注目する理由だと論じた。

 そのほか、中国は科学分野の研究において、ノーベル賞の受賞を渇望し、目標に掲げているが、中国の研究者は功利を追求し、個人もしくは少数の利益を追求しがちだと指摘。
 理想を掲げてはいるものの、中国の科学研究における現実はその理想とはかけ離れており、こうした理想と現実の「乖離」もあって、日本人のノーベル賞受賞が気になってしまうことを伝えている。
』

『
サーチナニュース 2016-10-07 07:19
http://news.searchina.net/id/1620334?page=1

中国はこれからだ! 
ノーベル賞、日本の今は過去のおかげ=中国メディア

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2016年のノーベル医学・生理学賞を東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏に授与すると発表した。
  日本人のノーベル賞受賞者数は大隅氏も含めて計25人となった。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、2000年からの17年間で日本が輩出した自然科学分野におけるノーベル賞受賞者数は米国に次ぐ世界2位であると伝え、
 「中国が日本のようにノーベル賞受賞者を数多く輩出できる日は来るのだろうか」
と疑問を投げかけた。

 まず記事は、中国の自然科学分野におけるノーベル賞受賞者が1人にとどまっていることを指摘する一方、日本が数多くのノーベル賞受賞者を輩出できる理由を考察。
★.1つ目は日本が伝統的に教育を重視する国であること
を挙げ、「江戸時代のころ、江戸に住む成人男性の識字率は70%以上に達し、ロンドンの20%、パリの10%未満を大きく上回っていた」と伝え、日本はもともと教育に高い関心を持つ国民性であることを指摘した。

★.また、日本が基礎研究を重視していること
もノーベル賞受賞者の輩出につながっていることを指摘し、日本政府が科学研究費を助成する制度のもとで、研究者たちは必ずしも経済的利益が見込めない分野でも研究を行うことができると紹介。
 体制としての保障があるからこそ、科学研究は尊厳と社会的な地位が保障されると指摘した。

 続けて記事は、
★.ノーベル賞の受賞には知識の蓄積が必要であり、
 現在の日本がノーベル賞受賞者を輩出できるのは1980年代から90年代にかけて行われた研究の成果であると指摘。
 一方で日本は近年、財政が逼迫していることから研究開発に対する投資が減少傾向にあり、論文の数や質から見ても日本の研究開発能力は低下してきていると主張。
 一方で、中国では基礎教育が充実し、研究開発への投資も増えていることから、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した屠ヨウヨウ氏に続く研究者が今後、続出するのではないかと期待を示した。
』

『
Record china配信日時:2016年10月11日(火) 7時40分
http://www.recordchina.co.jp/a152319.html

日本が続々とノーベル賞を受賞できるのはなぜ?
中国との違いはこんなに―中国メディア

  2016年10月10日、科技日報は、日本が続々とノーベル賞を受賞できる要因について分析した記事を掲載した。

 記事は、米国と比べて地理的にも文化的にも近い日本との比較は非常に意義があるとし、物理や化学、医学・生物学の分野でノーベル賞を受賞している日本の取り組みや経験に学ぶことは、中国にとって有益であると主張する。

 まず、
★.日本の場合、大きな科学技術プロジェクトを進める際に、日本政府は大枠で「やる」「やらない」の決定だけを行い、「何をやるか」あるいは「どのようにやるか」には口を挟まない。
★.一方で、中国政府の科学技術管理部門はこれまで、「何をやるか」「どのようにやるか」を非常に気にしてきたという。

 記事は、
 「科学技術の研究における領域、方向性、投資の量、期待できる結果などが最もよく分かっているのは科学者自身であるはず。
 しかし、わが国では科学者が重大な科学技術政策の決定に関わることは非常に少ない」
と指摘。
 「中国の現在の環境においては、科学者が提案する際に個人の利益が絡む可能性も懸念されるが、科学技術の長期的な発展の視点に立てば、政策の制定は専門家である科学者によってなされるべきである」
としている。
 ただ、この点については改革が進められており、「歓迎すべきこと」としている。

 続いて、
★.日本は基礎科学への支援が充実している点を挙げる。
 「日本もかつては現在の中国のように目先の利益を得ることに走り、応用や成果の転化、投資回収に走った時期もあったが、その後、そのようなやり方は経済に持続的に力を与えることはないと気付いた」
と指摘。
 日本政府が基礎研究に投資した額が1960年代から70年代にかけて約6倍に増加したことや、
 80年代以降、「技術立国」政策をさらに推し進めたこと、
 90年代には科学技術庁の予算総額が5000億円を突破した
ことなどを紹介し、
 「こうした長期的、持続的な科学研究への投資により、日本の科学者が安心して研究に取り組めた」
とその背景を分析している。

★.制度や文化面でのギャップにも言及する。
 記事は、中国のハード面での条件は海外と遜色はなくなったものの、社会環境といったソフト面でまだ問題があるとしている。
 「例えば理研のグローバル化レベルは非常に高く、さまざまな人種の科学者がいて、生活や仕事の面で彼らをサポートする良好なシステムがある」
とする。
 また、米著名評論家のThomas Freedman氏が米国経済の持続的な発展の柱の一つに、ハイテク人材の移民を挙げたことを紹介し、
 「中国の輸入人材は現在のところ海外留学からの帰国組の中国人に限られている。
 人材を呼び込むためには、さまざまな面での手続きの簡略化、
 それに応じたサービスなど、社会環境の整備が必須である」
としている。

 さらに、日本人の特性だ。
 記事は、
★.「創造力や想像力は日本人のストロングポイントではなく、冒険精神や批判精神が崇拝されるわけでもない」とし、日本人の科学分野での成功の秘訣(ひけつ)は「厳密さとまじめさ、継続性」にあるとしている。
 「日本民族は完璧さを追求する。
 日本人は一生涯一つのことをやり続け、それを徹底的に極めると言われる。
 科学的な現象や原理を証明するためには、繰り返しさまざまな方法で細かい推敲(すいこう)を重ねなければならない。
 少しもゆるがせにしない精神は日本の科学者に広く根付いており、成果を焦る現在の中国の状況と相反する」
と指摘した。

★.そして最後に、信用だ。
 「日本は高度に信用を重んじる社会で、これは科学にさまざまなプラスの影響をもたらす」
と記事は指摘する。
 「研究は一種のイノベーションであり、科学者に対する最も基本的な要求が信用である。
 一切の誇張や誘導、あいまいさは科学の信用を脅かす」
とし、
 「日本では科学者同士にも誠実さと責任感があり、信用に満ちたグループ協力ができる。
 一方、現在の中国では誠実さや信用の欠如により、捏造(ねつぞう)や盗用、誇張、権利争いなどが絶えず発生している」
と指摘。
 数年前にSTAP細胞の問題が世間をにぎわせた際には、日本社会全体から関係者に大きな圧力が掛けられたことを紹介し、
 「日本人は強烈な栄誉感と恥を知る心を有している」
とした。

 記事は最後に、
 「中国の現在の科学界には、深刻な誇張や功を焦る雰囲気が広がっている。
 一部の人間はどんな手を使ってでも、何かを成し遂げれば英雄だと考えている。
 こうしたことが中国科学界の正常な学術交流と協力を妨げている」
と論じている。
』

『
朝鮮日報日本語版 10月13日(木)8時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161013-00000618-chosun-kr

【コラム】「ノーベル賞をもらえる変人」を育てるということ

 「海外に行かなければ何も達成できなかっただろう。
 我が国は画一的な価値観だけが『生き残る武器』になる社会だ」
 「教育制度が子どもたちを圧殺している」
 「『やっていくうちにどうにかなるものさ』と励ますのも難しい時代だ。
 学生たちは博士課程進学を恐れている。
 基礎研究の成果を社会は待たなければならない」

 利根川進氏(1987年ノーベル医学生理学賞)、小柴昌俊氏(2002年同物理学賞)、大隅良典氏(16年同医学生理学賞)の言葉だ。
 基礎科学研究が冷遇されていたのは韓国だけでなく日本も同じだ。
 どこでも「基礎」を研究する人々は腹をすかせている。
 金を稼ぐのは「応用学問」だ。
 それが資本主義だ。

 では、なぜ日本では2000年以降、科学分野だけで16人のノーベル賞受賞者を輩出できたのだろうか。
 匠(たくみ)の精神や職人かたぎ・責任感・執着に近いオタク気質・「へそ曲がり」の精神など、「物事に取り組む姿勢」に関するさまざまな見方がある。
 結果が良ければ「職人」と呼ばれるし、
 悪ければ「変人」と呼ばれるだろう。
 しかし、分析としては妥当だが、根本的な原因を説明する要因としては少々物足りない。

 宝くじを買わなければなら当たらないし、研究をしなければノーベル賞はもらえない。
 下村脩氏は1955年に始めた「ウミホタル」の研究が実を結んで2008年にノーベル化学賞を受賞したし、細胞の中の自食作用を研究した大隅氏も関連分野の研究に50年をささげての今回の受賞だった。

 へそ曲がりでもオタクでも、腹がすけば食べるし、結婚して子どもを育てもする。
 「科学者」は神父や僧侶ではない。
 生活の基本条件が整ってこそ、はじめて「人類発展に貢献する研究」に取りかかれるというものだ。

 少なくとも日本の科学者たちは、大学で講義さえすれば何とか生活できる道がある。
 国公立や私立大学の教授の選抜権を持つ日本の文部科学省の資料を見ると、
 日本の国立大学教授の平均年収は1172万円、准教授934万円、講師838万円、助教707万円だ。
 助教になるだけで700万円を上回る。
 韓国の大学教授の平均年収は9500万ウォン(約876万円)だが、週9時間以上講義する「教授クラスの講師」は1700万ウォン(約157万円)だ。
 学問をなりわいとする人々の格差が、韓国では非常に深刻なのだ。
 日本でも一度教授になれば安泰で、新たな人材が登用されにくいという問題はあるが、優秀な研究者は研究を続けている。

 それは、先を見通す力をもって「価値ある研究」に研究費を支援する日本の研究費分配システムのおかげだ。
 大隅氏はほぼすべて「国の資金」で研究してきた。
 論文数や海外学術誌の引用回数などで研究費が分配される韓国のシステムだったら、誰も注目しない研究を続けてきた大隅氏は「特別待遇ではないか」とやり玉に挙げられていただろう。

 ある理工系大学の教授は
 「1980年代以降は監査を意識して『計量化指標』『客観的指標』により研究費が支援されている。
 その結果、ゴミのような論文ばかり量産された」
と言った。
 韓国が経済協力開発機構(OECD)加盟国でも最高レベルの20兆ウォン(約1兆8440億円)近い政府研究費を支援しながらも、これといった成果がないのはそのためだ。

 井戸一つとっても、うまく掘らなければならない。
 とんでもない方向に掘って、よそ様の家の下水管に穴を開けるのではなく、「源泉」を目指す科学者を選ぶ鋭い目と道徳的な厳格さが必要だ。
 「教え子だからと大目に見たり、同郷の後輩だからと多額の金を渡したりするのを防げるなら、日本のように科学の専門家が名誉を懸けて支援対象を選ぶのが妥当だ」
と科学者たちは言う。

 ノーベル賞が取れなかったからと言って、携帯電話の輸出への道が閉ざされたわけではない。
 発光ダイオード(LED)の原理を発見しなくてもテレビの品質に何ら問題はない。
 しかし、ノーベル賞と呼ばれる「知的なアクセサリー」を韓国社会がそんなに切実に望んでいるというなら、その候補者たちが「意味のある変人」になれるようにしてあげなければならない。
 これは根性だけの問題ではない。
』

『
Record china配信日時:2016年10月15日(土) 13時30分
http://www.recordchina.co.jp/a152747.html

なぜ日本ばかりが?
中韓で図らずも一致した、ノーベル賞が取れない理由

  2016年10月14日、今年のノーベル医学・生理学賞の受賞者に、細胞が不要なたんぱく質などを分解する「オートファジー」の仕組みの研究に取り組んできた東京工業大学の大隅良典栄誉教授が選ばれた。
 この受賞が、中国と韓国で大きな波紋を広げている。

 日本人のノーベル賞受賞者は25人目。
 医学・生理学賞の日本人の受賞は、昨年の大村智氏(北里大学特別栄誉教授)に続いて2年連続だ。
 日本は21世紀に入ってからは米国に次いで2番目に多くのノーベル賞を受賞している。
 一方、中国は昨年、屠ヨウヨウ氏が大村氏とともに同賞を受賞し、中国人として3人目のノーベル賞受賞者となった。
 韓国は2000年に平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)元大統領1人だ。

 こうした現状を踏まえ、中国と韓国では大隅氏の受賞をどのように伝え、日本との違いをどのようにとらえているのか。

中国・澎湃新聞は、北京大学の生物学者・饒毅(ラオ・イー)教授の談話を掲載。
 饒氏は
 「日本の研究は1980年代に相当のレベルに達した。
 中国は前進しているが、90年代の日本に追い付いていない」
とし、日本との差は20年以上あると指摘した。
 具体的な日中の違いについて、10日付の科技日報は、
 「日本は科学者主導でプロジェクトの方向性が決まるが、中国では政府機関が主導する」点
を指摘した。
 研究の方向性は専門家である科学者に主導させ、政府はそれを踏まえてプロジェクトを行うか否かの判断のみをすれば良いとの主張だ。

 さらに、
★.日本は70〜80年代から長期的に基礎研究に投資してきたことや、
★.海外のハイレベル人材を受け入れるための環境整備を進めたこと、
★.日本人の勤勉さや
★.信用を重んじる精神
が高い研究成果を生み出す源になっていることなどが受賞者を多く排出している要因だと分析。
 一方で、中国の現状については、
 「成果を挙げることを焦るあまり、捏造(ねつぞう)や盗用、誇張、権利争いなどが起きており、科学者間での正常な学術交流と協力を妨げている」
と批判した。
 
 韓国ではどうか。
 3日付の聯合ニュースによると、韓国科学技術研究院(KIST)のリュ・フン兼任研究員ら専門家は、大隅氏の受賞を一様に「日本の長年の基礎研究への投資が生んだ結果」と分析している。
 JTBCはその例として、文部科学省の「研究支援評価項目」には「進捗度」が含まれ、同一テーマの研究で複数回申請しても進捗があれば研究費が支援されることを挙げている。
 このほか、「研究者たちの匠の精神」によるところが大きいという見方も出ている。

 韓国がノーベル賞を受賞できない原因についての分析もある。
 6日付の韓国日報は、
 「基礎科学研究をおろそかにする文化」
 「短期的な成果に偏った評価システム」
を問題点に挙げている。
 ソウル大行政大学院のクォン・ヒョクジュ教授は、
 「(韓国の)深い研究成果よりも職や肩書を見て評価する文化が障害になっている」
とし、
 「韓国はいまだに外国の研究を紹介したり模倣したりする段階。
 今後はクリエーティブな研究を高く評価するような風土が作られることが必要だ」
指摘した。
 このほか、韓国では科学と政治が近過ぎる点、国や企業からの支援が不十分だったり不安定だったりすることから、科学界の優秀な人材が流出している点も指摘されている。

 中国と韓国の分析は、共通するところが多い。
 日本人の受賞については共に長期的な投資と日本人の精神が関係するとしている一方、自国で受賞者が出ない原因については、政治の関与や短期的な成果を重視する風潮にあるとしている。
 今後はこうした分析を改善につなげられるかが両国にとって鍵となる。
』

『
サーチナニュース 2016-11-24 10:13
http://news.searchina.net/id/1623689?page=1

エリートが移民してくる国ではない日本、
なぜノーベル賞を獲得できるのか=中国

 東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏が2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞し、日本人のノーベル賞受賞者数は25人となった。
 日本人受賞者は今世紀だけで17人目であり、中国では多くのノーベル賞受賞者を輩出する日本に対して羨望の声があがった。

 中国メディアの今日頭条は18日、なぜ日本はノーベル賞受賞者を数多く輩出できるのに、中国は自然科学分野でノーベル賞をほとんど獲得できないのかと疑問を投げかける記事を掲載した。

 記事は、日本が2000年以降に輩出したノーベル賞受賞者の数は米国に次いで多いと伝え、
 「日本は世界中のエリートが移民してくる国ではないうえ、人口も米国の3分の1にとどまる」
と指摘、その日本が数多くのノーベル賞受賞者を輩出していることに驚きを示した。

 続けて、ノーベル賞の受賞者数を国別で見た場合、米国が圧倒的な1位であるうえ、受賞者は欧米の先進国に集中していることを指摘する一方、
 「日本は欧米以外の国としては唯一とも言えるほど多くの受賞者を輩出している国」
であると指摘。
 さらに、日本の科学技術が世界一流の水準に達し、ノーベル賞受賞者を数多く輩出できる理由は、
 「研究の基盤となる豊かな経済があること」、
 「優秀な人材がいて、その人材が国外に流出しないこと」
などが挙げられると指摘した。

 一方で記事は、中国人のノーベル賞受賞者が文学賞を受賞した莫言氏、生理学・医学賞を受賞した屠ユウユウ氏など少数にとどまるのは、
 「子どもの想像力を奪う中国の教育方法や人材の選抜方法に問題があるため」
と指摘。
 毎年のようにノーベル賞受賞者を輩出する日本との差は「研究の基盤となる豊かな経済があること」、「優秀な人材がいて、その人材が国外に流出しないこと」といった点のほかに、教育制度の違いもあると伝えてい。
』




【身勝手な大国・中国】



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日本という驚くべき国(2):高齢社会の日本に「高齢者ツアー」がない理由

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『
人民網日本語版配信日時:2016年10月2日(日) 2時20分
http://www.recordchina.co.jp/a151776.html

高齢社会の日本に「高齢者ツアー」がない理由―中国メディア

 中国国家旅游(観光)局が発表した「旅行社高齢者観光サービス規範」が今月1日から正式に実施されている。
 同規範は、高齢の旅行者の合法的権益を一層保障し、旅行社の経営行為やサービス内容を規範化し、旅行社業界のサービスの質を向上させ、高齢者の旅行を対象にしたサービスに対する要求を明確化している。
 これら基準は、高齢者を対象にした旅行商品を提供している旅行社に適用されている。
 新華社が報じた。

 同ニュースを見て、筆者は日本の旅行業関係者数人を取材したところ、日本には高齢者専用のツアーを対象にした法規がないことが分かった。
 また、そもそも日本の旅行社は、高齢者だけを対象にしたツアーを企画することもないという。
 その理由の一つに、多くの人が「高齢者」と呼ばれたり、「年長者」と冠されたりすることを嫌っており、家族や親戚でない限り、退職した高齢者であっても、「おじいちゃん」や「おばあちゃん」と呼ばれることも嫌うことが挙げられる。

 そのため、旅行社は高齢者向けのツアーを企画していても、高齢者の気分を害することがないよう、「これは高齢者のためのツアー」とわざわざ言うことはない。
 高齢者専用のツアーがないということであれば、そのようなツアーを対象にしたサービス規範を制定する必要もなくなる。

 日本の社会で高齢化が進むにつれ、旅行業の競争も日に日に熾烈になっており、各旅行社は必然的に一層行き届いたサービスを提供し、利用者にリピーターとなってもらえるよう努力している。
 そうなると、法外な旅行費を請求したり、サービスのクオリティを下げたり、途中で料金を上げたりして、自分の会社の評判を落とすようなことも自然となくなる。
 日本の旅行業関係者によると、サービスに満足し、十数年同じ旅行社を利用している高齢者もいるという。

 日本の旅行業においては、1952年7月に制定された「旅行業法」の規範を守らなければならない。
 同法は、旅行業者の運営を規範化させているほか、公正な取引を維持し、旅行の安全を確保するほか、旅行客の便宜を向上させるよう求めている。
 71年11月10日、運輸省(現・国土交通省)は「旅行業法施行規則」を制定し、旅行市場を一層具体的に規範化した。

 旅行社のサービスが規範化されているかは、旅行社の資質と大きな関係がある。
 日本では、旅行社が無登録でバスツアーを企画していることが判明すると、その旅行社に厳しい処分を下している。
 例えば、関連の責任者には、100万円以下の罰金または1年以下の懲役が科せられる。

 その他、旅行社は旅行業協会に「営業保証金」を払わなければ、経営を始めることができない。
 保証金制度があるのは、旅行社が倒産して、損害を受けた旅行者が賠償を受けることができないという状況を避けるためだ。

 日本に高齢者の旅行を対象にした規範はないが、高齢者の安全が軽視されているということでは決してない。
 日本では単に高齢者だけでなく、全ての旅行者の安全を重視している。
 「旅行業法」やその施行規則で、安全に関する詳しい対策が講じられている。
 例えば、観光バスは2時間おきに休憩しなければならないほか、運行記録が必要で、過労運転を避けなければならない。
 また、大人でも子供でも、ツアーに参加する場合は傷害保険1000円を払わなければならない。
 旅行社も旅行者一人一人に体調を聞き、足の不自由な人のためには車いすを準備する。

 筆者は昨年の夏休み、おじ(80)とその家族と一緒に日本を旅行した。
 その時、東京のある旅行社がわざわざ車いすを北海道の新千歳空港に送ってくれた。
 関西国際空港から出国する時に、おじたちは車いすを宅配便で東京に送るだけでよく、送料は旅行社が負担してくれたという。

(提供/人民網日本語版・編集KN)
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『
サーチナニュース 2016-10-27 10:13
http://news.searchina.net/id/1621692?page=1

日本が中国人客を「惹きつける理由」、
人気の背後にある魅力=中国メディア

 中国で大型連休を迎えるたびに、多くの中国人が日本を観光で訪れる。
 10月1日の国慶節(建国記念日)に絡む大型連休中も多くの中国人旅行客が訪日した。
 近年、日本は韓国やタイと並んで中国人の人気渡航先となっているが、この人気ぶりの背後には「日本が中国人を惹きつける理由」があるはずだ。

 中国メディアの今日頭条はこのほど、中国人が日本を旅行先に選ぶ理由をまとめ、紹介する記事を掲載。「中国人が日本に行きたくなる理由」を考察している。

 記事は複数の写真を掲載しつつ、
 日本の魅力として「和服」や、
 「街が清潔で空気も澄んでいる」こと、
 必ず化粧をして外出する「日本人女性」、
 春になると空が埋まるほど満開に咲く「桜」
など、多くの中国人が日本のドラマやアニメで見たことがあるであろう光景を取り上げている。
 中国からすれば別世界のようなこうした描写に対し、中国人の多くは
 「本当に日常の光景なのか、自分の目で確かめてみたい」
と思うのかも知れない。

 また、よく言われる日本人の優しさや礼儀正しさ、日本社会の秩序も魅力的だとした。
 例えば、
 遊園地の所定の位置に「ベビーカーが整然と並んでいる」光景や、
 信号が赤になっても道を渡りきれないお年寄りを待っていてくれる自動車、
 個人商店にも「偽物が売っていない」こと、
 客が昇降しやすいように「踏み台を置いてくれるバスの運転手」、
 ゴミ捨て場に「ゴミが整然と置かれている」
ことなど、日本では特に珍しいことのない、ごく当然のことばかりだが、中国人旅行者にとっては感動するポイントだという。

 興味深いのは、記事が紹介している「中国人が日本に行きたくなる理由」のほぼすべてが、「日本の日常風景」だということだ。
 買い物がしやすい、質の良い製品が多いといったショッピングに関することは挙げられていない。
 爆買いが目立った中国人の日本旅行も様変わりし、買い物よりも中国で体験できないことに魅力を感じていることが見て取れる。
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『
サーチナニュース 2016-10-02 13:39
http://news.searchina.net/id/1619963?page=1

運動に積極的でない日本人が世界で一番スリムな理由 
食事だけではなかった! =中国メディア

 秋から冬にかけては、体重の維持が難しいと感じるダイエッターが多いのではないだろうか。
 寒い冬に向けて体に栄養を溜め込もうとする「生理的システム」に、さまざまな美味しい食べ物の誘惑が重なるからだ。
 一方、体温と外気との温度差が高いほどエネルギー消費が増える。
 スリムな体型を維持するには、やはり適度の運動は欠かせない。

 中国メディア・今日頭条は29日、
 「全世界で最もスリムなのはなぜ日本人なのか」
とする記事を掲載した。
 記事は、WHOの報告で日本は世界の中で肥満率が最低レベルとされたと紹介。
 その一方で、著名な医学雑誌「ランセット」では、日本人の運動に対する積極性が世界平均水準を下回っているとされたことを伝えた。
 そして、
 「どうして運動に積極的ではない日本人が世界で最もスリムなのか」
と疑問を提起、
 「その答えは独特な日常の生活習慣と国情にあるのだ」
としている。

★.まず、食事の習慣について言及。
 カロリーの低い食事である一方、1日に30品目摂取が提唱されるなど、多くの食材を少しずつ食べる習慣があるとした。
 また、懐石料理に代表されるような「腹八分」の考え方、朝食の重視といった要素が、食事の面から日本人をスリムにしていることを説明した。

★.次に、外出する際の習慣について解説。
 西洋人に比べて散歩や自転車に乗ることを好む傾向や、
 「タクシーに乗るのはとても贅沢」という観念があるため、
 「タクシーで8分、歩いて30分なら歩くことを選択する」
とした。
 また、通勤時間が長いことで徒歩、電車への乗車、立ってバランスを取ることによるカロリー消費が看過できないレベルであること、しかも、日本には坂道が多く、歩くだけでも運動強度が高めになることも挙げている。

 確かに、忙しい社会人生活の中でカロリー消費の時間を確保しようとするなら、通勤時間を有効に使うというのが最もシンプルでお手軽と言える。
 バスは1停留所分歩く、駅ではエスカレーターでなく階段を上る、電車では座らずに立つなど、工夫次第で有効にカロリーが消費できるのだ。

 飽食、運動量の減少、ストレスの増加などといった要因により、中国では子どもを中心に肥満者が増えている。
 肥満者の急増は個人の健康リスクを高めるほか、医療コスト増などといった社会的な問題も引き起こす可能性がある。
 記事で紹介された日本の習慣は、中国にとっても大いに参考になりそうだ。
』

『
サーチナニュース 2016-10-04 07:41
http://news.searchina.net/id/1620065?page=1

日本製品には圧倒的な安心感がある! 
だから中国人は購入する=中国

 日本を訪れる中国人が日本製品を爆買いしたことは記憶に新しい。
 円高が進行したことや、中国政府が関税を引き上げたことなどによって、爆買いの勢いは徐々に失われつつあるようだが、それでも日本製品の人気が低下したわけではない。

 低品質ながらも、日本製品に比べて圧倒的に安価な中国製品があるにもかかわらず、なぜ中国人消費者は日本製品を求めるのだろうか。
 中国メディアの今日頭条はこのほど、日本製品が中国人消費者にとって人気である理由を考察する記事を掲載した。

 記事は、日本を訪れたことのある中国人であれば
 「日本製品はどれだけ小さなものでも、非常に精巧であることを知っているはず」
と伝えつつ、日本で売られている製品は品質も高いうえに、販売員のサービスも非常に優れていると指摘した。

 一方、中国人消費者がわざわざ日本を訪れてまで日本製品を求めているのは、品質が高く、偽物や粗悪品がない安心感にあると主張し、その高品質と安心感をもたらしているのは日本企業の厳格な規格や管理にあると指摘した。

 中国人旅行客が日本で購入した電気炊飯器や温水洗浄便座が実は中国で生産されていたことが一時、中国で大きな注目を集めたものの、それでも中国人旅行客は日本企業が中国で生産した電気炊飯器や温水洗浄便座を買い求めた。
 これは同じメード・イン・チャイナであっても、
★.中国企業が中国市場向けに生産管理を行うのか、
 日本企業が日本市場向けに生産管理を行うのかによって、
 品質に大きな差が出ることを中国人消費者が熟知している
ことを示す事例と言えるだろう。
』

『
サーチナニュース 2016-10-05 07:55

日系車の魅力といえば「故障少なく、燃費良い」、
では韓国車の特徴は?=中国

 日系車は中国で販売台数を伸ばしているが、中国人消費者は自動車を購入するにあたって、各国の自動車をどのように比較、検討しているのだろうか。
 中国メディアの今日頭条はこのほど、中国で一定のシェアを獲得しているドイツ、米国、日本、韓国の自動車を比較する記事を掲載した。

 記事はまずドイツ車と米国車の特徴を紹介。
★.ドイツ車は「高級感」や、高品質と厚い鋼板による「安心感」が魅力的だ
と主張する一方、
 販売価格と維持費が高いことが欠点
だと指摘した。
 特に中国国内での修理費用はほかの外資メーカーの自動車に比べると高く、中国向けモデルの車種が多くないことも欠点として挙げた。

 続いて
★.米国車は、見るからに頑丈で豪華、排気量が大きくタフで、運転を楽しむには適しているが、燃費が悪く、細かいところは作りが荒い
と指摘した。

 最近、中国で人気の
★.日系車については、「外見は地味で日本人と同じで面白みがなく走る楽しみはない」
ものの、
 「故障が少なく、燃費も良く、維持費も低い」ため、日常生活の足にするには十分だ
と説明。
 また、「人間工学をもとにした設計」は理にかなっているとも称賛。
 そして保証期間内にはまず問題が発生しないのも魅力だと紹介した。

 最後は
★.韓国車だが、「特徴は日系車に近い」ものの、「多くの点では日系車に遠く及ばない」
のだという。
 優れている点は、米国車、フランス車すら凌ぐ「外見の美しさ」であり、その美しさは「群を抜いている」というが、
 組立、材料の選定、人間工学による設計では日本に及ばず、
 耐久性にも欠けるため、中古車市場での価値も低い
と指摘した。

 このように比べてみると、同じ自動車でも「国」によって特徴に差があることが分かる。
 日系車の場合は狭い路地でも小回りの利く、燃費の良い自動車が特徴で、見た目は地味でも性能が高いというのは、堅実で地に足の着いた日本人の国民性を反映していると言えそうだ。
 今後、中国市場でさらなる発展を遂げるためには、中国人消費者の目線に立った開発・販売も必要になるだろう。
』

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Record china配信日時:2016年10月16日(日) 6時10分
http://www.recordchina.co.jp/a137458.html

中国人が日本国籍を取得するメリット―中国メディア

 2016年10月13日、中国のインターネット上に、中国人が日本国籍を取得する際のメリットとデメリットについて紹介した記事が掲載された。 

 法務省のデータによると、2015年の外国人による帰化申請件数は1万2442件。
 ピークだった1998年(1万7486件)よりは少ないが、3年連続で増加している。
 このうち、帰化が許可されたのは9469人で、
 国籍では中国は韓国・朝鮮(5247人)に次いで2番目に多い2813人となっている。 

 では、中国人が日本国籍を取得するメリットとデメリットは何か。
 記事は、日本国籍を取得して十数年の張さんの話を紹介。
 張さんはメリットとして、
 「住宅ローンがすぐに降りたこと」
 「海外旅行の際にビザ取得が不要になったこと」
 「娘が北京大学に入学できたこと」
の3つを挙げた。
 3つ目については、高校卒業後に外国人留学生として入学したといい、
 「もし中国人として受験していたら合格できた可能性は高くない」
という。 

 一方で不便なこともあるようだ。
 それは、「中国に戻る時にはビザが必要なこと(※現在は15日以内の滞在はビザなし入国が可能)」と
 「中国で不動産を購入できないこと」
の2つだそうだ。
 中国は外国人の不動産購入を認めていないためで、もし購入できていれば住宅価格の高騰で今頃は数倍の額を手にしていたと話した。 

 同じく日本国籍を取得した李さんは、もっと単純な理由だったようだ。
 李さんと妻は旅行が趣味だったが、以前、ハワイに行こうとした時にビザの申請にかなりの手間がかかったといい、このことが2人が日本国籍取得を決めた理由だった。
 日本国籍取得の条件は、
 素行が善良であること、
 日本に5年以上居住していること、
 自己または配偶者などが生計を立てられること
などで、手続き自体は難しくない
と語っている。 

 また、李さんは日本では米国のように国籍取得の際に「米国に忠誠を誓う」といった儀式は存在しないと話し、以前、中国の某テレビ放送である人物が
 「日本国籍を取得するには天皇に忠誠を誓わなければならない。
 だから絶対に国籍取得は申請しない」
と話していたのを聞いてあきれたことを明かした。 

 「日本政府も国籍取得を緩和している」
というのは河北省出身の呉さん。
 子どもは日本で生まれ、日本人と同じように育った。
 のため、一家で日本国籍を取得しようと考えたが、中国に不動産を所有していたため、法務省に相談したところ、呉さんと子どもだけが日本国籍を取得し、妻は中国籍を保留することになったという。
 呉さんは
 「国籍取得で変わったことは何もない。
 選挙で票を入れてくれと頼まれるだけ」
と話しているという。 

 一方で、日本国籍を取得して中国でビジネスを展開する陸さんは、若干後悔している。
 上述のケースと同様に、中国では不動産を購入することもできず、身分証がないため高速鉄道のネット予約もできない。
 陸さんは、将来的に中国でのビジネスを考えている人は、日本国籍取得は考え直した方がいいと話しているという。
』

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Record china配信日時:2016年11月3日(木) 19時30分
http://www.recordchina.co.jp/a139988.html

なぜ!?新聞業界は世界的な不況、でも日本の新聞だけは安定している―中国メディア

 2016年11月1日、央広網は、世界的に新聞業界が不況に陥る中、日本の新聞だけは安定していると報じた。

 記事は、さまざまな新しいメディアが急速に発展している中で、世界の新聞業界は生き残りが非常に難しくなっているが、日本ではかつての勢いこそないものの窮地に陥っているわけではないと指摘している。

 日本は発行部数や普及率などから、「新聞大国」ということができる。
 世界新聞協会(WAN)の報告によると、
 日本の新聞の発行部数は7081万部に達し、中国(8547万部)に次いで2番目に多い。
 1000人当たりの発行部数では、
 中国が91部、米国が263部、ドイツが322部なのに対して、日本は647部と圧倒的だ。

 そんな日本でも、インターネットの普及が紙媒体に影響していないわけではない。
 日本新聞協会によると、2002〜12年の10年間に同協会に加盟する媒体は99社から93社に減少。
 停刊に追い込まれる地方紙もある。
 新聞業界全体の収入も年平均1.89%減少しており、11年間で2割減少した。

 ただ、世界的には影響が少ないといえる。
 記事はその理由について、日本の紙媒体は広告収入への依存度が高くないことを挙げる。
 日本の新聞社の収入は販売収入、広告収入、その他収入の三つに大別され、そのうち販売収入が6割前後、広告収入が2割強になっているという。
 ネットメディアが広告収入のパイを奪う中、それに頼らないモデルがプラスに働いていると記事は指摘する。

 このほか、
 「地方紙は書籍出版やイベント、インターネット分野に進出し、絶えず経営の範囲を拡大している」こと、
 「日本で新聞を読むことは生活習慣になっていて、読者が安定している」
ことなども、日本で新聞業界が生き残っている要因に挙げている。
』

『
サーチナニュース 2016-11-30 07:15
http://news.searchina.net/id/1624103?page=1

なぜだ! 
肥満増加という「世界的な流れ」に日本が逆行できる理由=中国

 世界的に肥満人口が急増している。日本生活習慣病予防協会によれば、世界保健機関(WHO)の研究チームが行った調査では、世界の肥満人口は1975年から40年間で急速に増えていることが明らかになり、
★.世界の肥満人口は6億4100万人に
達する見込みだという。

 中国も例外ではなく、国が貧しかったころにはほとんど存在しなかった肥満者だが、人びとの暮らしが豊かになると同時に肥満者が増えている。
 一方、日本は先進国のなかでは肥満者が少ない国に該当するが、中国メディアの天天快報はこのほど、日本が肥満人口の増加を食い止められている「秘訣」を探る記事を掲載した。

 記事は、肥満増加という「世界的な流れ」に日本が逆行できているのは、5つの秘訣によるものだと分析した。

★.その1つが、食事を「小皿に分け、腹八分目にすること」だ。
 中国では大皿に料理を載せて食べるのが普通だが、日本のように小皿に取り分けて料理を盛ることは、食べすぎを防ぐことができ、腹八分目を実現できると分析した。

★.2つ目は「1日30種類の食べ物を摂ること」。
 中国で奨励されているのは1日12種類、1週間に25種類だけで、記事は「1日12種類でも多いのに、30種類とはなかなか簡単にできることではない」と指摘した。

★.3つ目は「油を控えめ」にすることだ。
 日本料理は生食のほか、蒸す、煮るなどの調理法が多く、てんぷらのような揚げ物もあるものの、衣が薄くカラッと揚げると紹介。
 これは油を「これでもか」というほどたっぷり使う中華料理とは大きく異なる点だ。

★.また記事は、4つ目の秘訣として「健康管理」に気を遣う環境が整っていることを紹介。
 中国では日本のようにレストランのメニューにカロリー計算が表示されていることはない。

★.また5つ目は、「徒歩や自転車」でよく外出することを紹介し、
 日本の人口100人あたりの自転車保有率は中国よりも高く、坂道の多い日本では良い運動になると指摘。

 記事が紹介した5つの秘訣は、心がけ次第で誰でもできることと言えよう。
 しかし、こうしてみると日本人の生活習慣はもともと健康的だったのだと気づかされるが、やはり大事なのは「消費カロリー以上に摂取しない」ということではないだろうか。
』


【身勝手な大国・中国】



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2016年10月3日月曜日

チャイナ・ドリームの行方(1):「夢よ、弾けないでくれ!」 せまりくるバブルの不安

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『
Wedge 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7852

中国人は幸せか? 不幸せか?
チャイナドリームの行方



今月は北京、西安、宝鶏、香港を3泊4日の弾丸出張で回った。
 北京では25年以上のお付き合いのある老朋友の新居に招待された。
 今回は古い友人のチャイナドリームについて書いてみたい。

■チャイナドリームの象徴は何か?

 老朋友の李先生は国営企業で最高峰の研究機関の教授だが、今や関連子会社を上場させた中国一流の企業経営者でもある。
 今回訪問した先生の新居マンションの価値は今や5億円以上ではないだろうか。
 まさにチャイナドリームの象徴であるが国から安く払い下げられた自宅のマンションは北京の中心部にあり東京でいえば青山のようなロケーションにある。

 仕事場はすぐ近くで職住接近の恵まれた場所である。
 部屋は5LDKで250平米の広さで寝室が4つあって、広いリビングにキッチンもキラキラ光って素晴らしい。
 トイレが3つあって、最上階の7階にあるから眺望も最高だ。
 先生のマンション棟は研究所の一握りの幹部専用である。
 李先生は今年60歳の還暦を迎えるので、通常ならば今年一杯で退職して後は年金生活者になる予定だったが特別栄誉教授として、さらに5年間は研究機関の経営を行うことになった。
 こうした待遇は一般職員ではありえないのだが李先生の評価は学術面だけではなく経営者としての実績が評価されたものである。

 昔の国営企業幹部の官舎と云えば狭くて国際比較をすると日本の公務員宿舎と同様に「ウサギ小屋」と形容されても仕方のない代物だった。
 それが今や様変わりである。
 政府の指導もあって10年ほど前から福利厚生のために職員の賃貸住宅を次々と建設したのである。
 その後、長年勤めて一定の条件を満たした職員にはその住宅を格安で払い下げられるようになった。
 その住宅価格もこの10年で5倍から6倍くらいに値上がりして住宅バブルの結果、幹部職員は全員の資産は膨れ上がったのである。
 これは日本でも高度成長期には資産インフレで住宅価格がバブルで数倍になったのと同じ現象である。

■豪華マンションが支給された背景


●幹部マンションの外観

 同時にこの1年ほどの間に定年が近くなった幹部職員には特別に恩給の一部として新築の豪華マンションを払い下げることになったのだ。
 聞くところによると市中相場の8割引きの格安価格で払い下げされたのだから、まさに「濡れ手に粟」とはこのことである。

 李先生は国営の新材料研究機関の指導者であり特にレアアースの開発技術では中国No.1である。
 5年ほど前に上海株式市場に子会社を上場させて株価が上昇して企業価値が上がった結果、上場企業としての含み益は等比級数的に膨れ上がった。
 ところが給与については国営企業であるから国家ルールに従って給与水準を欧米並みに引き上げる訳にはいかない。
 そこで、福利厚生について「お手盛り」の大盤振る舞いをすることになったのである。
 日本のように会計監査院のような組織が横やりを入れる訳でもなく、長年の貢献に対して応分の配慮がなされたのである。

 私の多くの中国の国営企業の友人たちは社会主義経済だから残念ながら給料は欧米並みという訳には行かないが、住宅資産に関しては明らかに国際水準を超えていることは間違いない。

■中国の金持ちと貧乏人の収入格差は?

 スイスの銀行「クレディ・スイス」の報告2015年によると
★.中国の富裕層の保有資産総額は
 アメリカに次いで世界第2位の22兆8000億ドル
となったらしい。
★.日本は世界第3位に転落し、19兆8000億ドル
と僅差だが中国の後塵を拝したことになる。

 昔の友人がチャイナドリームを実現したことはご同慶の至りだが、僕にとってみるとそのスピードが速すぎることが気がかりである。
 なぜならば大半の中国人の生活は貧困で一部の富裕層だけがますます金持ちになって行くからだ。
 僕がこれまで取引してきた中国の友人達は都市部に生活しており特別に選ばれたエリート層である。

 一方、地方では年間に20万件にも及ぶ紛争や暴動が発生していると聞く。
 その原因は格差社会に対する不平と不満が渦巻いているからだ。
 中国人民大学の国民の収入差に関する調査によると
★.中国の10%の富裕層が何と80%の財を占めており
★.富裕層と貧困層の収入格差は「40倍」
になっているという。

■ピョンピョン、パチパチ、ドンドンで儲けた配慮貿易とは?

 こうした中国の国営企業の富裕層だけが儲かる仕組みを見ていると、僕が中国貿易を始めた1970年代の中国の配慮貿易で大儲けした友好貿易商社の存在が思い出される。
 中国共産党と深い関係のあった日本の友好貿易商社さんたちは「ピョンピョン、パチパチ、ドンドン」を特別価格で輸入していたのである。
 この「ピョン、パチ、ドン」を知っている人はかなりの中国通であるが何のことか判るだろうか?
 「ピョンピョン」とはウサギ肉の輸入、
 「パチパチ」とは天津甘栗の輸入、
 「ドンドン」とは花火の輸入
のことである。
 どうやら当時は日本の友好貿易商社が配慮物資で大儲けした利益を社会党に献金していたのではないかと勝手な想像をしている。

 僕の前職の蝶理は友好商社ではあったが、当時の社会党系の友好商社ほどのぼろ儲けをした訳ではなかったので、ひとこと言い訳はしておきたい。
 それでも古典的中国食品の輸入などでは配慮物資の輸入枠の配分を貰っていた。
 「魚ごころあれば、水ごころ」が中国的な社会習慣だから、それに対して誰も不公平だとは言わないのが中国のおおらかなところである。
 さて、話が横道にそれたので元に戻したい。

■中国人の海外出張の予算は少なかった

 25年前の国営企業の出張予算は国家の規定があったので客先訪問をするにしてもタクシーの利用すらできなかった。
 宴会の時に李先生の宿泊予算が限られていたので安いビジネスホテルを探したが、なかなか見つからなかった昔話が出てきた。
 今は懐かしい古き良き思い出である。
 それでも海外出張に行けるのは一握りのエリートだけだった。
 当時の中国は貿易を振興して外貨を稼ぐために中国元を安くコントロールする必要があった。
 中国元の為替レートを国家が安く誘導していたので、日本人にとっては中国出張時のコストは何でも安かったが、中国人の海外出張は厳しく管理されていたそうだ。
 今や中国人の「爆買いツアー」が有名になって海外不動産まで「爆買い」が流行っているというから隔世の感がある。

 でも、考えてみると昔はみんなが貧困だったから別に恥ずかしくもなんともなかった。
 我々、日本人商社マンだって同じ経験は沢山やっている。

 国民の不満を助長しているのが一般の中国人が10%の金持ちとの格差がますます開いていくところにある。
 農民戸籍しか持てない地方の貧困層は大都市で豊かな生活をしている富裕層の暮らしぶりを毎日テレビで見るのだから暴動が起こるのも当たり前だ。

 しばらく前に尖閣諸島を日本政府が国営化した時に中国全土で暴動が発生した。
 ところが暴動が一段落した後には共産党政府に対する不平不満が爆発した。
 政府が国民の不満の目を外に向けさせるために日本を目の敵にした反日報道を繰り返しても、
 最終的には大衆の不満と怒りは格差社会に向かう
のである。

■資産バブルのメリットを享受しているのは一部の富裕層だけ?

★.ヨーロッパの調査機関のアンケートによると、中国人の幸福度(HPI)は世界150カ国中の128番目だったと云われている。
 一方、
★.中国政府が行った「中国都市住民幸福感調査」によると75%の中国人が「幸福」である
との結果が出たらしい。
 中国政府は都市戸籍を持てない農民層をこの調査の母数に含めていないのである。

 この都市戸籍と農業戸籍の違いが中国の格差の原因であったが、今はかなり緩和策が進んでいるとの話も聞く。
 北京や上海などの大都市には農業戸籍から都市戸籍への移動はいまだに制限が厳しいようだ。
 一般的には農業戸籍者は全人口の6割以上と予想されるが、
★.現状を見る限りジニ係数(所得格差を測る指数)は「0.61」を示しており、
 中国の所得格差は危険域をはるかに超えており不平等社会であることは間違いない。

■貧しきを憂えず、等しからずを憂う

 中国人の幸福度の年代別の分析は面白い結果が出ている。
 年代が上がれば上がるほど幸福感は増えているが、若者たちの幸福感は減少傾向になっている。
 60代や50代は昔の貧困時代に比べ、今の生活水準は良くなったと感じているので不平感はなさそうだ。
 逆に30代と40代は「大変幸福だ」という人は少ないようだ。

 日本でも同じだが今から20年前と比べると金銭的には豊かになったが50代や60代の人々のような貧困は経験していないから比較問題だが「生活がより良くなった」とは考えないのかも知れない。
 これには「一人っ子政策」も関係がある。

 「貧しきを憂えず、等しからずを憂う」とは論語に出てくるが、
★.世界中どこでも「絶対的な貧しさ」よりも「相対的な不公平さ」が気になるのが一般的である。
 中国の生活水準は20年前と比べてかなり向上しているとは云うが、10%の富裕層が目立ちすぎるために格差の問題が深刻になっているのだ。

 鄧小平氏は天安門事件の後、民主化運動よりもみんながお金持ちになるべきだと言い始めた。
 その時に全員がすぐにお金持ちにはなれないが、一部の人々がお金持ちになり、富裕層が経済をけん引して発展させてから一般人もお金持ちになるように指導した。
 ところが、今になって振り返ってみると富裕層と貧困層の格差は益々拡大しているのが社会問題になっているのだ。

■富裕層の新たな悩みとは?

 その富裕層も確かに経済的には満足はしているのだが、政府が贅沢禁止令を出して賄賂を受け取った幹部職員を逮捕して公職追放にした結果、肩身が狭くなって海外に逃亡する富裕層が増え始めている。
 習近平政権は腐敗防止のために富裕層の幹部職員を見せしめのために粛清し始めてかなりの時が経つが、今や中国企業の組織の中では幹部は何時、従業員にタレこみさせられるかビクビクしている。
 元々、個人主義的な国民性がさらに疑心暗鬼になっているので富裕層は別の意味で幸福感を失くしつつある。

 もともと、中国人には愛国心は少なく個人主義的で自分の家族さえが幸せなら国家はどうでも良いと考える傾向がある。
 上手く海外に資産フライトさせる事が出来れば良いのだがそうもいかない大半の富裕層は今や戦々恐々としているのである。

■格差は解消されるのか?

 それでも富裕層の比率はまだ10%とまだ多くはないので格差をなくして行けば中国の社会問題は緩和するのだろうか? 
◆ 去年より今年が良くなって、
 来年は多分今年よりよくなるだろうと思わせる限り中国のチャイナドリームは維持できる
と思われる。

 一般の中国人にとって一番、幸福感を感じるのは自分の家を所有できることである。
 しかも資産バブルが安定すれば所有欲が満足できるのだ。
 若者が結婚できる条件とは持ち家が大前提である。
 50代の親は一人っ子に家を持たせるために働き借金をしてでも息子に嫁を持たせれば最大の幸福感に包まれるのである。
 中国社会では欧米に比べて社会福祉は整ってはいない。
 従って企業の中で福利厚生の名目で「チャイナドリーム」を達成させようとするのは悪いことではない。

■チャイナドリームが弾けるとき

 組織の中の就労年数に応じて「自宅の取得を配慮する」のは中国の文化そのものである。
 組織に貢献した幹部社員が「お手盛り」で豪華マンションを手に入れても40代の社員はあと10年も経てば自分の順番が来ると信じている。
 30代の社員たちも今は給料が安くても国営企業に勤めている限りいずれは自分もチャイナドリームが待っていると信じさせる限り、社会主義自由経済は何とか維持できるとみんなが信じているのだ。
 そのためにも
 中国経済にとっては次から次へと国中にマンション建設を自転車操業でも良いから継続させることでGDPの成長率は維持できると思いこまずにはいられないのではなかろうか。

 これが中国のチャイナドリームの本質だと言い切ったら僕の老朋友からお叱りを受けるだろうか?
』

『
ダイヤモンドオンライン 2016年10月11日  加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/104146

中国当局が国慶節に不動産購入制限を打ち出した理由

■国慶節を跨いで中国世論を騒がせた不動産物件購入制限のニュース

 中国社会が国慶節休暇(10月1~7日)に面するなかで本稿を書いている。
 中国国家観光局データセンターは、休暇期間中に観光に出かける本国国民の数は延べ5.89億人(前年同期比+12%)で、それがもたらす観光収入は4781.8億元(前年同期比+13.5%)に上ると見積もっている。

 減速、低迷、停滞、衰退、崩壊――。

 近年あらゆる言葉で修飾される“中国経済”であるが、人民たちの表情や行動を眺める限り、彼ら・彼女らの消費、生活、余暇に対する欲望は時を追うごとに膨張しつつあると実感する今日この頃である。

 そんな私にとって、中国人の生き様を再考する一つの機会である国慶節を跨いで、中国世論を騒がせた一つの、あるいは一連のニュースがある。
 9月30日~10月4日の5日間で、北京、天津、蘇州、成都、合肥、済南、鄭州、無錫、武漢、深セン、広州など10以上の地方自治体が新たな不動産市場への政策を打ち出し、その多くが市民らの不動産物件購入を制限するというものであった。

 中国社会において、国慶節期間中に家族で新しい住宅を購入するために不動産物件を下見する、それをホリデーレジャーとする市民は少なくない。
 私の周りだけを見渡しても少なからずいる。
 そんな市民たちは、今回の不動産購入制限政策を複雑な心境で、しかも当事者意識を持って眺めたであろう。

 例として、国営新華社通信は、10月4日に配信した記事
 『勝負に出るか、あるいはとりあえず様子を見るか:
 ゴールデンウィーク不動産市場を巡る市民たちの心境をスキャンする』
において、同通信社の記者が河南省鄭州高新区恒大城で遭遇・取材した同省許昌出身の寧氏の状況を紹介している。

 大学卒業後鄭州で就職した同氏は、これから2年以内に結婚すべく準備を進めており、両親もそのために早急にマイホームを購入するように催促しているという。
 近年、鄭州の不動産価格の常識はずれな高騰ぶりに愛想を尽かしていた寧氏は制限策のニュースを聴いて喜んだが
(筆者注:2016年8月、鄭州市の不動産価格は前月比で5.6%上昇し、単月で見れば全国主要都市のなかで最大の上昇率を記録している。なお、前年同月比で見ると、最も高い上昇率を記録したのは福建省のアモイ市で+44.3%となっている)
、状況を打診するに連れて、喜びは薄れていったという。
 「価格の上昇は緩やかになるが、それでも上がり続けるでしょう」。
 政府によるマクロコントロール政策が住宅価格の急激な上昇の流れを抑制できるのであれば、メリットがあると考える寧氏であるが、「翡翠華庭」という物件が販売を始めた当初の価格は1平方メートル9000元であったが、現在では1.5万元にまで上がっており、更なる上昇を懸念する寧氏はこれ以上待つのは危険だと判断し、早急に購入する予定だという。

■不動産市場のバブルとその崩壊を警戒!?
アクセルとブレーキを踏み分ける中央政府

 中国で半世紀以上続いた「農業戸籍」の廃止が中国経済社会にもたらし得るインパクトを扱った前回コラム(中国で「農業戸籍」廃止、経済社会はどう変わる?)において、
 「あらゆる改革の中でもその難易度と進め方という観点から比較的難しい分類に入ると思われる戸籍制度改革であるが、現政権が重視する都市化政策、産業構造の転換、不動産政策などとも直接的にリンクしてくるため、改革のプロセスが複雑化するのは必至である」
という指摘をした。

 不動産政策も戸籍政策と同様、他の分野と直接的にリンクしてくる複雑なテーマであると言える。
 中央政府にとっては、経済成長の原動力や過剰生産能力の解消問題などを占い、地方政府にとっては自らの財政基盤を左右しかねない要素である。
 一方、企業家にとっては、本業が不振に陥ったときの損失や倒産リスクを軽減するため、できる限り持っておこうとする保険であり、一定以上の資産を持つ“有産階級”にとっては自らの資産を管理するための拠り所である。
 安定した生活、幸福な人生を送ることを何より祈願する“無産階級”としての一般大衆にとっては、自らが生活の最大基盤とし、家族が一つになるための“家”を持てるかどうかという要素である。

 私がここで挙げた例だけからしても、不動産市場というファクターが、中国政治社会・経済社会で生きるあらゆるプレイヤーの運命を左右しかねない複合的産物であることが容易に見て取れるだろう。
 今回、複数の地方自治体が同時期に不動産購入制限政策を打ち出した背景には、不動産バブルの過熱化という前提的情勢が存在する。
 私の理解によれば、李克強首相を首長とする国務院(中央政府)は近年、不動産市場を、国民が求める実需に応える役割を果たし、中国経済の安定的成長を下支えする重要なファクターであると見なしつつも、「同市場の行き過ぎた過熱化はバブルを招きかねない」と懸念している。
 仮にそのバブルが“崩壊”すれば、中国経済に致命的な打撃を与えるのは明白であり、その観点から、同市場の成長は促しつつも、過熱を警戒し、バブルを抑制するために、マクロコントロールが不可欠というスタンスを堅持してきた。
 中央政府は各地方自治体、特に経済規模の大きい主要都市に対して、このスタンスを繰り返し伝えると同時に、各地の実情に基づいて、適切な政策を実施するよう促してきた。

 中国経済社会全体としての不動産政策は、いまだにアクセルとブレーキをどう踏み分けるか、すなわち、情勢によって緩めたり、引き締めたりする段階にあるといえるだろう。
 今回の集団的な引き締め策実施は、中国の不動産市場が全体的な流れとして過熱化の傾向にある。
 少なくとも「バブルが懸念される局面にある」と、当局はそう認識していることを意味している。

 国家統計局の統計によると、2016年8月、同局が統計対象としてきた主要70都市のうち、64都市の不動産価格が前月比で上昇。
 7月の前月比に比べて13都市増えた。
 うち、行政区分で「一級都市」に属する北京、上海、広州、深センではそれぞれ3.8%、5.2%、2.4%、2.1%上昇した。
 前年同月比ではそれぞれ25.8%、37.8%、21.2%、37.3%上昇している。

 過去半年における統計も見てみよう。

 今年2~8月の期間において、同70都市のうち、17都市で価格が10%以上上昇、15都市で5~10%上昇、25都市で0~5%上昇、13都市で下落という結果であった。
 上昇率が最大だったのが江蘇省南京市で44%、次が安徽省合肥市で38%、それから北京市の27%、広東省東莞市の26%、同省珠海市の24%と続いた。
 注目される1級都市では、上海市が13%、広州市が4%、深セン市が8%であった。

■“美しい、住みたい湾岸都市”の不動価格低迷

 ちなみに、今年2~8月、70都市のなかで上昇率が最も低かったのは遼寧省大連市で6%の下落、次が山東省青島市で4%の下落となった。
 私は興味深いと感じた。

 大連と青島は、共に(私自身の感覚では)ザ・地元的な匂いをプンプン放ち、その酒豪の多さと飲む量の半端なさを含めて、スタンダードというよりはむしろ独自の文化・風習を大事にしてきたように思える遼寧省、山東省のなかでは、最も遼寧・山東の都市っぽくない、いかにも日本人や欧米人に喜ばれそうな、例外的な湾岸都市であり、特に生活という観点からすれば、その立地・気候条件からも住み心地が良い場所とされる。
 久しく訪れていないし、私自身に現段階で原因を解明する術はないが、この“美しい、住みたい湾岸都市”で不動産価格が“低迷”している現状は注目に値するだろう。

 上記の状況から、「1級都市」である北京・上海・広州・深センでは、不動産価格が“安定的”に上昇し、規模や影響力も大きいだけに、中央政府もバブルを懸念せざるを得ない対象となっている。

 一方、南京・合肥・大連・青島といった「2級都市」における不動産価格は比較的不安定で、地域間の格差も大きく、バブル高騰懸念とバブル崩壊懸念が併存している構造が見て取れる。
 私の観察と感覚からすれば、中国経済全体の安定的成長を担保する任務を持つ中央政府としてより懸念するのは後者であろう。

 そもそも、特に今年に入ってから不動産バブル懸念が頻繁に世論を騒がすようになった原因は、中央政府による政策に見いだせるといえる。
 今年3月初旬に開催された全国人民代表大会の『政府活動報告』において、李克強首相は2016年の経済政策5大任務として「不動産在庫の解消」(中国語で「去庫存」)を掲げた。
 同任務は、2015年12月に行われた中央経済工作会議で審議され、翌年の任務として採択されたものである。
 2014年あたりから緩くなってきた中央政府による不動産市場へのマクロコントロールであるが、昨年末から今年の初旬にかけて、「空き家を減らすこと」が中央レベルで奨励されるようになってからというもの、企業家や投資家、および一般消費者を含めて、「いまがチャンス」とばかりに不動産市場に流れ込んだ。
 この半年における銀行の貸出金のうち7割以上を住宅ローンが占めているという。

■再び過熱してしまった不動産市場
クールダウンさせるべく国慶節に急展開

 自らの奨励策が一つの引き金となって、再び過熱してしまった不動産市場をクールダウンさせるべく、国慶節という象徴的な時期を選んで、今度は引き締め策が打ち出されるという急展開。ケーススタディとして、具体的な制限策をいくつか見てみよう。

 北京市は、主に住宅購入ローンを制限し、1軒目と2軒目購入の頭金支払い比率をそれぞれ不動産価格の35%、50%に引き上げた。
 天津市はすでに1軒の不動産を所持している現地戸籍を持たない家庭に、市内6区および武清区での再購入を暫定的に禁止し、同時に同対象者に対し、一軒目購入の際の頭金比率を不動産価格の40%に引き上げた。
 上記でも触れた河南省鄭州市では、市内で指定した区域内に2軒以上の住宅を所持する現地戸籍を持つ家庭、および1軒以上の住宅を所持する現地戸籍を持たない家庭が180平方メートル以上の住宅を購入することを禁止した。
 山東省済南市では1軒目と2軒目を購入する際の頭金比率をそれぞれ不動産価格の30%、40%に上げ、かつ現地戸籍を持ち、すでに3軒の住宅を持っている家庭にはさらなる購入を禁止した。
 湖北省武漢市では、10月3日以降、江岸、江漢、?口、漢陽などの区域において、現地戸籍を持つ家庭が不動産を購入する際の頭金比率を1軒目は25%、2軒目は50%まで引き上げ、3軒目は購入禁止と規定した。

 このように、制限策には地域差があるが、共通点を大まかに拾っていくと、中国政府が人民の住宅購入をトップダウン型で制限する際には、都市における行政区分、支払いの際の頭金比率、そして前回コラムでも触れた戸籍といった要素を個別、かつ総合的に考慮しながら政策決定しているといえる。

■購入制限策は功を奏すか否か
中央政府の心境と目論見は

 今後の展開として注目されるのは、購入制限策が功を奏すか否か、どのように市場の動きに反映するかであろう。
 党機関紙《人民日報》の記事(10月3日付)は、「専門家による分析」を次のように引用している。

◇ :「今回の引き締め政策は、主に投資・投機需要を抑制することに重点を置いている。
 購入者層とローンを制限したことによって、不動産市場は短期的にはクールダウンするであろう。
 今年の第4四半期には、各都市の不動産政策を巡るギャップはより鮮明に出てくるはずだ」
◇: 「不動産市場にバブルが存在すること、国民生活コストへの影響が比較的大きいこと、実体経済への影響を免れないことを警戒すると同時に、マクロ経済政策を成長のインセンティブに転換するプロセスが完結していないなかでも経済の安定的成長を実現しなければならない状況下において、不動産業界の下支えとしての役割が必要なことも事実である。
 政府は不動産市場に対するマクロコントロールのバランス点を把握しつつ、リスクを防止しながら同市場の安定を確保し、経済運営が合理的な区域で完結するように務めなければならない」

 この2つの段落は中央政府の心境と目論見を反映していると私は見る。
 今後、中国では不動産バブル、そしてそれと紙一重のように見える“崩壊”が懸念される局面が続くであろう。
 中央政府にとっては、適切なマクロコントロールの策定、および各地方自治体・市場・世論との綿密で、透明性のあるコミュニケーションがかつてないほどに試されている。

 先日、中国で最もお金を持っている不動産王、大連万達集団(ワンダーグループの)王健林CEOが米CNNテレビの取材に対して、
 「昨今の中国の不動産バブルは史上最大である。
 上海などの大都市の価格は持続的に上昇しているが、多くの空き家を抱える中小都市では価格下落の現象も起きている。
 この問題を解決するための良好な方法などない。
 政府は購買・ローン制限などあらゆる政策を取っているが、どれも効果的ではない」
と断言している。

■中国の広範な消費者・労働者にとって不動産市場と株式市場は異なる存在

 今年の不動産市場は、昨年乱高下の様相を見せ、中国政府の対策が国際的に疑問視された“上海株ショック”を彷彿させる。
 しかしながら、私から見て、中国の広範な消費者・労働者にとって、不動産市場と株式市場はまったく次元の異なる存在である。
 彼ら・彼女らにとって、住宅という不動産は、死に物狂いで貯めてきた資産を投資するという動機を遥かに超えた、家族が一緒に住み、次の瞬間には何が起こるか分からない激動の時代を生き抜いている家人たちが戻ってくる場所である。

 中国人という生き様にとって、これだけは譲れないというボトムライン。
 それが、彼ら・彼女らにとっての“家”という存在なのだ
と私は感じてきた。

 だからこそ、一時的な投機的・賭博的心理で向き合い、マーケットが萎んでしまえばそっぽを向いてしまう対象に映る株式市場とは異なり、市場の性質やルール・法律がどう変わろうとも、
 より極端な表現をすれば、中国という国家の在り方そのものに劇的な変化が生まれたとしても、“そこ”に生きる人々が絶対に目をそらそうとしない、永遠に目をそらすことができない市場。
 それが中国人にとっての不動産=住宅=家という空間が意味するところなのだ。

 そう考えてくると、中国共産党当局が、冒頭で述べたような、“民族大移動”が確実視される国慶節という時期に、この政治的敏感性に満ちた不動産政策の転換シグナルを発した事実も、なるほど、腑に落ちるというものである。
』

『
現代ビジネス 2016/10/11 近藤 大介『週刊現代』編集次長
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49910

不動産バブルを煽る習近平が突如「マンション購入制限」を強いた理由
ダイナミックで「理不尽」な中国政治
    
■予告なしに発表された「通知」

「金九銀十」(黄金の9月と銀色の10月)――。

 この言葉は、中国の不動産業界の用語だ。
 9月の中秋節(旧盆)の3連休から10月の国慶節(建国記念日)の7連休にかけて、マンションの販売量が一年のピークを迎えるという意味である。
 田畑と同様、マンション販売も「実りの秋」を迎えたのだ。

 中国では、全国の市町村を、重要性や人口などを鑑みて、一線都市から四線都市までに分けている。
 一線都市は、北京、上海、広州、深圳、天津の5都市。
 二線都市が南京、武漢、重慶など41都市。
 三線都市が紹興、珠海、吉林など110都市。
 残りすべてが四線都市である。

 中国には、人口が100万人を超す都市が303もあるので(日本は12)、
 不動産規模も世界一である。
 今年も、一線都市から四線都市まで各都市の不動産業者たちは、「金九銀十」のこの季節に合わせて、大量の新築マンションの販売に踏み切った。

 ところが、である。10月1日の国慶節を5日後に控えた9月25日の日曜日、二線都市の筆頭である人口820万人の南京市で、突如として異変が起こった。
 市政府(市役所)のホームページに、
 「南京市の不動産市場のさらなるコントロールのための主要地区の不動産購入制限措置に関する通知」
と題した「2016年第140号通知」が、何の予告もなくアップされたのだ。

その全文は以下の通りである。

>>>>>
〈 各区人民政府、市府各委員会弁公局、市各直属単位へ

「市政府が供給側構造性改革を推進し、不動産市場の平穏かつ健全な発展の促進を実施するための意見」(2016年第75号通知)をさらに一歩定着させるため、そして不動産市場を安定させ、「不動産価格と地価をコントロールする」ことを基本として、高淳、溧水、六合を除く主要地区で、住宅購入制限措置を実施する。

1.すでに一軒の住宅を所有している南京市の戸籍を持っていない住民家庭の不動産購入(新築及び中古物件)を、当分の間禁止する。
2.すでに二軒以上所有している南京市の戸籍保有者家庭の新築不動産購入を、当分の間禁止する。

新築物件は売買契約書にサインした日を基準とし、中古物件はネット上で署名した日を基準とする。

不動産開発企業と不動産登記機構は、不動産購入条件に合致しない購買希望者に住宅商品を販売してはならない。不動産取引及び不動産登記部門は、上記規定に違反して処理や手続きを行ってはならない。

本通知は、2016年9月26日より執行される。

南京市人民政府弁公庁
2016年9月25日 〉
<<<<<

 まさに、いまからマンションを買おうとしていた南京市民、及び売ろうとしていた不動産業者にとって、青天の霹靂の「マンション購入制限令」だった。
 市民も業者も、南京市政府のホームページを見て、唖然となった。

 このため、マンション購入を考えていた南京市民たちは、「それならば今日のうちに契約してしまえ」と、市内のマンション販売センターに殺到。
 おかげで9月25日だけで、計1604軒ものマンションが南京市で売れた。
 本当はこの何倍も売れるところだったのだが、マンション販売スタッフの人員が足りなかったのである。

 だが、南京の混乱はこれにとどまらなかった。
 南京市政府は、やはり何の予告もなく、大型連休5日目の10月5日になって、「第143号通知」を発令した。
 これはさらに詳細な「マンション購入制限令第二弾」で、主な内容は次の通りだ。

>>>>>
・明日10月6日より(以下同)、南京市戸籍以外の者に、マンション購入の際、過去2年以内の1年以上の所得税納税証明書と社会保険納税証明書の提出を義務づける。
・南京市戸籍の独身者(離婚や死別を含む)は一軒しか購入を認めない。
・住宅ローンの差別化をさらに進める(購入者をふるいにかける銀行の高金利を許可する)。
・一軒目の普通住宅の購入は頭金3割以上、二軒目は4割以上、商業用不動産は5割以上、住宅ローンを完済していない者は8割以上とする。
<<<<<

 こうして南京で始まった「マンション購入制限令」は、その後、燎原の火のごとく、全国各地に拡散していった。
 同様に「マンション購入制限令」を発令したのは、北京、上海、広州、深圳、天津の一線都市を始め、10月4日までで計15都市に上った。具体的には、南京、アモイ、杭州、蘇州、鄭州、成都、済南、無錫、合肥、武漢である。

 今後はおそらく、三線都市までの多くの都市で、同様の通知が出されるものと見られる。内容は大同小異で、頭金アップ、非戸籍保有者の締め出しなどである。

■「頭金7割なんて、払えるわけない!」

 首都・北京では10月6日、地元テレビ局の北京衛視が、9月30日に北京市政府が発令した「北京市の不動産市場の平穏かつ健全な発展を促進するための若干の措置について」(マンション購入制限令)に関する特集ニュースを組んだ。
 それは、次のような内容だった。

>>>>>
 北京市豊台区のある新築マンション販売センター。
 国慶節の大型連休中の午前10時。
 このマンションは9月25日に発売を開始し、販売開始から5日間で計150の部屋に約300人が予約するなど、販売は上々だった。

 だが、9月30日を境に、一夜にして頭金が7割にハネ上がってしまった。
 そのため、「棄購」(購入放棄)が続出している。

「頭金7割なんて、払えるわけないじゃないの!」

 数日前に新築マンションの購入を決めたばかりの女性が、マンションの販売員に噛みついている。
<<<<<

 このマンションは、1㎡が約7万元(1元≒15.4円)。
 一般的な3LDK105㎡の部屋の場合、約700万元だ。
 中国の不動産は室内面積でなく建築面積で換算するので、7掛けするとだいたい日本の不動産表示面積となる。
 つまり、70㎡で1億円の物件だ。
 ちなみに、北京の不動産価格はとっくの昔に、東京の価格を追い抜いている。

 北京市政府が9月30日に発令した通達(北京市民は「京八条」と呼んでいる)によれば、第5環状線以内のマンションの場合、1㎡あたり3万9600元以上、もしくは総額が468万元以上のマンションは、非普通住宅(高級マンション)とみなされる。

 最近売り出している第5環状線以内のマンションの場合、不動産業者が買った時は1㎡あたり約3万元が相場だったという。
 そのため、マンション建造費用などを加えると、最低でも5.5万元以上で売らないと元が取れない。
 不動産会社の社員は、「これではすべてのマンションが、非普通住宅となってしまう」と、テレビに向かって嘆いていた。

 今回の北京の「マンション購入制限令」を簡略化して説明すると、初めてマンションを購入する人が普通住宅を買えば頭金は35%以上、非普通住宅を買えば40%以上。二軒目の普通住宅は50%以上、二軒目の非普通住宅は70%以上となった。
 これに、北京市の戸籍保有者か非保有者かという区別によって、細かい条件が変わる。

 北京衛視はそもそも北京市政府傘下のテレビ局なので、激しい市政府批判などできるはずもなかった。
 最後は社会科学院の都市建設の専門家が登場し、
 「今回の措置は、マンション投資の金融化とレバレッジ化を抑制するのに必要な措置なのです」
というコメントでまとめていた。

 思えば今年の年初には、中国政府が不動産購入奨励策を取ったため、事実上、「頭金ゼロ」でマンションが買えたのだ。
 それが秋になったら一夜にして、頭金7割以上に変わった。
 中国は何とダイナミックな、そして理不尽な国であることか。

■中国の特色ある経済状態

 今回の「マンション購入制限令」は、現在の中国が抱える様々な問題を浮き彫りにした格好となった。
 最大の問題は、そもそもなぜ突然、このような措置が中国全土で発令されたのかということだ。
 中国は周知のように、ここ数年、景気が急減速している。
★:昨年までは「V字回復させる」と意気込んでいた中国政府だったが、
 今年に入ると「L字型」(長期低迷)と言われ始め、
 今年春からは「h字型」(さらにドン底に落ちていく)と囁かれ始めた。

 最近、こうした中国発の危機的な状況が日本に伝わってこないのは、中国の景気が回復したからではなくて、
 中国共産党中央宣伝部が、「経済のマイナス報道」を強く規制し始めたからだ。
 これまでは共産党や政府批判の政治記事が御法度だったが、今年春ごろからは、中国経済に対する批判やマイナス報道も検閲の対象となっている。

 この4年近い習近平政権を評価すると、政治分野と軍事分野に関しては、習近平主席が強い指導力を発揮している。
 外交分野に関しても、発足当初は冷や冷やしたものだが、いまではだいぶ慣れてきて、及第点だ。
 ところがこと経済分野に関しては、4年前から現在に至るまで、メチャクチャなのである。
 たとえてみれば、今日大雨が降ったから慌てて傘を用意し、今度は台風が吹き荒れ出したから戸や窓を補強するといった具合だ。
 万事が後手後手で、かつ出たとこ勝負のため、長期的な見通しや整合性がまるでない。
 これに、「八項規定」(贅沢禁止令)で旨み(賄賂その他)がなくなったことによる官僚の不作為(ヤル気喪失)が加わって、
 いまの中国経済は、中国語で言うところの「雪上加霜」(雪の上に霜が加わる)状態だ。

 それでも中国経済が崩壊しないのは、ひとえに過去30数年間の高度経済成長の「貯金」があるからだ。
 そのあたりは、「失われた10年」「失われた20年」などと揶揄されながらも、リーマン・ショックのようにならなかった日本と似ている。

 習近平政権のこの4年間の景気浮揚策を振り返ると、ごく単純に言えば、
 株価上昇政策と不動産価格上昇政策の繰り返し
である。
 習近平総書記は、共産党総書記(党トップ)に就いた翌月の2012年12月に「八項規定」を発令したため、経済はいきなり悪化した。
 胡錦濤政権時代まで「全体の3割」と言われた地下経済(賄賂経済)が急速にしぼんでいったからである。

 例えば幹部たちが、それまで一人で何十軒も賄賂としてもらっていた高級マンションを一斉に売りに走ったため、北京や上海の高級マンション価格が急落した。
 また、ほとんど贈答用だった高級ブランド製品の売り上げもガタ落ちした。
 これに慌てた習近平政権は、不動産バブルを煽る政策を始めた。
 それが2014年秋頃まで続いたが、不動産価格が下げ止まらなくなると、今度は不動産バブルを鎮静化する手を打ち始めた。
 代わって、株バブルを煽った。
 それによって2014年秋から株価は急上昇を始め、2015年前半には、本格的な株式バブルとなった。
 だが、昨年6月15日(習近平主席の62歳の誕生日!)に株式バブルが崩壊。
 それが引き金となって、「1100兆円破綻」と言われる谷底に落ちていったのである(そのことは、拙著『中国経済「1100兆円破綻」の衝撃』で詳述した)。
 そこで習近平政権は、景気をテコ入れするため、昨年秋から再び、「消費拡大の最大の牽引車」である不動産のバブルを煽り始めたというわけだ。

 例えば、新築マンションの購入時には、頭金2割以上、3割以上といった規定があるにもかかわらず、それらを銀行が肩代わりして住宅ローンに組み込んだりということを黙認した。
 つまり、頭金ゼロでマンションが買えるようにしたわけで、まさに約10年前のアメリカのサブプライム・ローンと同じパターンである。
 これによって、不動産価格は上昇を続けた。
 そして、景気が低迷しているのに不動産バブルが進むという「中国の特色ある経済状態」が生まれていった。

■「中国発のリーマン・ショック」を回避?

 今年9月19日に国家統計局が発表した8月の70都市住宅価格調査では、新築マンション価格が、9割以上にあたる64都市で前月より上がった。
 鄭州5.6%、上海5.2%、無錫4.9%、合肥4.8%、福州4.3%、南京4.1%、アモイ3.9%、北京3.8%、石家庄3.7%、天津3.6%、杭州3.3%、済南3.2%、武漢3.2%、広州2.4%、深圳2.1%、青島2.1%と、前月比で2%以上も上がった都市が、16都市にも上ったのだ。
 一部の二線都市、三線都市の上昇率が、一線都市の上昇率を上回るという新現象も起こっている。
 また、中国指数研究院の「100都市価格指数」によれば、今年9月の全国100都市のマンションの平均価格は1㎡あたり1万2617元で、前年同期比で16.64%も上がっている。
 特に一線、二線都市では、新築マンション、中古マンションともに急速に値上がりしていることが明らかになった。
 まさに、全国的な不動産バブルである。

 中国政府にしてみれば、本来なら「金九銀十」のこの季節に、不動産を大量販売することで、低迷している景気を上向かせ、かつ税収も増やしたかったところだ。
 ところがこれ以上放置しておくと、不動産バブルが崩壊するリスクが高いと見たのである。
 すなわち、「中国発のリーマン・ショック」が、いよいよ現実味を帯びてきたと判断したのだ。

 北京に住む旧知の経済問題の専門家に聞くと、こう述べた。
 「10月14日から、SEC(米証券取引委員会)がMMF(マネー・マーケット・ファンド)に新たな規制をかける。
 これによって多額のホットマネーが、中国からアメリカに流出することが見込まれる。
 これは中国の不動産業界を直撃し、不動産バブルが一挙に崩壊するリスクを孕んでいるのだ。
 実際、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)はこのところ上昇を続け、9月26日には0.85294と、7年ぶりの高水準に達した。
 中国企業が発行するドル建て社債の多くは、LIBORを基準にしているので、債務が膨らむことになって経営者たちは蒼くなっている。
 もちろん、不動産業界も同様だ。
 こうしたことから、いくら『金九銀十』の季節とはいえ、背に腹は代えられなくなったのだ。
 いま不動産バブルを覚まさないと、10月にリーマン・ショック型の危機が中国を襲うリスクがあったのだ」

■習近平がすべてを頼る男

 今回の「マンション購入制限令」を見ていて、不思議なことがある。
 それは、通達を発令したのは、あくまでも各地方自治体であって、国務院(中央官庁)ではないということだ。
 国務院には、住房和城郷建設部(住宅及び都市農村建設省)という専門官庁があるにもかかわらず、この官庁は何の通達も出していないのである。
 10月5日になって、この中央官庁は、「権威専家(権威的な専門家)が9都市の不動産コントロール新政策を評価する」と題した国営新華社通信の記事を、ホームページ上に転載した。
 記事の中で、新華社記者の取材に応じたという「権威専家」は、次のように述べている。

 「多くの都市で行った不動産市場のコントロール政策に共通する特色は、投資と投機の需要を抑制する目的だったということだ。
 住宅価格があまりに急激に上昇するのを抑止し、不動産市場を安定化させようとしたのだ。
 日々刻々状況が変わる不動産市場に対して、市場を安定化させコントロールしていくことに対して、引き続き細かな指導をし、都市政策に結びつけていく」

 この記事は長文で、劉洪玉・清華大学不動産研究所長や廖俊平・中山大学南方学院不動産学部長なども続いてコメントしているが、大事なのは、「権威専家」が述べたコメントである。
 中国の官製メディアが「権威人士」「権威専家」などと表記する時は、劉鶴・中央財経小グループ弁公室主任兼発展改革委員会副主任を指す。
 劉主任は習近平主席の「北京101中学校」の同級生で、
 経済オンチの習近平主席が「経済政策のすべてを頼る男」
である。

 こうしたことから透けて見えるのは、今回の措置は、
 李克強国務院総理(首相)が統括する国務院の主導ではなく、習近平主席サイドが主導したということだ。
 おそらく、9月に李克強首相が、ニューヨークの国連総会、カナダ、キューバと11日間も外遊に出ている間(9月18日~28日)に、習近平主席と劉鶴主任主導で進めてしまったのである。

 今年の中国では、この二人が主導して、「供給側構造性改革」と呼ばれる5項目の経済改革を推進中である。
 その5項目の2番目が、「過剰在庫の解消」だ。
 特に、「鬼城」(ゴーストタウン)と呼ばれるマンションの在庫解消が、喫緊の課題となっていた。
 そこで戸籍改革を断行し、農村戸籍の人も都市戸籍の人と同様に、マンションが買えるようにすることで、在庫を解消しようとしていた。

 だが、今回の「マンション購入制限令」は、明らかにこの政策と矛盾している。
 前述のように、農村戸籍者を一層差別し、「現代版アパルトヘイト」を助長する政策だからである。

 だが、都市戸籍保有者の庶民にしても、今年の年初には事実上、頭金ゼロでマンションが買えたのに、秋になったら一夜にして、頭金7割以上に変わってしまったのだから、やはり犠牲者である。
 割を喰わないのは、頭金問題など関係ない富裕層だけだ。
 このため、今回の措置によって、社会格差はますます開くことになるだろう。

 それにしても、中国は何とダイナミックな、そして理不尽な国であることか。
 残ったのは、庶民のため息と、「棄購」(チーゴウ)という流行語だった。
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JB Press 2016.11.9(水)  花園 祐
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48291

結局のところ中国の住宅バブルはいつ弾けるのか?
価格急騰の裏に不動産仲介会社の暗躍があった

 「中国の住宅バブルはもうすぐ弾ける」──。
 こうした言葉が聞かれるようになってからもう10年くらい経ちます。
 日本の書店に行けば、中国経済崩壊論と書かれた書籍が常にズラリと並べられています。
 けれども、少なくとも現時点において中国の住宅バブルが明確に弾けたと言えるような大暴落は確認されていません。

 こうした主張をしている人たちからは、「まだこれからだ」と反駁されるでしょう。
 しかし厳しい言い方をすれば、それらの主張は「中国経済が悪くなってほしい」という希望が先行し過ぎており、雨が降るまで踊り続ける雨乞いやノストラダムスの終末予言のようなものだと筆者は考えています。
 加えて、そうした主張の多くには都合の良い部分だけを切り取った一面的な意見も数多く見られます。

 中国の住宅バブルは本当のところはどうなのか?
 筆者は現在、中国・上海で働いています。
 中国の不動産業の専門家でもなければ業界関係者ではありませんが、今回、上海で入手できる情報を基に自分自身で確かめてみることにしました。

■価格急騰、住宅購入規制、そして再び急騰


●上海の平均住宅成約価格

 上のグラフは、中国の不動産仲介業者「安個家」がまとめた2006~2015年における上海市の平均住宅成約価格データを引用し、前年比成長率(=価格上昇率)と合わせグラフ化したものです。
 このデータを見てまず目につく点は、言うまでもなく価格の上昇幅です。
 2006年には9437元/平米だった価格が2015年には3万4730元/平米となっています。
 10年近くで実に3.7倍も価格が上昇したこととなります。

 デフレが続く日本人の感覚からすればこの事実一つとってもバブルだと言いたくなるような上がりっぷりですが、右肩上がりに上昇してはいるものの、各年度の価格上昇率を比較してみると少なからず波がある点に気付かれるかと思います。
 価格上昇率は2010年まで2桁成長を続け、2008年と2009年に至っては30%超の大幅な上昇を遂げています。
 当時は現地中国でも住宅価格の急騰ぶりとバブル化を懸念する声がよく聞かれました。

 この時期に急騰した理由としては、2008年のリーマン・ショックによる影響が挙げられています。
 つまり、株式市場で株価が大幅下落したことを受け、投資家のマネーが一挙に不動産市場へ流れ込んだことなどが原因と指摘されています。

 加熱する不動産市場を懸念した中国政府は、同時期から各地で住宅購入を制限する規制を打ち出しました。
 具体的には投資目的での2軒目以上の住宅購入を禁止するなどして市場の鎮静化を図ったのです。
 こうした規制が功を奏したのか、2011年と2012年の価格上昇率はそれぞれ1.4%と2.0%の低上昇に抑えられ、一部(特に中国が嫌いな人たち)では「とうとう中国の住宅バブルが崩壊したぞ!」と騒ぎ立てられました。

 しかし結果論からすれば、比較的いいタイミングに、政策によって市場の抑え込みに成功したのがこの時期の値動きだったと思えます。
 ただし、一旦は抑制に成功したかに見えた住宅価格ですが、2013年に7.6%の上昇を記録すると、2014年には11.6%、2015年には28.7%と再び2桁超の急上昇を示すようになります。
 国家統計局による直近のデータで見ても、2016年9月における上海の新築住宅価格指数が前年同月比32.7%上昇、中古住宅価格指数が同37.4%上昇となっており、2016年も2015年の上昇ペースを維持、それどころか上回るような急上昇を続けているようです。

 あえてこの10年間でスパンを区切るとすれば、2008~2009年に一度目の急騰期を迎えた後、政府の住宅価格抑制策によって市場は一旦は落ち着くものの、2015年からは再び30%近い上昇をするようになり二度目の急騰(バブル)期を迎えているのが現状だと言えるでしょう。

■急騰の背景に株価暴落と仲介業者の影

 ある日系銀行の関係者は、近年の住宅価格上昇は、2008年頃の時と同じく株式市場の大暴落が背景にあると指摘します。
 中国の株価は2015年6月、上海証券取引所のA株が時価総額の3分の1を失うほどの大暴落を引き起こしました。
 これによってかつてと同じく投資家のマインドが株式市場から不動産市場へと移り、マネーが不動産市場に流れたことが住宅価格の急騰を促したと見られています。

 また、このところ、こうした市況による影響に加え、中古住宅を取り扱う不動産仲介業者の作為も住宅価格を押し上げている一因だとの声がよく聞かれます。
 特に北京市に本拠を置き、近年急激な成長を続けている北京鏈家房地産経紀有限公司(鏈家)という仲介業者については「住宅市場をかき乱している会社の1つ」であると各方面から指摘されています。

 同社は2001年に設立された中古住宅を専門に扱う不動産仲介業者です。
 2008年のリーマン・ショックを乗り越えてから同業他社の吸収合併や提携を繰り返して、ここ数年で急速に勢力を拡大し、2015年の売上高155億元が前年比で約4倍となるなど、短期間での急成長ぶりに注目が集まっています。

 筆者自身の経験で述べると、比較的ローカル色が強い不動産業界という背景もあってか3~4年前には上海市内で鏈家の営業店を見ることはほとんどなく、かつてはその存在すら知りませんでした。
 ところが、現在の上海市内ではどこへ行っても鏈家の営業店舗を目にし、まるで石を投げれば鏈家に当たるとでも言いたくなるほど短期間で店舗が増え続けています。

 実際に鏈家は非常に高い市場シェアを確保しています。
 下の表は不動産データコンサルティング企業の北京雲房数据技術有限責任公司(雲房数据)がまとめた2016年8月における上海市内の仲介業者別中古住宅成約件数のデータです。
 鏈家の上海法人に当たる上海鏈家徳祐地産(鏈家徳祐)の成約件数は2位の約3倍、シェアは約20%となっており、競争の激しい仲介業界の中で圧倒的な力を持っていることは間違いないと言えるでしょう。


●2016年8月の仲介業者別上海中古住宅成約件数(出所:雲房数据)

 独走を続ける鏈家ですが、2016年初旬、担保に出されていた住宅を担保者の了解なしに第三者へ売却しようとして、消費者保護を担当する当局より注意を受ける事態を引き起こしています。
 強引な取引や市場操作が横行しているという噂も絶えません。
 現地メディアの「第一財経日報」などよると、鏈家は圧倒的なシェアを生かして、市場に流通する物件量を制限して住宅価格の高騰を促しているとの報道も出ています。
 筆者自身も多方面でこうした噂をよく耳にしますし、中古住宅価格のみならず賃貸料金の高騰も招いていると聞きます。

 実際に筆者が、2016年1月に引っ越し先となる賃貸物件を上海市内で捜した際、4年前は月3000元前後でワンルームの物件を見つけられたエリアで3000元台の物件は見つからず、最低でも4000元以上しかないと現地仲介業者から告げられました。
 その際に近年の住宅・賃貸価格の高騰ぶりについてその仲介業者に尋ねたところ、「取り扱っている自分たちですら驚くような高騰ぶりで、正直なところ混乱している面もある」という素直な心境を語っていました。

■政策や株式市況でどちらにも転び得る

 上海市における中国の不動産市場の現状をこれまで説明してきましたが、日本人が一番大きな関心を持つ点は、やはり「結局のところ、中国の住宅バブルは弾けるのか否か」にあるのではないでしょうか。
 この点について先程の日系銀行関係者は、
 「既に非常に危険な状態に陥っていることは間違いなく、
 時期としては2020年頃が非常に危ない」
との見解を示しました。

★.その1つの根拠として、同関係者は、このところ賃貸物件の取引で不動産仲介業者は顧客に対して1年契約ではなく2年契約を強く薦めてくる傾向があることを挙げます。
 近年の住宅価格高騰を受け、これまで賃貸では1年契約を結ばせて毎年家賃を引き上げようとする仲介業者や家主が多かったのですが、今年に入ってからは住宅価格の下落を恐れ、あらかじめ高い家賃契約を結ばせて契約期間を長くしようとしているというのです。
 「不動産のプロたちはもう市場が危険な状態であるという認識を持っている」というのがその関係者の説明です。

 一方、筆者個人の見解を述べると、現在、中国の大都市ではほぼ例外なく住宅価格を抑制するための様々な購入規制策が実施されており、仮に価格が大幅に下落するような事態に陥ったとしても、そうした規制を緩和することによって再び消費を促せる政策的緩和余地がまだ残されているように思えます。

 また、普段中国人と接していて思うこととしては、圧倒的大多数の市民は依然と住宅を購入したくても価格が高すぎて購入できない状態にあり、今より少しでも住宅価格が下がるならば今すぐ買おうとするような層は非常に多く、中国の住宅市場を下支えする実需は日本人が想像する以上に底堅いのではという印象を覚えます。

 ポジティブ、ネガティブな両意見を提示した上で、やや卑怯な結論となりますが、中国の住宅バブルがどうなるのかについては、現状で結論を出すのはまだ早いというのが私の見方です。

 警戒しなければならない段階であることは間違いないものの、今後の政策や株式市況によっていくらでも転びようがあり、今すぐに弾けるかどうかだけを考えると、かえって状況判断を誤らせる事態に陥りかねません。
 日本の皆さんには、中国の住宅バブルについては感情的な希望的観測にとらわれず、以上で提示したようなマクロデータや市場関与者の現状をしっかり注視しながら冷静に判断していただきたいと思います。
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【身勝手な大国・中国】



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●中国 崩壊 渡邉哲也が語る中国の実態。高まる警戒感!誤魔化しきれない中国実体経済。不動産バブルがチャイナのトドメを刺す
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